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雑木の庭つくり日記

千葉県佐倉市 茅葺き屋根 終了 平成24年1月14日
 昨年末にかかり始めたAさんの庭の井戸小屋の茅葺き屋根工事、今日ようやくほぼ終了しました。



 今日は棟の仕上げです。



稲藁を束ねて棟を形づくり、そしてその両端を刈りそろえていきます。



そしてその上に、防水のために杉皮をかぶせます。



破風側の棟の収まりの様子。



棟の収め方は地域それぞれ人それぞれで、様々なやり方がありますが、ここは竹がいくらでも手に入る千葉ですので、地元の山から切り出した竹をすのこ状にして、棟を巻いていきました。



 そして、これで大方完成です。
 初めての試み、本物の茅葺き職人の仕事には遠く及ばぬお恥ずかしい出来栄えですが、下手なりにも茅葺きの風景はいいものです。
 
 今後、茅葺き技術を完全に習得し、次世代に繋げるための担い手となるべく努めようと、決意を新たにした仕事となりました。

 初めての茅葺き、快く試させていただきましたAさんご夫妻に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
鹿児島県 雑木の街つくり計画 第1棟竣工  平成24年1月10日  


 今年の初仕事は鹿児島県姶良市での壮大なプロジェクトです。

 一昨年に計画を始めた「雑木林と八つの家」街づくりプロジェクト、日本の街を変えてゆく可能性を秘めた記念すべき第一歩です。
 1棟目が竣工し、本日、その雑木の外環境が完成しました。

 駅前の8区画の住宅用地と小さな公園、道の広場、この小さな街全体を雑木林が包み込み、そして、そこに心豊かなコミュニティの実現、心豊かな子育て環境の提供を目指す夢の街つくりに臨み、地元の土地開発会社の堅い意志と、建築、造園の夢の結集、そして鹿児島県姶良市の協力の下、いよいよこの街つくりが実際にスタートいたしました。

 この第一歩の感動冷めやらぬまま、1棟の外空間施工過程をご紹介いたします。



 南に桜島、北に高千穂連峰や霧島連峰を望む鹿児島県姶良市、「まちなか森暮らし」の舞台となる分譲地の第一棟が完成しました。



 そして、木一本もないこの新規住宅地に、阿蘇の自然樹木130本が搬入されました。これで1棟分です。
 樹木は筋金入りの雑木の庭師、グリーンライフコガ、古閑勝則さんの見立てです。




 右が阿蘇に根ざす雑木の庭師、古閑勝則さん、そして左がこの街づくり実現のために意志を貫き通した姶良土地開発有限会社社長の町田周二さんです。



 植栽は庭の骨格となる雑木の主木から始まります。



 街のメインストリートに面した1本目のコナラ、木の向きや角度を慎重に決めていきます。



 主木が配置されると、その他の木々の配置は必然的に決まっていきます。
 そして、殺風景だった家屋が木立の向こうに溶け込んでいきます。



 大方の木々を植え終えて、玄関アプローチの叩きの仕上げにかかります。
 住まいの景色が見る見るうちに完成していきます。



 阿蘇のマサ土を叩いて仕上げた玄関アプローチも完成です。



 そして、縦列2台分の駐車スペースも、マサ土の叩きで仕上げていきます。セメントは全く使わずに、マサ土本来の硬化の力に委ねます。

 今回の作業中、叩きの工法について、同業者から質問の電話がありました。

「駐車場の叩きでセメントを使わずに石灰を入れると割れるでしょう。私たちはマサ土にセメントを混ぜてやっています。」
 とのお話でした。

 いろいろなやり方が試みられることは良いことだと思います。

 その中で、決してセメントを使うことのない叩きの仕上げ方に、私は誇りを持っております。
 セメントを混入するのであれば、土を叩いて仕上げるという意味はなくなってしまうように思います。
 駐車スペースにおける私の工法の叩き仕上げは、定期的な簡単なメンテナンスは必要ですが、割れるということはありません。
 仮に割れたとしても、それがなぜいけないというのでしょう。土の割れ目、それもまた二つとない味わいある土間の表情になることでしょう。

 自然の素材を自然なままに扱うことがもたらす豊かな住環境、「ちょっとでも亀裂が入ったら瑕疵保証の対象」などとという、旧態依然のお役所的な考え方では、味わいのある愛される町など決して育まれようもありません。



 私たちの叩きの場合、駐車場を仕上げた次の日には車の乗り入れができます。

 「叩きの土間に石灰を混ぜると硬化に時間がかかる」と言う人もいますが、これも実際には、やり方次第なのです。
 セメントを混ぜたコンクリートのような土間であれば、仕上げた次の日に車を乗り入れることなど決してできないことでしょう。

