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雑木の庭つくり日記

いのちの息づく庭環境つくり   平成27年7月2日


 梅雨の長雨の合間を縫って進めております相模原市、丹沢山系の水を集める宮ケ瀬湖の畔、Iさんの週末暮らしの庭つくりが、あとわずかで完成となります。
 雨続きでなかなか記録が撮れないため、まずは1週間前の晴れ間の際の庭の様子から紹介いたします。



 相模原市内在住のIさんご夫妻は、震災以降、自給的で自律的な暮らしの必要性を感じられ、そして2年ほど前、ご自宅や職場から車で1時間程度の距離の山間地に土地を入手し、週末暮らしのための家を建てられました。
 この住処は平常時は週末の癒しと半自給的な暮らしの場として、そして同時にそれは、災害や社会変動などの非常時の際には避難暮らしの住まいとなる、そんなスペースを求められました。
 
それはいわば、ロシアでは今も約8割ほどの国民が所有する「ダーチャ」の日本版とも言える一つの形であり、Iさん夫妻はダーチャの必要性を感じて、この地の暮らしの拠点作りを始められたのです。




 自給的暮らしの根本は、その土地の自然環境の中の一員として、周辺自然環境を意識的に育成しながら利用してゆくこと、他にはあり得ません。
 長い間、人の暮らしはその土地の自然環境を健全に保ちつつ、豊かで多様な大地からの収穫を得て、その土地の暮らしが成り立ってきました。

 人は大地に向き合うことを忘れると、いつのまにか自分たちのいのちの源たる周辺環境を壊し、そしてそれがその土地の気候をも取り返しのつかないほどに変えてしまい、それまでの暮らしを支えてきた豊かな大地の環境基盤を失ってしまうことは、世界の文明の歴史の中でごく自明の理なのです。

 そんな現代社会の暮らしの在り方に疑問を感じ、自然に回帰して矛盾の少ない暮らしをせめて週末だけでも志そうとされる方が、最近非常に増えているように感じます。

 そうした中、私たちは、自然環境再生を主眼とした造園の仕事を通して、そして今後1~2年以内に本格的に活動してゆく予定のダーチャサポートプロジェクトにおいて、現代の暮らしの中で多くの人が忘れてしまった自然の理や共に生きる喜びを力いっぱいサポートしていきたいと思います。



 造園工事に伴う植栽や空間造作を進めながらも、この土地の造成や建築工事などによって傷んだ大地の通気浸透環境の改善作業を並行して行います。
 ここではエアスコップという道具を用いて空気圧で横溝を掘りながら、地面の中の細かな通気脈を通して、土中に空気を送り込むことによって、締め固められて呼吸できなくなった土中環境を改善していきます。

 「いのちの基本は土壌環境にある」といっても過言ではありません。
 土中生物環境が深い位置にまで豊かになれば、この土地が支えられるいのちの総量も種類も格段に増えていき、多様な生き物環境が、この土地の生産力や人の健康をも左右します。
 呼吸する大地の環境再生、数十年前まではあまり考える必要のなかったことからきちんと対処していかねばならない、それ程今は、全国的に大地の環境全体が深刻なまでに病んでしまっていることを実感します。



 敷地西側のコンクリート擁壁の際も念入りに空気を送り込み、溝掘りによる微細な地形落差を設けていきます。
 コンクリートなどの均一素材による直線的な擁壁は、水抜きの処理を施してもすぐに土中は詰まって生き物環境を痛めてしまうことは、擁壁沿いの雑草植生の違いを見ていけば明らかです。 
 自然はきちんとそれを目に見える形で教えてくれます。それを注意深く読み取ることが、自然との共同作業でいのちの環境を再生してゆくうえでとても大切なことになります。



 庭の中では、植栽のための盛土部分と庭スペースの平坦部分との際を中心に、エアスコップによって溝掘りします。このわずかな地形落差で、土中の水と空気が動き出し、その後自律的に生き物環境が改善されてゆくのですから、感動と喜びを伴う仕事です。
 それも、重機やスコップで人工的に掘るのではなく、まるで風の通り道が風洞を穿ってゆくように、エアを送りながら植物根を傷めることなく、石や硬い土を避けて柔らかな土を削ってゆく、風が年月をかけて成し遂げる作業に習って自然に掘ってゆくところに、高い改善効果が生まれるのです。
 掘り方一つでも、自然に習う姿勢を持つことでいろいろと教わることがたくさんあるのです。



