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雑木の庭つくり日記

従業員 アルバイト募集のお知らせ   平成24年5月25日
 このたび久々に、従業員・アルバイトを募集することになりましたので、お知らせいたします。

募集人数;1~2名

条件;健康で自然が好きで、汗を流して働くことが好きな人。
    造園の仕事、当社の仕事に関心を持つ人
    年齢は20代から30代。
    要普通免許。事務所まで自力通勤できる方。(通勤車両の貸し出し可)
    朝が早い仕事です。千葉市若葉区への通勤圏40分以内程度までが推奨です。

待遇;本人の経験、資質、配偶者の有無によって考慮します。
    基本的に日当9000円から12000円程度より、年次昇給。また、本人のレベルアップに応じて随時昇給あり。

応募方法;代表の高田(090-1858-0453)までご連絡ください。メールでのお問い合わせも受け付けております。
       2週間程度のアルバイト試用期間を設ける場合がございます。

先着順で検討させていただきますので、興味のある方はお問い合わせくださいませ。
    
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
今週の仕事        平成24年5月24日
 早くも5月も後半です。当社の私事ながらいろいろと事情があって、手入れも工事も遅れております。お待たせしておりますお客様、本当にすいません。。。
 一軒一軒休みなく進めておりますので、順次お待ちいただければ幸いです。

 今週の仕事紹介です。



 東京都練馬区大泉、Kさんの家は2階がリビングとなります。リビング窓越しの景色です。施工して3年目経過し、深い緑が窓越しに森の中にいるような木陰と涼しい空気を生み出します。
 ここが大泉の住宅街の2階リビングとは思えぬほどの圧倒的な自然樹木に育ってきました。



 写真左側の木立が、ちょうど2階リビング正面の木々です。
 住環境は1階の座敷からの景色を絵画作品のように作ればよいというものではありません。
 それぞれの住まいにとって、快適で潤い豊かな住環境としてゆくには、どのように木々を配してゆくか、これからの時代は住環境としての庭つくりが求められます。



 そしてここは東京都練馬区貫井Nさんの庭です。ここも施工後3年が経過しました。
「連休はずっと家にいて庭を眺めて過ごしました。この庭があればどこにも行かないで過ごせます。」と、満面の笑顔でNさんは言ってくれます。



決して広くない、都会の住宅密集地の中の住まいですが、木々の力でその居心地は、そこに暮らす人にしか分からぬほどに良いものとなるようです。



家屋西側の、西日除けの木々は今やしっかりと夏の室温上昇を抑制し、そして街の景観林と呼べるほどのボリュームを感じさせてくれます。
 道路より2mほど高い位置にあるこの敷地、通る人は必ずといってよいほど、この圧倒的な緑を見上げていきます。



その、家屋西側の多層群落の木立も、実際には建物際のわずかな幅にすぎません。
狭いところで幅60センチ、広いところでも1m50センチ程度、そのわずかな幅でも、木々の活かし方次第で、住環境としてのスペースを圧迫することなく、住まいの微気候まで改善してしまうほどの植栽ができるのです。
 そして、これほど圧倒的な木々に包まれた庭の手入れは、3人で3時間もあれば終わります。
木々の性質に逆らわず、理に適った手入れをしていけば、管理のコストはあまりかからないのです。そして、成長の早い雑木をコントロールして10年20年と十分に共存できるのが、私たちの提供する本物の雑木の庭なのです。



 そしてここ、埼玉県飯能市のSさんの庭も、竣工後3年目を迎えて一段と緑は深まり、美しく涼しい住まいの森と化してきました。



 2階窓に、逆光に輝く葉の反射光が光の色合いを変えて心地よく差し込みます。
 やはり、1階だけでなく2階を含めてはじめて、住まいの外環境は完成します。



中庭の景色。左側にはブロック塀を隔てて隣家が迫っていますが、その雰囲気をも木々が柔らかくなじませています。



土間空間に差し込む清らかな緑の気配。



 圧倒的な木々の合間から暖炉の煙突を仰ぎ見ます。ここもまた、どこかの別荘地でもなんでもなく、飯能市内の密集住宅地の一角なのです。
 やはり、Sさんも連休はどこにも行かずに家で過ごされたようです。「どんな旅館に泊まるよりも、家族みんなでうちにいるのが一番心地よい。」とSさんはいつも言ってくれます。心豊かな住環境は何よりの宝ではないかと、改めて確信させられます。



