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雑木の庭つくり日記

埋め立て造成跡地の植栽   平成27年6月16日
  お久しぶりです。高田造園設計事務所の高田です。
 前回のブログ更新から一か月が過ぎてしまいました。今日は、ただいま進行中の南房総の植栽工事の様子をご紹介いたします。


 
 アスファルト片や建設残土等の建設廃材によって埋め立てられて30年程経過した土地に家が建ち、そしてその植栽にかかりました。

 ガチガチの不毛な土地のまま、数十年が経過した、こんな場所でも、適切な改善を行うことで、木々はきちんと根付き成長し、そして植栽部分だけでなく土地全体の土質まで改善されてゆく、そんな環境改善植栽の作業工程をご紹介いたします。



 植栽するプロットごとに、下地造りからかかります。
 どこまで掘っても、決して根が進入できないようなガチガチに硬化した状態ですが、下地の外周に削岩機とツルハシで軽く溝を掘り、そして周囲数か所に縦穴を掘ります。
 この縦穴掘削も、削岩機を併用しながら掘り進まねばならず、相当な時間を要する作業となります。
 しかし、こうした地盤では、土中の空気の動きを溝や縦穴等の高低差を活かして動かすための、下地造作がその後の土中環境改善のために最も重要不可欠な造作となります。

 なにか、発掘された遺跡のようです。
 実際、古代遺跡における環濠跡や、住居外周の溝は基本的に、土壌の呼吸を促すことで快適で安全な住居環境を作ってきた名残なのです。



 下地に炭を敷いたのち、縦穴に割った竹筒を通して通気孔を造作します。
この後、縦穴横溝に剪定枝葉を絡ませていきます



 手入れのたびに、剪定枝葉はシートにくるんでストックし、そしてそれらを環境改善造作にて大切な有機物資材として使うのです。
 樹木枝葉が表土環境中で分解する過程で多種多様な微生物菌類が複合的に働き、それが土壌環境をせっせと改善してゆくのです。

 まさに、エントロピーがエコロジーに変わるのです。

 ゴミにしてしまえば厄介な汚染源にしかならないものでも、本来は上手に大地の循環の中に帰していけば、環境を息づかせてゆく力の源になる、それは大量廃棄される食品残渣や建築廃材も同じことですが、私たちは、そうしたものを、大地環境の再生資材としてすべて用い、決してゴミにはならないのです。
 そして、埋め立てられて数十年来の不毛な土地であろうが、木々を豊かに健康に育ち、いのちの循環がよみがえる環境へと再生することができるのです。

 大量消費、大量廃棄の時代の先には、大地も自然も、そして私たち人を含むあらゆる命も、力を失っていきます。見直さねばならない大切なことが、こうした環境改善造作から見えてくるような気がします。




下地の通気浸透環境改善後の植栽プロット。



 そして、その下地プロットの上に樹木を密植していきます。
こんな劣悪な土壌環境下では決して、穴を掘って根鉢を埋めるような植え方などしません。むしろ、現状の地盤よりも高めの下地地盤を作って、そこに根鉢を置いてゆくというイメージです。
 土中の空気と水、そして多種多様な菌類微生物が最も働きやすい環境をつくり、そこに根を置くことで、樹木は本来のたくましさを早期の取り戻すことができるのです。



 一か所の植栽プロットに、10本近い樹木を組み合わせて植えていきます。
この時、木々が共存する組み合わせのためには、それぞれ違う根系の性質を組み合わせて、土中にも根の伸長の階層構造をつくってゆくことが大切です。



そして埋め戻しの土には、単に良質な土をもってきて埋め戻すのではなく、必ず現地の掘削残土と炭燻炭、腐植に富んだ良土とを混ぜて用いるようにします。
 その土地の掘削残土がどんなに劣悪なものであっても、そこの土は土地の環境情報を有してますので、それを必ず用いるのです。
 土壌微生物、木々の根も、水も、土地の土壌環境情報を把握して、この土地を命豊かにしてゆけるようにシフトチェンジしてゆくのです。



