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雑木の庭つくり日記

梅雨の晴れ間に・・・・・         平成26年6月11日
 梅雨に入ったとたん、まるでスコールが断続的に続くような雨の日が、ほぼ毎日のように続いています。
 
 鬱々とした季節に、今年はさまざま、とても悲しいニュースが続きます。
 長崎原爆記念館での被災者に対する修学旅行生の暴言、わが子に食事も与えず遊び呆けて餓死させる親、白骨化するまで誰も気づかない・・・なんという時代でしょう。なんという世界でしょう。
 どうしてこんな国になってしまったのか。そんなニュースは見たくもないが、目をそむけてはいけません。
 人間として、あるいは生き物として、あり得ないことが繰り返され、そして今も無抵抗にいたぶられる命がこの世に数知れずあると思うと、居ても立っても居られない衝動に駆られます。
 祈る以外に、自分に何ができるのか、こんな世の中で自分は普通に仕事していてよいのだろうか。
 私は木や植物など、生き物と共に仕事しています。仕事柄、いのちの循環というものははっきりと理解できます。命はすべて一緒で、世界を汚して自分だけそこから逃れられるということはないのです。自分の子供は幸せに、というのは通常の親として当たり前の想いでしょうか、ひどい境遇や、想像を絶する悲惨な状況の子供が世界のどこかにいれば、それはいつかのわが身であり、わが子なのです。
 汚染された環境下で大量死する鳥や魚、全てが我がことと思う、いのちの循環の思考を忘れてしまった先に、こんなおぞましいことが日常的に繰り返されるように感じます。
 
 木々は人に本当の知恵というもの気づかせてくれます。そして、自然を感じる感覚は、人が人らしい心を育てるうえで不可欠なものだと確信します。こんな時代、こんな世の中、毎日木々に接して仕事する中で私たちが感じるものを、できるだけ多くの人に日常的に実感してほしい、気付いてほしい、そんな願いが日に日に高まります。

 梅雨の晴れ間は貴重です。もうとっくに春の手入れの時期だというのに、ここ数日でやっと手入れに廻り始めたところです。天候が読めない最近、仕事の予定が読めずにお待たせしてばかりでございます。
 お待ちくださっておりますお客様、雨を押して、休日も返上して進めておりますが、どうかおまちくださいますよう・・。なお、手入れについてはある程度緊急性を考慮して回る順番を考えますので、困ったこと、早く来てほしいという事情がございましたらその旨をお知らせくださいますようお願いいたします。

 梅雨の合間を縫って手入れに廻り始めた癒しの庭をいくつか紹介いたします。



 東京都小金井市のアパート兼大家のKさんの自宅です。施工後3年経過し、かつては武蔵野のこの地に広がっていた雑木林の風情豊かな住環境へと育ってきました。



アパートの南庭、幅わずか3m足らずの空間です。この写真から、これが都会のアパートに挟まれた、街中のわずかなスペースと思えるでしょうか。



 kさんの玄関から南庭へ。



 北側のアパートエントランスへの伝い。



 アパート部屋に面した木々。わずかなスペースでも、自然環境は再生され、そして育っていきます。
 狭いスペースで大きな木々の効果を発揮してもらうのですから、人と木々との共存のためには年に2回の手入れが必要になります。

 こんな木々の営みがいつも外にある住環境、よい住環境は人の心をきっと優しく包み込んでくれることと確信しつつ、私は一つ覚えのようにこんな庭ばかり作り続けているのです。



 そしてここは横浜市Iさんの住まい、造園施工後ちょうど1年です。庭をとても大切にされるIさんの手塩にかかり、木々は植栽後1年とは思えないほどの落ち着きを見せてくれていました。



 玄関から奥庭。



 デッキからの見返りの景。この庭も10坪に満たないごく小さなスペースです。小さくても命と共にある木々に包まれた住環境は作れます。




 ここは神奈川県葉山町、Mさんの庭、施工後半年です。海風を受ける高台の環境で、木々は必死にこの地に適応しようとしています。お施主のまことの愛情を、木々は決して裏切ることはありません。



