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雑木の庭つくり日記

癒しの木々             平成24年5月5日
 世間では今は連休、、のようです。が、私は今朝も朝6時半には出勤のため、家を出立します。
 今年ばかりはなかなか休みが取れません・・。



 朝日を浴びて逆光に輝く庭の木々の美しさに息をのみます。



 家を建て、そして木々を植えて5年目、ほぼ放任状態だったのに、木々は自分の力でここまで見事な住まいの環境林へと成長してくれました。
 木々のエネルギーを感じて、仕事の意欲も倍増します。



 今日の仕事第一弾、手入れの打ち合わせのため、2年前に施工させていただいた千葉県船橋市のMさんの庭を訪れます。植栽後3回目の春を迎え、木々はとても美しく力強く輝いていました。



 竣工して2年という時間の経過。そしてその間、お施主のMさんの愛情を受けて、庭はますます落ち着いた美しさを見せてくれていました。とてもうれしくなります。



 とても狭い敷地ですが、木立植栽のためのスペースを点在させて景色を繋げてゆくことで、とても緑豊かな住環境が作り出せるものです。
 また今年も、春の手入れに回る時期が来ました。作った庭はわが子のようなもの、そんな息子たちがそこに住まれる家族に愛されて、元気に生育している様子を見られるということ、それは私たちにとってのかけがえのない喜びと生きがいになります。



 そして今日は、お友達の建築家のお庭に、コナラの苗とモミジの苗をデリバリーに訪れました。
一人で持てるくらいの大きさの雑木の苗を自分で植えてもらい、そして成長や日々の変化を楽しんでもらうのです。
 セルフビルドの木立植栽、あるいはセルフビルドの住環境つくり、といったところでしょうか。そのお手伝いです。
 樹高3m弱の苗木を数本まとめて提供し、植栽の仕方、木立の植え方をアドバイスするというスタイル。
 これもまた、今後の日本で必要とされる造園の一つの在り方かもしれません。木々を植え、そして育ってゆく楽しみは、それを見る私たちにとても多くの大切なことを教えてくれます。
 これからはぜひ、子供たちにも大人にも、木を植えて育てる喜びを知ってもらいたいと思います。こうしたスタイルはますます広がるべきことでしょう。
 
 ただし、私たちは植木販売業者ではありませんので、こうしたサービス提供は、今はごくごく親しい方やお得意様に限って、それもたまたま時間の空いたときにのみ行っているのが実際です。
 今後こうしたサービスが必要とされる時代が来るとは思います。また、木立の植え方や育て方、手入れの仕方のレクチャーの需要も増えてくることでしょう。

 まだしばらく先のことになりますが、今後は木々と共にある暮らしの環境を自ら作っていきたいと考えられる方々に、適切なアドバイスとお手伝いをするための業務体制も検討したいと思っています。



 そして午後からはまた、事務所に戻ってひたすら書籍の原稿書きです。
 久々の快晴。庭のモミジが木漏れ日に輝いて揺れています。

 新緑の時期、日ごとに表情を変えてゆく木々を見ているだけで幸せな気持ちになります。 
 

  
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
都市の防災林を考える 清澄庭園にて    平成24年5月4日





 ここは東京都指定名勝の清澄庭園の外周境界林です。所要があって今日は雨の中、久々にこの庭園を訪ねました。

 連休と言えども今年は新刊書籍の原稿書きに明け暮れています。締め切りは迫り、ゴールデンウィーク中に書き上げるべく、事務所に缶詰めの状態が幾日も続きました。
 そんな中、今日は書籍で用いる資料収集のため、この清澄庭園を訪れたのです。



 常緑樹林に囲まれた、広大な池泉と美しく力強い石組みが見事なこの庭園は、明治11年にこの地を取得した三菱財閥の創始者 岩崎彌太郎とその弟 彌之助によって造営されました。

 往時には庭園の面積は現在の2倍以上あったと言います。
 この、湖面に浮かぶ数寄屋造りの涼亭(当時は接客用の客室として建てられました)の他、当代随一と言われた英国人建築家ジョサイア・コンドル設計による見事な洋館と、立派な日本館とがあり、都内有数の壮大な庭園風景を誇っていました。



 シイノキやタブノキなど、土地本来の常緑樹に囲まれて佇む涼亭。昭和60年度に改築工事がなされたものの、岩崎家所有の庭園だった当時を伝える建物は、今はこの涼亭のみです。
 当時の建築の粋を尽くした洋館も日本館も、関東大震災に伴う周辺一帯の大火災によって全焼したのに対し、樹林に囲まれたこの涼亭は、襲い掛かる大火を常緑樹林が食い止めて、事なきを得たのでした。
 一方、この庭園のメインの建造物であった洋館や日本館の周囲には、火災に弱いマツや棕櫚などのほか、世界中から集められた花木低木ばかり植えられていたために、大火を前にしてなすすべもなく、木々も一緒に燃え尽きてしまったのです。



