今後の高田造園業務について 2020年10月4日
こんにちは。
先日に、高田造園業務縮小のお知らせをいたしましたところ、たくさんの質問、お問い合わせがありました。
いろいろ説明不足だったようですので、補足説明いたします。
まず、造園業務を終了するのではなく、縮小といたします。
その理由は、執筆や環境活動、環境調査活動にもっと時間を割いていくためでございます。
造園工事については、今後は、環境の再生について、想いを共有し、施工内容や目的を共有し、社会や環境・未来に鑑みて意義のある造園環境工事については、今後もできる限り、尽力していきたいと思います。
私の造園の趣旨と想いに賛同してくださり、なおかつ未来の環境のために何かしたいとお考えの方は、どうぞご連絡お待ちしてます。
手入れについては、件数を減らす必要がありますが、これもクライアントと環境に対する想いを共有して、なおかつ私でなければできないであろうお庭について、20件程度までは今後も継続したいと思います。
「うちはどうしても、、、」と言う方はどうぞ直接ご連絡ください。
いざ、件数を減らすとなると、それもなかなかできることではありません。どの庭にも思い入れがあり、わが子のようで、なかなか減らすことができずにおります。
また、これまでお付き合いくださったお客様、皆様とてもよい方ばかりで、本当に心苦しく思います。
これまで作った庭は、ほぼすべて、私自身が思いを込めてずっと手入れしてきましたが、私が手が回らなくなる庭については、少しずつ心ある若い人へと、想いが繋がっていけばと思います。
わがままをどうかお許しください。
なお、今後について、来年度以降をめどに造園関連の仕事は週の半分程度の日程で回していきたいと思います。
それ以外の時間は、環境改善指導、環境調査、NPO法人地球守活動、講演・現地指導・教育活動、書籍等の執筆活動などに費やしていきたいと思います。
土地、いのち、環境と私たち人間は本来一体であり、それに対する正しい向き合い方が人をも環境をも、そして生きとし生けるあらゆる命を育み、それが未来に続きます。
社会や現代の暮らしが自然からかけ離れてしまった今、私たちは自然という絶対的真理の基準を見失ってしまったように思います。
そこは迷いの世界であり、今は人間活動のインパクトがとめどもなく大きく、自然環境全体は待ったなしの危機の淵にあります。そこから新たな温かな世界を取り戻してゆくために、私自身をも育てながらも、できることすべてを費やしていきたいと思います。
なお、遅ればせながら、ここで書籍・出版物のお知らせさせていただきます。
今年6月発売の新刊著書「土中環境 忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技」(建築資料研究社発行)、おかげさまで増刷6刷となりました。
自然環境の中で起こる事象に向き合ってゆくうえで、現代科学の中で見落とされてしまった大切な視点を掘り下げております。
今、土中環境 続編の執筆にかかり始めており、来春発刊を目標に進めております。
災害もますます大型化し、そして自然環境のポテンシャルが失われつつある今、本質的な視点を世界が取り戻していけるよう、実践実証と並行して、世に様々伝えてゆくことも私の大切な仕事と思っております。
なお、私が主催するNPO法人地球守では、今年から、地球守自然読本シリーズを刊行しております。
只今、VOL1,VOL2を頒布中です。
詳細は地球守サイトより、お問い合わせください。
またVOL3については11月発刊予定です。
日々、現場に出て、土や木々との対話を続けながらの様々な活動を並行して行っております。
今後もどうか、ご理解ご協力くださいますことを、何卒よろしくお願い申し上げます。
造園設計施工業務縮小のお知らせ 2020年9月15日
業務の内容を段階的に絞り込んでまいりますので、ご確認くださいますようお願いいたします
お客様各位
造園設計施工業務の受注および、一般個人庭園のメンテナンス業務 段階的縮小のお知らせ
平素は大変お世話になっております。
この度、環境活動に注力するため、㈱高田造園設計事務所における一般個人庭園設計施工の受注をと、個人庭園のメンテナンス業務を段階的に縮小することになりました。
環境再生を伴う造園環境設計施工については、引き続き継続してまいりますので、お問い合わせください。
また、これまでうちで提供した造園メンテナンスについて、可能であれば他へ引き継ぎながらも、強い要望がございましたらなるべく対応いたしますが、時期や回数については変更をお願いする場合がございます。
大変恐縮ながら、予めご了承くださいますようお願いいたします。
長年お世話になってきましたお客様方々には、ご迷惑をおかけすることになるかもしれません。また、長らくお付き合いくださったお客様にも心惜しく、こうした変化は寂しいものがございます。
また新たな形でお付き合いが継続すればと思いますので、どうかご理解いただきますよう、心よりお願い申し上げます。
メンテナンスについては、今後、当社を卒業した弟子たちあるいは雑木の庭を理解する同業者への移行をお勧めいたします。また、その際の相談については、いつでもご連絡くださって構いません。
なお、子供たちのためや未来につながる環境の再生業務、あるいはその啓蒙、環境危機に際して本質的な面を共有できてなおかつ、時代的意義のある業務については、個人、法人、市民団体、行政団体の区別なく今後も継続して承ります。