 削岩機を用いて掘削したほどの砂漠のような土であっても、こうして組み合わせて攪拌、改良してゆくと、土地情報を含んだよい働きをするものへとすぐに変わってゆくのです。
 ここでも、捨てるものなど何もない、悪いものなど何もない、ということが感じられます。



 昨日現場のお手伝いに来てくれた中学三年生の女の子も、嬉々として作業してくれて、そして満面の笑顔を見せてくれます。
 一つ一つの作業工程によって、見る見るうちに環境が改善されてゆくことを体感する喜びは、大人にとっても子供にとっても変わらず、大きな喜びとなるのでしょう。



 庭の一角に建てた2坪の道具収納小屋も、古民家解体の際の廃材をふんだんに用いています。
 また、土地環境を傷めることのないよう、基礎を設けず焼いた松杭を打ち込み、それを土台としています。



植栽マウンドの仕上げは、表土の保護作業です。



 表土の保護材料には、発酵させた落ち葉とウッドチップ、炭燻炭を攪拌し、通気性がよく、森林表土の腐植のように多様な微生物活動が促されやすい状態を作るのです。



 表土をこうした素材で覆うことで、急激な乾燥によって土中深部からの毛細管の働きが途切れることなく、呼吸できる状態を保つのです。
 これで、呼吸する植栽マウンドの完成です。

 こうした、いのちの連携を活かした植栽改善によって、どんな環境においても灌水も必要なく、木々が健康に育っていき、そしてその土地が自ずと豊かに育ってくるのです。




 悪いとされる環境こそ、再生の喜びもやりがいもあります。というより、悪い環境など、本当はないのでしょう。たまたまその土地が本来の働きができないだけで、その苦しみの原因を取り除く一手を差し伸べていけば、どんな土地も必ず良くなるものなのです。
 そして、その後は自然本来の力で環境を再生していき、我々人間は極力それを見守って、あまり余計なことはしないのが一番なのかもしれません。

さて、この工事は今日で一期工事終了、来週からまた、別の工事が始まります。

 首を長くしてお待ちいただいているお客様、一つずつ心込めてこなしてまいりますので、どうかもうしばらくお待ちくださいませ。
 








投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県旭市 九十九里平野の庭空間完成  平成29年4月24日
 


年始から断続的に進めてきました、千葉県旭市、九十九里平野の450坪の庭環境つくり、本日でようやく終了となりました。

 砂地なのに水がはけず、砂ぼこりの舞う砂漠のような海岸平野の庭が、施工後は水たまりもできず、なおかつ敷地外への水の流出もなく、すべてが大地にしみこんで潤す、呼吸する空間へと生まれ変わりました。

 敷地内には車が往来できる車道を配していますが、それも大地の通気環境を保ち、呼吸する道路として、庭の中に違和感なく溶け込ませています。



 
 庭の要所には、木々の根元にデッキ上の木蓋を何か所も配してますが、この下には1m以上の大穴を掘って、そこに大量の竹炭を漉き込んでいます。
 これが地形落差を生んで土中の水と空気を動かし、草木微生物等、様々な命が共存しやすい磁場を作り出す要として機能していくのです。

 砂塵吹き荒れる乾いた土地でも、命の調和を生み出す健康な環境へと誘導してゆくことは実はそれほど難しいことではないのです。



 敷地内車道造作の様子を少しご紹介いたします。
 常に車圧のかかる車道において、心地よさと潤いを保つためには、地盤の通気浸透性が永続的に保たれるための造作が不可欠になります。
 要所に車道を横断する横溝を掘り、溝の底には竹炭を敷き詰めます。



そこに透水コルゲート管を埋設し、その周辺を廃瓦片やコンクリートガラ、そしてその隙間にウッドチップ落ち葉などの有機物を漉き込みます。
 車圧を支えるのはコンクリートガラ等の無機物ですが、この透水機能を永続させるためには必ず、その隙間に落ち葉等の有機物を詰め込んで、土壌菌糸を誘導してゆく必要があります。
 