 そしてまた、今週で1件の小さな庭の改修工事が終了します。木立の中の石畳テラスの施工中です。千葉市中央区の、やはり住宅街の一角です。
 植栽したばかりの木立がすでに、作ったばかりのテラスを涼やかな木陰にしてくれています。



 施工中のテラスに揺れる木漏れ日が、すでにこの庭の時間の流れを緩やかに感じさせてくれています。
 庭はなんと大切な心の糧になることでしょう。それがどれほど、人の心模様を豊かにすることでしょう。私はそれを、なるべく低コストで多くの人に届けていきたいと思います。
 が、、時間が足りずに、依頼から施工までお客様を何年もお待たせしてしまうのが今の状況です。所詮、一人の人間がこなせる仕事量などたかが知れているのでしょう。
 だからこそ、住む人を幸せにする住環境を作るための庭つくりの担い手が、これからどんどん増えていかねばならないと思います。
 それが時代の要請であり、この仕事の現代的社会的意義というものだと感じます。それを意識して仕事できる庭師造園家が増えてくれば、日本の街はきっと美しく再生されてくることでしょう。
  
 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
5月の手入れ行脚 その1        平成24年5月18日
 
 連休後の時期、来る日も来る日もひたすら手入れに回り続けます。この時期に、これまで作らせていただいた庭や、お施主様と再会することは、私たちの仕事にとっての何よりの楽しみの一つです。



 千葉市花見川区のIさんの庭も、施工後7年目を迎え、深い緑にメリハリが感じられます。



 手入れ後の庭に木漏れ日が差し込みます。年月を経てなお良くなるのが雑木の庭です。



 2階窓から手の届く位置に差し掛かる雑木の枝葉は、残します。小学生の娘がこの窓越しの緑をとても大切に愛でてくれるからです。



 ここは千葉市緑区Iさんの庭です。施工後5年が経過しました。



 土の状態が悪く植栽直後の成長があまり良くなかったこの庭も、5年を経た今では木々の根が土を肥やし、枝葉を元気に広げて庭中に涼しげな木陰を作ってくれています。



 ここは千葉市緑区Mさんの中庭に設けた植栽枡です。住宅に囲まれた狭い敷地では、中庭の存在が非常に効果的に室内を潤します。一つの坪庭が周囲3部屋からの外の景色を潤すのですから。



 このMさんの庭は植栽後2回目の春を迎えました。1年ごとに緑は深まり、それとともに住まいの風景はより美しく緑の中に溶け込んでいきます。



 昨年6月に完成したばかりの千葉県鴨川市Tさんの庭です。



 西日除けを兼ねた玄関前の植栽も昨年に比べて2倍程度に緑が濃くなったでしょうか。完全に根を張って木々が旺盛に成長するまでにはもう1~2年は必要ですが、着実にこの地の風景となりつつあります。



 そして今日訪れたのが千葉県船橋市Mさんの庭です。竣工後3年目を迎え、ようやく木々がこの地に溶け込みました。
 昨年までこの時期に発生していたハバチやカイガラムシの被害も今年はなく、代わりにテントウムシの幼虫がたくさん木々の枝葉の上でせっせとお仕事してくれていました。
 生態系として庭が安定してくると、通常病虫害の目立った被害はなくなっていくのも、自然に近い雑木の庭の特徴と言えるでしょう。