そして、溝の途中に縦穴を掘り、竹筒を差し込んで通気を取りながら、縦方向の空気と水の流れを作っていきます。



 こんな地形落差であっても、周囲の土中の絞り水が集まるため、溝底に木炭を敷いて泥水や滞水による土中の目詰まりを防ぎます。



 縦穴の周囲は枝葉で泥の流れ込みを緩和し、縦方向の円滑な通気性を保ちます。



 そしてそ横溝にも剪定枝葉を絡み合わせて、通気層の泥詰りを防ぎます。この有機物が様々な速度で土と同化してゆく過程で植物根を誘導し、枝葉が消える頃には、植物根がとって代わって通気脈の維持と保全を担うのです。
 



芝張り後、ウッドチップの溝が通気脈の仕上げです。地形の際を中心に表面水が浸透しやすい環境を整えてゆくことで、土中の水と空気が即座に動き始め、大地の健康を支える多様な生き物たちが活動しやすい環境が自律的に再生に向かうのです。
 この造作によって、大雨の後でも水は円滑に大地にしみ込まれて滞水することがありません。

 また、有機的で生き物にとっての健全な環境つくりに配慮して作られた空間は、清涼な空気が動き、人にとっても健康で心から休まる環境となるようです。

 写真奥の雑草のマルチは、この庭のメインとなる自然菜園です。



 庭空間の配植や形状に合わせて、曲線状の自給菜園スペースを二つ。畝も曲線状に作ります。
 自然農園では、一度つくった畝をその後耕すことなく、土環境を自然に育てながら使い続けますので、最初の形状が大切です。



そして、菜園マウンドを刈り草や落ち葉を堆積した腐植によってマルチしていきます。



 完成後の菜園マウンド。この庭の刈り草や落ち葉は当然、この菜園マウンドの表層環境保護や土づくりに活かしながら、この畑の土壌生物環境を豊かに育てることが、すなわちそのまま、健康な収穫に直結していきます。
  自然環境に負荷を与え続ける一般的な慣行農業の在り方も、自然農の普及によって変わらざるを得なくなってゆくかもしれませんが、まずは一人一人が生き方を見直していくことが大切です。

 安全な食こそ、健全な体と心、健全な考え方と人間性を育むもの、まずは大地を育み、そして生き物たちと共にいのちの糧を得るという、これまで何千年となく地球の先人たちが行ってきた尊い営みを、こんなところからも思い起こして感動を得て欲しいと願いを込めます。



 古民家の解体で得た材料を組み合わせて作った庭の作業小屋。右奥には落ち葉や野菜屑をストックして腐葉土化する落ち葉ストックがあります。



 薪棚の屋根には、ちょうど茅葺き屋根の解体時に発生した屋根防水用のヒノキの皮がたくさんあったので、それを重ね合わせて屋根葺きにします。
 いずれはこの土地の土に還ってゆく素材ばかりで作る庭では、土、石、木といった自然界の三要素が材料の主役となります。

 そこにある自然の恵みを活かして衣食住を構成する知恵、それこそが人が忘れてはいけない大切な知恵の源のように感じます。



 落ち葉や枝葉屑は生き物環境つくりに欠かせない大切な資材です。堆積して発酵させた腐植の中には、活きのいいミミズやカブトムシの幼虫など、たくさんの生き物たちがあふれています。



 この腐植によって木々の根元をカバーしていきます。
 通気性のよい土壌環境下においては、根元の土を露出させておいてもすぐに山苔が地面をカバーしていきますが、最近の環境下では健全な苔が生えにくい場所が増えてきました。それだけ大地の環境が大きく劣化している証と言えるでしょう。
 病んだ大地環境の再生は私たちの大切な役目になります。こうした場所では植栽後の土を露出させることなく、山の地肌のように腐植によってカバーすると、土壌生物にとっても木々の根にとっても無理なくその土地になじんでいきます。



