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雑木の庭つくり日記

5月の病虫害の対処について     平成24年5月15日


 5月から6月にかけての季節は、雑木の庭の手入れの時期となります。この季節の手入れによって、夏の木々の成長量や日差しの入り具合を効果的にコントロールするのです。
 樹木が活発に活動するこの時期は、剪定による切り口などのダメージの修復も早く、剪定によって新しく若い枝葉を、芽吹かせたい位置に出させてゆく上でも効果的です。
 
 同時に、この時期は若い葉がまだやわらかい上に、気温が上昇し雨量も多くなり、葉を食害する毛虫や青虫なども活発に活動します。
 特に今年は、連休明けの発生が目立ちます。

 できるだけ早い時期に、お客様の庭の手入れに廻りたいのは山々なのですが、なにしろ私たちが管理する雑木の庭の件数も、半端な数ではなくなってきました・・・。
 お客様におかれましては、ご連絡をいただければ、なるべく優先的にうかがうようにいたします。それ以外の場合も、1件ずつ休み返上で廻りますので、どうかご了承くださいませ。

 なお、病虫害については、慣れてしまえば対処は容易ですので、今の時期はできれば毎日、庭の木々をチェックしてみることをお勧めします。早期の対処は容易ですが、被害が広がってからではちょっと手間がかかります。
 ここ数日間で発生を確認した庭の毛虫について、対処を含めて紹介します。



 これはマイマイガの幼虫で、主に落葉樹の葉を食害します。毒はないので、私は手入れの際に素手で取ってしまいます。 集団発生はしない上、枝葉を丸坊主にするほど食欲旺盛ではないので、それ程心配はいりません。
 木をゆすったり、ホースで下から勢いよく水を吹き付けると大抵落っこちてきます。地面に落ちれば、踏みつけますが、放っておいてもそれがまた木に登ってくる前に天敵が退治してくれることが多いです。
 落としてつぶす。その程度の対策で十分です。対策しなくても、毒はないので人に危害を与えることもなく、鳥などの天敵も多いので、心配するほどのものではありません。



よく見るとのん気でかわいい顔をしています。私は嫌いな毛虫ではありません。ただ、あまり発生させないためには早期発見と葉水が一番です。



 結構厄介なのがこの、シャチホコガの幼虫です。これはオオトビモンシャチホコと言います。食欲旺盛で集団でたかって枝葉を丸坊主にしてしまいます。ここまで発生したら、もう枝を切除して、袋に詰めてつぶすしかないでしょう。



 大発生している枝を、高枝鋏で切り落とします。脚立と高枝鋏は、雑木の庭の必須アイテムです。
 毛虫は、慣れないうちは気持ち悪いものでしょうが、慣れてしまえばそれほどでもありません。シャチホコガも毒はありません。



 シャチホコガには、無農薬スプレー「セルコートアグリ」がよく効きます。「セルコートアグリ」とは、液体セルロースが主成分で、噴霧によって虫の気門に幕を作り、窒息させます。
 写真はスプレーで撒いていますが、被害が広がってからの場合は噴霧器で散布するとよいでしょう。
 噴霧器は小さくても構いません。使いやすさと洗いやすさが大切です。使いにくい噴霧器では、いずれめんどくさくなってしまいます。自分が使いやすい噴霧器も雑木の庭の必須アイテムです。



 セルコートアグリ噴霧後、毛虫は弱り、ぼとぼとと落ち始めます。



 数分後、木をゆするとこうしてぼとぼと落ちてきます。ほぼ動きは止まっています。



落とした毛虫は、ミ(大きな塵取り)と手ぼうきで掃きとって、野原に捨てる、水没させる、埋めるなど、ちょっと残酷な気もしますが、とにかく処分しましょう。もちろん残しておいても、すぐに他の虫や鳥が食べたり分解したりしてくれます。
 ただ、気持ち悪いでしょうから、処分したほうがよいというだけのことです。

 これも早期発見していれば、葉水で簡単に対処できます。



 これはハバチの幼虫が葉を食べています。新緑の柔らかい葉を食べて、穴だらけにしてしまいます。鳥やカエル、カマキリや蜘蛛、寄生蜂など、天敵も多いのですが、植栽したばかりで葉の芽吹き速度が遅い場合や、比較的弱った木によくつきます。大型の毛虫類に比べて青虫はなかなか葉水では落ちにくいのですが、私はもちろん手で捕獲してつぶします。
 発生の時期は新緑が出るころと限られますので、発生しやすい木には、その時期に限ってニンニク木酢液などを予防的に散布し、ハバチが卵を産みに来ないようするのも一つの有効な手です。
 また、とにかく新緑の頃には葉水を吹き付けて、こうした害虫の卵などを洗い落とすことが効果的です。
 
 もちろん一番良いのは、木が健康であることです。健康であれば、それほどやられません。その土地の気候風土に適応する木を、良い環境条件で植栽してあげること、本当はそれが一番です。



 有翅のアブラムシを食べているのはテントウムシの幼虫です。人によってはグロテスクに見えて益虫と知らずに駆除されてしまいますが、テントウムシやカゲロウの幼虫など、大変な働き者ですので、よく気を付けて大切にしてください。

 とにかく生き物は繋がっています。それを農薬散布でやっつけようとすれば、益虫も鳥も来なくなってしまいます。なるべく農薬に頼らず、虫に慣れることです。慣れてしまえば害虫対処など、簡単なことに感じてくるでしょう。また、こうした対処をしてゆくことで、生態系というもののすごさに気づき、庭をより深いレベルで楽しめるようになります。
 私たちが提供する雑木の庭は、形や見た目だけの庭でなく、なるべく木々にとっても心地よい自然環境、つまり人を含めた生態系をそこに作ろうとするものですので、なるべく生き物の繋がりを尊重し、自然のサイクルによってバランスを取ってゆくようにしています。



 昨日手入れにうかがった千葉市緑区のIさんの庭に、こんなものが木にぶら下がっていました。
 落花生のネックレスで、針金で固定しています。Iさんは、これでシジュウカラやコゲラなどの野鳥を呼ぶと言います。
 シジュウカラなどが庭に来訪するようになれば、毛虫青虫の番人となります。そして、コゲラがくれば、カミキリムシの幼虫など、幹の中を食い荒らす虫を見つけて、突いて穴をあけて食べてくれます。
 落花生の数珠は庭の景色を面白くしていました。病虫害との付き合いも、庭の楽しみの一つとなるのです。
 

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 (2012年5月15日 07:50) | PermaLink