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雑木の庭つくり日記

40代の終わりに  2019年8月29日
 


 大変久しぶりの高田造園ブログ更新です。更新を楽しみにされていた皆様お待たせいたしました。

 私事でございますが、本日が、高田造園設計事務所代表高田の40代最後の日となります。
 ここのところ、私たちが始めた環境活動のためのNPO法人、地球守サイトのブログ投稿に力量の比重を移すあまり、雑木の庭つくり日記の更新が大変滞ってしまいました。

 もともと、「雑木の庭つくり日記」は、私の庭つくりの想いをここに綴り始めたのですが、時代も変わり、その中で自分の果たすべき役割も変わっていきます。
 これまで、素晴らしいお客様はじめ縁のある方々に支えられて、素晴らしい人生を楽しむことができました。年を経るにつれて、自分を活かしてくれた天、地、社会、人の限りなく温かなご恩にどう応えてゆくか、生き方において、自分の身の回りのこと以上にその比重が増してゆくのが、本来の人の歩みなのでしょう。
 これからも依頼してくださる方々のご要望にできる限りお答えしていきたいと思いつつ、限りある時間です。
 これからは、未来の環境、国土、人、子供たち、いのち、にとって、価値ある仕事にさらに絞って集中していきたい、そう思っております。そのために、培ってきました私の稚拙な造園技術や感覚を活かしていければ、それはそれで幸せなことだと思いますが、未来へのまなざし温かく、生き続けたいと思います。

 



 今年の盆休み、夏の定例山行は10年ぶりの月山でした。美しく、優しく、そして限りなく温かな霊山です。



 月山山麓、庄内平野に続く梵字川出合の風景です。
最上川、赤川と、庄内平野を潤す河川は月山に発します。



 月山の霊地であってかつての山岳修験の地、湯殿山への旧道沿いに、森敦の小説「月山」で知られる注連寺があります。
 ここに、江戸期、庄内地域はじめ東北関東一体に赴き、衆生救済に心身をささげて尽くし、神とまで呼ばれた木食行者(もくじきぎょうしゃ)、即身仏となられた鉄門海上人が祀られております。

 かつて、大規模な土木造作は仏門行者が行いました。河川、道路、田畑、水路、井戸大規模建築に至るまで、土地を安定させて未来永劫に豊かで安全な暮らしの土木造作は本来菩薩行だったのです。
 なぜ、土木がお坊さんの役目だったか、と言えば、それは彼らが自然の摂理をわきまえていたからでした。
 道路を通すのにも、自然に対して畏敬を抱かず、人に対して慈愛を持たず、ただ自己の都合に目が眩む世の常人が、大地を自己の都合で大きく造作しようとしたら必ず、いつか自然のしっぺ返しを食らいます。
 その点、日本古来の神仏習合の営みの中で培われた仏門行者は、人の都合を自然環境の営みの中に溶け込ませる頃合いをよくわきまえていたので、彼らには常に、道筋が見えていたのでしょう。無我の境地で、ただ天地人への無限の慈愛の中で、神仏と一体になって、衆生のため、生きとし生けるすべてのいのちの営みと調和する人の営みのため、土木事業に打ち込んだのです。

 鉄門海もそうでした。あちこちに赴き、道をつくり、河川を治め、疫病を治め、豊かな暮らしの環境の調和のために、庄内平野にとどまらず、東日本一帯の村々を訪れ、持てる力を尽くして回ったのです。



 注連寺の裏山墓地に続く参道の一角に、鉄門海上人の石碑がひっそりとたたずみます。石碑に、「木食」(もくじき)の、字が刻まれます。木食とは、五穀を断って山草や木の実、木の皮だけを食らう、そんな生活を何年もつづけた末に、いよいよ死期が近づくと自ら土中へと入るのです。
 即身仏となり、未来に自らの入定のままの肉体のカタチを保つことで、人々を救済する、このことに対して理解できない人もいることでしょう。
 しかし、苦しみ悲しみを乗り越えて導かれる多くの人が、即身仏を目の当たりにして手を合わせ、あるいは涙を流し、心を洗うのです。
 このありがたさは筆舌に尽くせず、確かに未来永劫の衆生を救い続ける存在へと昇華した、そういうことにわずかな違和感すら、私は感じないのです。、



