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茨城県常総市の庭 施工中 平成26年5月2日
ここは茨城県常総市、広々とした関東平野の田んぼに囲まれた農村に佇むAさんの家、4月も半ばを過ぎるころ、造園工事が始まりました。今年はなぜか、茨城県での仕事が続きます。
様々な造園造作の前、重機が入るうちに落葉高木の植栽から始めます。
私たちの庭はまず、木々による環境つくりが第一です。
しかし、、いつもながら3トンロングのユニック車の荷台を大きく張り出して木々を運びます・・。
大きな木々がもたらしてくれる心地よさは計り知れません。毎度のことながら執念で、植栽時点6mを超える大きな木々を大量に運び入れるのです。
南庭、家際の落葉高木植栽、庭を作る上で最も肝心な個所から植栽が始まります。
そして、庭の奥、東側にも要所に木立を点在させていきます。
家周りの高木植栽をどう配置するか、それが住環境の快適性を大きく左右するのです。
庭の奥の高木植栽後に、駐車場や玄関アプローチ石畳を仕上げていきます。
今回はログハウス調の重量感を持つ家屋に調和するように、枕木と御影石大判の古材を組み合わせて、植栽の必要な個所を避けながらアプローチを回していきます。
家屋があって、庭という外空間があります。家屋を有機的に調和させてゆくのが庭の役目ですから、家屋に合った素材の取り合わせがとても大切です。
さて、連休前の工事はここまでです。いい住環境が生まれる予感を感じながら、Aさんご家族には幸せな連休を迎えていただきます。
ちなみに、この庭は、昨年高田造園から独立した女流庭師TKさんの処女作(施工中)です。
「完成するまで見に来ないでください。」と口酸っぱく言われていたのですが、ついついこっそり覗き見してしまいました。。
一見、私の作る庭に瓜二つです。配置もボリュームバランスも私から見て、文句のつけようがありません。
植栽のボリューム配置や配植もよく考えているのが伝わります。
利休道歌にこうあります。
「規矩作法 学びつくして破れども、離るるとても、元を忘るな。」
私は社員の独立の目安を5年程度としております。TKさんも5年以上、私の庭つくりに触れ続けてきたので、きっと私の庭の構成をしっかり把握しているのでしょう。
これだけしっかりした庭の構成ができれば、あとは実績を積むばかりです。そして、いずれ私とは違う、自分の庭を作りだすことでしょう。
木々がじっくりと成長するように、人も月日と努力で育ちます。そしてすべての状況は移り変わっていきます。
若い人を育てる立場も、とてもエネルギーが必要です。親方として、反省ばかりの毎日です。
時に、自分は人を育てることは向いていないんじゃないかと思うこともしょっちゅうですが、こうして自分の下にいた若い人たちが育ってくれたのを目の当たりにするにつけて、「自分も少しは役にたったのかも。」と思えることもあります。
育ってくれた弟子たちに感謝です。
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
高田造園農場始動と茨城県鹿島市の庭完成間近 平成26年4月6日
今年度からの目玉的な取り組みとして、自給栽培農場の取り組みが先週ようやく始動しました。
自社所有地の開墾作業に始まり、いずれは植木生産用の借用農地の一部を食糧生産畑へと広げていきます。
これからの時代、今後の地球環境、地域環境に対する危機意識は人によって様々ですが、いざという時の避難地、自給自活の拠点を持つことを考える人が、震災以降増えてきたように感じます。
私たち、高田造園も、今後は半農半造園?を志し、食糧、エネルギーの可能な限りの自給自活を目指します。
当面の目標は、社員世帯全員のコメ以外の穀物と野菜の3年以内の自給体制、さらには自家採取での栽培を目指し、余剰生産品はお客さまや仲間に分けていこうと考えております。
ここではニワトリの飼育、炭焼き窯、炊事用のかまど、周囲の自社林内に横穴式の食糧貯蔵庫、避難地として利用できるバンガローなどを計画しています。
ここは樹木ポット苗置き場跡地を開墾しています。社員で一列になり、固くなった土をスコップで掘り返します。
そして、開墾地に漉き込むのは、剪定枝葉を原料に作った大量の完熟たい肥です。
剪定枝や落ち葉を細かく裁断し、米ぬかを混ぜて堆積して1年、腐植に富んだ素晴らしい完熟土壌に生まれ変わります。
これを菜園の堆肥として大量に漉き込み、固くなった大地を再生していきます。
そして小型の耕耘機で攪拌、耕耘します。
今回は種イモを植え付けていきます。