 ここは茨城県鹿島市、この4月に竣工したばかりの庭です。



 施工直後の庭はまだまだ緑は薄く、木々もなじんでいないのですが、この庭も3年もすればこの地の風景として、環境として、自律するまでに育ってくるということが、この仕事を続けてきた私たちにはわかります。



 これは千葉県柏市、入母屋民家を改修し、庭をリニューアルしてここも3年目です。木々はあっという間に家屋を包み込み、涼やかな木漏れ日が心地よく、家屋の表情を刻一刻と変えていきます。



 家屋と家際の木々。



 夏の日中、この庭は常に家際に心地よい木陰を作ります。



 庭と一体化するようなリビングからの景。



 和室から。室内にそよ風が流れ込み、木々の葉音が印象的にそよ風に揺れます。



 先週植栽したのは横須賀市Sさんの家、地元湘南で家と庭を一体のものとして住環境を提供しようと本気で取り組む建築工房、北村建築工房の仕事です。
 建築だけでなく、植栽工事も社長はじめ社員たちが地下足袋を履き、土に這いつくばって一緒に庭を仕上げていきます。彼らの姿勢から、住む方にとって最善の住環境とは何か、本気で追及しようとする姿勢を熱く感じ、頭が下がります。

 家があって庭があり、そして温かな家庭がそこで育まれます。
 今の社会の様々な問題は、その根本たる家と庭の崩壊、家庭という、とても大切なものが壊れてしまった結果といった面も大きいように感じます。
 よい家庭をここで育んでもらいたい、そう思いつつ庭を作り続ける私たちですが、同じ想いを抱いて、建築サイドから真剣にお客様家族にとってよい住環境を作ろうとする建築者たちがおられることに、心から勇気と希望をもらいます。



 植栽作業終了後、北村建築工房&高田造園設計事務所の面々です。

 自然な庭を求められる美しく心豊かなお客様や、真の心でよい住環境を考える仕事仲間の間で生かされてきた私には、今の世相はあまりに悲しすぎるように思えます。

 よい家庭を、そしてそこで育つ子供達にも温かな心を育んでもらいたい、我々住まいの作り手が、一つ一つの家庭にそんな思いを込めていくのです。
 よい家庭の営みが育まれますように・・。よい世の中が育ちますように・・。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
雑木の庭の管理に想う 2       平成25年11月23日


 雑木の庭 暮の手入れは私たちにとって毎日紅葉狩りに出かけるような心境です。
 昨日手入れに訪れたのは千葉県柏市の庭、施工後2年が経過し、木々はいよいよ生き生きとした生命の躍動を感じさせてくれるまでになりました。
 ここ1週間で急に秋色に染まったという木々は、手入れに訪れる私たちにもこの仕事の喜びとエネルギーと確信を与えてくれます。
 1年間の実りの秋、思索の秋と言いますが、いろいろあった1年間の終盤を木々がこうして静かに祝福してくれるようです。
 これでいいのかと、迷い続け、走り続けた1年を、「よくがんばったね。」と、木々は優しく包み込み、そして庭を作る私たちに、この仕事を続けてゆく力を与え、道筋を示してくれます。



 玄関側から主庭への伝いは錦秋の道となりました。



 秋の柔らかな日差しが家屋に揺れて、木々と共に生きる幸せを感じさせてくれます。



 雑木の庭は入り込む日差しを楽しむ庭とも言えそうです。刻々と移り変わる日差しを受けて、庭の表情は一時も立ち止まることなく、我々を楽しませてくれます。



 そして、手入れによって、入り込む日差しや光の見せ方を調整するのです。夏は木陰の庭として過ごしやすい住まいの環境を作り、そして秋の手入れでは枝葉を落として日差しを取り込む温かな庭とするのです。
 雑木の庭を活かすためには手入れの仕方が大切です。大地の恵みを受けてすくすくと育つ森の高木たちを家のごく近い位置に植栽し、木々の命を最大限に暮らしに取り込むのですから、暮らしと共に木々と長く共存するためには、どうしても手入れが必要になります。



 高木樹種にコナラやシイノキ、カシノキなどを主木に用いた雑木の庭が順調に生育して施工後3年目となると、厄介な雑草が姿を消して、日ごろの除草管理が非常に楽になります。日向でしか生育できない雑草がほぼ消滅し、柔らかな日陰の雑草が木々の足元でおとなしく共存するばかりになってくるのです。
 コナラを主木に用いるもう一つの管理上のメリットは、成長旺盛なコナラが上部の日差しを占有するため、その下となるモミジやカエデ、その他中低木など、多くの樹木に差し込む日差しが緩和されて、枝ぶりが森の中の木々のように自然と柔らかく維持されるため、高木以外はあまり手をかける必要がなくなるのです。
 つまり、手入れによって無理やり柔らかい枝ぶりに見せるのではなく、植栽の組み合わせによって木々が無理なく自然に美しい姿を維持できるようにするのが、我々が目指してきた雑木の庭の佇まいなのです。

 こうした管理への配慮によって、100坪以上もの広い庭も、軽く1日で手入れできます。もっとも、コナラなどが本格的な成長を見せるのは3年経過した後で、実際にはこれからなのですが、しっかりとコントロールしていけば、年月とともにより深みのある美しさを見せてくれるようになるのです。



 リビングからの庭。室内にいながら季節の変化を肌身で感じる間取りです。



 和室から。床の間に飾られた枝は、手入れで落とした枝をお施主のMさんが拾い、吟味にして活けられました。
 窓越しの秋の気配が窓からだけでなく、床の間を通して室内に取り込まれます。



 住まい手の、庭を愛で、楽しむ心が、圧倒的に自然豊かな住環境を許容し、育ててくれる、床の間に活けられた剪定枝を見てそう感じます。
 心豊かな暮らしの環境つくり、それは自然を感じとり共に生き共に楽しもうとされるお施主の豊かな心に支えられてはじめてなしえること、これからも、心豊かなお客様と二人三脚でよい庭を作り育んでいきたいと思います。
 作らせていただいた庭や心豊かなお施主様が私たちの仕事への想いを支えてくれる、そんなありがたさを実感させられるのもこの時期です。







 


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
雑木の庭の管理に想う       平成25年11月20日


 暮れの手入れの時期となりました。今日は千葉市花見川区の庭、施工後8年目の手入れです。
木々は年月のと共に、庭の重厚感が増してきました。
 写真は手入れ後の庭です。夏の間、ありがたい木陰を作ってくれた大きな枝を落としていき、温かな日差し差し込む明るい庭へと、手入れによって庭の模様替えをするのです。




 木々の合間の
玄関アプローチに秋の柔らかな日差しが差し込み、何とも言えぬ、のどかな表情を演出してくれています。
 赤や黄色、色とりどりの秋の葉を通過した日差しの美しさは、雑木に包まれた住環境ならではの楽しみなのでしょう。



 庭の木々はとても健康です。コナラの木陰のモミジは、コナラに守られて痛むことなく、モミジ本来の柔らかな枝ぶりを見せてくれます。
 生育旺盛なコナラは手入れの際に、毎年太い枝をばさばさと取り払わねばなりませんが、その木陰となるモミジなどは、ほとんど手入れせずとも、健康で美しい姿が維持されるのです。

 手入れの時間は木々との大切な対話の時間です。木々と語り合い、心地よい集中力に包まれる手入れのひと時は造園者としてかけがえのない時間となり、いろいろな思考がこの時間に次々と生まれます。

 成長の旺盛なコナラやクヌギを扱う以上、維持管理のために年に2回の手入れが必要になります。1回の手入れでは、木々に負担をかけすぎてしまいます。
 コナラなどの手入れは大枝を付け根から取り払う作業が中心となるため、コナラの性質を熟知した者にとっては作業に時間は要しませんが、落とす枝葉の量は毎年相当な量となります。
 木に登り、その木の生長具合に見合った量の大枝を外すという作業を、毎年2回行わねばならないのがコナラを主木とした庭なのです。

 雑木の庭がずいぶんと普及してきましたが、雑木林の高木を構成するコナラなどを主体に扱う人と、モミジやアオダモなど、コナラ以外の、本来森の中の中高木層に収まる樹種を主木に扱う人と、2者に分かれてきたように感じます。
 管理の面、成長の早さなど、コナラを取り入れて長く管理するためには、それ相応の知識の体得と技術と経験が必要です。

 夏の住環境の微気候改善のためにはコナラを使いこなすことが最も有効な住環境の植栽な上、コナラを主木とすることで、その下の木々の枝ぶりがおのずと柔らかく、健全で美しい姿を維持されるという、メリットもあります。

 作ったその時点での見た目が完成というのであれば、雑木の庭にコナラを用いる必要などないのですが、竣工後の住環境を心地よく緩和して住みよい環境を作るという役割を庭に求めるのであれば、やはりコナラに勝る庭の主木はない、手入れをしながらつくづくそう感じます。
 もちろん、樹高8m程度を想定しなければならないコナラを扱うには、それ相応のスペースの配慮が必要になります。

 環境つくりか、鑑賞目的か、目的に応じた庭つくりを追求していきたいものです。



 施工後8年目の庭、成長する木々の命と共に、住環境の景色は深みを増してきます。
色鮮やかな秋の木々を楽しみながらもの思いにふけり、旅に出たような爽快感を味わえるのも私たちの仕事の大きな幸せなのだと、感じます。








投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
街を潤す医院の緑地          平成25年7月18日



 ここは埼玉県坂戸市、町野皮ふ科クリニック駐車場外周緑地です。
 駐車場と隣接住宅地との間、幅わずか80センチ程度のスペースに木々を植栽してから、まだ2年にも満たないというのに、すでに駐車場に涼しげな木陰を落としています。



 そして、この細長いグリーンベルトは、その奥の、クリニック中庭の森へと繋がります。



 中庭の木々は3年前の植栽です。
 ボリューム感あふれる生き生きとした木々が、すでに2階にも涼しげな木々の景色と木陰を作ってくれます。



 待合室側から見た中庭の景。街中のクリニックとは思えない、森の中の雰囲気を感じさせてくれます。



 わずかな植栽面積ですが、木々の景が繋がって街の景色まで潤い豊かに変えていくのです。
 この木々の力をもっともっと街づくりに生かしていきたい、そんな植栽をしていきたい、との思いは、日に日に強まります。



 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
木々に癒される           平成25年6月27日


 久々の快晴です。今日訪れたのは東京都練馬区Nさんの庭、早くも4年目の手入れです。
圧倒的な木々に包まれた、森のような住環境。それこそが、木々が作る住環境というものです。

 この、圧倒的な木々のボリュームを見て、多くの人は、「手入れが大変でしょう」と言います。
しかし、自然の性質に逆らわない雑木の庭の手入れは、手間があまりかかりません。
 この庭の手入れは、掃除を含めて、3人で半日とかからずに終わるのです。

 上の写真はNさんの住まいの西側です。夏の間、木々は見事に西日から住まいを守っているのです。



 そして、これほどの樹木のボリュームでありながら、この西側の植栽スペースは、実際には幅1mにも満たない、ほんのわずかなスペースなのです。
 このわずかなスペースでこれほど環境を変えてしまうのが木々の力なのです。

 木々の圧倒的な力を、我々の暮らしの環境つくりに、もっともっと生かすことで、人の心はどれほど健康的で豊かなものになることでしょう。



 Nさんのご主人はこう言われます。
 
 この木々があるから、自分は生きていけると。
 ストレスを抱えて殺伐とした仕事をこなせるのも、この木々に癒されるから、やっていけると。
 木々がない暮らしは考えられないし、自分はそれでは生きていけないと思う、と。

 そんな話を、Nさんの奥さんからうかがい、またまた目頭が熱くなります。



 手入れ後の庭には心地よい木漏れ日が差し込み、風が枝葉を揺らします。

 木々に癒されるのは、そこに住むお客様だけではありません。
 この環境を作り、管理させていただく私たちもまた、木々に触れるこの仕事だから、どんなにつらい時でも、癒され、乗り越えていけるのです。

 ひやりとした幹を握り、伝わってくるいのちの感触に心癒されながら、手入れする。
 木々と一体になり、そして、移りゆく私の心が木々に共鳴し、こうして手入れの後、それぞれの木々は無理のない自然な佇まいを見せてくれる。そして、静かで穏やかな調和を感じさせてくれる。
 
 そんな素晴らしい仕事をさせていただける、世界のすべてに感謝の想いが絶えません。 

 
 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
   
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