 ここは本明寺、本明海上人が土中入定して即身仏になられた場所が、入定塚として今も祀られています。
 鉄門海上人はこの、本明海上人の生死に打たれ、それが彼の生死のあり様に結びついていきました。

 僕から見ると、土木技術者鉄門海上人の生き方死に方、泣けるほど理解でき、惹かれます。
 本来土木は菩薩行であり、いのちの世界の喜ぶ仕事、それゆえに、この行に携わる人は限りない天の祝福を受けて喜びの中で育ってゆく、そして無私の心境の中で周囲を幸せにし、自然界の調和の中に溶け込ませてゆく、それが菩薩行ゆえんなのでしょう。

 僕は、こういう生き方を通していきたい、50代を目前にして今、そう思います。

 

 今日からまた、新たな工事に着手しました。鎌倉の水脈の要、扇ヶ谷の新規住宅開発地の造園および環境再生工事です。
 今、僕の仕事にいわゆる造園工事はありません。環境がこれほど痛んでいる時代、そのことを知りながら、打つ手があるのにやらない、という選択肢はないのです。



本来、山際から湧き出す清冽な水を使いながら守り保つ、それが、こうした場所に住むものの役割であったはずです。
 今、こうした箇所の住宅開発の場合、宅地造成関係法令などの制約によって山際にこうしたコンクリート擁壁と落石防備柵が設置されてしまいます。
 それがこの、山のキワという、水脈上大変重要な場所にそうした重量構造物が設置されることで、裏山の環境は一気に変わり、一年で見る影もないほど荒れてしまうのです。
 湧水は留まり、木々は傾き、山は保水力を失い、危険を増す。これが自然の摂理を無視した現代の土木建築なのです。
 


 庭の造作よりもまずは、擁壁によって呼吸の止まってしまった山の呼吸を回復する、そのための山際の掘削からかかるほかありません。



 山際の掘削が進むにつれて、本来の山からの冷気が復活してくるのを皆が感じるのです。

 庭の整備はその後です。
まずは、現代の過ちによって傷めてしまった周辺環境の根本から、その呼吸を取り戻すことから始めなければなりません。
 
 空気の流れが変わる、そのことはすぐに実感できます。そして、空気の動きが変われば水の流れも変わります。空気も水も、感じようとしない限り見えない世界のことです。
 私たちは見えないもの、実証できないもの、それらをあまりに無視してすすんでしまった挙句、人間も環境も育っていかない、劣化する一方の破滅的な状況を招いてしまいました。
 そんな時代だからこそ、気づく人のエネルギーがこれまでになく高まっている、そんなことを感じる人が今、ますます増えているのではないでしょうか。

 日々、喜びの中でこの仕事に向き合い、この喜びはどこからくるのか、そう考えると、大いなるいのちの源泉、人間としての根源的なものからくるように思えたのはそれほど昔のことではないように思います。
 もう、あと少しで50歳になります。
50歳と言うと、若いころは自分がそんな年を迎えるなんて想像もつきませんでしたし、年取ることへの抵抗感をつい最近まで感じていたように思います。

 でも、今は違うのです。付き合う人たちも、見える世界も、今が一番と思えます。そう感じながら年を重ねることができれば、それは本当に幸せなことともいます。年を重ねることに喜びを感じる、これからもそう生きてゆくための姿勢を保っていきたいと思います。
 
 天から課せられた役目とともに、生き続けたいと思います。

 もっと書きたいのですが、、今は22時、明日も早朝から現場に行かねばならないので、このくらいにします。

 さようなら、今生の40代、最高でした。まだ見ぬ50代も、全力で生きて奉仕したいと思います。
 ありがとうございます。


 


 






投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
猫の風葬   2019年2月26日  
 

 夕方、明日の材料の準備をしていたところ、竹炭袋の上にかぶせていたブルーシートをめくると、事務所に居ついていた猫が、そこで亡くなっていたのでした。
 土の上ではなく、ブルーシートの下の温度変化の激しい場所で亡くなったので、遺体は腐敗して、蛆が涌き、匂いも放っていたのです。