 西日除けの木立が駐車場を潤します。



 西側の玄関アプローチ。幅わずか1m程度のスペースでも、植栽次第で十分に潤います。

 狭い場所には狭いなりの工夫、広い場所では広いなりの木々の活かし方があります。住環境に甲乙などありません。どんな環境でも木々の力を上手に生かせば、住む人に愛され続けるかけがえのない住環境となるものです。
 そして、それを毎年の手入れによってより自然な状態へと育ててゆく、それが私たちの仕事です。









投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
5月の病虫害の対処について     平成24年5月15日


 5月から6月にかけての季節は、雑木の庭の手入れの時期となります。この季節の手入れによって、夏の木々の成長量や日差しの入り具合を効果的にコントロールするのです。
 樹木が活発に活動するこの時期は、剪定による切り口などのダメージの修復も早く、剪定によって新しく若い枝葉を、芽吹かせたい位置に出させてゆく上でも効果的です。
 
 同時に、この時期は若い葉がまだやわらかい上に、気温が上昇し雨量も多くなり、葉を食害する毛虫や青虫なども活発に活動します。
 特に今年は、連休明けの発生が目立ちます。

 できるだけ早い時期に、お客様の庭の手入れに廻りたいのは山々なのですが、なにしろ私たちが管理する雑木の庭の件数も、半端な数ではなくなってきました・・・。
 お客様におかれましては、ご連絡をいただければ、なるべく優先的にうかがうようにいたします。それ以外の場合も、1件ずつ休み返上で廻りますので、どうかご了承くださいませ。

 なお、病虫害については、慣れてしまえば対処は容易ですので、今の時期はできれば毎日、庭の木々をチェックしてみることをお勧めします。早期の対処は容易ですが、被害が広がってからではちょっと手間がかかります。
 ここ数日間で発生を確認した庭の毛虫について、対処を含めて紹介します。



 これはマイマイガの幼虫で、主に落葉樹の葉を食害します。毒はないので、私は手入れの際に素手で取ってしまいます。 集団発生はしない上、枝葉を丸坊主にするほど食欲旺盛ではないので、それ程心配はいりません。
 木をゆすったり、ホースで下から勢いよく水を吹き付けると大抵落っこちてきます。地面に落ちれば、踏みつけますが、放っておいてもそれがまた木に登ってくる前に天敵が退治してくれることが多いです。
 落としてつぶす。その程度の対策で十分です。対策しなくても、毒はないので人に危害を与えることもなく、鳥などの天敵も多いので、心配するほどのものではありません。



よく見るとのん気でかわいい顔をしています。私は嫌いな毛虫ではありません。ただ、あまり発生させないためには早期発見と葉水が一番です。



 結構厄介なのがこの、シャチホコガの幼虫です。これはオオトビモンシャチホコと言います。食欲旺盛で集団でたかって枝葉を丸坊主にしてしまいます。ここまで発生したら、もう枝を切除して、袋に詰めてつぶすしかないでしょう。



 大発生している枝を、高枝鋏で切り落とします。脚立と高枝鋏は、雑木の庭の必須アイテムです。
 毛虫は、慣れないうちは気持ち悪いものでしょうが、慣れてしまえばそれほどでもありません。シャチホコガも毒はありません。



 シャチホコガには、無農薬スプレー「セルコートアグリ」がよく効きます。「セルコートアグリ」とは、液体セルロースが主成分で、噴霧によって虫の気門に幕を作り、窒息させます。
 写真はスプレーで撒いていますが、被害が広がってからの場合は噴霧器で散布するとよいでしょう。
 噴霧器は小さくても構いません。使いやすさと洗いやすさが大切です。使いにくい噴霧器では、いずれめんどくさくなってしまいます。自分が使いやすい噴霧器も雑木の庭の必須アイテムです。



 セルコートアグリ噴霧後、毛虫は弱り、ぼとぼとと落ち始めます。



 数分後、木をゆするとこうしてぼとぼと落ちてきます。ほぼ動きは止まっています。



落とした毛虫は、ミ(大きな塵取り)と手ぼうきで掃きとって、野原に捨てる、水没させる、埋めるなど、ちょっと残酷な気もしますが、とにかく処分しましょう。もちろん残しておいても、すぐに他の虫や鳥が食べたり分解したりしてくれます。
 ただ、気持ち悪いでしょうから、処分したほうがよいというだけのことです。

