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雑木の庭つくり日記

雑木の住空間講座 ユーチューブ公開  平成24年2月14日
 鹿児島県姶良市で進行中の「雑木林と八つの家」プロジェクト、その説明のため、昨秋に開催した地元レクチャーの様子がユーチューブで公開されました。

雑木の住空間造りに興味のある方は下記よりアクセス下さいませ。

http://airatochikaihatu.com/blog/bio/

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
持続できる社会を目指す    平成24年2月14日
 朝からの雨で久々の現場作業が休みとなりました。事務仕事は溜まったままですが、たまには気晴らしも必要です。



 読みごたえのある本に出会いました。前書きの一文にこうあります。

「 (前文略)
 現代の家づくりは、これらの生産者と住み手それぞれが全く切り離された中で、安く、早くに象徴されるお金の合理性だけで造られ、買われ、捨てられていく。
 その結果が、シックハウスであり、山林の荒廃であり、ゴミ問題をはじめとする環境破壊なのである。
 地域ネットワークの家づくりは、これまでとは正反対に、お金の価値だけでなくもっとトータルな価値、住み手に健康な安らぎを与えるとともに、地域の環境や経済をもよくしようというものである。
 ここまでしなければ住まい一つをとっても、もはや私たちは健全な生活の質を得られない時代に生きているのである。」

 全く共感であり、私の仕事の一本筋は同じ原点にあります。
そして、それを支持して下さるお客様によって、健全で持続的で、社会や自然に対する負荷の少ない住まいの環境づくりを目指すことができます。

 さて、これからの時代、私たちの文明を、英断と覚悟を持って更に発展させていかねばなりません。これまでとは違い、私たちの健全な生存が永続できる社会をつくらねばなりません。
 そのために、強く生きていきたいと思います。

 強く自立して、自分の仕事をしっかりと方向付けできる先見性を持つ人間は、草の根にたくさんいます。様々な分野で、持続できる社会を大きな視点で求めていかねばなりません。
 そして、そうした生き方を着実に生きる者はどんな時代でもたくましく自信を失わずに生きていきます。
 
 下記に、私の大学時代の後輩2人を紹介したいと思います。

有限会社 はんだ http://handa-shizensaibai.jp/

木の里農園 http://konosato.blog2.fc2.com/


 彼らは、農家の息子でもないのに持続的な農業を志し、そして今、多くの先見性のあるお客様に支えられながら、農業を生業として力強く生きてきます。
 彼らにはTTPも関係ありません。ただ、持続できる農家として強く生き抜くだけでしょう。

 正しく、持続できる社会、子供たちに誇りを持って伝えられる国土と社会、それを作るために、それぞれの分野でがんばっていきたいものです。


 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
風景をつくる 木立を植える    平成24年2月10日



  ここは神奈川県藤沢市 輸入住宅グッディーホームズの新しい事務所兼モデルハウスです。
 昨日、植栽にかかり始め、家屋際の木立植栽のほんの一部分が終了しました。



 今年に入って、これで6件目の植栽です。ひたすら木立を植えて、家屋の風景をなじませるのが私の仕事です。



 家屋西側の家際植栽を終えて、続きは2週間後です。葉を落とした冬の木立ちですが、幹や枝のラインが青空に美しく映え、白い壁に幹枝の影を揺らします。

 竣工はちょうど春の芽吹きの頃になります。完成したら家屋は木立の向こうに美しく自然と溶け込んで見えることでしょう。
 木立ち越しに溶け込む住まいの美しい佇まい、いつもそれを夢見ながら木々を植え続けます。



そして、今日訪れたのは真鶴の庭です。
海を見下ろす傾斜地の庭造りもいよいよ大詰めです。



 そして今日からは、家屋の上段側の空間作りに取り掛かります。
傾斜地の下にひたすら石を積み、木立を植えて道を作り、空間を作り、そしていよいよこの広大な敷地の最後の空間、家屋上部空間の工事にかかり始めました。



 この自然な地形と野原の心地よさ、海への眺望を活かし、土地に敬意を表しつつ、少しばかり土地をいじらせていただくのです。



そしてここは、先週終了した木立の植栽です。埼玉県坂戸市、町野皮ふ科医院の駐車場わきの緑地スペースに常緑落葉混交林を植栽しました。



 駐車場脇の植栽地の幅はわずか80センチですが、そこに高さ5~6mの木立を出現させました。
 奥の医院建屋周辺の木立は、一昨年に竣工した医院中庭の植栽です。

 そして今回の2期工事で植栽した駐車場脇の木立と、奥の中庭の木立とが一体となって、木々に包まれた病院と駐車場の風景が生まれました。

 木々が繋がり、そしてはじめてその土地の風景として景色を潤してゆきます。



 葉を落とした冬枯れの木立のシルエットが青空をキャンバスに浮かび上がります。
 
 西へ東へ、南へ北へ、来る日も来る日もひらすら木立を植え続ける。そんな日々が続きます。
 そこに植えてしまえば、木々はその土地の風景を作ります。

 そして、そこに暮らす人たちが毎日目にする風景を作るという責任。植えた木立が健康に、美しく、そしてその土地の風景としてなじんでゆくよう、そんなことばかりひたすら考えて、今はただ、黙々と木々を植え続けています。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
再び真鶴の庭 外空間つくり     平成24年2月2日

昨年から取りかかっている神奈川県真鶴半島の庭、今日から3期工事を再開しました。



 傾斜地に新たに建てられたTさんの住まい件アトリエは、半島の海を見下ろして佇んでいます。



 家屋正面の植栽によって、広大な海の視界を遮ることなく家屋の景を潤します。春になると木々は芽吹き、そして夏には葉を茂らせて木陰を作り、南国の強い日差しから家屋の環境を守ります。