そして無機物有機物によって埋め戻した横断暗渠に、自家製の土壌複合発酵液を染み込ませていきます。これによって、眠ってしまった土中菌類を目覚めさせ、凝縮した菌類微生物が増殖し、土壌の隙間を適度に広げて保つのです。



 路面の下地に敷き詰めているのは、解体工事によって発生するコンクリート片です。このコンクリート片が地盤に刺さってクッションのように車圧を支えます。
 庭の造作に本来捨てるものなど何もなく、使い方次第ですべては環境資材として有用に利用できるのです。



 そして、その上に、竹炭、砕石、廃瓦片、廃瓦粉砕チップ、ウッドチップをサンドイッチしていくことで、車圧に対して圧密のおこらないクッション状の路盤を作ります。
 土の中の世界、見えない部分できちんと、車道の通気浸透性を保つために不可欠な造作を施すことによって、年月とともに健全に育ってゆく住まいの環境が生まれます。




 
広いので、まるで公園のような庭空間になりました。


 
 工事にかかり始めたときは生後2か月だったマメシバの子も、今ではかわいく元気な子供犬。
 工事のトラックが到着する音が聞こえると、今ではうれしくて大騒ぎします。この子の幼少の記憶はきっと生涯の記憶として、私たちのことを忘れないでいてくれるはずです。




 この子たちが優しい自然の調和を感じられる心地よい環境で暮らしてほしい、温かな思い出の風景を心に刻んで大人になってほしい、僕らの庭への思いはごく単純なものです。

 

 
 今後の年月の中で、木々が思い思いに枝葉を広げて空間を分かち合い、家族とともに互いに育ちあう、生まれたばかりのこの庭も、住まいの環境、家族とともに時を刻みつつ変化してゆくことでしょう。


 
 そして昨日手入れにうかっがったのは、地元千葉市緑区の庭、施工5年目です。
匝瑳市の広大な庭とは打って変わって駐車場際のわずかな幅の植栽スペースを活かして木漏れ日の住環境に仕上げたのですが、住まう家族の愛情は年月をかけて住まいの森へと環境を育ててくれるのです。



そして、植栽後10年余りが経過した我が家の木々も、これまで一度たりとも剪定も枝おろしもしていないにもかかわらず、木々同士がスペースを分け合い、人のスペースを侵さずに共存する、心地よい環境を黙って恵んでくれるのです。
 本当にいとおしいのが、命の営みというもの。人の営みも然りです。
木々に学び、その奥にある無限の愛を感じながら、豊かに時を刻んでいければ、そしてその喜びや幸せを人に届けたい、そんな思いでこれからも生きていきたいと思います。
 























投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県佐倉市、先月の庭の改修工事前後   平成29年4月8日
 ブログを見てくださる皆さま、大変ご無沙汰しております。
 ここのところ公私に多忙を極め、ブログの更新も、現場の写真もままならなず、気づくともう何か月も、造園工事の経過報告をいたしておりませんでした。

今年もすでに四半期を終え、数件の庭作りや環境再生工事を終えておりますが、取り急ぎ、3月に終了した改修工事現場のビフォーアフターを簡単にさせていただきたいと思います。



 千葉県佐倉市、傾斜地擁壁上の人工地盤の庭、工事終了後です。

 庭の全面改修ですので、今回は様々説明を省略させていただき、改修前後写真にて紹介させていただきます。



改修前。半地下駐車場の屋上部分はコンクリート屋根の上の潤いのない砂利敷きのスペースでしたが、こんな環境でも、灌水のいらない緑豊かなスペースに改修可能なのです。



 改修後。
 コンクリート屋根の上でも、特別な人工資材を使うことなく、十分に植物が生育できる環境に変えてゆくことは実は十分にできることなのです。



隣家境界の木柵。




改修前の南庭部分。



改修後。スペースをつぶすことなく、樹木の合間の心地よい空間をつなげてゆきます。
周辺の家屋は遮蔽することなく、木柵と樹木越しに違和感なくなじませていきます。



 車庫屋上部分と高低差のある2段の庭を違和感なく接続することで、整った奥行きと立体感が生じます。
 間もなく新緑の芽吹きの時期を迎えます。庭は一気に緑越しの木漏れ日が揺らぎ、息づいてくることでしょう。