 これも早期発見していれば、葉水で簡単に対処できます。



 これはハバチの幼虫が葉を食べています。新緑の柔らかい葉を食べて、穴だらけにしてしまいます。鳥やカエル、カマキリや蜘蛛、寄生蜂など、天敵も多いのですが、植栽したばかりで葉の芽吹き速度が遅い場合や、比較的弱った木によくつきます。大型の毛虫類に比べて青虫はなかなか葉水では落ちにくいのですが、私はもちろん手で捕獲してつぶします。
 発生の時期は新緑が出るころと限られますので、発生しやすい木には、その時期に限ってニンニク木酢液などを予防的に散布し、ハバチが卵を産みに来ないようするのも一つの有効な手です。
 また、とにかく新緑の頃には葉水を吹き付けて、こうした害虫の卵などを洗い落とすことが効果的です。
 
 もちろん一番良いのは、木が健康であることです。健康であれば、それほどやられません。その土地の気候風土に適応する木を、良い環境条件で植栽してあげること、本当はそれが一番です。



 有翅のアブラムシを食べているのはテントウムシの幼虫です。人によってはグロテスクに見えて益虫と知らずに駆除されてしまいますが、テントウムシやカゲロウの幼虫など、大変な働き者ですので、よく気を付けて大切にしてください。

 とにかく生き物は繋がっています。それを農薬散布でやっつけようとすれば、益虫も鳥も来なくなってしまいます。なるべく農薬に頼らず、虫に慣れることです。慣れてしまえば害虫対処など、簡単なことに感じてくるでしょう。また、こうした対処をしてゆくことで、生態系というもののすごさに気づき、庭をより深いレベルで楽しめるようになります。
 私たちが提供する雑木の庭は、形や見た目だけの庭でなく、なるべく木々にとっても心地よい自然環境、つまり人を含めた生態系をそこに作ろうとするものですので、なるべく生き物の繋がりを尊重し、自然のサイクルによってバランスを取ってゆくようにしています。



 昨日手入れにうかがった千葉市緑区のIさんの庭に、こんなものが木にぶら下がっていました。
 落花生のネックレスで、針金で固定しています。Iさんは、これでシジュウカラやコゲラなどの野鳥を呼ぶと言います。
 シジュウカラなどが庭に来訪するようになれば、毛虫青虫の番人となります。そして、コゲラがくれば、カミキリムシの幼虫など、幹の中を食い荒らす虫を見つけて、突いて穴をあけて食べてくれます。
 落花生の数珠は庭の景色を面白くしていました。病虫害との付き合いも、庭の楽しみの一つとなるのです。
 

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
雑木林と八つの家 植栽第2弾     平成24年5月12日
 鹿児島県姶良市で進めている「雑木林と八つの家」プロジェクト、新たに1棟と公園の植栽を終えて昨夜帰郷しました。

 これまでもこのブログを通してご紹介してきました通り、このプロジェクトは、駅前の普通の住宅街を雑木林で包み込み、そこに、かつての日本の街や村では当たり前だった豊かな自然とコミュニティを再生しようという、古くて新しい街づくりの試みです。
 今年の1月に1棟が完成し、そして今回、新たに1棟と分譲地内の共有緑地の植栽にうかがいました。
 素晴らしい仲間とともに、素晴らしいプロジェクトがまた一歩進んだ感動に包まれ、熱き心でこのブログを書きはじめました。




 先の1月に竣工した分譲地の第一号ハウスです。雑木の新緑は南国鹿児島の気候風土の下でもしっかりと芽吹き、力強くこの地に適応しようとしていました。そして、清く涼やかな木立越しに佇む家屋は街の美しい風景となりつつあります。