 百聞は一見に如かずです。実際にやって見せることで説得力が生まれます。
 
 そして、こうして車を乗り入れることで、より頑丈な土間となっていきます。それが私たちの造る土間の駐車場です。

 そして、この駐車スペースを潤い豊かな住空間の一部として落ち着かせているのは、隣の敷地に植えた木立のおかげなのです。
 隣の家を建てる前に、隣接する部分に木立を植えて、隣の敷地と繋げていきます。

 この街の価値は、隣の敷地をお互いに借景として利用しあい、暮らしの景色を補い合うことにあります。このことによって、敷地面積以上の住環境の価値が生まれます。

 心豊かな住環境は、家だけでは決して完成しません。外空間がそれを補い、更には敷地を取り囲む町並み、隣地の木々を活かしあうことで、住環境の価値は幾倍にも増幅されます。
 
雑木林と八つの家、この街つくりの試みはそこにあります。



 2日目の作業を終えた時、このプロジェクトの成功を誰もが確信し、晩の宴席も盛り上がります。
 志を一つにこのプロジェクトに人が結集し、そして同じ釜の飯をつつく。
 仕事を終えた至福の時間は、我々にとっての永遠の宝となります。



 完成の日、3日目の朝、庭の中から見た家屋の佇まい。



 街の一角が完成しました。芽吹きの頃、新緑の時期には素晴らしい住まいの景色となることでしょう。



 まちなか森暮らし。自然豊かな住まいの環境が駅前に実現します。
 この後の7棟の植栽は全て、阿蘇の庭師、グリーンライフコガの古閑さんに委ねます。

 趣旨を曲げずに果敢な行動力を持ってこの仕事を成し遂げることができるのは、全国を探してもきっと彼しかいないと私は思います。
 彼との出会いがなければこの計画は決して実現できなかったことでしょう。

 不思議なご縁、決して自分の力ではなく、大きな力に支えられて初めて前人未踏の仕事が創造されるということを、心の底から実感します。



 全国で初めての街づくりの試みが、薩摩の地で始まりました。今日、この日がスタートです。
関係者の皆が無私になり、情熱をこめてこのプロジェクトに命を燃やします。
 こうした素晴らしい方々の計画に際し、私も少しでもお役にたてるよう、心の炎を燃やします。

 温かく迎えて下さった地元の皆様、そして姶良土地開発の皆様、株式会社グリーンライフコガの皆様、本当にありがとうございました。

 今年の初仕事、素晴らしい仕事での幕開けとなりました。


 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県佐倉市の庭 駐車場の土間工事   平成23年12月29日
 今年の仕事納めは、千葉県佐倉市のAさんの庭です。



 Aさんの庭に新築した車庫は、昨年解体した入母屋家屋の古材を用いて建てました。
 今日はその土間を仕上げて、今年の仕事納めとなりました。
 進入路を含めると総面積100平方メートルにも及ぶ、広い車庫の土間です。



 土間の仕上げは、マサ土(花崗岩風化土)の叩きです。柔らかな土の表情と足触りは、セメントを混入しない叩きの土間ならではの温かで素朴な味わいがあります。
 土に石灰とにがりとの3種類の素材を混ぜて土間を叩き締めることから、「叩き」のことを別名、「三和土」とも書きます。
 土本来の特性として圧力を加えると硬化する性質のあるマサ土の場合は、石灰を混入しなくても土を叩き締めるだけで硬化して、足触りの優しい土間となります。
 