 
 


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
本年の終わりに  これからの活動に向けて  平成28年12月27日


 例年のとおり、年末は来る日も来る日もこれまで作らせていただいた庭の手入れに追われます。
 造園の仕事を始めてまもなく四半世紀になりますが、師走はいつも、休みのない手入れ行脚を乗り越えて、新たな年を迎える、そんな生活をずっと繰り返してきたことになります。

 今年も残すところあと数日、今年の仕事もいよいよ終わりが見えてきました。

 写真は2年前に作った葉山Sさんの外空間、エントランスです。手入れと同時に、継続的な環境改善作業を施し、そして一日の作業を終えると、日は落ちて、夜景の中に浮かび上がります。



 今秋はどこも、見事な紅葉を見せてくれました。ここは4年前に作らせていただいた、千葉市内Sさんの外空間。
 お施主さんの愛情は確実に木々や庭の生き物たちに反映されます。
 私たちが手入れにうかがい、毎年手を触れて木々に語らうだけでも木々は喜び、元気に反応してくれるもので、ましてそこに住む人の木々やいのちに対する愛情と想いが環境を豊かに育てていき、そしてにぎやかないのちの輪の中に調和させてゆくことをいつも実感させられます。

 木々をいたわり、落ち葉にさえも感謝し、落ち葉掃除を心の掃除と考えて、優しい心持で住まいの環境と向かい合う、そんな方々は木々からも小鳥や様々な生き物たちからも歓迎されるのです。



 今年の春、埼玉県草加市のお施主さんから、シジュウカラのひなが庭でかえったという喜びのメールとともに、かわいいひなの写真が送られてきました。



 この写真は今年初めてウグイスが来てくれたという、歓喜のメッセージとともに送られてきた写真です。
 街中のわずかな一点、オアシスのような小さな雑木林の庭空間に、今はたくさんの小鳥たちが訪れて、そしてそこでまた巣を作り、巣立っては帰ってくる、そんな営みがにぎやかに繰り返される場所が、街中の点の空間に誕生するのです。

「小鳥たちにとって気持ちが良いように手入れしてくれればいいですから。」

 お施主のKさんはそう言います。そんな素晴らしいなお施主さん方々に私たちは育てられ、支えられているからこそ、、信念を曲げずに生きていけるのだなと、こうして手入れに回るたびに改めて感じさせられます。 そんなお客さんは何よりの心の宝です。

 手入れに回る中、かつて自分が作った庭の成長を感じるとともに、実はそれは過去の自分が作った庭であるということも、はっきりと感じさせられます。
 10年前の庭、5年前の庭、2年前の庭、、、どれも今の自分の作り方とはずいぶん違いますし、来年はさらに変わってゆくことでしょう。

 もちろん、だれがどんな作り方をしたかなどは些細なことで、植えられた後、木々や庭環境、生き物環境に対する人の愛情の注ぎ方、環境との対話と対処の仕方こそが、その環境を人にとっても他の生き物たちにとっても心地よい、穏やかになって自然の呼び声を感じさせてくれる空間へと育てていきます。
 大切なことは作庭後の環境との付き合い方なのでしょう。人が変わってゆくように、庭も変わっていきます。良い方向へと心地よく育ってゆくように庭を導くのは、お施主の愛情、そして同時に、人と木々の声とを繋いでゆく我々庭師の役目かもしれません。

 師走と言えども手入ればかりでは済まされません・・。今月、手入れの合間にかかり始めた海辺の庭・環境再生工事の様子を少しご紹介します。



 千葉県旭市、海岸平野の砂地の庭の改善工事に着手しました。
 カチコチに締め固められて呼吸しない大地。ここをいのちの息づく豊かな自然環境へと再生してゆくのです。
 海にほど近い砂地で、しかも土壌微生物環境も崩壊した土地に木を植えて、健康で息づく土地へと改善してゆく、その環境改善・植樹の模様をご紹介します。