腐植によるマルチ後の根元の表情。大きく呼吸したくなるような心地よい山の香りが漂います。



 敷地際の法面は竹のしがら編み柵によって自然な形状に戻していきます。竹しがら柵は3年程度で腐朽して、その後は草木の根が代わって地形を支えて自然で安定した風景へとなじんでゆくように配慮しています。



 裏側スペースの足元は炭とウッドチップ敷きによって、雑草の進入を誘います。うっすらと雑草が低い高さで覆うように管理していくのです。
 庭の完成は、実はその後の環境再生のスタートなのです。



 造園工事の完成まではあと少しですが、実際にこの地が風景として育ってくるのは実はそれからなのです。ここでの暮らし、自然環境と人の営みが、かつての日本のように美しい風景が育まれてゆくことを願います。

 また、余談ですが、今の時期は手入れ仕事も集中します。天候も定まらず、お待たせしておりますお客様、長らくお待たせして申し訳ございません。順に廻っていきますので、お待ちくださいますようお願いいたします。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
学校の環境改善~シュタイナー学園にて  平成27年6月16日



 ここは千葉県長生郡長南町。房総のなだらかな丘陵に囲まれたのどかな地にとても小さな小さな学校「あしたの国シュタイナー学園」があります。シュタイナー学園では、ドイツの思想家シュタイナーの教育理念に則り、「芸術としての教育」「自由への教育」のもと、一人一人の子供の成長に注意深く寄り添いながら、個々に応じたきめ細かな教育が実践されています。
 古き良き小さな木造校舎に14人の子供達と先生方、父兄とも、こののどかな自然環境の中で家族のように温かな学び舎の暮らしが営まれています。



 今回、あしたの国シュタイナー学園の特命講師を拝受し本日、第一回目の授業を行いました。



 午前中の授業は、学校周辺林の環境改善です。もともと谷地形で小川流れる田んぼだったこの地が埋めたてられて、コンクリート側溝と道路が作られておそらく約30年が経過し、行き場を失った土中の水脈が停滞して地滑りを起こし、谷間の木々は次々と倒伏し、とても健康とは言えない森の様相を呈しています。
 今回、この谷筋を中心に、木々や草花が呼吸しやすい健康な環境を再生するため、本来ここにあった谷筋の小川を再生することから始めることになりました。



 自分の映る写真を掲載するのは気恥ずかしいのですが、、社員が撮った写真を紹介しながら一連の授業を振り返りたいと思います。

 はじめに、同じ場所の中でもちょっとした地形の違いで、優先する植生がまったく異なることを子供たちに説明します。
 自然界のすべての生き物に無駄なものは何一つなく、全ての生き物が自然界の調和の中で役割を持って、そこに生きているということ。植物は根付いたその場所で必死に周囲の環境を改善していきながら生き、そして大地の環境が改善されて役目を終えると自然と消えて、あたらな環境に適応する他の種へとバトンタッチしてゆく、だから、どんな植物も大切な地球の仲間なのだと。



 ここの木々達の様子を子供たちと見ていきます。一見健康そうに見えても、この森の木々は呼吸できずに苦しんでいる。その理由はもともとあった小川がつぶされてコンクリート側溝になり、その結果、大地の中を流れる水が行き場をなくして土の中に溜まってしまい、土の中に空気が入っていかない状態になってしまっている。だからこうして高木は痛み、根元は藪のように風通しが悪く、植物にとって通気の悪い状態になってしまっているということをお話ししています。




 百聞は一見にしかずです。こんなこと、本で読んだり話を聞いたりしても、本当の知恵には決してなるものではありません。
 すべては体験、体感、そして感動から人は本当に大切なことを学んでいきます。

 しゃべるより、まずはやってみせること、早速、滞水していると推測できるか所を機械で掘ってゆくと、案の定、土中のたまり水が押し出されて流れ出しました。



「こんなに水が流れていたんだな・・・息できなくて苦しかったんだね・・・。」土中から溢れて流れる水を見ながらそう言う子供のつぶやきが、耳に残ります。




 そして、大きな谷筋に本来流れていたはずの小川の水脈を再生するため、子供たちと一緒に溝を掘っていきます。



そして溝の底に炭を敷き、



周りの山から拾ってきた枯れ枝を詰めていきます。
 ただ置いてゆくのではなく、ビーバーの巣のように枝を絡ませていきながら、水が流れてもしっかりと動かずに泥を漉してゆくよう、一生懸命に小枝を刺していきます。