 そして、今回新たにこの分譲地に竣工するのはこの家屋です。片流れの屋根は大きく、建物単体では潤いも温かみもなく、威圧感すら感じさせられます。
 この殺風景な家屋の風景を、この分譲地内の美しい景観要素にしてしまおうというのが、今回の植栽なのです。
 さて、この街の風景をまたさらに美しくしてしまおうと、 武者震いを感じながら植栽に臨みます。



 今回の植栽工事は、別の住宅区画に隣接した公園緑地部分から始めます。レッカー車3台に満載した大量の木々が、阿蘇の孤高の雑木の庭師、グリーンライフコガこと、古閑さんの山や畑から続々と到着しました。



 一本、そしてまた一本と木を植えるたび、周囲の住宅の見え方が変わってきます。

 植栽の途中、写真奥の隣家のきれいな奥さんが出てこられて、満面の笑顔で私たちに言いました。
「ちょっと、すごいです!。うちの窓から見たらすごくいい景色です。うれしい!。ここに家を建ててよかった!。宝くじに当たった気分です。本当にありがとうございます!」
 と、全身で喜びを表現してくれたのです。

 木を植えて、そしてお施主ではなく隣の人に感謝されるなんて、木を植える人間として冥利に尽きる出来事です。
 このプロジェクトのために、もうすでに5回ほど、この鹿児島の地を訪れました。
 訪れる度にいつも思うことは、自然豊かでゆとりがあって、そして桜島とともに生きるこの地の人たちはなぜこんなに温かいのだろうか、いつもそんなことを思います。
 
 木を植えて、隣の人は喜び、そして通る人、子供たちまで私たち職人に挨拶してくれて、喜び感謝してくれる。こんな心温かな環境で仕事できる幸せに、私たちはこの土地や、この地に住まれる方々に何か恩返しがしたい、そんな気持ちで植栽してゆくのです。



 公園の木々が大方植わりました。5月と言えども、鹿児島ではすでに夏の陽気です。涼しい気候風土の阿蘇から運ばれてきた木々が、鹿児島の強い日差しにさらされて痛まぬうちに植えてあげないといけません。
 公園の植栽の次には、すぐに新築家屋の植栽にかかります。



 大きな家屋の景色を緩和するため、樹高8m程度の雑木を中心に植栽していきます。
 植栽するにつれて、殺風景だった家屋が見る見るうちに潤いのある景色に変貌していきます。
 南西に向いた開口部は、木々がなければ夏の午後の日差しをまともに受けて、そしてこの家の夏は空調なしでは過ごせない不健康な住まいとなってしまうことでしょう。
 この家屋で少しでも自然のままの快適な暮らしの環境を実現するため、雑木の木陰で2階の窓からの日差しを緩和しなければなりません。



 家屋表側の植栽が進むと、道路沿いの景色が潤い始めます。



 新たに植栽した右手前の木立と、1月に植栽した左奥の家屋の木立と風景が繋がって、町全体が潤い始めました。美しい街の景色が見えてきました。



 やっとこの街の3分の1の植栽が終わったところですが、町全体が完成した時の光景はすでに、このプロジェクトのために汗を流すみんなのまぶたの裏にはっきりと映っているようです。
 一人一人がその瞬間を夢見て、熱き心でひたすら汗を流します。とても尊い体験に、感謝の思いが溢れます。



 1棟の植栽が終わると、あれほど殺風景だった家屋の景色ががらりと変わります。そして、南国の灼熱の太陽の下、道路に木漏れ日が揺れます。



 道路から見た分譲地の景色。家屋はまだ2棟しか建ってはいないのですが、すでに木々の風景が連続して、植栽したばかりなのにとても豊かな街の景色が生まれつつあります。
 たった2棟が建っただけでこの景色なのです。8棟が完成し、そして植栽を終えたとき、どれほど素晴らしい街がここに誕生するかと想像すると、居ても立っても居られないほどの高揚感を感じます。
「いいねえ。ここは姶良市の名所になるよ。」と、通りがかりの人が声をかけてくれました。