 野ざらしで死ぬ、それが生きとし生けるもののありのままの姿です。四つ足の動物達は、死期を悟ると、自ら木の下や草のしとねやくぼみや洞穴、ふんわりとした落ち葉の上に、移動して、そこで伏せて、自ら大地に還る時を待ちます。
 ところがこの猫は、炭袋の上で、力尽きたのか、何かを抱くように、息絶えてしまい、大地に還れずにいたのでした。。。
 
 その世界に本来、火葬もなければ土葬もないのです。
 遺体を埋めずに風化させる葬り方を、人は「風葬」と言いますが、本来の自然の摂理にかなったものは風葬しかないのです。

 野ざらしで、きちんと大地の循環に帰するためには、死に場所が大切。然るべき場所に然るべき方法で葬ってあげることが大切です。

 その方法について、一部始終をご紹介したいと思います。




 腐敗し始めてしまった猫の遺体を、麻布に寝かせて包んで、そして葬り場まで、ゆりかごの赤子のように運びます。



 事務所に居ついていた猫ですので、事務所の中の、もっとも心地よい場所に寝かせたい、そんな思いで、大きなコナラの下のふんわりとした根元を選びました。
 大木の下は根や菌糸が大きな空間を土中に作り、そこには、いのちの活発な循環が生じていて、大地に還るには、少なくともうちの敷地内では最適な場所です。

 落ち葉をめくり、そして炭を敷きます。かつては土葬の際にも、棺桶の下に炭を敷いて、大地に還りやすい状態にしたそうですが、昔はそうしたことが直感で分かっていたのでしょう。



そして、麻布のまま、そこに置きます。



麻布にくるむ前に、炭を敷きます。



猫さんを炭でくるむように、かぶせていき、そして、麻布で包みます。



麻布の両脇にまた、上から炭をまぶして、



そして、両脇に、土をかぶせていきます。半分、埋まったような形にします。
空気にさらされすぎると菌糸が働きにくいからです。遺体がミイラになることなく、きちんと大地の循環の中へと、肉体が消滅していって、そして、樹や草や虫達や鳥たちなど、他のいのちへと移ってゆくためには、菌糸にとっても、住みやすい環境にしてあげることが大切です。



 供養のために墓石を立てます。人間以外の四つ足の場合、加工した石ではなく何気ない自然の石がよく、動物の場合は石を立てる必要もないのですが、この猫には僕自身、特別な想いがあって、石を立てました。
 いつも、事務所の離れ屋の、もみ殻袋の上を寝場所にしていた猫なのです。
 そこが温かかったのでしょう。でも、いつの間にか、そこで寝ることがなくなり、居なくなっていたのです。
 そして、炭袋が、その時の記憶を思い起こさせたのか、きっと寒い冬の日に、ブルーシートの下の炭袋の上で寝たところ、そのまま力尽きてしまったのでしょう。
 その思い出が大きくて、そこで今回、小さな石を立てることにしました。



 そしてまた、その上にも周りにも、炭を撒きます。

 

 紅梅が咲いていたので、石の前に花を飾りました。奥の、こんもり盛り上がった、落ち葉の下に、麻布の中で猫は大地に還るのです。そしてその後は、この土地のいのちとなって、僕らとともに生き続けることでしょう。

 この世の生、成仏させてあげたい、大地のいのちの中に還してあげたい、そんな思いで、僕はこれまで幾度も、道路で死んでいる動物を野や山に移動して風葬してきました。

 先日、沖縄の風葬地を数十か所も調べて廻りました。段丘の洞窟、巨石の下、そしてその上にはガジュマルが移動して来てどっしりと包み込む、そんな光景から、本当に、私たちは生ある時も死の世界に至るときも、常に大地と共にあってそして大地に帰していく、そんなあり方に戻らないといけない、そんな想いすら感じながら、帰ってきました。

 身土不二、と言います。その土地で生きて、そしてその土地で死して、一緒に生きてきた、周囲の他の新しいいのちへと溶け込むこと、こうした営みこそ、現代、再び思い起こさねばならない大切なことではないでしょうか。