ここまでする必要はないのですが、、稲わらの在庫がたくさんあったので、丁寧にマルチします。農園最初の植え付けですので、みんなの夢と期待がこもります。
この日は約20坪ほど開墾し、堆肥を混ぜて野菜植え付けの準備を終えました。菜園はこれから合間を見て、どんどん広げていきます。
さらにこの日は、農園外周に農地環境保全林を育成すべく、外周にポット苗を混植して植え付けました。コナラ、クヌギ、サクラ、モミジ、スダジイ、マテバシイ、タブノキ、アラカシ、イチイガシ、などなど、5年もすれば防風林として機能する緑の壁となることでしょう。
ちなみにこれは、1年半前に植えつけた樹木ポット苗混植実験地です。
植えつけた当時は50センチにも満たなかった苗木たちは、1年半を経過して高さ2mの小樹林の様相を見せています。今年の暮れには高さ3mを超えることでしょう。
木を植える、育てることは本当に楽しいものです。未来への夢と希望が広がります。
1年半前に建てたまま、残材置き場と化していた小屋も片づけて、ここに農具を収めます。
この小屋はすべて、解体した古材を用いて作りました。
「みんながお金をたくさん使うこと」によって「経済をよくなり、みんなが豊かになる」という幻覚から、そろそろ目覚めねばならないように思います。
なるべくお金をかけず、身近な自然を活かして持続的に美しく生きていきたい、そんな価値観がこれからますます広まってゆくことでしょう。私たちもそうありたいと思います。
1日の作業を終えるころ、雑然としていた固い土地に菜園が出現し、そしてなんとなく、美しくのどかな風景が生まれつつある予感が感じられます。
木々の緑と農のある風景、それこそ私たちが心底望む心安らぐ平和の光景です。
かけがえのない大地、そして大地を再生させること、生き物の絆を再生する、これから高田造園農場はわが社みんなの心に明るい希望を育み続けます。
さて、2月からかかっていました茨城県鹿島市Yさんの造園外構工事、いよいよ完成間近となりました。長らくてがけた造園工事の最期は、いつも少しばかりの名残惜しさを感じます。
Yさんも造園依頼いただいてから2年以上お待たせしての竣工となりました。お待ちいただいた分、私たちの庭つくりにも力がこもります。
週末家庭菜園を楽しむYさんの庭には、これもまた古民家を解体した古材をほぼ100パーセント用いて農具小屋を建てました。こうした小屋は庭の楽しみを幾倍にも高めてくれます。
小屋の土間は、土と石灰とにがりを混ぜて叩き締めた、古来からの本叩き仕上げです。
セメントを用いないからこそ生み出される土の質感と温かさ、素朴で懐かしい風合い。そしてこの叩きは壊せばそのまま土に還ります。
青空に映える芽吹き前の雑木の枝がそよ風に揺れます。
接道部分。隣接道路にも緑を張り出し、街に潤いを提供します。
芽吹き前の落葉樹は温かな陽光を浴びて日に日に芽を膨らませていきます。あと2週間もすれば、Yさんの家は新緑の雑木林の奥に見え隠れすることになるでしょう。
完成まであと1日です。
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
事務所の春と、新年度初庭の完成 平成26年4月3日
いのちのざわめきに心躍る春が来ました。クロモジの芽が日に日にふくらみ、小さな花が開いたと思うと陽光に向かって葉が日に日に開いていきます。
芽が開く直前の、エネルギーに満ちた芽先をなでるような春の日差しがやさしく、この時期は日本人の誰もが命の美しさに心安らぐのではないでしょうか。
樹の陰で生き生きとした葉色が美しいアセビも、春の咲き始めの時期がもっとも清らかです。
いつもはあまり目立たずに、それでも確実に庭に雰囲気を与えてくれる名脇役のアセビも、春の訪れに負けじと存在をアピールしつつ、他の木々と共に春の音色の合唱に力強く参加します。
春の木々は、見る人の心に力と希望を与えてくれます。花ばかりでなく、力強く新葉を伸ばす姿が生きとし生けるものすべてに活力を与えてくれるようです。
吉野ツツジも今が満開。木陰で木漏れ日を拾って静かに生きるこの木も、この時期ばかりは庭の中で最も目立つ印象的な色合いを見せます。普段はあまり威勢のよい木ではないのに、まるでこの開花の時期にすべてをかけて、生きているようです。
フキノトウはとっくに花の時期を終えて、柔らかな見慣れた春の葉が春の野の風情を感じさせます。
四季があり、いのちの春が毎年訪れる素晴らしい日本の風土。
このまま温暖化が進めば数十年後には北海道を除く日本のほとんどの平地は亜熱帯化すると言います。来年も、再来年も、いつまでも美しい春の野が見られますように、そんな祈りが春の音色に呼応して響くようです。