 皆でやると早いもので、あっという間に数十年も埋もれていた水と空気の通り道が再生されてきます。
 浅く小さな水脈ですが、人間がやることはまずはここまででよいのです。あとは自然に任せて、水脈が自律的に再生されてゆくのを待つのです。人による環境改善とは、自然界が自律的に改善されてゆくためのほんのきっかけづくりであって、全てを完璧に人間ができるなどと思うことは、大きな思い上がりなのだということを、これからの社会は知らねばなりません。

 きっかけ作りは子供たちにもできること。それなのに、いのちの源なるかけがえのない自然界に対してマイナスになることばかりしてしまう今の日本、今の大人はやっぱりどこかで道を間違えてしまった・・一生懸命に作業する子供たちを見ていると、そんな想いに胸がいっぱいになります。



そして、午後からの授業は、家つくりです。この学園では小学4年生と5年生を中心に、家つくりを体験するカリキュラムがあります。
 家つくりの材料を探しに、周囲を歩き、切通しの洞窟の中でまた一講釈。
廻り野山を歩けば、家つくりの材料はすべて手に入ると。家つくりの基本は、周りにある土と木と石、自然界のこの三原則で長い間人間はその土地の気候風土に合った快適な住処を作ってきた。
 ここですべての材料を探して家を作ろうと。



シノダケがたくさんあったので、それをつたで編んで壁の下地を作る。そして、壁下地の竹やツルは100年経っても腐らずに残るというお話など、、真剣に聴いてくれる子供たちの表情を見ているとうれしく、脱線話ばかりで授業がなかなか進みません。



 そして午後からは、いよいよ壁の材料となる、日干し煉瓦つくりから始めます。
 煉瓦を型枠に、藁を混ぜて練り込んだ土を詰めて型を取っていきます。



 地元の田んぼからもらった藁をしごき、



そしてそれを壁土のつなぎになるように細かく裁断していきます。



 そして、掘ってきた土と水を加えて、粘りが出るまでよく混ぜて



型枠に入れて数日間天日干しにします。



 自分が作った日干し煉瓦にイニシャルを刻む子供達。
 今日作った日干し煉瓦は約20個。1か月後の次の訪問までに200個作ってくれるよう、子供たちにお願いします。



 今回作る家は、砂岩の山肌を穿って作る、半穴居住宅。子供たちが交代で硬い山肌につるはしで穴を掘っていきます。



 穴を掘り始めたところで、今日の講座はおしまいです。子供たちはいつまでも現場から離れようとせず、長く楽しい一日となりました。



 あっという間の子供達との時間。
 この子供たちが大人になる頃、少しでも希望の見える地球、日本であってほしいとの願いを込めます。
 学園関係者の皆様、協力いただきました父兄方々、どうもありがとうございました。




 


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
いのちの息づく国土再生への転換を目指して   平成27年6月9日


ここは東京都国立市。延々と続く緑のラインは地理的に青柳崖線と呼ばれる高低差6~8m程度の崖のラインになります。
 この崖線は、まだ日本の河川が息づいていた頃の多摩川が、長い年月をかけて削ってつくった河岸段丘崖の一つで、崖線の下では、崖線上平野部から毛細血管のように張りめぐらされて導かれてきたきた自然水脈を通して、地中の水がところどころに湧出し、
その湧水がこの地での自然と人間の豊かな暮らしを、悠久の年月を超えて脈々と支え続けてきたのです。
 
 多摩川が作った河岸段丘には、立川市から大田区まで30数キロにわたって延々と続く国分寺崖線や、谷保天満宮が位置する立川崖線、そしてこの青柳崖線とあります。
 
円滑な水脈を守り大地の通気透水を促してきた崖線沿いの自然樹林もずいぶんと減ってゆき、今では東京多摩川沿いの崖線全体の3割程度しか樹林が残されていないのが事実です。
  崖線下の湧水はハケと呼ばれてきましたが、その意味するところは崖線上部の大地の水と空気を、急峻な崖線の地形落差によって吐き出す、そしてそれが崖線上部の土中に水と空気の動きを促し、木々や様々な土中生物が呼吸できる豊かな大地の環境を作ってきたという点で、円滑で健全なハケの存在が、人間含めてこの地域における生きとし生けるもとたちにとっての生命線とも言える、その土地がいのち息づく環境を維持してゆくための生命線とも言える、死活的に重要な役割を担ってきたと言えます。 

 河岸段丘などの自然地形落差がつくる、いのちの息づく大地の再生作用については、学会や行政、建築土木設計施工の第一線においても、いまだまったくと言ってよいほど顧みられていないのが現実なのです。
 その結果が、地形改変を伴う現代土木建築施工の全てが、自然環境に対して大なり小なりのマイナスの負荷をかけて修復されない開発の在り方が当たり前になってしまって歯止めのかかることのない現実につながっているのでしょう。
 



 崖線の下に行ってみます。青柳崖線の下、ここではコンクリートと樹脂素材の土留めによって、崖線からの地中水脈の円滑な動きや妨げられていることが、周囲の樹林の様相から分かります。
 枝葉が詰まって風通しが悪く、藪状態となった水路周辺の樹林。その様相から土中の通気透水不良による土中の滞水と樹木根の劣化が分かります。
 通気透水のよい健全な土壌環境であれば、木々は空間を住み分けて共存し、風道や光通しを妨げることなく、様々な生き物にとっての快適環境を自律的に維持していきます。
 ところが、それまで生育してきた環境が変化して大地の空気通しが悪化し、植物たちが呼吸できなくなると途端に縮こまって枝葉をぶつけ合うように喧嘩しあい、そして風通しの悪い藪状態へと森の様相が生き物にとってのマイナスの環境へと変わっていきます。

 数十年前まで、ここは素掘りの水路によって、上部の水と空気が円滑に抜けて、それによって呼吸する大地の環境が保たれてきたはずなのに、大地の呼吸に配慮しない水路整備によって、結果的にこの土地の環境の致命的な劣化を招いてしまったのです。

 そしてそれは、この崖線周辺に限らず、流域全体の大地の呼吸を妨げて劣化させ、国立市街地においても木々の衰退、土壌通気環境の劣化へと直結しているとも言えるでしょう。




 そして、このハケ地の環境で今、国立市によって進められているのが、「城山公園水路等修景事業」です。
 青柳崖線の中心的な自然環境を伝えてきた城山地区において、土地区画整理事業に伴う大型開発によって寸断された水路を公園に引き込み、そして里山環境を残すべく公園整備が計画、実施されたのです。

 通称「城山の里山づくり」。事業の名称がそのように命名されて、里山環境保全のための予算と言うと、おそらく誰もが、「環境に対してよいことをするための予算なのだな」と思うことでしょう。
 もちろん、事業を推進する行政の方々だって、良好な環境を保全して後世に伝えようと、この事業計画を進めているのでしょうが、実際にはこうした土木的な改変施工がこの貴重な自然環境をかえって痛めつけて悪化させていくことに繋がっているというのが、悲しい事実なのです。

 そのことは、整備前の数年前の、生き生きとした栗林と田畑、鬱蒼とした雑木林に覆われていたこの地の環境を知る者にとっては見る影もないほど、無機的で暑苦しい不健全な環境に一変し、そして木々も水脈も、大地の環境も大きく傷んでしまったことによって、理解されます。

 自然環境に対して良かれと思って進める事業が、木々や環境を豊かに息づかせるために最も大切な土中の空気と水の動き方に対する知恵と配慮の欠如によって、結果的になすことすべてがマイナスの環境をつくってしまう。そんなことを知っていただかないととの思いがあって、今回国立市での大地の再生講座において、この城山ハケ地観察会を実施いたしました。