ここで植樹の際の土壌環境改善資材として用いたのが、大量の廃瓦と、



剪定枝を山中に放置して菌糸の張り巡らされた腐植枝です。



 樹木を植えるために掘った植穴の底に数か所ほど縦穴を開けて、そこに廃瓦と有機物、炭を挟み込みながら、縦方向の通気浸透ラインを作ります。




その上に、植穴底に竹炭、燻炭をまぶして攪拌し、



その上に腐植枝と廃瓦をまぶし、



 さらに腐植枝葉をサンドイッチしながら炭をまぶし、また廃瓦を重ねていきます。



 それに、掘り起こした現地の砂に腐葉土、炭燻炭を攪拌してふんわりとまぶしていきます。
腐植枝、廃瓦、改良砂、炭、これらをサンドイッチするように繰り返しながら、植穴を埋め戻していきます。


 これで、砂地においてもしっかりと土壌環境が育ってゆく、そんな下地環境造作がひとまず完了です。



 植樹の前にさらに、再び腐植枝を井桁状に敷き詰めていき、



そしてその井桁の上に、掘り取った大木を載せていきます。
 見た通り、土に埋めるのではなく、砂の重さや根鉢の重さにも圧密されない空間豊富な下地の上に根鉢を載せるのです。



枝葉の井桁に乗っかることで下地土中の通気環境、隙間の空間を保つのです。
 腐植枝葉からすぐに様々な菌糸が伸びてきてその粘性によって砂を捕捉し、生き物の活動によって豊かな土壌へと変えてゆくのです。



 そして、埋め戻しの際にさらに割れた瓦片を根鉢の周りにすき込みます。
多孔質で保水性に富む瓦片に樹木根はすぐにびっしりと張り付いていき、そこで呼吸し、多様な菌類微生物の働きと相まって、この無機的な砂地の環境をいのちの源となる土壌環境へと短期間で変えてゆくのです。

 砂地は粒度一定であることが、多彩で豊かな植物環境が育ってゆくうえでのネックとなりますが、それを踏まえた改良のコツがあります。
 それは、例えば海岸砂丘に草木が生えて安定してゆく過程を見れば容易に掴めることなのです。
 何も特殊な資材や、土の専門家がすぐに勧めたがる培養土や改良材など全く必要なく、その辺の廃材を用いてこそ、恒久的な命の息づく土壌環境へと変貌させることができるのです。

 自然界の働きに沿ったこうした方法は間違いなく、環境を浄化していき、そして眠っていた命が再び目を覚まして、心地よい空気感へと変えていくのですが、人はどうして自然本来の働きの力を借りないのか、菌類微生物、そして植物の力を借りてこそ、我々は安全に快適に暮らせる環境が作れるというのに、それを、「有用微生物」と「有害菌」などと、自然界の命を人間都合で切り離して、都合のよいものばかりを集めようとし、そして都合の悪いものを排除しようとしてきた結果、今の取り返しのつかないバランスの崩壊、環境劣化、環境破壊を招いてきたと言えるでしょう。命はすべてつながっているのですから。
 誰のせいでもなく、我々一人一人の、大地における向き合い方を改めて問い直すときにいる、日々の仕事の中で今年ほどそれを強く感じた年はありません。



 根鉢の周囲を、改良した砂と廃瓦などで埋め戻せば、大木移植の完了です。
この方法で植えれば、支柱もいらなければ灌水も必要ありません。粘性のある菌糸が保ってくれるしっとりした土壌環境に根が完璧に守られるからです。

 これが真実なのです。自然に逆らうことばかりしていると、移植後も土が乾燥し、土壌生物環境は育たず根は守られず、したがって支柱も必要になり灌水も必要になります。
 これまでの狭い常識にとらわれず自然や目の前の事実から素直に学んで、そろそろ根本的に考え方をあらためるべき、人間は今こそそこまで進化しなければなりません。
 そうでなければ、人の存在すべては自然界のがん細胞として、いずれは自らの生存基盤をも失ってしまうことでしょう。



