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雑木の庭つくり日記

鎌倉市梶原山の庭 竣工   平成27年2月12日


 先週かかり始めた鎌倉市Hさんの新築家屋の造園工事が本日、駐車場の仕上げを残してほぼ完成しました。
 建築設計施工は、おなじみの北村建築工房です。
 2台分の駐車スペースを除くと外空間面積はわずかですが、それでも植栽配置を工夫することで、狭いながらも圧倒的な緑に包まれた
住まいとなるのです。



 駐車場際に薪小屋を設け、木々の合間の景色のポイントとします。使い勝手の良さと景観の両立こそ、造園配置の醍醐味といえるかもしれません。



 薪小屋の背面の細い路地空間。わずかな面積の庭の中に、様々な表情を作り出します。



 東側の狭い空間は、窓配置に応じた植栽を常に心がけます。1階窓、2階窓、木々越しの景色を美しく潤い豊かに構成してゆくことで、住まいに居ながら自然を感じ、落ち着きのあるゆったりとした日常を作り出す、心地よい住まいの庭はその家屋に沿って作っていきます。決して庭だけでは完成せず、同時に家だけでは決して心地よい住まいは生まれません。
 植栽は建築作品を引き立てるための単なるデコレーションではありません。住まいの環境、快適な住まい、そのための植栽、住む人の長年の心地よさを作り出すのが造園や建築であるという責任を、我々住まいの作り手は常に真剣に意識しなければなりません。そのことが建築や造園世界の常識となれば、日本の住まいはもっとよくなってゆくように思います。



 同じく、狭い西側空間も、一階、2階双方の窓配置を中心に植栽します。西側の窓際植栽は、住まいの微気候環境に大きな効果をもたらします。



 玄関アプローチは、型枠を用いずにハンドメイドに柔らかく仕上げます。地表の水の動きを極力妨げないように、園路を接続せずにところどころ目地幅を空けることによって地表環境の健全化に配慮します。



 デッキに落ちる隣家生垣の木漏れ日。隣家の高生垣がここでは西日を緩和するとても大きな役割を果たしてくれます。造園はその場所の環境条件を取り込みながら、その場所に応じて最善の住まいを作り上げていきます。



 新築の家と庭、これからこの地でHさん家族の暮らしが始まります。
 私にとって庭の完成は、その地の環境つくりのほんのスタートでしかありません。これから木々が育ち、そこに住む家族や街の中でそれぞれの心を育みながら、景観が風景となり、そして風土へと育ってゆくことを願いつつ、日々庭を作り続けております。
 ここで始まるHさん家族の新たな暮らしと共に、庭の木々が寄り添い共に年月を重ねてゆきます。
 関係者の皆様、そして好きにつくらせていただきましたお施主のHさま、どうもありがとうございました。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
一年の終わりに     平成26年12月26日


 師走に入り、今年最後の庭づくり一期工事が終了しました。つくば市Mさんの庭です。小学校の通学路となる角地の広い敷地、通る子供達にも楽しんでもらえるよう、木塀をセットバックして塀の前面にもゆとりのある植栽を歩道に張り出します。
 春になれば新緑の淡い緑が家を包み込むことでしょう。



 南側主庭。春を待ってから、芝や地被を植栽し、そして完成となります。

 Mさんも問い合わせいただいてから2年以上もお待たせしての造園工事となりました。いつからか、1年以上お待ちいただける方の依頼しか、承ることができないようになりました。
 お待ちくださるお客様には、実際に作らせていただく頃にはもう、感謝の念しかありません。
 同時に、こうして作らせていただくことは本当に縁なんだなと、思います。
 何かの縁があって、そこに庭が生まれます。そして、その後5年10年と、庭の管理を通してご縁は続き、庭やお施主家族との時の流れの中に発見があり、思い出があり、喜びもあります。
 ふと、これまでいくつ庭を作ってきたことか、そしてこれからまた、どれだけ新たな庭を作ることだろうか、そんな想いがよぎります。出会いと縁は自分の糧となります。これからもずっと、与えられたご縁を大切に、来年も歩んでいきたいと思います。



