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新潟市 海岸防災保安林の環境再生  平成27年11月26日



 3週間ほど前に実施いたしました新潟市北区海岸松林(飛砂防備保安林)の環境改善作業。その際に補植した、松苗の経過観察写真が現地から送られてきました。
 11月初めという時期外れの植樹にもかかわらず、芽の伸び方動き方から、苗木の根が順調に伸長している様子がうかがえます。



 植樹後約三週間経過した松苗マウンドの様子。(平成27年11月4日植樹、11月23日撮影)
 保安林内の松枯れの跡地に、こうした補植地を今回の作業で5か所ほど設け、経過を観察していきます。

 今回、松枯れ跡地の補植の手法として、従来とは全く違う、古くて新しい手法にて提案し、実践いたしました。 
 その補植方法の主な特徴は、端的に述べると、土壌の通気改善を施したうえで、土中通気孔の掘削残土を盛り上げてマウンド上の起伏地形をつくり、その上に、苗木を1平方メートル当たり5~6本程度という、超密植を施し、そして表土は落ち葉や枯れ枝・敷き藁などでマルチして表層の土壌構造を守る、といった手法です。



 マウンド植樹施工中。枯れ枝などの有機物に炭をまぶしながら、通気孔となる縦穴掘削の際に生じた残土を重ね合わせて盛り上げます。つまり、このマウンドつくりにおいて、基本的に他から土を運び入れることなく、現地の地形造作と主に林内でかき集めた枯れ枝や幹などの有機物によって、樹木成長に適したマウンドを積み上げてゆくのです。

 そして植樹後、表層にまた炭を敷きます。多孔質で保水性がよく、雨滴や踏圧を受けてもその構造は壊れることなく持続し、様々な微生物の住処となって土壌改善の起点となるのが、炭の力です。
 乾燥しやすく有機物も溶脱しやすい海岸の砂地にあって、炭の利用は、その土地の土壌化を促すためのカギの一つとなるのです。



  植樹後の仕上げに、新潟市内の農家さんから集めていただいた稲わらを敷き、表土を覆います。

 一つのマウンド面積は2~3㎡程度、そこに10~15本程度の松苗を植える、そんなマウンドを林内に点在させてゆくのです。 

 密植は個体間の伸長成長における競争効果を生む上に、お互いの根が伸長して絡み合い、あるいは根の伸長に伴って一部枯損し、それが地中に有機物を供給し、土中生物の餌となって分解されるに従い、さらなる空隙を土中に作られます。それが通気孔透水孔となって土中の生き物活動はより深くにまで活性化していきます。

 また、密植された苗木どうしがスクラムを組むようにまとまって伸長してゆくことで、猛烈な海風や砂塵吹き荒れる厳しい海岸沿いにおいて、お互いを守りあう密植植樹は非常に効果的です。
 この手法であれば、植えつけた直後から競争効果と共存効果を併せ持ちながらも、多様な環境維持と健全な空気通しに欠かせない林内の空間を保つことができます。なおかつ、掘削した土をマウンドを盛り上げることで土中の水と空気の動きやすい起伏地形が、植樹と同時に作られてゆくのです。

 植樹マウンドはその後、成長状態を見ながら間伐し、1マウンドにつき、最終的に2~3本程度の松の成木を育てていきます。間引かれていった松の根は、土中の生物によって分解されて養分を供給するばかりでなく、土中に新たな空洞を作り出し、さらに生き物活動のさかんな土壌構造を作り出していきます。
 つまり、枯れ木や間伐木の根も、それが土へと帰ってゆく過程で、健全な森林育成のための不可欠なものとして活かされるのです。

 従来、松枯れに対して、その衰弱や枯死を、単に直接の原因である松くい虫の被害として結論付けてしまい、農薬漬けにし、その環境そのものは全く改善されないままに、またマツを植えて育てるという、果てしない間違いを繰り返し続けてきたのです。

 その土地の環境でどうして健全に育っていかないのか、なぜ次々に枯死してゆくのか、その根本の原因を環境全体の視点から見直さなければ何の解決にもならないのです。



 改善作業から約20日経過した松林の表情。(平成27年11月23日)
 改善の結果を判断するための経過観察は、まだまだ時間が必要ですが、枝先、葉色、ともに、順調に根が動いているように感じる気がします。



 改善作業前の保安林内。(平成27年11月3日)
 林内は藪状態となって不快な空気がねっとりと淀み、倒木、傾木も目立つ、そんな不健全な空気感に覆われていたのです。

 今回の作業は、砂地における深部の土壌化促進と根系の誘導・活性化のための土中環境つくりといった、いわば目に見えにくい土中の環境改善を中心に行ったのですが、地上部の光通し、風通しは土中の水と空気の動きと表裏一体に現れるため、おおよそ地上部の様子や空気感から、土中の様子は感じ取れます。



 改善作業終了時の保安林内。(平成27年11月6日)
 今回、松枯れが進む新潟市北区の海岸保安林において、これまでは行政としても打つ手もなく、ただただ農薬散布と枯死木の伐採燻蒸を繰り返しつつ、さらに環境を悪化させ続けてきたのでした。
 そんな劣化した海岸保安林において、単に松を枯らさないという視点ではなく、ここを健康な自然環境として再生してゆく、その実験実証区を設定し、改善作業の実施にいたりました。
 

 新潟市の篠田市長からの依頼を受けて改善手法を提唱し、そして実証作業を終えてから、はや3週間となります。この体験をブログに記そうと思いつつも、年末の怒涛の忙しさの中、時間ばかりが過ぎてしまいました。

 保安林として、これまでに前例のない素晴らしい取り組みを新潟市が決断し、そして実行されたことは、本当の意味での日本再生、国土再生のスタートにもなる、重要な節目となるかもしれません。

 新潟市海岸松林再生と、そこにいたる経緯をすべてここで記載したら、それこそ一冊の本になってしまうほどの膨大な報告となってしまうため、きちんとした報告はここでは割愛いたします。

 今回はつれづれなるままに、海岸松林に対して私が集中的に向き合ったこの数か月を思い起こしつつ、少しだけ、(とても長くなりますが・・)、溢れる想いをつづりたいと思います。