 自然の一員としての人の在り方、地球に対する責任、周辺環境に対する人の責任、そしてそんな配慮が心を豊かにしてくれる、そんなことを伝えたくて、今年は数えてみると、実に30回近い、環境改善講座やワークショップ、レクチャーをこなしてきましたことになります。
 
 今年の活動をじっくりと総括し、そしてさらに学びながら、来年の取り組みにつなげたいと思います。



 今月、おなじみの土気山ダーチャフィールドに新たに建てた山小屋です。
3坪の板倉小屋に屋根のあるデッキを伸ばして、五右衛門風呂と炊事場を一体化したモデルです。



 カラマツの焼き丸太杭を土台とした掘っ立て構造によって土地を傷めずに森の中にそっと割り込ませてもらいます。
 デッキの下のかまどは、五右衛門風呂の焚口です。



 デッキが炊事洗濯お風呂など、生活の場となります。その排水は土中の菌類微生物によって分解消失されるよう、浸透孔をつくり、この土地の環境中へと還していきます。
 命の循環はそこが実は最も大切なことで、還すところから新たな命が力を得てつながってゆく、その当たり前のことすら、今の文明は排除し続けているのです。
 本当の人の在り方を学び思い出す場所、志を共にする仲間たちとそんな取り組みをすすめてゆくために、今月、NPO法人地球守を設立いたしました。
 今年、私たちがやってきたことを継続し、さらに活動の幅を広げ、来年につないでいこうと思います。

 共感してくださる方、ともに楽しく関わってくださる方、どうぞご参加をお待ちしております。

 今年もたくさんの人にお世話になり、感謝の想いに満たされます。来年も力いっぱい生きていこうと思いますので、どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。

 皆様、良いお年をお迎えください。地球のすべての平和と安心と温かさをお祈りし、そして皆様のご健康、ご多幸をお祈り申し上げます。

 どうもありがとうございました。






投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
今年最後の造園工事完了 千葉市花見川区  平成28年12月4日


  全国を飛びまわってきました一年間の締めくくりとなる、今年最後の造園環境工事は地元の千葉市内、Kさんの庭が昨日竣工しました。

 建築は里山建築研究所の安藤邦廣氏による板倉つくりです。安藤氏の板倉住宅は、有機的な建築外観とその呼吸する住まいとしての健康な機能性の高さとしてはおそらく、現代住宅としては最高峰と言えるでしょう。
 外観から醸し出される、どっしりした安定感、質感、重量感、有機的な心地よさは本当に、見ていて飽きることなく、これからの月日とともに、街の景観と歴史を刻んで潤し続けるだけの力があります。

 地域と暮らしと自然環境と密着してきたかつての民家が今、次々と解体され続け、安易で無表情な工業製品住宅ばかりがはびこる時代ではありますが、そんな風潮を全く意に介さずに、あふれるようなエネルギーを得て、生み出し続ける本物もあります。
 安藤氏の板倉住宅は、本物の住まいのみが放つ気品とぬくもりを感じさせられます。
 千葉県で初となる安藤邦廣氏の板倉住宅がここ、千葉市花見川区Kさんの住まいです。



 こうした本物の家屋は、植栽して庭が完成しても全く違和感を感じさせず、季節やその地本来の環境、家屋の佇まいにしっくりと収まっていき、その空間だけがまるで別次元のような時間空間感覚を感じさせます。
 また、こうしたはっきりした意図を持った素晴らしい家屋では、造園における素材の取り合わせに苦労することはありません。有機的で命ある素材の質感を自然と組み合わせていけばそのまま違和感なく調和してくるからです。



 西南のコーナーの収納小屋は、築150年の古民家を解体した際に発生した古材を組み合わせて作り、庭の主要な景として溶け込ませていきます。
 この角度では見えにくいですが、屋根は芝屋根です。屋根の上にもしっとりとした土の空間があることで小屋は一気に有機的な庭の世界に溶け込み、とても穏やかな表情を見せてくれます。