 造園工事の際の視点で今年、新たに増えたことがあります。それは、土地の改変等によって壊された土中の気脈水脈を再生するという視点です。
 それは植栽した木々の健康のためだけでなく、その土地が自律的に大地の健全性を取り戻し、豊かな土中生態系を再生してゆくという視点で、造園工事の際に水脈改善のための作業を必ず行うようになりました。
 大地の健全性は、その土地の空気の流れをも変え、人にとっても快適で健康な本来の生活環境をおのずと作ってくれるのです。

 写真の竹筒の頭が土中から飛び出している光景、高田造園の完成直後の庭ではこの光景が標準となることでしょう。
 竹筒は数年で腐り、なくなりますが、その頃には木々の根がその縦穴にびっしりと張りめぐらされ、滞ることのない大地の呼吸孔としていつまでも機能し続けるのです。



 ここは工場跡地の臨海埋立地、ジェフ市原のホームグランド、フクダ電子アリーナ正面広場です。埋立地の劣悪な土壌環境と海から常に吹き付ける潮風にさらされ、植栽された木々が健全に育たない中、写真奥の密集した木立はこんな環境でもひときわ健全に生育しています。

 この木立は一昨年の秋、、コナラやシイノキ、カシノキなど、千葉のふるさとの木々を組み合わせて植栽し、そして2年が経過しました。



 潮風にさらされる、植栽樹木がなかなか健康に育っていかない土地条件のもと、、この木立だけは健全に力強く、競争しながら伸びていました。
 2年前、固く締め固まった土地を人の背丈ほども掘り下げて、そして下地の硬板層に穴をあけて水脈を取り、水と空気が円滑に流れる土壌環境を作りながら植栽したのです。

 結果は明らかで、この公園のどの木々よりも健康に、元気に生育していました。その間、ほとんどメンテナンスはせずとも、こうして木々自身の力で健全に生育してゆく様子に、感慨無量な想いに包まれます。
 人の暮らしの環境に木々を植えるということは本来、人の幾世代もの先のスパンで考えていかなければなりません。
 人間よりもずっと寿命の長い木々は、健康に大きくなってこそ、そこに豊かな環境を作ってくれるからです。つまり、植栽して、それが健全に育って自分の次世代、その次の代を見据えて植栽してゆくこと、つまりは、自然環境再生につながる形でしかあり得ないということに、はっきりと気づきます。

 再開発などと言う名の、壊しては作る、その繰り返しの果てにどんな未来があるというのでしょう。人は健全な自然環境あってこそ、継続的に生きていけるという本質も、今のマネーの論理の中で見失なわれつつある中、造園という仕事から、今の時代に発信していかねばならないことがたくさんあるのです。




 庭を作れば作るほど、毎年うかがわねばならない手入れの件数は増え続けます。ここは2年前に施工した、埼玉県草加市のKさんの庭です。2匹の大型犬と家族がともに自由に過ごせる場所がこの庭です。



 2年を経て、庭はどこから見ても落ち着いた表情を見せてくれます。



 密集した住宅地の真ん中に、この庭があります。それ故に、この庭は家族だけでなく、周辺の家の方にとっても癒される貴重な緑の環境となり、さらには様々な小鳥たちもここを訪れます。
「小鳥がたくさん来るので毛虫もほとんどいないです。」とKさんは言います。
 もちろん、農薬散布などは決して行わず、自然の循環の中で自律的にコントロールされて快適な環境を作ってくれる、それがこれからの庭の理想なのかもしれません。



 庭の中の落ち葉ストック。スペースがあればなるべくこの落葉ヤードを庭に取り込んできました。これ一つで、落ち葉とサンドイッチしながら1年分の台所の野菜くずが土に還るのです。しかも、水と風をコントロールすれば嫌な臭いもまったく湧きません。
 落ち葉や野菜くずをゴミに出さずに大地に還元してゆく、それを知ることは大きな喜びをもたらし、そして、未来につながる地球の環境を育てることなく食いつぶしながら生きる社会の罪深さに気づくのです。
 今再び、実感を持って自然と向き合い、感じ取ること、それが人や社会の健康、存続のために不可欠なものであることを、この仕事を通していつも感じるのです。