 このコナラの下はいつも、フキノトウが一斉に出ます。これからこのフキノトウを食すとき、僕らの身体にこの猫のいのちが宿るのです。

いのちの循環、こうしたことを感じる機会が今、あまりにもなくなってしまいました。
それではいけません。こうした自然の営みを感じて生きること、その大切さ、伝えていきたいです。

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
取手の庭の竣工と、ダーチャ畑の植え付け 平成30年3月16日  
 

 時の流れは待ったなしの速さで、つい最近、寒が明けて旧正月を迎えたかと思ったら、もうすでに春分を迎える頃となりました。
 高田造園も西に東に奔走する中、最近の日常を少し紹介したいと思います。

 まずは数日前に竣工した、茨城県取手市の屋外環境を少しばかり紹介します。

 ここは数年前の河川氾濫の記憶新しい小貝川流域、県のハザードマップ浸水想定地域に接する土地です。
 建築工事に伴う盛土、造成によって土地の通気浸透環境はますます荒廃し、土壌環境は悪化し、敷地にはあちこち水たまりができては長く解消せず、またもともとあった木々も枯れたり弱ったり、そんな状況の改善からスタートしました。

 完成後の今、庭も駐車場も雨水はすべて円滑に浸透して土中を潤す、そんないのちの循環が再生されました。



これが駐車場と主庭、施工前の状態です。



施工後。
駐車場から主庭に、菜園側には木々の間を抜けて伝います。



主庭、菜園脇の木々の合間のベンチ




 雑木林に面した中庭側は、雨落ちの浸透処理と窓際の近景植栽といった、ごく控えめな造作にとどめて、心地よい多目的スペースとして残します。



主庭の施工前。



主庭施工後、南庭デッキ前。
 ここでは、玄関前以外はすべて雨どいを設けることなく、屋根の水は雨落ちの溝に浸透し、土中の菌類微生物活動によって大地のエネルギーに還元されて潤してゆく、そしてこの土地の土壌環境は日に日に豊かに育ってゆきます。



 表土の通気浸透改善施工中。

雨落ち部分だけでなく、樹木植栽マウンドを中心に、ネットワーク状に横溝浸透ラインを掘っていきます。
 ここは炭と枝葉を絡ませて、発生する菌糸の働きによって植栽樹木の根系もまたネットワークのように広く深く張り巡らせて、表土の状態を豊かに快適に育ててゆくのです。



 道路に面した東側は、家際の植栽と外周植栽、そしてその間の園路を連続させていきます。



 あとひと月もすれば木々は芽吹き、清らかな新緑の光に家屋は包み込まれることでしょう。
 生まれたての庭、これから月日とともに、環境、人、共に豊かに育ってゆく、竣工したての住まいの環境に、そんな想いを込めます。



 さて、3月となると、ダーチャフィールド自給菜園の植え付け作業も始まります。
 ひと工事を終えてほっと一息つく一時に、こうした楽しい作業を進めます。



 この日はジャガイモの種芋のほか、春大根に小松菜を植えます。



植え付け後、複合発酵バイオ資材ともみ殻燻炭を、表層に重ねてまぶしていきます。



その上に、稲わらによって表層を保護していきます。適度な蒸発調整と、菌類微生物による表土の改善効果の高さゆえに、稲わらはマルチ素材として他に代えることのできない価値があります。



 稲わらマルチ後、麻ひもを張ってわらの飛散を止めていきます。



 黒いラインは灌水チューブです。このチューブで、当社で培養している複合発酵酵素水をじわじわと大地に浸み込ませていきます。
 浸み込んで大地のエネルギーと化してゆく水の動きを見ていると、それだけでうれしく豊かな心持になります。

 今回、わずか30坪足らずの畑植え付けに、5人で半日かけて丁寧に行います。収穫を経済ベースで販売すれば当然、この日の日当すら出ません。
 そこが、これからの農への向かい方を問い直す機会となるように感じます。

 このダーチャフィールドの菜園面積は合計約50坪、収穫を市場価格のお金に換算すれば、それこそ採算など全く及ばないものですが、自給的な暮らしのために、この畑を循環させてうまく使えば、たったこれだけで一家庭でつつましやかに消費する野菜根菜のほとんどが自給できる、セーフティーネットになるのです。