 造園を志し、はやくも20年、ひたすら私は自然に近い住環境を模索してきました。それこそが必ず、人のため、子供たちのため、そして良き社会のため、よき想念を生み出すために役に立つと信じて、ここまでやってきました。
 そして今、「やってきてよかった。」と、心の底から喜びと感動が湧きあがります。



 そして一昨日、この分譲地にテレビの撮影が入りました。ちょうど今回の植栽に時期を合わせての撮影です。



 夜の撮影風景。この日本に新たに生まれる豊かな街がライトを浴びて幻想的な色に包まれます。



 このプロジェクトを提唱実行されているのは、地元の姶良土地開発有限会社の町田社長です。
 質実と理想の高さを鑑みると、この街づくりはおそらく日本随一の試みと言えるでしょう。薩摩の地から始まって、そして全国の街が緑豊かで誇れるものになっていきますように、そんな願いを込めて、困難をものともせずに、このプロジェクトが進みます。
 私自身、町田社長の心意気に惚れて、このプロジェクトに骨身を捧げる決心を固めたのが2年前のこと。そして、阿蘇の孤高の庭師、古閑勝則氏と共に造園計画を進めてきました。
 何事も、本物の人の心が人を動かします。



 この町で育つ子供たちはきっと、本来の人間らしい美しく温かな心を育んでくれるに違いありません。そして大人になってこの地を離れた後も、懐かしいふるさとの思い出を胸に、確かな心で強く生きてくれることでしょう。



 阿蘇、千葉、鹿児島と、志一つにこの地に集まり、そしてまたひと仕事を終えてお別れのときが近づきました。記念撮影です。一抹の寂しさを感じ、また次の再会を心待ちにして、そしてそれぞれの故郷に戻ります。
 素晴らしい仕事、共に汗を流した3日間、たった3日ですが、私たちにとってはそれは永遠の3日間となるのです。



 今回の仕事を終えて、地元の蒲生八幡神社にお礼参りに訪ねます。



 この木は日本一の巨樹とされるクスノキです。根元の周径は33m、樹齢1500年と言われます。
 素晴らしい巨樹、1500年の様々な天災人災気候変動にも耐えて命を繋いだ大きな木。


 
 八幡神社の鎮守の森には、樹高40m以上の常緑樹林が広がります。この樹林を目の当たりにして、南国鹿児島の太陽と雨の恵みを感じます。
 それにしても、5月なのに暑い中での作業でした。それが鹿児島の気候風土であることを、この常緑樹林が語ってくれるようです。
 この地に、はたして落葉雑木の森を作ってよいものか、今回の街づくりに際してわずかな疑問が胸に去来します。山はほとんどが常緑広葉樹で、私の地元のような落葉樹主体の雑木林はあまり見られません。
 きっと、南国の植生の移り変わりのスピードが速いのでしょう。早生樹種の落葉雑木は確かにこの地の自然植生の種として存在しているのですが、同時に常緑広葉樹の生育スピードも速くて強いために、関東近辺に比べて圧倒的に短い時間で土地の本来の常緑樹林が誕生するのでしょう。

 雑木を植える、それは夏は涼しく冬は暖かい住まいの自然環境をつくるということです。もちろん、南国鹿児島ですので、土地本来の潜在的な自然植生樹種である常緑広葉樹を多用しながらも、住まいの環境改善林を作ってゆくのです。
 この土地で強く生きていける環境林を作るため、木々が心地よい環境を作っていけるように植栽を組み合わせます。木の声に耳を傾けながら、植栽し、そして住まいと木々とが心地よく妥協し合える環境を作ってゆく、それが私たちのここでの仕事なのでしょう。

 次回の植栽は、11月の予定です。それまでに2棟が竣工する予定です。家が建つたび風景が生まれる、それが本来の住まいつくりというものなのでしょう。

 地元の姶良土地開発の皆様、阿蘇のグリーンライフコガの皆様、そして温かく迎えてくださった地元の皆様、本当にお世話になりました。ありがとうございました。

 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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