 今年から始めた高田造園の自然農園、霜に耐えながら五月菜が青々と寄り添い、、春の訪れをひっそりと待っているようです。
 この菜園も、もともとは締め固められて硬くなった土地を水脈改善し、そして剪定枝葉をリサイクルしてできた腐葉土を漉き込んで畑にしました。
 肥料も特に与えず、また、一度作った畝を耕すこともありません。この畝の土の中には、様々な土中生物が生態系を作り上げていきますから、それを再び壊すような耕起はせず、自然と寄り添いながら野菜を収穫してゆくのです。
 これまで、収穫の度に耕していたときに比べてはるかに作業は楽しく、感動や発見も多く、そして収穫も多く、大地の動植物との共存が実感されます。

 造園も農も、対話するように自然と向き合うことで、行きつくところは豊かな自然環境の中で共存してゆくあり方なのだと気づきます。



 そして、社有林に小さな小屋が建ちました。構造材や建具はすべて、古民家を解体した廃材を用いています。



 小屋の中には広い土間に薪ストーブ、そして6畳一間の小さな部屋。懐かしい空間と温かな木の香り、来年にはこの森の中にもう一棟山小屋を建て、そこがこれからの私たちの活動の拠点となります。
 
 今の都会の人たち、現代の子供たちに自然と共にあったかつての農山村の楽しみを体感してもらう、そんな場所にしていけたらと考えております。
 そしてここは、来年立ち上がるNPOダーチャサポートの一つの活動拠点になるのです。
 今の時代、豊かな未来は失われた過去の中にある、そんな言葉が脳裏によぎります。私たちは今、失ったものを取り戻さねばならない時期に来ているようです。

 日本社会に暗雲が色濃く立ち込めるここ数年、私たちはあきらめるのではなく自律し、そして本当の豊かで美しい日本を取り戻していくべく、確かに歩んでいきたいと思います。
 こんな時代だからこそ、エネルギーが高まり、そして人も集まります。



 そして、小屋の脇にはハンドメイドな茅葺きトイレが完成です。素掘りの穴に用を足したら落ち葉と木炭をぱらっとかぶせる。水分の調整を炭と落ち葉と素掘りの穴がその役目を果たすのです。素掘りの穴に空気を通せば臭いも湧きません。
 そしてそれをまた、大地の循環の中に還してゆくのです。

 今年は様々な新たな気付きがありました。それも、様々な人との出会いのおかげです。
 また、本年中に手入れに廻れなかったお客様、工事をお待たせしているお客様に、この場でお詫び申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
 







 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
山際の家屋 地下水脈の改善   平成26年11月17日


 ここは静岡県三ケ日町
、浜名湖畔の山間部、Kさんの家、新築住宅の造園工事です。遠方ゆえ、1か月ぶりの工事再開となりました。
 背面北側に山を背負い、南側に開けた家屋配置、こうした場所は昔から住まいの立地条件として、ある面理想的で、かつてはこうした山の畔に集落が点々と繋がる光景がよく見られました。
 こうした山畔が好まれて住まれた理由のうち、とても重要な一つに、水の得やすさがありました。
 こうした場所では裏山の際を掘れば、たやすく水脈が見つかります。そしてそれが生活用水や農業用水などに利用されてきたのです。
 かつての整備された里山では、斜面林の麓、山の際に素掘りの側溝や小川が誘導されている光景が見られます。
 同時に、こうした場所に住まいを構える際、地下水脈が住まいの快適性に悪影響を及ぼさないよう、水脈をコントロールする知恵も、かつての暮らしの中では当たり前に持ち合わせていたのです。



 山の畔に家を建てれば当然、無数の地下水脈が、家の下や庭を縦断します。
 特に、家屋建築の際に造成されて締め固められ、コンクリートで覆われてしまったこうした宅地では、敷地内に地下水脈が停滞し、土中の滞水が起こります。そしてこうした水の停滞は様々な問題を引き起こすのです。
 こうした場所での造園工事では、停滞した水脈を健全な形に再生しつつ、進めてゆくことが大切です。
 地下水脈の停滞は、自然環境だけでなく、そこに住む人間の健康にも悪影響を及ぼします。地上だけでなく、地下にも健全な形で水と空気が流動する環境こそ、豊かで心地よい住環境を育てます。




 植栽しながら、地下の滞水箇所を見つけていきます。1か月前に植栽した木々の中の1本が枯れ始めたため、その根元を掘ったところ、案の定、滞水が見つかりました。
 



 家の下から滾々と水が湧き出し、そして、それがはけずに土中に停滞しています。



 たとえ地下水位が高くても、水が動いてさえいれば、その動きと共に土中の空気も動き、木々や土中生物にとって健全な環境が育ちます。それによって土質も自律的に改善されていきます。しかし、こうして滞水すれば、水は腐り、そした土は青くヘドロと化して有害な気を発し、土をますます目詰まりさせ、土中環境をさらに不健全化していきます。
 つまり、地下の水の流れが円滑でなければ木々は長く健全に育つこともなく、豊かな生き物を育む本来の生態系がなかなか醸成されていかないのです。また、土中への円滑な空気の流れは地上部のよどみをも解消します。
  住宅地の地下滞水の多くは、水脈を顧みない現代の土木建築工法の欠陥に問題があります。
 これから植栽する木々を、自然状態のようにたくましく健全に育てていこうと思えば、この土中水脈改善から手掛けることが必要です。

 滞水箇所の下流部に深い穴を掘り進み、滞水がつくったヘドロによる硬板土層を抜いてその下の本来の土層にまで縦穴を掘っていきます。ここでは深いところで1,5m程度掘り下げて、水の抜ける層に到達させます。



 そしてその縦穴に気抜きとなる竹筒を差し込み、その周囲に乾燥させた剪定枝を縦にに差し込みます。無機物だけでなく、有機物をバランスよく組み合わせることで、自然の力で自律的な土中環境改善につなげていきます。



 そしてその隙間に、木炭を中心とした改良資材を漉き込んでいきます。これが締め固められたこの土地の呼吸孔となり、水と空気の動きが土中に生じることによって周辺の土中環境も再生されてくるのです。
 縦穴の底に集まった水は徐々に浸み込み、それが毛細管現象で土中深い位置にしみわたると、寸断された水脈とぶつかってそこに水が供給されることによって、水脈再生の勢いが増します。そしてその深い位置からも、本来の造成前の水脈が再生されてゆくことでしょう。

 人が壊してしまった大地の血管、その再生のためにほんの少しばかり、お手伝いすること、自然の力による再生のきっかけを作ること、それがこの作業なのです。



 
 植え戻し前の暗渠縦穴。枝の隙間から土中へと、空気も水も流れ込みます。



 そして、暗渠となる横溝を掘って絞り水を受け、縦穴と繋げながら、敷地全体を改善していきます。



 暗渠パイプを併用しつつ、乾燥枝などの有機物、炭、腐葉土、ゼオライト、ウッドチップなどで埋戻し、あくまで土中環境の改善と再生のために、暗渠整備していきます。




 暗渠埋設の他、さらに地形から水脈を予測し、要所に空気孔となる竹筒を差し込み、くり抜きます。



くり抜いた竹筒の周りに炭を中心とした改良材を流し込みます。



 こうした小さな気抜き孔を10数箇所、点在させて、水脈の再生と土中生物環境の改善を促します。



 植栽、水脈改善さ作業を終えて整地します。精緻の際、起伏に応じて微妙な地形を造作して、表面水が表土を削ることなく、水jの勢いが分散されるように、山のライン、谷のラインを変化させていきます。
 そこに直線的な単調な連続はなく、期せずして自然なラインに近づいていきます。

 表面水に加速度がつけば、表土を削り、泥水となって表土の微細な空気孔を塞いでしまいます。山や谷など、自然の地形を見れば、流れる」水が加速度がつきすぎずに一定の速度に勢いが弱められるよう、自然とそんな地形となっていることが分かります。
 
「庭のお手本は自然。」とは、よく耳にする言葉ですが、見た目だけ都合よくお手本にするのではなく、見えない部分の素晴らしい力や役割、それを活かすことがこれからますます必要となることでしょう。



 家屋南側の水脈改善を終えて翌日、お施主のKさんが言いました。

「いつもじめじめしていた北側まで、水がはけて乾いてきた。いつもじめじめしていたのに、すごいね。」

 この一言で、丸2日間も水脈改善に費やした苦労が報われます。そして、木々もこの土地も、生き生きとこの土地の自然環境の一員として育ってゆくことを夢見ます。

 

 







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東京都世田谷区の造園外構工事    平成26年11月1日


 ここは東京都世田谷区、等々力渓谷にほど近い住宅地の一角、Mさんの造園外構工事がいろいろクライマックスを迎えています。
 裏庭側からかかり始めて、ようやく門と駐車場の外構工事にたどり着きました。
 門やアプローチなどの外構工事に先行して主要な高木は先に配してしまうのが、高田造園の工事方法です。あくまで、主要な木々の適切な配置をできる限り優先して、全体が心地よくまとまるように門や駐車スペースの配し方を調整してゆくのです。
 今回は昭和初期の洋館のような雰囲気を持つ建築に合わせて、モダンで丁寧な、当時の雰囲気や空気感をつくるべく、素材とデザインを吟味してまとめていきます。



 駐車スペースや接道との段差は版築で処理していきます。こうした敷地内の段差は、上部植栽地の土中環境をよりよい状態に育ちやすくするもので、庭はなるべくこうした高低を活かします。
 土留めに呼吸する版築塀とするのも、単にデザインではなく、土中環境の改善による、樹木の健康な生育を期してのことでもあります。
 コンクリートを用いて土中の呼吸や水を遮断してしまえば、土中に水脈気脈を生み出すせっかくの高低差も意味をなさなくなってしまいます。

 土中の呼吸や水の動きに配慮すれば、こうした段差の処理は本来、竹などのしがら柵や、あるいは石積みのような、空隙のある形のものが最適なのですが、そこはその場のデザイン性との兼ね合いで考えていく必要もあります。



真砂土・石灰・にがりを配合して付き固め、型枠を外すと版築独特の美しい地層文様が現れます。



 この、版築の上に、笠石をあてがっていきます。この笠石も、化粧柱も、この場に合わせた寸法で洗い出しでつくりました。
 素材はなんでも、その場に合わせて作り、あるいは見立てることが大切です。こうした外構素材は、安易な既製品を当てはめて構成しても、本当の意味で見ごたえのある品のよい空間は決して生まれません。
 土、石、木といった外構の3原則素材を基本になんでもその場に合わせて作ることが、大切です。



 真砂土洗い出し仕上げの笠石。呼吸する素材は年々その風合いを増していきます。



 笠石設置後の土留めの表情。



 1つずつ工程を進める度に門回りの景が美しく引き締まってきました。



煉瓦積みの門柱の笠石。微妙な水きり勾配と程よい厚さが門周辺を上品にまとめます。



 土、煉瓦、石を基本素材に、門扉もまた、木製造作していきます。なるべく安易な既製品、高価な素材など使わず、意匠に凝りすぎず、そして身近で手に入る土・石・木といった素材を基本に、素朴に一つ一つ丁寧に作ってゆくこと、それが飽きることのない生涯の美しい原風景を育てることに繋がる、そんな風景を提供していきたいと思います。







投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県市川市の庭 植栽と土壌環境の再生  平成26年9月19日


 千葉県市川市、Tさんの庭の植栽が本日終了しました。あとはTさんセルフビルドによる薪棚、木柵、そして、来週施工予定の駐車場工事を残すのみとなります。
 植栽前は丸裸だった、山小屋のような佇まいの美しい家屋もようやく木々の合間に落ち着きました。



 雨樋がなく、2階屋根からの雨水を受けるため、広い雨落ちスペースを設け、その内側に叩きの土間が廻ります。植栽スペースはわずかな幅ですが、わずかな庭を隔てて向き合う隣家との目線の衝突を、木々の枝葉が優しく緩和します。