 ここ数十年、急速に枯死が進む新潟市の海岸松林。これも30~40年前までは立派な松林の中を裸足で歩いたほどにきれいな、精気にあふれた心地よい環境だったと、地元の方は言います。



 改善作業現場付近、この荒れた列状の林も、つい30年くらい前までは生き生きとした松林だったのです。
 写真右奥に見える列状の緑地帯も、新潟平野独特の砂丘列の一つですが、これも今はほとんど壊滅し、その後に侵入したニセアカシアでさえ、ここ10年程度の間に次々に枯れ、森全体が矮小化し、見た目にも殺伐とした環境へと急速に変貌してしまったことが、現場の様子からうかがえます。

 なぜこうなってしまったのか、その原因は複合的ではありますが、直接的で本質的な主因は、土中の水の停滞にあることが分かります。

 この地域で昔から浜サンベと呼ばれるこの水田は、海岸沿いの砂丘列の間の低地に開拓され、砂丘からの湧水のみで、この広大な田圃の営みが成立してきました。
 つまり、砂丘列の下にはそれだけの水量が常時、動いているのです。

 砂丘下の水の動きは、単なる砂丘林の土中の貯水と湧出だけでは説明できない水の動きであって、それは近隣の大河川、阿賀野川水系と連動していることが予測できます。

 約20年ほど前、ここに砂丘上を縦断する、舗装道路が整備され、そしてその頃に砂丘の田んぼ側にも、盛土、写真の車道が作られました。これによって、土中に盛んに供給される水の動きが遮断され、砂丘下に停滞したことが予測できます。
 松林の衰退と枯死、森の不健全化はちょうどその時から加速したことが、現状から推測できます。




 以前は立派な松林であった、この砂丘列の谷部は今、水がはけずに沼地の状態となっています。



 土中に滞水した水が全く動かない、砂丘底部。
 豊かで健康な自然環境が息づくためには、地下水脈の円滑な流れが不可欠です。これが滞るということは、人間で言えば血管が詰まった状態を意味します。
 こんな環境にしてしまった大きな原因は、土中の水と空気に配慮することを忘れてしまった強引な人間の所作にあります。
 開発や土地造作の際、大地の呼吸をつかさどる水脈の維持に対する適切な配慮さえなされていれば、少なくともこれほどの壊滅的な環境劣化はあり得なかったことでしょう。



 砂丘林上部を掘ると、落ち葉落枝の分解が進んで土壌が形成されているのは、表層10センチ程度にとどまり、その下には土中生物も活動できない乾いた砂地が続きます。

 松の根は、その生育段階でこの砂地にも深部に向かって伸びていきますが、伸ばした根の先端が細根化して水や養分などの物質摂取するためには、通気してなおかつ乾燥しない、健全な土壌環境に到達しなければなりません。そうした場所を求めて伸ばした根が、そんな環境に到達しなければ、その根は太ることができずにやがて枯れていき、その現象は、枝枯れ、先端枯れ等の地上部の様相にも現れ、大きくなれずに枯死していきます。



 深部に根を伸ばすことができず、植物の根は表層で競合して絡み合い、まるで絨毯のように剥がせます。この地下で詰まってしまった根の様相が、地上部のヤブ状態の林相に顕れるのです。



 表層10センチより下はすべて、ぱさぱさの砂。砂丘の土壌化は全く進んでいないことが分かります。
 
 健康な海岸林を育てるためには、こうした砂地において、深部にまで有機物が供給され、土壌生物活動に適する土壌化が進む必要があります。
 
 かつて、健康なマツ林だったというこの砂丘では、土中の水脈を通して土中深部に空気が送られ、それによって植物根や土中生物も活性化され、そして土壌が生成されていたのでしょう。
 
 こうした環境をどのような視点と手法で改善してゆくべきか、そのためには、こうした砂丘地における自然の土壌化作用の仕組みを知る必要があります。
 
 現在進行形で砂丘の土壌化が進む姿は、この海岸林にほど近い阿賀野川河口で見ることができます。



 阿賀野川河口付近の潟湖(ラグーン)です。その形状は常に移り変わり、数年、あるいは数十年単位で移り変わります。
 本来の越後平野にはこうした潟湖が点在し、水鳥飛び交う独特の豊かな光景が広がっていたことでしょう。

 新潟平野、それは信濃川と阿賀野川という、日本有数の大河川が流れ込み、そして佐渡島へと浅瀬が続く海では暖流と寒流がぶつかって押し寄せる、そんな、陸地と海の双方の巨大なエネルギーがぶつかり合う、日本でも独特の風土環境と言えるかもしれません。
 そしてそのエネルギーバランスの中で、海岸線に平行して十数㎞に及ぶ内陸にいたるまでの10数列もの砂丘列が形成され、そしてその砂丘列の上に、古くから人の暮らしが営まれてきたのです。



 こうした砂丘の発達する地域での暮らしは常に、吹き付ける砂と潮風との折り合いが避けられません。
 日本海岸の季節風がもたらす砂嵐は、おおよそその経験のないものにとっては想像できないほどのもので、一日で家屋が砂で埋まってしまうこともあるという、そんな猛威の最前線の環境なのです。
 そんな環境だからこそ、数年で地形が変わってしまうほどの生々流転を繰り返す、生きた大地の動きを目の当たりにします。



 今、阿賀野川河口を塞ぐように砂丘が伸び続けています。この大河川の河口幅の半分以上はすでにこの砂丘堆積によって埋まってきており、そして新たな潟湖が形成されつつあります。
 後に述べますが、この、水流のぶつかり合いによって弧を描くように伸びてゆく砂丘の在り様が、ここが豊かな土壌へと育ってゆくための鍵となるのです。

 今年の8月、現地調査の際、自然の作用によって堆積した砂地が、わずか数年単位の短期間で豊かに土壌化し、そして緑に覆われてゆく様子を目の当たりにし、それが今回の松林環境改善の手法につながりました。



 新たな砂丘の先端付近に、植生、生物環境共に発達している一帯がありました。
 この地の砂丘生成は数年程度のことですので、その短期間でなぜこの一帯が、環境として育ったのか、その理由には、ダイナミックな水と風の営みがあったのです。