芽吹き前の昨日、今にも雨の降りだしそうな曇り空の下、4月に入って第一号となる庭の改修工事が終了し、引渡しとなりました。
千葉県市川市sさんの庭、依頼いただいてから実に2年半ほどお待たせしての完成となりました。
あいにくの空模様でよい庭の表情が撮れませんでしたが、1か月後には新緑の緑に包まれてその雰囲気は一変します。
庭のある暮らしを夢見るお客様をお待たせするのはいつも心苦しく、気持ちばかり焦ってしまいますが、完成後、「待った甲斐がありました。」というお客様のありがたい言葉にいつも救われます。
庭の完成は、縁の始まりです。庭を通してのお客様との付き合いが始まります。年月と共に美しく落ち着きを増してゆくように、私たちもまた、これまで作らせていただいた庭の木々たちと共に年を重ねていきます。
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
今月の天候に想うことと、茨城県鹿島市の造園工事 平成26年2月28日
2月初旬以来、ブログ更新の間隔が大変長らく空いてしまいました。3週間ぶりのブログです。
この間、度重なる記録的な大雪に閉ざされ、あるいは2月とは思えないほどの記録的な温暖な日々もありました。
そしてここ数日、大気汚染で太陽がかすむ日々が続いています。昨日は当社事務所所在地の千葉市若葉区で大気1㎥あたり90マイクログラム以上という高濃度のPM2.5が観測されました。
記録的な大雪に記録的な温暖な日、そしてこれまでにないほどの広域な大気汚染、今月はこれからの地球、これからの私たちの生存環境、いろいろと重く考えさせられた月となりました。
今朝の光景、茨城県鹿島市の現場へ向かう道すがら、一向に衰える気配のない霞んだ光景に、朝から気持ちが沈んでしまいます。
1キロ先の送電線の鉄塔が霞み、数キロ先に広がっているはずの街の光景はよどんだ霞に閉ざされて全く見えません。
こんな光景がここ数日続いているのです。
6年前までの数年間、造園工事のために幾度も訪れた隣国中国。この霞み具合は当時滞在した北京や蘇州の光景や殺伐とした空気感に大変よく似ています。
当時の中国、屋外での造園作業の中で気管支ぜんそくが悪化し、その後私は体調を優先し、中国での仕事から手を引きました。あの大気の中で屋外の仕事を続けることは、私にとっても社員たちにとっても危険だと判断したのです。
あれから6年、今はさらにひどい状況になっている様子が毎日のように報道されます。そしてこうして、日本中どこにも逃げられない、広域汚染の危険にさらされるようになりました。
私は長男の誕生の後、千葉市街の街中から、市内郊外の田舎へと移り住みました。7年前のことです。悪化した気管支ぜんそく改善のためと、良好な子育て環境を求めてのことでした。
かつては、都会を離れて自然豊かな田舎に行けば澄んだ空気が得られ、都会の劣悪な環境から逃げることができました。
しかしながら、これからの時代、地方に行っても田舎に行っても、本当の安全、安心は得られない時代となりました。
たとえ海外に移住しても、空気も水も土も、徐々に汚染が広がり、ついにはどこにも逃げ場所などなくなることでしょう。
大変なことが進行していることに、多くの人が気付いていることでしょう。
全ては私たち人間の業の結果であって、深刻な大気汚染が報道される中国ばかりの問題では決してありません。
未来の地球、いのちの生存基盤である健康な大地を犠牲にして、相変わらず景気や経済発展という、決して持続できない誤った価値観から軌道修正することもできない、私たち人間。
子供たちの未来のために、これから必ず迎えるであろう激動の時代を前にして、今月の驚くような気候の変化を目の当たりにして、大切なことは何か、自分の暮らしの中でできること、何をしてゆくべきか、そんなことを考えさせられます。
雪の後、幹折れや枝折れの被害の復旧や様子見に庭を訪ねて回ります。1週間ほど前に訪れた千葉市美浜区のカフェどんぐりの木。雪にも負けず、雑木は元気に春の新芽を膨らませていました。
お昼のひと時、カフェのオーナー、Sさんと語り合います。
「こんな時代に仕事ばかりしていていいのかと、暗い気持ちでそう思う時が最近よくあります。」
という私に、
「高田さん達の仕事は素晴らしい仕事ですから、し続けてくれないと。木を植えて、こんな心地よい環境を作ってくれるなんて、こんな素晴らしい仕事なかなかないですよ。未来のために自分ができることをやり続けましょ。」
とSさんが言ってくれました。