 狭い庭こそ、家際の雑木植栽が活きてきます。眺望のよい2階をリビングとするこの住まいでは、2階窓からの景ばかりでなく、夏の日差しや強風を和らげて快適な環境を作る木々の効果が心地よい住まいの環境を作ります。
 眺望を妨げず、なおかつ木々越しに落ち着く窓辺の景となり、さらには夏の厳しい日差しが緩和されて、快適な住環境として育ってゆくよう、植栽を配します。
 住まいに対して適切な植栽は美しい家屋の外観を生み出します。



家際、窓辺を中心として配植し、なおかつそれぞれの木々が将来伸びてゆく空間にも配慮します。数年後には、敷地の頭上を落葉高木の枝葉が占有する、木々の中の佇まいへと育ってゆくことでしょう。



 叩きの土間に落ちる木漏れ日の表情。光と影が躍る庭の表情は刻一刻と変化し、飽きることがありません。



 幅3m足らずの植栽スペースですが、ひとたび踏み込むと、すでに森の中の精気が感じられます。木々が健康に、自然で、ここに移住させられた木々が生き生きと育ってゆくよう、様々な配慮を尽くします。
 人が快適と感じ、健康でいられる環境とは、木々や他の生き物たちにとっても健康でいられる環境なのです。
 したがって、住む人にとって本当の意味で良い環境を作ろうと思えば、木々や様々な大地の生き物たちが快適に健康に生きられる環境つくりしなければなりません。
 そのためには、植栽後、土壌環境を含めて力強く環境が改善される植栽の在り方、樹種の組み合わせや、庭を構成する素材の選択に至るまで配慮してゆくことはもちろん、宅地造成によって破壊された土中の水脈や気脈を再生することも、早い段階で健康な環境を作り出すうえで、とても大切になるのです。



 植栽整地仕上げ後、実際の表土を見ると、生き物のいない荒れた土壌構造であることが分かります。植栽の際には大量の堆肥等の有機物資材を漉き込みますが、それですぐに土の健康が改善されるというものではありません。一度壊してしまった豊かな土を改善するには、それなりの時間をかけた対処が必要なのです。
もともとは豊かな関東ロームの畑土だったのですが、重機に蹂躙されて締め固められ、その後の開発、建築工事によって踏みしめられ、そして命育む豊かな土地は痩せ衰えていきます。こうした土壌は流亡しやすく、保水性も透水性もなく、固く乾燥しやすい状態となります。

 植栽の際、こうした悪質な条件で、安易に樹木の周りだけ良質な土壌に入れ替えるというのが、これまでの造園土木の常識でしたが、それだけでは根本的な解決にはなりません。なぜなら、土中深い位置に至るまで、大地が健康であるために必要な、土中の水脈や気脈を含めて根本的に改善していくという発想こそが、実は大切なのです。



 少し、土について説明します。これは土中の生物活動が豊富な、ふかふかの生きた土です。よく見ると、小さな粒状になっているのが分かると思います。この土壌構造を「団粒構造」と言い、実際にはスポンジのように柔らかで壊れやすく、その空隙にたくさんの水や空気を蓄えます。また、構造上、毛細管現象が起こりにくいために土が乾燥しにくく、木々にとっても、あるいは他の様々な生き物たちにとっても、命の源となる土壌の状態と言っても過言ではないでしょう。
 健康な森林土壌の貯水効果や浄水効果は、団粒構造に起因します。



 一方、固く締まった塊となる、締め固められた造成地や荒れ地に見られるこうした土壌構造を「細粒構造」と言います。こうした土は、雨が降ればどろどろの粘土のようになり、日差にさらされればすぐに乾燥し、固くなります。
 よく、土の色で、「黒土」がよいとか、「関東ローム」だからよいとか言いますが、元の土がいくら有機質に富む豊かなものであっても、重機による造成や踏みしめによって団粒構造を壊してしまえばそれは全く良い土ではなくなるのです。土の色や種類ではなく、土壌の構造が良し悪しを決定づけると言えるでしょう。
 乾燥しやすく、保水性のない、浸透せずに泥水となって流亡しやすい、そんな環境を増やしているのが今の宅地開発の現状です。