 城山地区の水路整備によって、周辺環境は急速に変化してしまっております。新たに設けられた水路の土留めには、樹脂製の擬木が用いられています。均質で隙間に乏しい擬木の土留めが土中の空気通しを妨げてしまい、水路の底がヘドロ化して腐り、そこから発生する有機ガスがさらに周辺の土壌環境、植物根を痛めてしまっていることが分かります。
 健全な水路の底には本来、水辺の植物が繁茂するはずなのに、ここでは乾燥に耐える荒れ地の植生が繁茂するばかり。
 これは施工者の問題では決してありません。土中の空気の動きに全く配慮できない現代土木工法の問題であり、人が自然とのかかわりの中で本来持ち合わせていた自然環境に対する配慮と想像力の欠如が、自然環境を保全する目的の作業が、逆に自然環境を致命的に痛めつけてしまう結果に繋がっているのです。



 水路沿いの植栽はすでに大方枯れてしまっております。コンクリートの縁石に囲まれた直線的な水路も意味をなさず、逆に周辺の土中滞水を促し、結果的に土壌生物環境を衰退させてこの地の自然環境を不快で無機的なものへとしてしまっているのです。



 整備の末に悪化させてしまった水路上部の森を歩きます。樹高30mにも達しようかと思われるほどの見事な高木が連なります。武蔵野の豊かな大地の力を感じさせるこの森も実は、不健全化が急速に進んでいるのが感じられます。



 城山の地名の通り、この山には本来お城があってその造営の際に盛られた土塁と素掘りの排水溝、その地形落差とハケ地の円滑な水脈によって、これほどの高木にまで成長させてきたのでしょう。
 その土地の樹木を診て大地の環境の健全性を判断する際、今ある木々は過去の環境によって育まれたものであって、現在の環境を反映するものではないという点にも注意して観察しなければなりません。
 明らかにおかしくなり始めているこの森の変化は、木肌や枝葉の痛み方ばかりでなく、大木の揺れ具合、林内への光の入り具合などから分かります。
 これほどの高木、下枝の少なさを見ると、この森はもっと鬱蒼としていなければなりえないのです。つまり、森の密度が低すぎる、このことは人の都合優先の管理によってなされたものか、あるいは水路整備による森の衰退によるものなのか、おそらく双方の相乗作用になるものなのでしょう。

 今はすっきりと心地よい森に感じられますが、それは長年生きてきた風格のある大木たちが作りだす環境形成作用によるもので、肝心のこの木々達が健康に生育して長生きできる大地の環境は、近年の人の誤った作業によって、とうに衰退しきってしまっていることに早く気づかねばなりません。
 あと十年後、これらの高木はますます痛み、森全体が矮小化、藪化をきたしてゆく可能性が高いように感じます。その時、「そういえば以前はこんな不快な森ではなかったのに・・・。」と振り返っても遅いのです。
 自然環境、それを支える大地の環境、そのつながりに早く気づき、活かすことのできる社会が訪れなければ、私たちはその生存の基盤すら、いつの間にか失ってしまうことになるのです。



 そしてここは、城山公園の中心部に整備されたばかりの水辺。数か月前に作られたというのにすでに川底はヘドロに埋まり、すくってみると有機ガスの悪臭がします。
 当然生き物は住めず、こんな嫌気的な環境には一部のバクテリアや嫌気性細菌ばかりが繁殖し、ここで足を使って遊ぶことすらできない、そんな公園の水辺となってしまっているのです。
 ここだけの問題ではありません。
 誤った工法、誤った考えに基づく環境整備は結果として自然の自浄作用をも狂わせてしまい、環境を悪化させてゆく、そんなことに早く気づいて方向転換しなければなりません。

 本体飲めるほどの清冽なハケの水が、誤った整備によってこれほどまでに悪化させてしまっているのです。

 

 本来の自然の流れには浅瀬があって深みがあり、そして水が加速度を付けずによどまず、大地を傷つけることなく流れてゆき、そしてそれが大地の血管たる水脈となって土中環境の呼吸を促し、いのち溢れる健全な大地の環境を持続させてきました。
 新たにつくられたこの流れは幅も深さも均一で、直線的な段差水落としが連続する、自然界では決してありえない不自然な形状。それが結果として周辺環境を痛め、泥詰りを招いてしまうのです。
 大きくはダムやコンクリート河川整備も同じで、こうした線上の間違った行為によって広大な面がその影響を受けて痛んでゆくのです。



 雑木林自然林に接した遊歩道際に、新たに植栽された緑地。トキワマンサクやソヨゴといった、本来のこの地にはなかった樹種が混植されています。
 土壌環境も造成時に痛めつけられた上に、水脈の詰りによって雑草たちも苦しげに競争をはじめ、心休まる風景にほど遠い、そんなおかしな緑地作りがなされている。
 この土地に溶け込んで同化してゆく、本来の自律的で健康な森を再生しようと考えれば、こんな樹種の選択や植え方など考えられないはずです。
 それが当たり前のようになされている現状を目の当たりにして、人はもっと自然と向き合わねばならない、そんな想いを強くします。



 谷保天満宮本殿脇のハケ地。立川崖線から浸みだす水が流れます。かつてのここでの暮らしがそうであったように、ハケ地の水を円滑に抜けるように配慮することが、大地の再生力を大きく高めて健全な生き物環境を維持することに繋がるという、自然環境保全の上で最も大切な視点がこの、大地の呼吸を止めないことだと言えるでしょう。

 形ばかり、見えやすい部分ばかりを飾ることばかりに費やしてきたこれまでの在り方から、私たち人間にとっても最も大切な生命線であるいのち息づく大地の環境を育みながら人の暮らしを両立させてゆく、そんな方向へと転換していかねばならない、そんなことを今回、たくさんの人に知ってもらいたいとの思いから、今回、城山公園観察会を実施させていただきました。

 定員をはるかに超えるたくさんの参加者方々、そしてこの講座を主催くださったワクワークス一級建築事務所の皆様、本当にありがとうございました。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
自然環境としての庭を育てる    平成27年5月30日


 新芽が固まって梅雨へと向かう時節は、庭の育成コントロールのためのメンテナンスの適期でもあります。
 本日おうかがいした、千葉県市原市Aさんの庭は、竣工後1年半が経過し、木々はますますこの土地の自然へと同化していきます。写真は手入れ後です。
 光通し、風通しをコントロールしつつ、健全に成長しつつ、人も木々も、そして生き物たちにとって心地よい環境が醸成されてくるよう、適度な管理は必要になります。

 「カーテンを開けて暮らしたい。」 それこそこの庭の改修植栽前までは常にカーテンを閉めっぱなしで暮らしていたことが考えられないくらい、今は常にカーテンも窓も開け放した、快適で健康的な生活をなされています。



 健康な自然環境としての庭がもたらすかけがえのない豊かさは、その場に暮らしてみて初めて気づくものかもしれません。
 揺れる光と呼吸する大地、木々の香り、土の香り、こうしたことに日々感じながら幸福を実感する、本当に庭とはなんとかけがえのないものなのでしょう。
 手入れにうかがい、お客さんの笑顔と再会するたびにいつもそう感じます。



 大屋根の軒まで枝葉が達することで、狭くとも深遠な森の中にいるような、そんな感すら漂います。

 よく、私たち高田造園設計事務所の作る庭は大きな庭ばかりのように思われる方が多いようですが、そんなことはありません。この庭も植栽幅2m弱のごく狭いスペースなのです。
 それでもこれだけの、スケールの空間を作り出せるのは、自然環境としての雑木の庭ならではのことなのでしょう。



 ここは千葉市内、Tさんの庭は植栽後3年です。コンクリートの駐車スペースを剥がして作ったわずかなスペースに植栽した木々は、こんな環境でも生き生きと、その場所に適応しながら生きようとします。
 住む方の愛情を浴びて木々はますます元気に生き生きと、美しい住環境の風景を作っていきます。



 家と駐車場の間、1mに満たない植栽スペースで、これほどの豊かな潤いが実現できるのです。そして、こんな場所で必死に生きる木々に愛情を注ぎ、いたわりながら、健康を気遣う、それが最も大切な庭環境育成の視点と言えるでしょう。

 メンテナンスの際は地上部だけでなく、木々が呼吸する土中に無数の通気孔をあけていき、細根の発達を促す作業も、こうしたコンクリートに囲まれた今の住宅地では欠かせない作業となります。