 今回、ちょっと訳あって、、マサ土叩きの施工手順をこのブログでご紹介いたします。



 土の硬化反応を促進するために必要な塩化カルシウム(本来の叩きの場合は、塩化マグネシウムを用いることが多いようです)を水に溶かします。



 塩化カルシウムが水と反応して水温が上がり、お湯になります。これをよくかき混ぜて、塩カル溶液を作ります。



これは、左官用に精錬された純度の高い石灰です。



そして、左官用の石灰とマサ土を混ぜます。これに、先程の塩カル溶液をじょうろで注ぎ、さらに撹拌します。



 配合した土を敷きつめて、レーキで敷き均していきます。



 敷き均した土を、転圧機で締め固めていきます。



 差し石の周りなど、機械で締め固めることのできない隅の狭い個所は、地コテという道具などを使い、人力で地道に叩き締めていきます。



 駐車場の奥から順に、敷き均しては叩き締めていきます。これを繰り返します。



 良く締め固められた土間は、美しい光沢を放ちます。



 仕上げ後の土間の色合い。土の風合いはなんとも言えない温かみがあります。
コンクリートと違って、夏の蓄熱も照り返しによる猛烈な暑さもありません。水分を含んだ土間は、夏の日中にゆっくりと蒸発して気化熱を奪うことによって住環境の暑さを和らげてくれます。
 また、叩きは普通の土と同様に高い透水性があるため、雨水を土中に帰します。
 コンクリートは使用後には廃棄物となりますが、叩きの場合は全てを土に還すことができます。
 また、コンクリートの耐久寿命は50年前後と言われますが、土本来の自然な性質に由来する硬化プロセスを活かす叩きの場合、半永久的な耐用を期すことができます。
 その上、土の感触温かく、人にやさしい素材です。

 「コンクリートから人へ」とは、聞き古した美辞麗句のようですが、実際には、後世に手渡すべき生存基盤とも言える土地を荒らし続ける今の文明を本気で見直していかねばなりません。
 
 来年は、もう少しマシな国にしていきたいものです。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県佐倉市の庭 茅葺き屋根工事開始   平成23年12月25日

 昨日、2か月も前に注文していた茅が届いたので、今日から茅葺き屋根工事を始めることとなりました。



 茨城県の霞ケ浦のほとり、稲敷市の島茅です。稲敷市で栽培される細くしなやかで均質な茅は島茅と呼ばれます。
 島茅の刈り取りの時期は、地上部分がすっかりと枯れる12月にはじまります。かつては11月後半には刈り始めることができたそうですが、温暖化の進む今は、刈り取りの時期が3週間も遅くなったと言います。



 ここは造園工事中のAさんの庭の中、井戸小屋の屋根です。破風と呼ばれる側面から茅を重ね上げていきます。



先月に社員総出で参加した五箇山集落での茅葺き研修の成果を今こそ発揮すべく、真剣な表情の社員K君。



 茅葺き屋根の工程は多く、こんな小さな小屋の屋根葺きにも膨大な手間を要するとても地道な作業の連続です。1日で手がぼろぼろにあかぎれます。
 それでも、こうして初めて造る茅葺き屋根が少しづつ形が見えてくると何とも言えない高揚感を覚えます。

 これからの時代こそ、茅葺き屋根のような、農山村の暮らしと共に育まれてきた永続的な技術が、とても大切なものとなることでしょう。
 植物素材の扱いに慣れている私たち造園職人こそ、こうした技術の担い手となるべきと考えて、私たちも技術研鑽に励みます。



 屋根工事は始めたら最後、屋根が葺き終わるまで一気に進めるしかありません。年内に必ず完成させるべく、明日もひたすら茅を葺くことになります。
 さて、どんな井戸小屋が完成するか、楽しみです。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
駐車場緑地の植栽   平成23年11月8日
今日は久々に、地元の仕事です。 
 千葉市緑区の動物病院駐車場脇のわずかな緑地スペースの植栽です。



 動物病院の建屋と駐車スペースとの間に、幅わずか50センチ程度のスペースがありました。
 このわずかなスペースに雑木の植栽ができないかとの相談を受けたのは昨年のことですので、いつの間にか1年もお待たせしてしまいました。。。
 幅50センチの雑木植栽、楽しい仕事です。こんな限られたスペースでこそ、雑木の魅力は生きてきます。



 植栽終了後の駐車場脇緑地です。幅50センチもあれば、立体的な植栽ができるのが、雑木の魅力です。
 面積にして5平方メートル程度、そこにコナラやモミジ、ザイフリボクなどの落葉高木だけでも10本ほど配しています。
 高木の下に、常緑・落葉樹を織り交ぜて中低木を植栽してゆくことによって、狭いながらも立体感のある植栽となりました。



 駐車場の反対側から見た植栽前の様子。



 植栽後の様子。
 スペースの都合上、根鉢の大きさが僅か50センチに制約されるために、植栽できる高木も、高いもので4m程度がやっとでした。 しかし、これらが来年再来年と生長するにつれて、2階の窓から枝葉越しの景色が見られるようになります。
 その上、駐車スペースに大きな木陰が広がってゆくことでしょう。



 50センチ幅の列状の緑地スペースでも、単純な列状植栽となってしまっては自然な風景にはなりません。
 上下の空間を活かして、自然ななりのままに植栽することで、狭さを感じさせない豊かな植栽が可能となります。

 狭いスペースをどう生かすか、空間配置の感覚が試されます。
 そして、植栽は植え終えた時が完成ではなく、木々の成長とその後の管理によって、よりよい状態に導いてゆくのです。
 数年後の成長が楽しみな空間がまた一つ、地元に生まれました。


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