 半島の地形は急峻で、この家屋も急傾斜地の中腹に位置するため、石積みによって段上の地形を作りました。
 積み石は地元真鶴で産出する小松バサ石を用いています。



 家屋の下段、崖の中腹に高さ2m、長さ60mに及ぶ石垣を積み、平らになった中腹のスペースに、明るい木立の中の回遊路をつくりました。



 傾斜地をうまく生かしてゆくことで、変化のある面白い庭空間が生まれてきます。
 木々が育ち、この土地に溶け込んできた時、この道は木漏れ日の下の明るい小道となることでしょう。

 

 海へと続く車道のベースコンクリートは昨年末の仕事です。これからこの車道とその周辺、家屋の上部の外空間を順に仕上げていきます。

 この土地らしく美しく調和した南国の庭の景色が完成するのは4月予定です。
 どんな美しい景色が生まれるか、我ながら、とても楽しみです。
  

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
茅葺きワークショップ      平成24年1月28日



 ここは茨城県石岡市、国指定有形文化財の大場家住宅です。
江戸時代末期に建てられ、今も大場家一家の居宅として活きています。



 美しい屋根です。軒や棟の装飾に、筑波山麓の茅葺き家屋の顕著な特徴が見られます。



 軒先の重ね合わせの表情。
稲藁、古茅、丸竹、新しい茅、杉皮と、美しい軒先の模様を見せています。




 茅葺き屋根の棟の小口の装飾は筑波流と呼ばれ、これほどの装飾は全国でも随一と言えるかもしれません。
 この豊かな装飾が、筑波山周辺の茅葺き屋根を特徴づけています。



 棟の真ん中に設けられた、囲炉裏の煙出しのための越し屋根。袴板には寿の文字が装飾されていました。
 かつて、筑波山麓の茅葺き職人たちが競って発展させてきた伝統技術も、今はその担い手もほとんどいなくなってしまったそうです。

 茅葺き屋根がもたらす美しい里の風景、日本の宝と言うべき風景、こうした価値が近年急速に見直され始めてきました。



 茅葺き技術やその素晴らしさを伝えるべく、今日、この大場家で、茅葺きのワークショップが開催されました。 
 やさと茅葺き屋根保存会の主催で、東屋の茅葺き屋根の葺き替えをみんなで体験するというイベントです。
 このイベントに、遠い他県からもたくさんの人達が集まりました。



 地元筑波で刈り取ったススキ茅を束ねて、穂束を作るのは、83歳の茅葺き名人です。



 そして、80歳代の名人に弟子入りして茅葺きを学ぶ、20代の若者です。名人の下には、実に50年以上もの年月のブランクがありました。

 ちょうど、1960年代に燃料革命があり、我々の暮らしの資源が身近な自然から石油石炭などの化石燃料にとって代わられた時期から高度経済成長期の世代まで、すっぽりと間隔が空いてしまい、こうした大切な技術や暮らし方の伝承が、経済至上主義を信じて疑わずに邁進していた間に途絶えかけてしまったのです。

 そして、私たちの暮らしから身近な自然が遠く離れていき、様々な問題抱える矛盾した社会と引き換えに、経済的な豊かさを手に入れた日本。
 それと同時に私たちが見失ってしまった豊かな心。

 しかし今、こうした旧来社会の価値観にもようやく変化の兆しが現れてきたようです。
 自然を活かして成り立ってきた暮らしの大切な技術が完全に途絶える前に、今、息を吹き返そうとする胎動が、こうした若者の存在の中に垣間見られるように感じます。
 


 茅葺き職人の指導の下、大勢の人たちが交代で屋根に登って茅を葺きます。



 筑波山麓、石岡市の風景。中山間地の豊かな風景。この風景と共に営まれてきたのが、茅葺き屋根の家屋でした。そしてそれこそが、人と自然とが共生してきた農山村文化の象徴的な光景でした。

 茅を刈り、屋根を葺き、そして余った茅を煮炊きの燃料や飼料、田畑の肥料に利用する。そして数十年に一度の屋根の葺き替えの際、大量に発生する古茅は、最良の肥料として大地の作物に還元されるのです。
 エネルギーを含め、資源の全てが循環し、ごみなど全く発生しない、そんな暮らし方が農山村ではつい近年まで続いていたのです。

 それが高度成長と共に、これまで永続的に営まれてきた自然由来の暮らしの資源が、化石燃料に取って代えられ、そしてその美しい農山村の風景も文化も永続的な暮らしの知恵も失ってしまいました。

 そうした中、今、化石燃料に頼った文明の限界に多くの人たちが気付き、かつての素晴らしい暮らしの知恵を、新たな社会の構築や、豊かな暮らしの中に再生していこうとする人が急速に増えてきたように感じます。
 その象徴たるものの一つが、美しく機能的な茅葺きの文化と風景と言えるでしょう。

 今もなお過ちの文明の中、祖先が築き、伝えてきた美しい国土が汚され切り刻まれ続けている中、未来のため、そして私たち自身のために大切な生き方暮らし方を見直す動きが大きくなり、そして、こうした動きがもしかしたら、何か大きな変化を生み出すかもしれない、そんな可能性を感じさせられたワークショップとなりました。

 主催者方々、ご指導くださいました茅葺き職人の方々、大場家の皆様、どうもありがとうございました。


 
 
 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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