明るい未来の見えない時代、今年の夏もまた、経験したことのないさらなる気象災害がいつどこで起こるか分かりません。
そんな時代に沈むことなく、やるべきことを見つけて、明るく前向きに生きていかないと、そんな気にさせられた、カフェでのひと時でした。
さて、先週にかかり始めた茨城県鹿島市の造園外構工事、木柵を完成させる前に、狭い北側や東側の高木植栽にかかります。
木柵を互い違いに段差を設けて、その前後に植栽してゆくことによって狭い場所でも立体的で奥行きのある豊かな外観が生み出せます。
東南側から家屋を見ます。手前、菜園はブロックで土留めを回し、その外側を木柵で化粧しています。
菜園の土留めと玄関周辺。木柵と菜園の間から、玄関アプローチを通していきます。
そして南庭西側、菜園小屋の基礎石を据え終えました。
コンクリートではなく、玉石による建物基礎、つい一昔前の日本家屋の作り方です。
これからこの上に、古材を用いて小屋を建てます。
私たちの仕事、造園という仕事はとても楽しく、意義深く、日々生きがいと鋭気を与えてくれます。
すざましいばかりの今後の気候の変化、生存基盤たる環境の消失という、これまでの歴史が経験したことのない時代に向かう中での私たちの役割、そんなことを見すえながら、ささいなことですが、どんな庭を提供すべきか、日々試行錯誤の連続です。
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
茨城県つくばみらい市の庭 一期工事終了 平成26年2月7日
今年2件目の造園工事、茨城県つくばみらい市の庭が、芝張りを残して完成しました。
都心郊外の新興住宅地では最近、街づくり地域協定により、開放的な外構設計が要求されるケースが一律にみられます。
個人の庭の緑を住宅地の環境つくりに活かすことを主目的としているのでしょうが、実際にはこうした新興住宅地で街の潤いに貢献できるような庭を作られる方は非常に少ないのが事実なようです。
こうした新たな住宅地で住まいのプライベートを守り、なおかつ街の潤いつくりや地域自然環境に貢献できる庭の在り方の実例を、こうした街の庭つくりの中で示してゆかないといけません。
単に開放的なだけで植栽による補完がなされなければ、住まいの落ち着きは決して得られず、同時に街の景観つくりに資する庭空間の意義も失います。
今回の庭つくり、地域協定に従い、開放的でありながら住まいの落ち着きを確保し、なおかつ街の景観つくりや、小さいながらも地域自然環境保全にも貢献する庭の在り方を意識して構成していきました。
駐車場を家屋に対して斜めに配することで、互い違いに植栽スペースを生み出します。
通りから家屋窓への視界は、互い違いに配した木々によって穏やかに遮蔽され、なおかつ閉鎖的な印象を与えることもありません。
玄関ポーチから見た駐車場。木々の中に溶け込む駐車場は美しい庭の一部となります。
最近、駐車場の敷き込みに、古瓦を粉砕した再生チップをよく用います。
その第一の理由は、この素材の環境性能の高さにあります。陶器片ですので、透水性や保水性に非常に優れており、夏の日差しを受けても土中の湿気を吸放出して蓄熱することがありません。
また、吸水性がよいため、土地に応じて様々なものを吸着しながら、その土地らしい色合いに経年変化し、年月と共に味わいを増していきます。
また、チップの凹凸に枝葉の影がとても美しく映えることもこの素材の大きな魅力です。
ウッドデッキを切り欠いて設けた植栽スペースによって視覚的な結界をつくり、開放的ながらもプライベート空間をそれとなく確保します。
デッキから駐車場側を見ます。デッキの切り欠きに配した木々が空間を区切ります。
デッキ正面。庭のすぐ奥にはアパートの駐車場があります。その無機質な風景を明るい木柵によって遮蔽します。
遮蔽といっても完全に塞いでしまっては庭を狭苦しくしてしまいます。木柵の格子から差し込む光の動きがまた、庭に変化ある表情を与えてくれるのです。
デッキからは、木々越しに水鉢周辺を垣間見ます。
水鉢の存在は単なる景観要素ではなく、小鳥を呼び、庭の生態系を豊かにしてくれるのです。
芝張りなど、春を待って仕上げるべき作業は残りましたが、庭の完成は、その土地に新たな風景、新たな環境が生まれたということ。環境も風景も、年月やその地の人の暮らしと共に育っていきます。
新たな街で将来、この庭が大切な環境として育ってゆくことを願いつつ、来週からまた新たな庭つくりに一念入魂していきます。
どうもありがとうございました。
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink