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雑木の庭つくり日記

本年の終わりに  これからの活動に向けて  平成28年12月27日


 例年のとおり、年末は来る日も来る日もこれまで作らせていただいた庭の手入れに追われます。
 造園の仕事を始めてまもなく四半世紀になりますが、師走はいつも、休みのない手入れ行脚を乗り越えて、新たな年を迎える、そんな生活をずっと繰り返してきたことになります。

 今年も残すところあと数日、今年の仕事もいよいよ終わりが見えてきました。

 写真は2年前に作った葉山Sさんの外空間、エントランスです。手入れと同時に、継続的な環境改善作業を施し、そして一日の作業を終えると、日は落ちて、夜景の中に浮かび上がります。



 今秋はどこも、見事な紅葉を見せてくれました。ここは4年前に作らせていただいた、千葉市内Sさんの外空間。
 お施主さんの愛情は確実に木々や庭の生き物たちに反映されます。
 私たちが手入れにうかがい、毎年手を触れて木々に語らうだけでも木々は喜び、元気に反応してくれるもので、ましてそこに住む人の木々やいのちに対する愛情と想いが環境を豊かに育てていき、そしてにぎやかないのちの輪の中に調和させてゆくことをいつも実感させられます。

 木々をいたわり、落ち葉にさえも感謝し、落ち葉掃除を心の掃除と考えて、優しい心持で住まいの環境と向かい合う、そんな方々は木々からも小鳥や様々な生き物たちからも歓迎されるのです。



 今年の春、埼玉県草加市のお施主さんから、シジュウカラのひなが庭でかえったという喜びのメールとともに、かわいいひなの写真が送られてきました。



 この写真は今年初めてウグイスが来てくれたという、歓喜のメッセージとともに送られてきた写真です。
 街中のわずかな一点、オアシスのような小さな雑木林の庭空間に、今はたくさんの小鳥たちが訪れて、そしてそこでまた巣を作り、巣立っては帰ってくる、そんな営みがにぎやかに繰り返される場所が、街中の点の空間に誕生するのです。

「小鳥たちにとって気持ちが良いように手入れしてくれればいいですから。」

 お施主のKさんはそう言います。そんな素晴らしいなお施主さん方々に私たちは育てられ、支えられているからこそ、、信念を曲げずに生きていけるのだなと、こうして手入れに回るたびに改めて感じさせられます。 そんなお客さんは何よりの心の宝です。

 手入れに回る中、かつて自分が作った庭の成長を感じるとともに、実はそれは過去の自分が作った庭であるということも、はっきりと感じさせられます。
 10年前の庭、5年前の庭、2年前の庭、、、どれも今の自分の作り方とはずいぶん違いますし、来年はさらに変わってゆくことでしょう。

 もちろん、だれがどんな作り方をしたかなどは些細なことで、植えられた後、木々や庭環境、生き物環境に対する人の愛情の注ぎ方、環境との対話と対処の仕方こそが、その環境を人にとっても他の生き物たちにとっても心地よい、穏やかになって自然の呼び声を感じさせてくれる空間へと育てていきます。
 大切なことは作庭後の環境との付き合い方なのでしょう。人が変わってゆくように、庭も変わっていきます。良い方向へと心地よく育ってゆくように庭を導くのは、お施主の愛情、そして同時に、人と木々の声とを繋いでゆく我々庭師の役目かもしれません。

 師走と言えども手入ればかりでは済まされません・・。今月、手入れの合間にかかり始めた海辺の庭・環境再生工事の様子を少しご紹介します。



 千葉県旭市、海岸平野の砂地の庭の改善工事に着手しました。
 カチコチに締め固められて呼吸しない大地。ここをいのちの息づく豊かな自然環境へと再生してゆくのです。
 海にほど近い砂地で、しかも土壌微生物環境も崩壊した土地に木を植えて、健康で息づく土地へと改善してゆく、その環境改善・植樹の模様をご紹介します。



ここで植樹の際の土壌環境改善資材として用いたのが、大量の廃瓦と、



剪定枝を山中に放置して菌糸の張り巡らされた腐植枝です。



 樹木を植えるために掘った植穴の底に数か所ほど縦穴を開けて、そこに廃瓦と有機物、炭を挟み込みながら、縦方向の通気浸透ラインを作ります。




その上に、植穴底に竹炭、燻炭をまぶして攪拌し、



その上に腐植枝と廃瓦をまぶし、



 さらに腐植枝葉をサンドイッチしながら炭をまぶし、また廃瓦を重ねていきます。



 それに、掘り起こした現地の砂に腐葉土、炭燻炭を攪拌してふんわりとまぶしていきます。
腐植枝、廃瓦、改良砂、炭、これらをサンドイッチするように繰り返しながら、植穴を埋め戻していきます。