 かつての暮らしにおいて、世界中の人が、そんな豊かな餌場を大地に保ち育ててきた、そんな営みの積み重ねの上に今があります。
 その大地の豊かさを、一時の経済の犠牲にせずに後世に伝えてゆく、その鍵は、こうした半自給的な楽しみと、そこで育まれる確かな感覚の中にこそ、あるような気がしてなりません。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
仕事納めのダーチャフィールドと新施設のご紹介 平成29年12月31日
 

 昨日30日、ようやく年内の仕事を無事に収めて、高田造園ダーチャフィールドにて好例となった猪鍋&餅つき忘年会を迎えることができました。

 年内に手入れに回れなかったお客様、設計見積もりの提出が間に合わなかったお客様、来年優先的に始動いたしますので、どうかご了承くださいませ。



 寒風のもと、ホッカホカの餅をついて、お汁粉に磯辺焼きに大根おろしにあんこ餅、一年の納めはみんなの笑顔と笑い声と、威勢の良い餅つきの掛け声の中で締めくくります。

 今年はいろいろなことがありましたが、こうして無事、みんな笑顔で締めくくれれば、最高の一年を過ごせたに気づきます。



 数か所で火を焚き暖を採る。そして火の回りで談笑の輪が生まれます。
 大人の楽しそうな様子を子供たちは火の番をしながら、その光景を楽しい思い出のページの中に刻んでいきます。



 この日訪れた仲間は10数世帯の30人以上。皆の分の餅を伸し、鏡餅を作ります。

高田造園の忘年会で餅つきを始めたのは実はつい去年のことなのです。
 O157による食中毒防止のためと称して、官庁から学校幼稚園など公的施設に対して餅つき自粛要請が出たことを受けて、それを機に、当社では子供たちと餅つきすることにしたのでした。
 危険だとか不潔だとか言っていちいちなんでも排除していたら、子供たちは何から学べるというのでしょう。何でも管理されようとするつまらぬ社会の中、いったいどこで子供たちは伸び伸びと魂を育てていけるというのでしょう。

 おおらかな自然が育てる昭和の温もりに包まれて、多くの子供たちに、本当の温かさと伸びやかさを感じてほしい、ダーチャフィールドのイベントはいつもそんな思いで楽しみます。


 
 薪割りや火の当番は子供たちの仕事です。小4のわが子もいつの間にか上手に割れるようになっていることに気づきます。



 フィールドの畑や芝地に火入れするのもこの日の子供の仕事です。

冬の間に夏草を焼いて炭にして、そして大地の環境を育ててゆく、人類がはるか昔から行ってきた、大地環境との絆を感じるひと時です。

 わが子には見慣れた作業ですが、初めての子供たちにはとにかく新鮮で楽しく、煙の臭いと温かさに五感がゆすぶられて駆け回ります。



この光景を見慣れない人にとっては、危険なことのように映ることでしょう。
しかし、冬場の野焼きによる管理は大地環境の豊かさを持続させるための大切な作業なのです。
 こうした、大地と向きあう大切な智慧も今は多くが忘れ去られてしまっている中、ここでは子供にも大人にも、フィールドの日常の中でごく普通に行います。

 むろん、万全の消火設備を用意して、大人が見守りながらも、子供たちに任せるのです。



 温かな里山のいのちに包まれて、大人もこどもも一緒にはじけて楽しい時間を共に刻む、このフィールド整備を始めてまだわずか4年ほどですが、気の良い場所は、その場所自体が人を呼び集めるようです。
 この場がたくさんの幸せと出会いを育んでくれる、その中で、みんなが温かな心を育む場、来年もまた、この場をたくさんの人に利用していただけますように、ますますよい場に育てていきたいと願います。



 さて、今年の最後に少しばかり、これから始める新たな集いの場をご紹介します。
千葉県佐倉市、岩富城址の畔、2棟の古民家をイベントスペース&シェアダーチャ&ゲストハウスとして、開放すべく、整備を始めました。
 詳しくは来年ゆっくりとご紹介したいと思いますが、少々、今のゲストハウスとなる母屋の様子をざっと紹介したいと思います。