 台風や雪解けなど、阿賀野川の増水の度に上流から運ばれてきた流木や草枝は、河口に円弧上に伸び続ける新砂丘にぶつかって、そこで絡み合い、堆積します。



そしてさらに、風によって運ばれた砂が流木の上にかぶさって、ちょうど有機物と無機物がサンドイッチ状に重なり合って盛り上がっていきます。流木と砂との絡み合いが砂地の表層を安定させて、そしてそこにはまず、飛砂堆積に負けずに伸びるイネ科植物等が進入していきます。



 堆積したばかりの砂地を掘っると、枝葉は腐植分解が適度に進んで、健康な腐葉土の香りが感じられます。そしてこのあたらな陸地にすでに様々な土中生物が見られ、活発に生態系が織りなされつつあることが分かります。

 円弧上に伸びた砂丘に干満繰りかえす阿賀野川の流れがぶつかり、そしてその水位変動によってポンプのように土中に空気が送り込まれ、土壌環境が育っていたのでした。



 こうした場所に最初に進出してくるチガヤなどのイネ科植物たちは、砂を捕捉して地表を安定させつつ、土中環境をさらなるステージへと導いていきます。



 砂丘生成後わずか数年でも、流木が運ばれて堆積したこの環境で、有機物に富む、砂となります。この有機物が分解土壌化の過程で、保水性を持ち、無機的な砂地を、様々な生き物や草木が生きていける健全な大地へと変えていくのです。



 そして、すでに多種の植物に覆われた箇所は、ここが堆積してからまだ10年にも満たない、海岸最前線の砂丘上であることが信じられないほどに、土壌化が進んでいたのです。
 このままここが放置されれば、いずれ海岸自然林へと移り変わってゆくことでしょう。

 ここでは、先に述べたように、不健全な海岸林の土中が全くの砂のままに変化しない状況とは、まるで正反対の作用が働いていたのです。

 海辺の砂丘地のような厳しい環境において、どこでもこの土壌化作用が自然に行われるわけではなく、土壌化されない箇所は地表が安定せず、植生も育ってはいきません。
 
 逆に、こうした健全な土壌化作用が自律的に進行するためのきっかけを人為的につくることで、私たちは自然とうまく折り合いをつけて利用しつつ、共存することも十分に可能なのです。

 このことについて、かつての土木技術の一例から、少し紹介したいと思います。

 

 これは山梨県、釜無川・御勅使川沿い、かつて洪水の力を弱めるために考えられたという、「聖牛」と呼ばれる河川工法です。
 丸太を組み、その重しに蛇籠で包んだ河原の石を乗せただけの、ごく単純な工法です。

これを、氾濫しやすい河川堤防沿いの水面に並べて、あとは自然の作用に任せるのです。

 戦国時代の甲州で、川の氾濫を収めるために考え出されたというこの構造の単純な「聖牛」は、昭和30年代まで、河川工法として用いられていたのですから、驚きです。



この工法の特徴は、単に構造物によって川の力を弱めるというものではなく、洪水時に上流から流れてくる流木や草を絡ませ、それによってさらに補強され、洪水の勢いを和らげ、そしてなんと、川の地形までをも、人にとって都合のよい姿へと変えてゆくきっかけを作るというものなのです。

 絡みついた草や流木は、お互い絡み合うことでその重量と水圧を支えるだけの支持力を発揮し、適度に水を受け流すことで、こんな程度の構造物が洪水にも氾濫にも流されることなく機能するのですから驚きです。
 つまり、これは洪水時に運ばれてくる流木を絡ませることを念頭に置いた、自然の力を活かして設備を補強し、自然の猛威をコントロールする、そんな装置なのです。




 水位上昇の際に丸太に絡んだ草はがっちりと絡み合い、容易に外せません。



そして、絡んだ枝葉は分解されて土壌と化し、そこに草が繁茂して、その人工島である聖牛はさらに安定していきます。水の勢いが常に弱められる聖牛の背面に州浜が生じ、それが繋がって、そこに中洲を生じせしめ、それが自然堤防としての機能をそこに実現させたのでしょう。



 川岸に平行して点々と置かれた聖牛沿いに州浜が発達している様子がうかがえます。



 こうして生じた聖牛沿いの州浜には、やがて草だけでなく、樹木も進入して、増水した水のエネルギーがぶつかる場所を陸地化し、川の流れをも変えてゆくのです。



 聖牛背面にできた州浜も、樹木が定着する箇所ではすでに土壌化が進んでいます。絡んだ流木や草が分解して砂と混ざり合って良質な土壌となり、そこにさらに根が活発に張りめぐらされて新たな陸地が生まれます。

 洪水時の川の中で、本来であれば土壌のような細かな粒子は押し流されて、川底は石と礫のみとなるものです。そこに、川の流れを変えるほどの地形が生じてそれが自律的に維持されるためには、自然の力、植物の力を借りる以外にありません。
 そして、この陸地化と水辺に生まれた植生によって水流が弱められ、そうした箇所に形成された土壌が堆積して樹木が根付き、そして洪水にも流されずにその勢いを和らげる陸地が、必要な場所に形成されてゆくのです。

 

 自然の陸地へと生まれ変わった聖牛の跡。
 人がきっかけをつくり、そして自然の作用によって地形を変えてゆく、そのために、流れてくる枝葉草を捕捉して遷移させてゆく、そこには何の無理もありません。
 土壌化、そして土地を保つためにも大地を健全に息づかせることの大切さは、かつては誰もが体感として理解していたことでしょう。
 息づく大地、それを再生してゆくための大切な視点は、こうしたかつての人の営みの中にたくさん見られるのです。



 松林の環境改善のポイントは、土壌化の進まない砂地深部に、線上、点状に空気の通りを作り、そして有機物漉き込みによって土壌化促進のきっかけを作っていきます。



 漉き込む有機物は、保安林内の落枝や枯れ木の他、市内でゴミとして回収された、庭の剪定枝葉を大量に用います。ここでは大型回収車満載、12㎥ほどの枝葉を運び込みました。
 これらが大地を再生する欠かせない資材になることを想うと、落ち葉や剪定枝葉までもが大地に還元されることなくゴミとして焼却されてしまう、そんな戦後の日本の在り方は一刻も早く転換されなければならないと感じます。