 これで、砂地においてもしっかりと土壌環境が育ってゆく、そんな下地環境造作がひとまず完了です。



 植樹の前にさらに、再び腐植枝を井桁状に敷き詰めていき、



そしてその井桁の上に、掘り取った大木を載せていきます。
 見た通り、土に埋めるのではなく、砂の重さや根鉢の重さにも圧密されない空間豊富な下地の上に根鉢を載せるのです。



枝葉の井桁に乗っかることで下地土中の通気環境、隙間の空間を保つのです。
 腐植枝葉からすぐに様々な菌糸が伸びてきてその粘性によって砂を捕捉し、生き物の活動によって豊かな土壌へと変えてゆくのです。



 そして、埋め戻しの際にさらに割れた瓦片を根鉢の周りにすき込みます。
多孔質で保水性に富む瓦片に樹木根はすぐにびっしりと張り付いていき、そこで呼吸し、多様な菌類微生物の働きと相まって、この無機的な砂地の環境をいのちの源となる土壌環境へと短期間で変えてゆくのです。

 砂地は粒度一定であることが、多彩で豊かな植物環境が育ってゆくうえでのネックとなりますが、それを踏まえた改良のコツがあります。
 それは、例えば海岸砂丘に草木が生えて安定してゆく過程を見れば容易に掴めることなのです。
 何も特殊な資材や、土の専門家がすぐに勧めたがる培養土や改良材など全く必要なく、その辺の廃材を用いてこそ、恒久的な命の息づく土壌環境へと変貌させることができるのです。

 自然界の働きに沿ったこうした方法は間違いなく、環境を浄化していき、そして眠っていた命が再び目を覚まして、心地よい空気感へと変えていくのですが、人はどうして自然本来の働きの力を借りないのか、菌類微生物、そして植物の力を借りてこそ、我々は安全に快適に暮らせる環境が作れるというのに、それを、「有用微生物」と「有害菌」などと、自然界の命を人間都合で切り離して、都合のよいものばかりを集めようとし、そして都合の悪いものを排除しようとしてきた結果、今の取り返しのつかないバランスの崩壊、環境劣化、環境破壊を招いてきたと言えるでしょう。命はすべてつながっているのですから。
 誰のせいでもなく、我々一人一人の、大地における向き合い方を改めて問い直すときにいる、日々の仕事の中で今年ほどそれを強く感じた年はありません。



 根鉢の周囲を、改良した砂と廃瓦などで埋め戻せば、大木移植の完了です。
この方法で植えれば、支柱もいらなければ灌水も必要ありません。粘性のある菌糸が保ってくれるしっとりした土壌環境に根が完璧に守られるからです。

 これが真実なのです。自然に逆らうことばかりしていると、移植後も土が乾燥し、土壌生物環境は育たず根は守られず、したがって支柱も必要になり灌水も必要になります。
 これまでの狭い常識にとらわれず自然や目の前の事実から素直に学んで、そろそろ根本的に考え方をあらためるべき、人間は今こそそこまで進化しなければなりません。
 そうでなければ、人の存在すべては自然界のがん細胞として、いずれは自らの生存基盤をも失ってしまうことでしょう。



 自然の一員としての人の在り方、地球に対する責任、周辺環境に対する人の責任、そしてそんな配慮が心を豊かにしてくれる、そんなことを伝えたくて、今年は数えてみると、実に30回近い、環境改善講座やワークショップ、レクチャーをこなしてきましたことになります。
 
 今年の活動をじっくりと総括し、そしてさらに学びながら、来年の取り組みにつなげたいと思います。



 今月、おなじみの土気山ダーチャフィールドに新たに建てた山小屋です。
3坪の板倉小屋に屋根のあるデッキを伸ばして、五右衛門風呂と炊事場を一体化したモデルです。



 カラマツの焼き丸太杭を土台とした掘っ立て構造によって土地を傷めずに森の中にそっと割り込ませてもらいます。
 デッキの下のかまどは、五右衛門風呂の焚口です。



 デッキが炊事洗濯お風呂など、生活の場となります。その排水は土中の菌類微生物によって分解消失されるよう、浸透孔をつくり、この土地の環境中へと還していきます。
 命の循環はそこが実は最も大切なことで、還すところから新たな命が力を得てつながってゆく、その当たり前のことすら、今の文明は排除し続けているのです。
 本当の人の在り方を学び思い出す場所、志を共にする仲間たちとそんな取り組みをすすめてゆくために、今月、NPO法人地球守を設立いたしました。
 今年、私たちがやってきたことを継続し、さらに活動の幅を広げ、来年につないでいこうと思います。

 共感してくださる方、ともに楽しく関わってくださる方、どうぞご参加をお待ちしております。

 今年もたくさんの人にお世話になり、感謝の想いに満たされます。来年も力いっぱい生きていこうと思いますので、どうか今後ともよろしくお願い申し上げます。

 皆様、良いお年をお迎えください。地球のすべての平和と安心と温かさをお祈りし、そして皆様のご健康、ご多幸をお祈り申し上げます。

 どうもありがとうございました。






投稿者 株式会社高田造園設計事務所 (2016年12月27日 15:32) | PermaLink