 庭園の外周を土地本来の常緑樹林が囲みます。
 地震とそれに伴う火災によって10万人もの犠牲者を出した関東大震災、この庭園の周辺地域は火の海となり、最も犠牲者の多かった地域でもありました。
 そんな未曽有の大火の中でも、この庭園に逃げ込んだ2万人余りの市民は、一人として犠牲を出すこともなく、全員が無事だったのです。

 洋館や日本館を造営して人工的に庭園が整備されたために土地本来の森がほとんど消滅していた西側半分は、見事に大火に飲み込まれて焼け野原になったのに対して、自然のままに放任されて土地本来の豊かな常緑樹の外周境界林が育っていた東側半分では、常緑樹の森が見事に大火を食い止め、多くの市民の命を救ったのでした。



 庭園内のタブノキが、新たな葉を開いています。東京の気候風土本来の代表的な植生樹種のひとつがタブノキです。
 関東大震災の後、庭園の所有者である岩崎家は、常緑樹に囲まれて守られた庭園の東半分を東京市に寄付したのです。

 「この森が数万人の市民を大火から守った・・。木々の力はそれほどまでにすごいのか。この庭園はもはや私人のものにしておくのではなく、災害から市民の命を守る市の共有財産として活用してもらうべきだ。」
 東京に壊滅的な被害をもたらした関東大震災を目の当たりにして、なおも凛然と木々が生き残り、多くの市民の命を救った現実に対面した岩崎家の人々がそう考えたのは、想像に難くありません。



 大の庭好きだった岩崎彌太郎が全国から集めた名石巨石が見事に収まって見ごたえのある景色を見せる今の清澄庭園。

 関東大震災の後、岩崎家から譲り受けた東京市によって庭園は再び整備され、昭和7年には「東京市 清澄庭園」として公開されたのです。
 東京市の所有となった後に遭遇した東京大空襲、震災に続き、またもや周辺一帯は焼け野原となったのにもかかわらず、この森は焼夷弾にも耐えて燃えることなく、この時もまた、この森に逃げ込んだ大勢の市民の命を戦火から守り抜いたのでした。



 タブノキにシイノキ、その下にシロダモやモチノキ、ネズミモチ、そしてサカキにツバキにアオキといった土地本来の自然植生構成樹種である常緑樹が今もなお、外周の森を構成しています。
 高木から亜高木、中木に低木と、多層的に成り立つ土地本来の木々による緑の壁が、これまでに2回も遭遇した未曾有の大火から、大勢の市民の命を守ったのです。



 力強く大地を握りしめるように張り出すネズミモチの根。土地本来の常緑広葉樹林は深く強く大地を抱き込み、土砂災害からも人や家屋を守ってくれます。

 根を深く大地に突き刺し広げてゆく性質を持つ土地本来の常緑樹林は、昨年の東日本大震災に伴う大津波にも耐えて流されず、枯れることもなく新たな命を再生している事実が多数報告されています。
 様々な自然災害を軽減し、都会の暮らしを守る防災林の在り方は、土地本来の樹種による多層群落のグリーンベルトを配してゆくしかないということは、これまでの様々な災害を検証すれば一目瞭然なことのようです。
  私たちの命、そして私たちにとっての大切な人の命は、国や行政に任せるのではなく私たち自身で守り抜かねばなりません。そのために、一人一人が今できることを一歩ずつでも、確実にやってゆくことが大切なことだと思います。




 都会の密集地の中の多層群落の命の森。この木々が再び、市民の命を救う時が今後も必ずやってくることでしょう。
 こうした本物の防災林を少しでも多く、街の中にこそ作ってゆかねばなりません。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
風景を作る 収まるところに収めてゆく    平成24年4月30日



 風景を育ててゆくということは、その土地に愛情と時間をかけることからはじまると実感します。
我が家の木々も、植栽後5年目となり、いつの間にかこの土地の自然にすっかりとなじみ、住まいの風景がより一層美しく、この土地の自然風景の中に溶け込んできました。



 地元の山砂をひたすら突き固めて、4年前に作った作った版築の門柱に瓦屋根をつけました。
棟の隅の巴瓦には、千葉県成田市の由緒あるお寺の改修現場からもらってきたものです。もちろん、瓦はすべて古材の再利用です。



 いい文様の瓦です。昔の建物の解体現場は私にとっては宝の山で、庭の材料にあふれています。
 昔から庭は、建築廃材や古材の再利用の場でもありました。特に瓦などは、数十年に一度葺き替えが行われますので、その都度発生する古い瓦は、昔から延段と呼ばれる園路の材料にしたり、雨落ちの縁に利用したり、あるいは砕いて下地地盤の補強にしたりと、とにかく庭の中で有効に利用されてきました。
 「もったいない」という想いから、日本の庭は生まれたのです。形ではなくこの素晴らしい思想を、造園という仕事を通して未来へと繋いでいかねばなりません。



 そして、集めた古材を使って作り始めた我が家の水道小屋も完成です。良い佇まいで、美しい景色を作ってくれます。
 その土地の風景をつくるということ、それは一つ一つの建物佇まいを、その土地の風景の中に美しく溶け込むように配慮してゆくことで、愛される風景へと育ってゆくのだと感じます。