 そして、一度壊してしまったいのちある土を再生するのも、やはり「いのち」の力以外にないのです。



 造成された土地は透水性に乏しく、それが集中豪雨の際の都会の水害や井戸の枯渇など、様々な問題を引き起こします。そのため最近の住宅地では、雨水をなるべく土中に吸収させるべく、浸透桝の設置を義務付けることが増えてきました。
 Tさんの住宅地も同様、行政の指導によって開発の際に敷地のいたるところに、こうした浸透桝が設置されています。



 浸透設備の構造は、穴の開いたこうした集水桝の周りに、透水性のあるビニルシートでくるんだ砂利を配し、雨水を土に浸透させようとします。そして、暗渠管という穴の開いた管をやはり透水シートと砂利でくるんで敷地に巡らせて集め、浸透しきれない分を地中管によって敷地外に排水します。

 これが今、一般的な浸透設備の在り方ですが、この構造の致命的な欠陥が二つほど挙げられます。
 一つは、こうした人工的な素材は、徐々に目詰まりして効果を失うということ、もう一つは、その浸透性は結局は周囲の土壌の浸透能力に限定されるため、造成によって締め固められた、死んだ土においては、何の根本的な解決にもならないのです。



 一方、このバケツの土は、庭に植えるために、リュウノヒゲのポット苗の根を振るった際の土です。ポット苗の中でさえ、根の作用と共生する土壌生物の力で団粒構造が育っていることが一目瞭然です。
 土壌を改善するのは植物の根の作用と、共生する多様な土中生物の働き以外ないのです。
土壌改良の際に有機物を漉き込む大きな理由の一つは、こうした土中生物の進入しやすい条件を整えることにあります。

 人工的な暗渠はいずれ詰まる、しかし、自然が作る団粒構造、そして年月をかけて作られる健康な大地の水脈は永久に詰まることがありません。土地の浸透性を高めるためには、人工的な手法によって不自然な何かを設置するという発想ではなく、豊かな大地を自然の力で再生してゆくという発想こそが大切なのです。



 私たちの植栽では、高木樹種から中木、低木、下草と、木々を階層的に組み合わせて、圧倒的な数量の植物を植えます。その中心には、力強く根を伸ばして早期に環境を改善してゆく力の強いコナラなどの落葉高木樹種を主体に用います。
 樹木を一本ずつ植えるのではなく、樹木群として組み合わせて植える理由は、たくさんの根の枯死再生によって土中に大量の有機物を持続的に供給し、土中の改善効果を高めることも大きな目的となります。



 それだけでなく、畑の周囲に配した、苗木混植による生垣植栽部分にも、この土地の水脈を改善するための一作業を施しています。
 この下の深い位置にまで土を掘り下げ、大きな石と土をサンドイッチしながら埋戻し、その上に、カシやタブ、クリやコナラ、モミジなど、1m程度の苗木を混植しています。
 地中深くから大きな石と土をサンドイッチすることで、土が自重によって圧密されにくく、水や空気が浸透する条件を整えます。さらに、カシなどの深根性の高木樹種の苗木を配することで、早い段階で根が土中深くに達し、力強く土壌を解消し、透水性を高めます。そして良くなった土はさらに、この土地の木々を健康にしていきます。

 「カシなど、大きくなったらどうすんの?」と思われる方もおられると思いますが、この生垣は畑への日差しを遮らないよう、最大2m以内の樹高程度で管理する予定です。根元から伐り戻しと萌芽による再生を繰り返しながら、小さな樹高で健康に活かしつつ、根の働きによって土中水脈や気脈の改善効果を発揮させ続けるのです。



 その土地を健康にしてゆくこと、木々にとっても人にとっても健康でいられる環境を再生するという発想が、これからの住環境つくりにますます求められることでしょう。

 病んだ土地を健康な大地に再生する、とてもやりがいのある仕事です。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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