 一階の続き間4部屋程が、ゲストハウス兼イベントスペースとなります。



 渡り廊下はどこか懐かし気な香りを感じます。



 広間の神棚。千葉では基本的に神棚と仏間がセットで並び配されることが一般的でした。



 お風呂は24時間循環ろ過、酵素風呂です。



 薪ストーブのある共同のキッチンは集いと憩いの場となります。


 
 使いやすく温かい時計型ストーブは採暖のほか、煮炊きにも重宝です。



 玄関は、ジブリ映画、千と千尋の神隠しにでてくる湯屋をイメージして照明をコーディネートしてます。

 ここでもまた、様々な出会いと学びと憩いの場となり、いのちのつながりを感じる場として育てたい、そんな思いで「いのちの杜」と命名しました。
 
 高田造園設計事務所、ダーチャフィールドと共に、古民家ダーチャいのちの杜、これからどうぞよろしくお願いします。

皆様、よいお年をお迎えくださいませ。どうもありがとうございました。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
今年もお世話になりました。  平成29年12月23日
 

 先月末、埼玉県飯能市での打ち合わせついでに足を延ばした天覧山。登り口である能仁寺から徒歩30分足らずの低山でありながら、秩父武蔵野を一望する名山で、今もなお、力強い気を放ってこの地域を守っているようです。

 公私とも、心身ともに忙しなさを極め、ブログの間隔が大変空いてしまい、気が付いたらすでに今年もあと数日となりました。

 振り返ると、今年も激動の一年となりました。
 年の末まで、まだあと一週間ほどございますが、いろいろな出来事が起こりながらも、今年も多くの人に支えられ助けられながら、無事にまた一年を終えることができることに、心の底から喜びと感謝の想いが溢れます。
 
 おそらくこれが、今年最後のブログ記事となると思います。
 師走の静かな日曜日、心静かに今年を振り返りつつ、秋の庭や今後の私たちの活動について、少し、抱負をまとめてみたいなと思います。


 
天覧山山頂への道すがら、紅葉真っ盛りの枝葉が日差しを浴びて、駆け抜けた一年を謳歌するように輝きます。
そして抜けて差し込む日差しは優しく、どこまでも愛に満ちて包まれるようです。



 清らかな空気と息づく木々。山体となる岩盤が、この豊かな自然環境を生み出す源にあるのでしょう。
 ここ数年、加速度を増すかのように自然環境の劣化は甚だしく、乾いた森、乾いた大地ばかりが広がる中、今もなお大地のエネルギーを集めて放つような土地の精気を感じる場所に巡り合うと、何か懐かしく、いのちの源に包まれるような、そんな喜びを感じます。



 さて、師走もあと残り僅か、恒例の年末手入れ行脚に休みなく駆け回ります。
ここは世田谷区、三年ほど前に竣工した庭です。紅葉真っ盛りで、手入れをせずとも光が差し込み、そして木々が喧嘩せずに枝葉をすみ分け空間を分け合う姿を見せるのは、土地の健康の証と言えるでしょう。

 
 手入れ後の庭。
 わずかな空間ですが、息づく木々は通る人の心も喜ばせてくれるようです。
 私たちはこうして、以前に作った庭の手入れに回りながら、いつも美しい木々に力をもらい、そしてその幸せをお施主さんとともに分かち合うのです。
 幸せな仕事だなと、いつも思うのですが、こうした時間はまた格別です。



 千葉県市川市のTさんの庭も、竣工して早くも4年となります。あっという間の月日ですが、庭の木々の成長がまた、年月を感じさせてくれます。



 一年ぶりの手入れですが、落ち着いた木々の成長は穏やかで、人の生活空間をあまり圧迫することはありません。手入れもそれほど手間がかかることはありません。
 
 奥行5mに満たないスペースながら、表情豊かな木々のたたずまいは、ここが駅近の住宅地であることを忘れさせてしまうようです。



 東庭テラスの佇まい。それにしても、庭は年月を経て、こうしてますます心地よく育っていきます。

 よく思うのですが、庭の雰囲気が増すのは、決してその庭の環境ポテンシャルのおかげばかりでなく、そこに住む人の想いと愛情に、庭のいのちが応えてくれて、そして庭がより豊かに美しく優しく育ってゆく、そういうものなのだと感じます。
 そんなことをいつから感じ始めたのか、覚えていないけど、そして、僕らがまた、毎年の手入れで庭のいのちと再会するとき、庭の木々は、待ってたとばかりにたくさんの想いを私たちに伝えようとします。
 そして私たちは、人の空間と木々の健康、双方を考えて、調和へと導く自然の働きを邪魔しないように手を施す、それが庭の手入れなのだと思います。