 瓦屋根は棟違いとし、梁にはかやぶき民家の古材を用いています。



そして、小屋の背面には、懐かしい無双窓があります。



しかし、どんなに素晴らしい環境であっても、また、どんなによい建築であっても、建物をその風土に溶け込ませて落ち着いた佇まいに見せてゆくためには、どうしても木が必要なのです。
 西日除けを兼ねて、小屋の脇に小さな木立を植えました。既存のヤマボウシ1本に、コナラの苗木2本、モミジの苗木1本、ツリバナの苗木1本だけの小さな木立です。数年後には立派な木立となって夏の西日を遮ってくれる環境林となるでしょうが、植栽したばかりであっても、木を植えることで小屋は見違えります。
 
 小屋を建てれば当然木を植える。その営みが美しい風景を一つ一つ作ってゆくことにつながるのです。



 そして、この小屋の正面軒下に、木彫りの鬼面をかけると、この小屋にも魂が宿りました。すすけて黒ずんた鬼面は、太い梁の力強さにも負けず、驚くほどしっくりとなじみました。

 この鬼面は南房総市のTさんという方から数年前にいただいたものでした。本来家屋の軒下で、その家の守りの願いを込めて掛けられていたものなのでしょう。
いただいてから数年、その間も、様々な場所に収めてみようと試みましたが、なかなかふさわしい場所を見つけ出せずにいたのです。
 ようやく、しっくりと落ち着く場所に収まることができました。よかったです。この鬼面も新たな役割を与えられてきっと喜んでいることでしょう。

 モノに宿る魂というもの、それを収まるところに収めてゆくこと、それも造園という仕事に必要な感覚です。風景を美しくする仕事、そんな眼力をこれからも鍛えていきたいと思います。

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
カフェどんぐりの木 2年目の手入れ    平成24年4月25日



 ここは千葉市美浜区のコミュニティカフェ どんぐりの木、施工して丸1年、初めての春を迎え、初めての手入れに訪れました。



奥行5m足らずの玄関アプローチは、新緑まぶしいどんぐりの森の木道です。



 植栽して1年、しっかりと根付いた木々からは、昨年よりもずっと濃くなった枝葉が深みある景色を感じさせてくれます。
 1年、また1年と、作らせていただいた庭の手入れに訪れるたびに、木々の強さにエネルギーをもらいます。
 移植された木々は、新たな場所で文句も言わず、一生懸命に根を張ろうとします。
そして、大事にしてくれるお施主の愛情に一生懸命応えようとしてくれているようです。



 カフェは今日はお休みです。手入れのあとは、カフェの中でおいしいコーヒーをいただきながら、ゆっくりと庭を眺めます。
 大通りに面したせわしない街中ですが、一歩このカフェに入ると、そこにはゆったりとした時間が流れていました。
 緑を抜けて光差し込む休日のカフェで、お話し好きで聞き上手なオーナーのSさんとの、とりとめのないお話しの時間もあっという間に過ぎていきます。



 カフェには絵本に木のおもちゃ、子供の五感を楽しませてくれるものがいっぱいです。



 木はいいなあ。ほんとです。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
どんぐり 命の芽生え そして佐倉市の庭工事  平成24年4月18日



 昨年の秋に、ポットの中に撒いたどんぐりがついに葉を開きました。コナラです。柔らかく、とても小さく、触れると壊れてしまいそうな赤ちゃんです。



 昨秋に撒いたどんぐりはコナラにクヌギ、マテバシイにシラカシ、の4種類のはずなのが、これは明らかにケヤキの赤ちゃんです。あちこちから芽吹いています。
 きっと隣地のケヤキの大木から種が飛んできて、そしてポットの中で発芽したのです。すごいです。うれしいです。タナボタです。



 そしてこれはモミジの赤ちゃんです。これも私は植えてません。
 庭のモミジの種が飛んできて、ここで発芽したようです。



 気を付けて見てみると、事務所の敷地のあちこちで、コナラの赤ちゃんがたくさん芽吹いていました。
 私の事務所も、このまま放置したら、きっと20年もすれば雑木林の中に埋もれていくんだなと、なんだかとてもうれしくなりました。

 これらの実生は時期を見て丁寧に掘り取り、そして私の樹木畑に移植します。成長したら、またどこかの庭へと嫁がせようと思います。そしてそこでまた、毎年たくさんのどんぐりを落とすことでしょう。



 千葉県佐倉市の庭、連休前の仕事も大詰めです。左は今回古民家を再生して建てた離れ屋です。
 徐々に木々が植わってくると、新たに建てたこの家屋が、あたかもずっと昔からここにあったかのように、住まいの風景の中に溶け込んでいきます。



 そして、今年の初めに建てた茅葺き屋根の井戸小屋も、植栽した木々の中にすっかりと落ち着いて溶け込みました。

 

 数週間前に完成したばかりの石段の回遊路も、植栽の中に日ごとに溶け込んでいきます。



 そして、今日据えたばかりの敷石。配石もまだ途中です。
 これもまた、植栽完成の後には違和感のない自然発生的な風景の中になじんでゆくことでしょう。
 「偉大なるは木々の力!」、と言ったところです。
  




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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