 施工途中の小屋の佇まい。
 基礎は焼き松杭を打ち込み、その上に土台を載せます。こうした工法では土地を傷めることがなく、土中の呼吸環境を健全に保ったままに建てられます。
 建具も壁の板もすべて、徹底的に古材を用いて組み上げます。



 駐車スペースから続く玄関アプローチは、露地の中門のようなたたずまいになりました。
 左の薪棚も木戸も、解体古民家の古材を用いて簡素に作り、四ツ目垣の竹は、古民家の屋根裏で長年囲炉裏の煙にいぶされ続けて飴色を帯びた煤竹を用いてます。



 足元の石も解体の際に引き上げた古材を主に用いて組み合わせています。
 古い材料やかつての民家の建築廃材に再び新たな命を宿してゆくことで、かつての素晴らしい知恵や時代の記憶、ぬくもりを未来につなぐことになるように感じます。



 私たちの庭つくりにおいて、不可欠に重要視していることは、
 「その地に降り注いだ天水が、その土地を潤し、土中の微生物活動によって浄化され、本来の健全な水脈へと清浄な水を還してゆく」 ということです。
 このことの大切さ、それは人にとっても環境にとっても、持続的かつ健全に豊かにその地で暮らしてゆくために絶対不可欠なことなのですが、その説明は、ここでは割愛します。

 駐車スペースとなる接道部分の道路際を溝掘りし、そこに廃瓦やコンクリートガラ、石、炭、枝葉の粉砕チップをサンドイッチしながら、通気浸透ラインに土圧に耐える空隙を土中に作っていきます。



さらに、駐車場内の植栽マウンドの際を中心に溝掘りし、



 そこに枝葉を絡み合わせ編みながら立ち上げていきます。



 駐車場内の植栽マウンド通気浸透改善造作終了。
この造作をしっかりと行うことで、植栽の際まで車圧がおよぶ駐車場においても、その影響が木々の根に及ぶことなく、健康に根を土中深部に張り巡らせる環境となるのです。
 そして木々の根は縦穴通気孔に張り付いて深部に至り、それが駐車スペースの下へと張り巡らされることによって、ふかふかで水たまりなど決してできない、ひんやりと呼吸する有機的な駐車場へと育ってゆくのです。



 そして、駐車場の仕上げは、竹炭、単粒砕石、ウッドチップ、燻炭をサンドイッチしながら若干転圧し、水はけがよく、なおかつ車圧に対して安定した構造を作っていきます。
 石の隙間に炭と枝葉粉砕の有機物チップを入り込ませることで、しっとりした路盤の空隙の中に様々な菌糸が絡み、それが地盤を餅のようにふんわりとしたスポンジ構造を作っていきます。
 そして、土中の菌糸を伝う雨水は微生物活動によって浄化されて深部へと浸み込んでいきます。

 呼吸しない大地で人は健康かつ快適に過ごすことは決してできません。今の多くの人が暮らす住環境が、呼吸しない乾いた砂っぽい、非生物的な環境であることすら、今の日本人の多くは忘れてしまいつつあります。

 そんな時代だからこそ、私たちが作る空間は、呼吸する大地の心地よさを、通る人たちにも思い出していただけるような場にしていきたいと思い、今はこんなことばかりしています。



 潤いのある駐車スペースと木々越しの板倉住宅。外壁は杉板を炭化させて用いてます。
 植栽したばかりの冬枯れの雑木の幹はまだ、この住まいの質感に対してほっそりした弱い線ですが、数年後にはこの家屋の外観は雑木林の奥へと包まれてゆくことでしょう。

 さて、今年もあとわずかです。
 駆け続けた一年もあと少しだと思うと、ともすると疲れが一気に現れます。体の中の見えない気の流れとは面白いもので、こうした内なる世界ときちんと対話しながら心身の体調管理してゆくことは、地球の環境、大地の環境に思いを馳せて対話し向き合うことと、全く同じことのように感じます。
 
 まだまだ年内の仕事は山と積まれていますが、一期一会の行く年を楽しく仕上げていきたいと思います。
 皆様もどうぞ心身ともに健康に、師走を乗り切られるよう、お祈り申し上げます。
 
 

 


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
   
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