 土中への有機物漉き込み作業中。
掘削した残土も、林内に起伏を付けて表層の水が動いて浸み込みやすい微細な地形つくりに活かします。



 保安林を縦断する車道沿いを掘ると、縁石際で行き場を失った松の根が横に走っています。そしてここでも砂地の土壌化は見られません。
 この根の動き方からも、土中の水脈もここで分断されていることが分かります。



道路際の高低差を活かして土壌中の水と空気の動きを促すべく、道路際を掘削します。



そしてそこに、枝葉を絡ませながら柵を立ち上げていきます。



 道路際の枝絡みによる縁切り柵。この側面から通気することで、土中の水と空気を動かし、土壌化促進を促します。
 この枝絡みは1~2年程度で土に還りますが、その頃までにはこの表層は細根で覆われて土壌となり、そしてそこに新たな地表が生じて地形を支えることでしょう。

 こうした一連の作業によって、これまでごく浅い表層でしか土壌化されなかったこの場所が、土中深い位置にいたるまで木々が細根を伸ばして呼吸でき、そこで土壌生成が進行し、松を中心とした海岸林が、厳しい環境にも病虫害にも負けずに健全に育ってゆく、そんな環境つくりを目指します。




 これは隣県である富山県の海岸松林です。特に冬の季節風の影響を受ける日本海岸では江戸時代以降、各藩によって、暮らしを守るための海岸松林が盛んに造営されました。

 江戸時代の優れた松林の風景は、白砂青松という言葉で表現されるように、日本の原風景の一つにもなりましたが、今残る海岸松林の多くは近年に造営されたものであって、その質も風景も、かつてのものとはかけ離れたものであることを認識する必要があります。

 そもそも、なぜ松が、海岸林の主木として適するものとして用いられ続けてきたか、その原点を考える必要があります。
 クロマツは、地下水の滞りのない環境であれば砂地にも根を土中深くに降ろしていき、その長さは最大で10mにも達します。そんな樹種は日本には他にありません。
 その上、潮風に強く、そして気候や土地への適応範囲がとても広いがゆえに、人間にとっても非常に扱いやすい樹種でもあるのです。
 また、健康な松は、他の樹種とは比較にならないほどのたくさんの樹脂が樹幹内を流れ、穿孔虫にも強く、さらには樹幹の粘りが強いため、健康な松であれば津波の勢いをも和らげてしまうほどの力を持つのです。
 近世以降、大型化した家屋を支える重要な横架材である梁材には決まって松が用いられたことからも分かるように、松は他の樹種には到底及ばない、そんな強さを持つがゆえに、海岸最前線の防風防砂林の主木として扱われてきたと言えるでしょう。

 今の日本でも、海岸松林は風致上、あるいは防災上、手厚く保護育成されているところがたくさんありますが、木々が健康に生きていける元環境から育成、あるいは再生するという視点を持たずに打たれる様々な方策はすべて意味が薄く効果もなく、形ばかりの松林はかろうじて残っても、それは今や、かつて日本人が愛した健全で空気感のよい、我々の暮らしの環境を力強く守ってくれたかつての本当の松林とは全く異なることを知る必要があります。

 松林についてはまた、別の機会にどこかでお話ししたいと思いますが、本来の健全な松林とは、決してマツだけの林ではなく、高木である松の下に様々な広葉樹、下草の共存する、「松を中心とした林」だったことは間違いありません。
 今、そうした環境全体を考えず、ただ単に松だけを人工的な対処をしてでも活かそうとするその考え方が、自然環境の衰退・脆弱化につながっているという、ごく単純なことに早く気づいて方向転換していかねばなりません。

 今回、新潟市において、海岸松林の再生を、その元環境から健全化するための試験的な取り組みが、日本で先駆けて実行されるに至りました。 

 こんな取り組みが結果を出し、、そして全国に広まっていけば、かつてのように人と自然と共生できる、新たな未来へと道が開ける、そんな可能性が見えてくるかもしれません。

 ほんの小さな取り組みですが、未来へ繋ぐ新たな一歩になることを信じて、今後この海岸松林の再生の道筋をつけることができるよう、注力したいと思います。



 改善作業直後の松林試験区。次々に枯れ続けて荒れてゆくこの森が、今後どのように変化してゆくか、時間の経過が楽しみです。

 同時に、人間のやることなど、完全なことは何一つなく、今後も経過を見ながら、どう手をかける必要があるか、あるいはそのまま自然に任せていけばよいものか、その都度現場で感じ取り、対処してゆくことがなにより大切だと感じます。

 今回の仕事に関わる中、とてもたくさんのことを学ぶ貴重な機会となりました。


 今回また、新潟市以外の様々な松林を調査する中で気づいたことはまた、別の機会に紹介したいと思います。

 この素晴らしい取り組みの実現に関わられたすべての方に、心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。




  
 






投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
惜秋の山稜           平成27年10月28日
 

 上高地小梨平のカラマツ林の残照。

 年の瀬の足音が早くも聞こえてきそうなあわただしい日々の中、お客様とのかねてからの約束で、北アルプスの山を駆け足でご案内させていただきました。

 「こんな時期に山に行くなんて・・・、」と、お待たせしているお客様方々の叱咤が聞こえてきそうですが、秋の名残のようなこの時期の山はまた、本当にいいものです。

 1日ばかりの駆け足山行でしたが、珠玉のような今回の山行写真を、やはり駆け足で以下に紹介したいと思います。



 午後、穏やかな日差し差し込む梓川越しの穂高連峰。



 朝の焼岳遠望。



 火山活動と風雪による崩壊が進み、深く巨大な谷が刻まれる焼岳の山腹。



 飛騨と信濃の国境、北アルプス主脈稜線上の焼岳小屋の佇まい。



朝日に照らされて輝くクマザサの葉。



 稜線から穂高連峰を望む。



 蒸気湧きたち硫黄の臭い漂う山頂付近の岩場。



焼岳北陵山頂にて。



 渦を巻き、音を立てて水蒸気を吹き出す火口部。



 大正時代の大噴火によって生じた山頂のカルデラ



 峰々の合間を流れる梓川源流を望む



霊湖、明神池と、穂高神社奥宮のご神体、明神岳。



清流梓川とカラマツの紅葉。

 去りゆく秋の山々は静かで清らかで、心洗われる思いです。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
越谷市の庭 緑の車道を作る   平成27年10月22日


 先月末からかかり始めた埼玉県越谷市の庭の改修、環境改善工事、その一期工事がまもなく終了します。
 芝生スペースは、これは車道として機能する、呼吸浸透するクッションのような緑の道です。車圧に耐えてなおかつ大地の通気浸透機能を失うことなく、健康に息づく土壌環境を維持するために、見えないところで様々な工夫を凝らしています。車道に単に芝を張っても、車圧を受けて土が締まって土中の水と空気の流れが滞ってしまえばよい状態を維持することはできません。
 一方で、車圧に耐えて水と空気の流れを常に再生できるだけの土壌環境、路盤の構造を自然の理に基づいてきちんと構築しさえすれば、今や宅内敷地のかなりの面積を占める駐車場や車道も、大地が息づく緑の空間として保つことも可能なのだということを多くの人に知っていただきたい、そんな想いで、今回の工事手順をここで紹介したいと思います。



 造園工事着手時の庭。砂利の道は、アスファルト道路を解体した下地の状態です。
家の目の前に、植栽による緩衝スペースもないままにアスファルト道路がありました。
 住まいの微気候を改善し、夏は涼しく冬は暖かい、そんな住環境を作る上で最も重要なスペースを占めていたこの道路を解体し、移動することから工事は始まります。
 
 この土地に今の家が建って40年、田んぼを埋めて造成された土地は常に水はけが悪く、土の表情や生えている苔や草の様子からも、表土が呼吸していないことが容易に読み取れます。
 呼吸しない土壌環境では空気はよどみ、ひんやりした土の香りも感じられず、夏にはむっとした不快な空気感に包まれます。
 大地の呼吸環境を健全な状態へと改善することなく、本当の意味で健康で心地よい庭などあり得ないのです。



 もともとそこにあった木々を移動して、既存のアスファルト道路を解体撤去し、そして適切な位置に新たな車道を通していきます。



 車道工事着手の際、大地の透水性を試験します。雨の前日、表層60センチ程度の深さで穴を掘り、そしてその水のひき具合を確認したところ、2日経っても水はひかず、雨の翌日はたまった水をくみ出してもまた、周囲から水が集まってきて溜まってしまうという、極度に水がはけにくい環境であることが分かります。
 健康な住まいの自然環境をここに再生するためには、単に木々を配して景観ばかり整えればよいというものではなく、この、土壌の通気性、浸透性を改善することが必要不可欠になります。



 水が浸透しない表土を掘り下げます。地下1m程度までは固く締まったやや粘土質の土層が続き、そこには樹木の根はほとんど入ることができません。
 その下には、グライ土という、酸素欠乏状態の下で青くヘドロ化した土層がどこまでも続きます。このグライ土が空気と水を通さない土層となるため、水は地下の水脈に抜けてゆくことができずに土中で滞ってしまい、呼吸できず、植物の根もなかなか進入できない硬い土のままに改善されることのない、そんな状態が続きます。



 敷地の地下を覆い尽くすグライ土。水と空気が動かない箇所では酸素が供給されず、土壌中の酸素が奪われて還元作用によって青く変色し、そしてそこには一部の嫌気性細菌とバクテリアしか生息することのできない、そんな汚い土が今、私たちの足元を覆い尽くしつつあるのです。

 今年、東京や大阪などの都市部を中心に史上最悪の被害者を出した人食いバクテリアも、こうした土壌の悪化に象徴される生態系の劣化、単純化が招いた結果と言えるでしょう。
 歯止めのかかる気配すら見えない生態系の劣化を食い止めることでしか、人類の健康な未来はありえないのです。

 このグライ化土壌は、40年前の盛土の際に埋めたてられた、当時の表土だったのでしょう。それが、大地が呼吸できない状態の下で劣化し、かつての土壌はこの40年の間に完全に悪質で不健全な状態へと変わり果ててしまったのです。

 こうしたことは何もここだけのことではなく、大地の通気性や浸透性を全く顧みることのない現代土木建築の手法が招いた結果であり、それが私たちの豊かな生存の基盤を広範囲に奪い去ってゆくのです。このことに社会が一日でも早く気づき、方向転換していかねばならないことを、造園工事の現場でいつも実感させられます。



 そしてそのグライ層をさらに80センチほど掘り進むと、水が動く水脈に到達しました。縦穴をあけることによって土の側面から空気が抜けて、それに引っ張られるように土中のたまり水が集まり、そして流れていきます。



 水が動く層は、ここでは地下1.8m。こうした縦穴を敷地内の要所に掘削していきます。



 そして縦穴通しを繋ぐ横溝を掘削し、表土から水が浸みこみやすい状態を作っていきます。

 グライ化した悪質な土壌を改善するためには、その土層に空気と水を通してゆくことが確実で即効性があり、そのためにはこうした横溝と縦穴の掘削が非常に効果があります。

 自然環境を無視した道路建設や建造物、人はこれまで、点と線によって、広大な大地という面全体を劣化させてきました。
 その逆に、広大な面全体を、呼吸する健全な大地へと改善するためには、縦穴と横溝、つまり点と線の作業によって健全化させるきっかけを作ることができるのです。

 

 そして溝には、幹枝葉といった有機物を中心に絡み合わせて表層を安定させていきます。



 新たにつくる車道の両脇に横溝と縦穴を掘削して有機物を埋め込み、そして竹筒で気抜きをしていきます。
 路床(道路の下地)には、砕石とウッドチップ、木炭を混ぜてクッション性と通気浸透性を保つ状態を作っていきます。

 水はけの悪かったこの土地も、一連の工事の過程で飛躍的に改善されてきました。



 石組みや植栽などの造園工事は、こうした土壌環境を改善してからようやくかかりはじめます。



そして、土留めの石組みの背面にも、剪定枝葉を挟み込んで、土と石との間に水と空気の抜ける層を作っていきます。
 今ではよく石積みの背面の水を抜くために砂利を詰めますが、植物の根を早期に誘導するには砂利などの無機物だけでなく、植物枝葉などの有機物が効果的なのです。

 江戸時代、城石積みの背面に大量の藁が詰められたことが文献資料によって明らかにされていますが、これこそが、石積みの強度を木々の樹木根によって補い、透水性と通気性に優れた状態を保つことで、豪雨でも洪水にも流亡しない強靭な城を築いてきたのです。
 植物の力、特に目に見えにくい土中の根の働きを見直し、そしてかつての先人たちのようにそれを賢く活用してゆくことで、洪水にも津波にも耐える強靭な国土が再生できるのです。
 大地の呼吸を止めてしまうコンクリート一辺倒の国土改悪の果てにあるものは、さらなる災害被害なのだということを社会はきちんと知る必要があります。



 石組みの背面だけでなく、竹編み土留め柵の背面にも、剪定枝葉を挟み込んで土を埋め戻していきます。
 これによって樹木の根はここに細根を張り巡らして、数年後に竹が腐って土に還っていった後にも決して流亡しない、健康な土手が完成するのです。



 既存木の移植を終え、道路際の土留め柵を終え、いよいよこれから植栽にかかります。



 植栽は常に、住まいの環境改善上最も重要な家際の高木から始めます。



家際に木々が植わると一気に家屋の表情は潤います。



 木々越しの家屋の佇まい。



家屋側から見た庭の表情。家際の高木が土地の雰囲気を一変させます。



 植栽が進んだところで、同時に車道の仕上げにかかります。



 ウッドチップ砂利、木炭を混ぜながら重ね合わせていき、柔らかでかつ、車圧に耐える下地を作っていきます。



 さらにその上に敷く下地材を配合しています。多孔質で水持ちの良い瓦粉砕チップにウッドチップ、土を混ぜて攪拌します。



 これを車道に敷き重ねます。

 

 その上に粉炭を撒き、



 呼吸する車道の下地の完成です。



 そしてその下地の上にうっすらと土を敷いていき、



 そしてそこにノシバを張っていきます。
 つまりここは、芝を中心とした野原の車道となるのです。



 呼吸する緑の車道の完成です。
 お施主のAさんは、「孫ができたらここでサッカーもできる」と喜んでくださいます。つまり、人と車、そして土中の生き物たちが共存する緑のスペースがここに実現しました。

 宅内の車道や駐車場というものは、車の出入りは多くても一日に1~2回程度です。それだけの通行であれば、そこを緑に覆い尽くすことなど、本当は造作もないことなのです。

 それをあたかも常に車が行き交う幹線道路のごとく、コンクリートやアスファルトで覆い尽くして土中の通気浸透性や健全な生き物環境を奪う意味など、本当は全くないのです。
 車社会の今、敷地には必ず車道や駐車スペースが一定の面積を占めます。これを心地よく水と空気の通り抜ける環境として活かすか、あるいは従来のような無機的で呼吸しない不健全な環境としてしまうか、そんなことを今一度考えていただきたいと願っています。

 こうした些細な改善が、安全で快適で持続的な生活環境の再生に確実につながるのですから。



 庭を作る度、その土地の環境を健康なものへと再生してゆくこと、それこそがそこに住む人の安全と健康に繋がることを実感します。

 
 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
呼吸する緑の駐車場をつくる。     平成27年9月27日  


 先にご紹介しましたつくば市Mさんの住環境つくり工事、駐車スペースも完成いたしました。
 呼吸する土壌の通気透水機能を保持する駐車場は、穏やかな木漏れ日を浴びて雑木の庭と家によくなじみ、施工直後でも違和感を感じさせません。
 


 この駐車スペースは来年にはノシバが芽吹き、ここちよい緑の駐車場となってゆくことでしょう。
 播種したばかりの芝が芽吹いて力強く広がってゆくまでにはまだ、時期的に時間を要しますが、日常的に車の出入りするスペースにあって、駐車場という機能をきちんと保ちながらも、大地の呼吸は円滑に維持されて緑に覆われる、そんな施工を期しています。



 駐車場というと、一般的な先入観においては無機的で殺風景なイメージが伴うのが通常でしょうが、大地の冷気を吸い上げて清冽な空気が流れるこの駐車場は、施工直後でまだ緑が芽吹いていない状態でもなお、しっとりとした柔らかな落ち着きが十分に感じられ、その場の空気感を和やかなものにしてくれます。

 人が健康を保つために、住環境における大地の呼吸環境の重要性が、今後ますます認識されてくることでしょう。
 そして近い将来、住環境において、無機的に土壌の通気環境を閉ざすことをなるべく避けるような工法が必要とされることでしょう。
 その中でも、住宅敷地の中で一定の割合を占める駐車スペースの土壌が息づくものとなって通気透水性が保たれれば、都会の汚れた空気もずいぶんと浄化され、ヒートアイランド化も緩和され、なおかつ大雨の際の洪水のリスクも大きく軽減されることに繋がるのです。

 健全な自然の営みと機能が、健康で安全で快適な住まいや未来の街づくりに活かされるよう、こうしたノウハウを、これからも積極的に公開していきたいと思います。



 建築の際に敷き詰められて締め固められた厚さ20㎝もの砕石、この段階から、息づく駐車場へと、あまり手間やコストをかけることなく変えていきます。

 この締め固まった砕石を除去する必要などありません。まずは、横溝を掘って土中地形の落差を作り、それによって砕石層の中にも空気と水が流れてゆく環境をつ整えます。

 土中通気水脈再生のための横溝や縦穴の深さは、自然水脈が深い位置でどのように再生されてゆくか、大きな視点で全体地形や周辺構造物を見て判断します。
 ここでは、周辺地形は道路側へと地形傾斜が続き、そしてその1キロ先に河岸段丘が落ち込み、2キロ先の桜川へと続きます。
 つまり、深層水脈はその方向へと走っていますので、敷地の水脈も道路側へと導き、そして道路の下を超えてゆくような配慮が必要です。



 道路の車圧や締め固められた路床、コンクリート側溝の重圧の及ばない位置へと敷地の水脈を誘導するため、道路際の横溝を深くし、さらにそこから深さ1mほどの縦穴通気浸透孔を数か所掘ります。
 つまり、路面から地下1.6m程度の深さにまで土中の浸透水を誘導し、そして深層水脈へと繋がってゆくように配慮します。



 道路際、竹筒による縦穴通気浸透孔と横溝水脈。土壌の通気浸透性を自律的かつ持続的に改善してゆくためには、必ず有機物を用いることが必要になります。
 有機物を土中で腐敗させることなく、好気的に発酵分解させてゆくためには、土壌通気の確保と、媒体としての木炭などの炭を使いこなすこと、そのあたりが鍵となります。



 有機物を用いた通気浸透水脈が永続的に機能させるためには、やはり草木の根の力を借りる必要があります。ここでは、駐車場の使用に抵触しないデッドスペースに点々と苗木を混植して、その根が2~3年以内程度で駐車場の水脈全体に張りめぐらされて、太くなった根が代わって地盤を支えられるように配慮します。

 実際の駐車場の仕上げは、こうした水脈造作によって健全な土壌通気環境を整えた上で、ようやくはじめられるものなのです。



 溝や縦穴を掘った際に出た掘削残土と砕石を混ぜ合ながら、表層に敷き均していきます。



 その上に炭を敷き詰めた後、やや発酵が進んだ段階の細かなウッドチップを薄く敷きならします。



 ウッドチップを丁寧に敷きならした後、再び炭を撒き、



その上に今度は細かな土をまぶしていきます。



 そしてその上に、粒度をそろえた砕石を敷き詰めて均していきます。



 粒度調整砕石敷設後。その後また炭を撒きます。



 そしてまた細かな土を薄く撒き、



 その上から再度、ウッドチップをさらにうっすらとまぶし、また炭を撒きます。
 そしてその上からノシバの種を撒いていきます。



 そしてこれをホースで散水し、土や芝の種やウッドチップをを砕石の間の隙間に沈めていけば完成です。
 
 あとは、芝生の発芽を待つのみです。土圧は粒度調整砕石が支え、ウッドチップはクッションとなり、そして隙間の土や芝の種は圧密されることなく、土壌も通気透水性が保持されます。
 施工直後から、大雨が降っても泥が上がってくることや道路への流出は全くありません。



 なんとも穏やかな駐車場の表情です。砂利と土、有機物と炭、安定した環境を再生するためには無機物と有機物の双方の組み合わせが不可欠であって、そしてそれを繋げてゆく触媒的な役割を、植物遺体の炭化物である木炭などが担うのです。

 大地の循環、無から有を生み出す源こそが呼吸する大地であって、その仕組みをよく理解すれば、どんな環境でもそれなりに息づかせてゆくことができるものです。



 駐車場も庭も、どちらも大切な住環境の一部です。庭だけ美しくしても駐車場が無機的で殺風景なものであれば、住まいの環境としては、その可能性を十分に活かしたものには決してなりえないのです。
 息づく土壌の再生こそが、快適で健康な人の住まい環境つくりに直結し、そこを忘れて形だけ整えようとしても本当の意味で快適な環境は生まれません。
 これからの時代、こうしたことをみんなが考えて、わずかな敷地であっても健康に呼吸する大地を取り戻してゆくことができたら、きっとふるさとは、再び愛着の持てる優しい表情と空気感をもたらしてくれることでしょう。
 それはそこに住む人の健康、心の健康にも直結するのです。



 ブログでおなじみのちばダーチャフィールドの敷地内車道も、大地の呼吸環境改善によって、自然と心地よい野生の芝に覆われました。それは最近の公園緑地などのような呼吸しない硬い地面に植えられた芝と違って、表情は優しく、ふんわりと、心地よい空気と土の香りが漂って、そこで子供たちは、まるで数十年前の光景のように全身で駆け回り、時間を忘れて遊びます。

 こんな光景を見ると、いのち息づく環境の再生こそ、人の再生、社会の再生、そして本当の豊かさを取り戻すための最も大切なことだということを、改めて確信させられます。

 Mさんの駐車場、その後の変化はまた、ブログにて紹介していきたいと思います。





投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
つくば市の庭 明日完成!       平成27年9月19日


 今月から2期工事にかかり始めたつくば市Mさんの庭が、あとわずかとなりました。明日、駐車場を仕上げれば完成です。




 こじんまりとした家屋の佇まいが心地よい平屋家屋を建てられたMさんご夫妻の念願の新居です。
 新たに開発された水はけの悪い新興住宅地にあって、水も空気も心地よく流れる、人にとっても木々にとっても快適な環境を作るべく、見えない部分で様々な造作を凝らしています。



 植栽してまだ数日ですが、新たに生まれた住まいの森にツクツクボウシが一匹。
 雨上がりの残暑となった今日の午後を精いっぱいの声で歌います。



 ウッドデッキと木柵などの木工事と、駐車スペースの仮工事を中心とした一期工事が終了したのが今年の春。
 念願の新居だというのに、この状態でMさんは半年もの間、根気よくお待ちくださいました。。。
 
 お客様をお待たせするのはいつも心苦しいのですが、「待った甲斐があった。」と言っていただけるよう、施工の際はいつも全力でできうる限りのことをさせていただいております。
 ともかくも、この状態から2期工事のスタートとなりました。



  今、私たちの造園工事はまず、大地の呼吸環境の改善から始まります。
  人間が、人間だけでは決して持続的に生きていけないのと同様に、木々も、様々ないのちが息づくことのできる健康な大地の環境でこそ、末永く健全に優しい表情を見せてくれます。
 そこに住まう家族の心身の健康を養うという、大切な役割をもつのが庭の草木や生き物たちなのですから、彼らが健康に生きられるように配慮する、そんな当たり前のことを私たちは、再び思い出さなければいけません。



 大量に流れる屋根からの落ち水を、この土地本来の地下水脈の動きに連動させるように誘導することで、開発造成によって停滞した、この庭の土中の水と空気の流れを再生していきます。
 単に暗渠として「流す」のではなく、途中に点々と、深く浸透させてゆく縦穴を要所に配して、自然に近い多彩な水と空気の動きを再生していくのです。



 縦穴通気孔には竹筒を差し込み、その周囲を枝葉等の有機物を絡ませながら、埋め戻します。
この枝葉は、竹筒を通して空気と水が円滑に条件の下で徐々に分解され、その過程で土壌生物環境を豊かに育んでいきます。
 そして、この通気のよい土中環境に吸い込まれるように根が伸びていき、そして数年という短い期間で草木の根がこの筒の周りに張りめぐらされ、通気のよい土中の環境を樹木の根が代わって守り支えるのです。



 土の中の通気のよい場所に、草木の根は吸い込まれるように伸びていきます。数か月前、植栽と同時に周囲に埋設した竹筒通気孔の表土を掘ってみると、わずかな期間で木々の細根が吸い寄せられるように、この竹筒へと伸びている様子が分かります。

 草木根はじめ、土中の多彩な生き物たちもすべて、私たち人間と同様に息をしています。
 住宅造成の際、あらゆるいのちの源であるはずの土壌は、単に建築物を支える基盤(地盤)として考えられる中、締め固められて蹂躙された土は呼吸不全に陥り、通気性も透水性も失ってしまいます。
 同時にそれはいのちの再生の欠かせない、、水と空気の浄化再生能力さえ、失なわれてしまうことになるのです。

 空気と水が流れていかない、そんな土壌環境が今後も増え続ければ、大雨の際、浸透せずに排水溝に流れ込んだ雨水はダイレクトに川に集まり、ますます洪水のリスクを増すことになるのです。

 国土強靭化とはさも簡単に言われますが、私たちの命を守る本当の国土強靭化とは、大地の呼吸環境の再生、自然環境の健全化なくしては決してありえず、現代土木の思考に基づく大きな力で抑え込もうとすればするほど、自然のしっぺ返しはより大きなものとなって私たちに跳ね返ってくるのです。

 かつてのニワ、木を植えるという行為は、土地を守り、水を守り、いのちの環境を守る、そんな役割を意識して、あるいは無意識にもきちんとわきまえて、永代の人と自然との共に心地よい環境を育てようとする視点があったのでしょう。その結果として、今もなお、のどかで有機的な風土の欠片が、わずかながらも辛うじて残っているという事実を再び思い起こす必要があります。
 すべては過去の尊い営みに支えられて、私たちの今があるのです。
 今の社会、私たちは子供たちが生きる未来に対し、どんな風土や環境を守り伝えていけるのでしょうか。
 環境再生の現場仕事を通していつも、今の社会の盲点に気付かされます。
 


さて、水脈改善も終えて、動線の配石も終わり、いよいよ健全化された環境で、庭は植栽を今か今かと待ち望んでいるように見えます。



 雨樋の水は鎖を伝って、水鉢で受けます。その下に段階的に浸透してゆく土中環境を整えています。
 これによって、雨が降って水が大地に深くにしみ込む度に、水脈をのストローに引き込まれるように空気が吸い込まれ、土中深い位置まで空気が入り込む環境が恒常的に再生されていくのです。



 樹木植栽後の庭の表情。
 生き生きと呼吸できる環境に引っ越した木々は、夕日を浴びて喜んでいるように見えます。



 それにしても木々の力はその場の全てを一変してしまうほどの潜在力があります。
 その力を最大限に引き出すのが、私たちの仕事の妙味でもあります。




 駐車スペースから庭へのこじんまりとしたエントランスの表情。
 そして今日、駐車場の仕上げにかかります。



 駐車場といえども、住まいの大切な環境の一部ですので、有機的で潤い感じる緑の駐車場を作ります。
 駐車場工事もやはり、水脈環境改善から始まります。水と空気が停滞しやすい道路際の溝掘りです。



 そしてそこにやはり、縦穴通気孔と横溝には透水コルゲート管を通します。この際の縦穴の深さは、舗装道路の土圧の及ばない深さまで掘ることによって、道路を超えて水脈を誘導し、道路下の車圧の影響を受けない深い位置にまで、樹木の根を誘導していくのです。
 通気のよい土中環境が維持されれば、木々が舗装を持ち上げて壊すということもありません。

 街路樹の根上がりによる舗装の持ち上げは、木々の根がきちんと呼吸できる環境へと改善されればすぐに収まるばかりでなく、街を潤す木々も心地よい表情で健康に生き続けて、私たちの街の環境を守ってくれる、本当はそんな簡単なことなのです。



 そして剪定幹枝や石を絡ませながら、通気のための隙間を守りながら埋戻していきます。
 車圧に耐えうるよう、沈んでいかないように一工夫しながらの作業です。



そして、水脈の上、駐車場の使用に支障のないスペースに3か所ほど、木々の苗を密植混植しながら植え付けていきます。
 主にカシやコナラの苗で、これらの根が水脈を通して駐車場に巡り、車圧のかかる地盤を支え、土中の通気環境を維持するのです。

 生け垣のことを、かつては「垣根」と呼びました。つまり、木々の根による垣(外との隔て)、という意味です。
 住まいを建てる際、敷地の周りにまず溝を掘って、そこに生活排水が誘導します。
 そして、掘った土を住まいの周りに盛り上げて、そこに苗木を植えていきました。
 盛土に植えられた苗木は、外周の溝との地形落差によって水と空気が円滑に動く土壌環境において、健全に育ち、土中に張りめぐらされた根が、幾度となく押し寄せる大雨や洪水からも、生活環境を守り抜いてきたのです。



 駐車場の造作にかかり始めた今日、一日がかりでその下の大地の呼吸環境の改善に費やします。
 見えない部分になぜここまでやるのか、それはそこに住む人にとって心地よい環境を作るために、必要なことだからなのです。
 心地よい環境とは決して、見た目ばかりの景観だけではありません。
 大地から、心地よいにおいと共に、健康な土の中で浄化されたきれいな空気が湧き流れ、そして木々も生き物も健康で安心した表情を見せる環境こそ、本当の意味で人にとっても心地よい環境なのだと感じます。



 水脈造作や要所の植樹を終えて、いよいよ明日、駐車場の仕上げにかかります。
 駐車場は芝生の播種によって、庭と一体化した緑の空間を目指します。
 播種した芝生が健全に育ってゆくためには、何よりも土壌の通気が大切で、それが確保されれば芝生は、車圧のかかる環境にも十分に耐えうる力を持っているのです。
 播種した芝が芽吹いて伸び、駐車場を覆うのは来年のことでしょうが、来春以降の生き生きとした庭の成長を夢見ながら、明日、この庭をお引渡しいたします。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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