 師走の手入れ行脚、もう25年もそんな年末を繰り返してきましたが、私自身、年を重ねるにつれてますます、庭に施す自分の手入れが、おおらかというか、おおざっぱになったというべきか、、とにかく、なるべく手を加え過ぎずに自然の働きに委ねる割合を増しているように思います。
 
 木々との向かい合い、そして、共に年を重ねるお施主さん家族との向かい合いの中で、たくさんのことを学びながら生きてゆく幸せ、師走は特に感謝と共にそんなことを感じるのです。



 我が家の庭も、この時期は落ち葉の恵み降り注ぎます。落ち葉は大切な大地の恵みです。
 子供たちが落ち葉を集めます。取り過ぎると土がむき出しになって寒々としてしまうので、表土の毛布として落ち葉を適度に残しながら集めるのです。
 その辺のさじ加減は、わが子たちはすでに自然と体得しているようです。



 集めた落ち葉をくべて芋を焼いたり玉ねぎを焼いたり。
 寒空の下、かさこそと落ち葉の音に心と頭を研ぎ澄ませつつ、煙の香りと火花はじける音とを、記憶の奥に刻んでいきます。
 子供と一緒にこうした時間を重ねること、そんな時間は何よりの宝なのでしょう。
そこに住む家族の心の原風景を刻む住まいの環境、そんなものをいつまでも提供し続けていきたいものです。



 晩秋の我が家。木々の枝幹の影が一年で最も長く、風に揺れて様々な表情を見せてくれます。人工物では決して味わえない、自然が織り成す無限の表情、人が人として、いのちとのつながりを保って生きてゆくために、最も大切なことがそこにあるように思うのです。

 木々があっての暮らしの潤いです。しかも、木々は自然で、健康で生き生きと息づいていなければなりません。
 いのちのつながりは目に見えませんが、感じることはできます。見えない声や音を聞くこともできます。そして自然は常にサインを送って、私たちに語りかけようと、手を伸ばしています。
 そんな自然に向き合うとき、どんな場合でも優しい心持でありたいものです。



 さて、ここは千葉県佐倉市、岩富城というかつての古城のお堀跡沿いに佇む豊かな環境、ここで新たに体験ダーチャ&ゲストハウス開設の準備を始めたところです。
 建物だけにとどまる古民家再生ではなく、ここでいのちのつながりを実感し、そして周辺環境を育てながら安全で豊かな環境を代々繋いできたかつての美しい暮らし方を体感していただける、そんな場所にしたいと願い、「古民家ダーチャ いのちの杜」と命名しました。
 来年度のオープンを目標に、2棟の家屋改修や庭の整備を、合間を縫って進めています。



 この日はいただいた大量の伐採木を薪にしていきます。

 ダーチャフィールドに高田造園の事務所、それに新たな古民家ダーチャも、寒い冬を快適に過ごすのに大量の薪が必要になります。

 薪は本来、自給が基本で、それもわざわざ薪の確保のために伐採するのではなく、裏山の枯れ木、落ち枝を集め、そして私たちの場合はゴミとして持て余される伐採樹木や解体材をもらってきて、それを用います。
 有機物は循環させれば環境は息づき、当然ながらごみ処理という、不自然な過程が不要になるものです。




 端材を燃やして、環境の再生作業に用いる丸太や杭の表面を炭化させていきます。
 事務所の倉庫や置き場を片付けながらの作業です。

 柔らかな日差しの中で炎や炭火を見ていると、年の瀬を感じます。

 高田造園設計事務所のスタッフも、今年は大きく入れ替わりがありました。
 ありがたいことに、いい若者ばかりが高田造園に定着してくれます。

 すべてが移ろいながら、人と人との縁が発酵し、醸成されてゆく、そこで人はまた、温かさと厳しさの中で心の中に愛を育み、成長してゆくのでしょう。

 出会うすべての方々に感謝です。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。



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