 東京都江戸川区Uさんの庭も竣工後5年目となりました。
駅前再開発地の劣悪な土壌環境のもと、ここだけは大地の呼吸を取戻しつつある様子が、風や匂いで感じられます。



 光通しと風通し、そして土壌の通気状態と、都会のコンクリート環境の中でなお、自然環境として健全な状態を保てるような配慮、それがそのまま人の空間としての本当の意味での豊かで温かく、そして心から癒される、自然に対する畏敬の念まで感じさせてくれる、そんな住環境の営みが生まれるのでしょう。



 さて、ここは私の実家の庭、庭の竣工は僕が24歳くらいのことですので、すでに20年以上の歳月が経過しています。
 隣地境界まで2mに満たないわずかなスペースに、ミズナラやモクレン、コウヤマキなど、40種類ほどの木々が共存しつつ、20年を超えました。



 見た目だけでない手入れ、木々と対話し、生き物として労わり気遣いながら、そっと手を差し伸べるような、そんな管理をし続けることで、それこそ人の一生涯、庭の木々は人の住環境を侵すことなく、快適で心地よく共存してくれるものです。
 
 とある造園家が以前にこう言っていたことを思い返します。

「庭の寿命は25年くらいだと、いつもクライアントに説明している。25年経ったら庭もリフォームしましょうと。」

 生き物のいのちの環境として見向きもしないような、庭に対するこうした考え方を聞くたび、「いまだ庭は命を育む環境としてではなく、建築の付属物のように捉えられることが多いのだな」と、少しさびしく感じます。

 庭はいのちの営みの場であり、その地に適応しながら年月をかければかけるほど、多様な生き物環境としても育まれてゆくもの、それをあたかもまるで人が作るモノや作品であるかのような捉え方は、今後は改めていかねばならないことでしょう。
 建築もそうですが、自然環境も生き物もすべて、人がコントロールできるという傲慢な考え方の先には、人の未来も地球の未来もありません。

 自然環境あっての人間社会であり、その縮図が人と庭であるように思えてなりません。

 庭の自然環境と共に生きようと、人の心が歩み寄る、そんな心構えで庭と向き合えば、幾世代にもわたって庭は良くなり続けるもの、命ある環境、生き物の命を人の都合で無造作にはぎ取って顧みない時代から、私たちは進歩しなければなりません。



 22年間、実家の父母と共にあったこの木々たち、この庭の手入れはおそらく、今回が私にとっての最後の手入れになるかもしれません。
 それというのも、母親がひと月後にはこの地を離れて、引っ越すことになるからです。
 22年間の感謝の想いを込めて、手入れしながら、色々な思い出が胸をよぎります。

 家と庭は僕がこの家を離れてからリフォームしていますが、僕が幼稚園の頃から大学入学まで暮らした懐かしの土地であることに何ら変わりはないのです。

 この家の新たな住み人がそのご家族の暮らしと共に、この木々を愛し、木々のいのちと共に生きてくださることを祈るばかりです。







投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県柏市の庭 竣工        平成27年5月8日


 連休が明けての今年の後半戦最初の竣工は、千葉県柏市のIさんの庭です。本日、竣工直後の、玄関前からの庭の入口付近です。

依頼いただいてから実に2年半以上もお待ちいただいての竣工です。



 とても狭い通り庭ですが、それでも豊かな自然環境を再生することで、暮らしがどれほど潤うものか、計り知れないものがあります。



 わずか2m程度の幅の主庭は、ウッドデッキと坪庭スペースを組み合わせて、潤い感じる屋外リビングとして仕上げています。



 デッキ前、水鉢を中心に景をまとめます。



 今年から新たに始めたグランドカバー方法として、落ち葉や剪定枝を1年弱程度発酵させた腐植を、木々の根元に敷き詰めています。
 腐植にはたくさんの土壌生物が繁殖し、有機物は半分炭化して土との境目の性質を有しています。
 こうして根元に敷き詰めるとまるで山の林床のようにしっとりとした趣が完成します。



 薫り高い生き物いっぱいの、剪定枝から生まれた腐植。



そして通路部分のグランドカバーには、シイタケの榾木を粉砕したウッドチップを用います。



 小さな庭は、心地よい山の中にいるような雰囲気に一変しました。
 
3年近くも庭の竣工を待ち望んでくださったIさんは今日が誕生日です。3年越しの誕生プレゼントとなりました。どうもありがとうございました。

 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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