私は東日本大震災を契機に、非常事態においてのセーフティネットとしてのダーチャ活動や、いのちを支える根本である環境再生活動及びその啓蒙に軸足を移してまいりました。
2016年からはNPO法人地球守を設立し、造園の仕事と並行して環境活動、啓蒙活動を行ってまいりました。
そして、2019年秋、再三の台風被災、会社をあげての被災地支援活動を経て、昨年12月、民間企業初となる環境・気候非常事態宣言をいたしました。
本来「非常事態」と言うのは、「通常の状態」に戻ったときに終了しますが、今迎えている環境非常事態は、残念ながらこのままでは終了することはないでしょう。
終わりのない非常事態に際して、これまでの仕事をきちんと整理して、やるべきことに注力してゆくことを決意した次第でございます。
私はこれまで各地の山林、被災地等に足を運び、環境荒廃の進行具合を調査観察し続けてまいりました。
また、その本質的な原因と再生方法について、できる限り周知に努めてまいりました。
環境の問題は今、手遅れ寸前と言われながらも、現代社会はその問題の本質から軌道修正することはなく、自然災害、感染症等、環境悪化に起因する生命や文明社会の問題は日ごと年ごと深刻化することが確実な情勢と認識するに至りました。
今後ますます、想定外の危機的な事態は増してゆくことでしょう。その際、われわれは、できる限りの被災者支援活動や環境再生活動および本質的な気付きを促す活動に注力していかねばなりません。
こうした事態を招いてしまったのは、私たち現代に生きるすべての大人の責任でございます。
私たちが環境の恵みを享受しつつ豊かに生きてこられたのは、ひとえに代々の先祖が守り伝えてくださったお蔭でありながら、私たち現代人は、果たして子孫に感謝される存在と言えるでしょうか。
一時の利便とお金のために環境を壊し、安全で豊かな未来を奪い、そしてその危機を認識しながらもなお、生き方や行動を変えることなく、次世代の希望を奪い続けているのが我々の姿です。
加速的に悪化してゆく社会、環境を目の前にして、微力ですが、少しでもよい未来のため、少しでもよい環境を子供たちに手渡してゆくため、力を尽くしていきたいと思います。
また、そうした、軌道修正の道筋を示すことも、私たちの次なる使命の一つと考えます。
ご迷惑を心よりお詫び申し上げます。
同時に皆様もまた、今の時代、そして未来のために何をすべきか、本気で考えていただくきっかけとなればなお、幸いです。
長くなりましたが、今後もまた、仕事と言う形ではなく、未来のために生きる者同士として、ご縁が繋がればとてもうれしく思います。これまでどうもありがとうございました。
令和2年9月15日 ㈱高田造園設計事務所代表取締役 高田宏臣
2019年12月24日、環境・気候非常事態宣言のお知らせ。
今年の秋、当社本拠地である千葉県では、度重なる台風、豪雨による大きな被害がございました。
当社も家族も被災しておりますが、この秋は、当社として災害地救援や、被災地の復旧、そして災害地環境調査に尽力してまいりました。
水害土砂災害被災地とその真因を環境面から調査する中、もはや一刻の猶予もない、環境の問題の予想以上の深刻さを知り、緊急講演会や様々な書籍雑誌への寄稿、インタビューを通して、災害広域化の大きな要因となる環境劣化の問題と対策について、様々発信してまいりました。
そのため、様々な通常業務に支障をきたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
しかしながら、今はまさに非常事態であり、今後ますます大災害や想定外の気象自体が深刻化することでしょう。我々文明社会の存続の危機は増すばかりという現実に、あと数年もすればもはやだれもが気づくことではないでしょうか。
今、世界各国合わせて11000人を超える科学者が、気候非常事態を宣言しております。そして世界各国の自治体や国もまた、気候非常事態宣言を発しており、その住民総数はすでに2億人を超えております。
これまでの災害規模を更新する被害に見舞われた被災地において環境の再生を専門としてきた当社として、この度、環境・気候非常事態を宣言し、行動計画を発表するに至りました。
宣言文は、代表取締役の高田宏臣が提起し、昨日(2019年12月23日)取締役会にて全員一致で可決、本日(2019年12月24日)、社員総会にて、全員一致で承認されました。
以下に、宣言文を公表させていただきます。3500字の長い宣言文となってしまいましたが、お目通しいただき、こうした動きが正しい方向で広がってゆくことを願います。
環境・気候非常事態宣言
株式会社 高田造園設計事務所
現代文明の活動が主な要因となって地球環境は劣化し、生態系の健全な循環はもはや不可逆的に失われつつある。
地球環境は無限というべき複雑な秩序(一般的にシステムという)によって成り立っている。人間を含む地球生態系のシステムが「臨界点」を超えると、もはや地球全体が後戻りできなくなり、地球上のほとんどが居住不可能となる可能性が指摘されている。
「臨界点」という概念は、気候変動に関する政府間パネルによって20年前に導入されたが、今まさに地球環境は臨界点が迫っているか、あるいはすでに超えた可能性があることを、世界中の気候科学者たちが警鐘を鳴らしている。
国連の最新の報告においても、600人の専門家による3年間の検証の末、「気候変動と環境破壊は予想以上に加速しており、臨界点に近づいている」と警告している。
これまでの人類文明の歴史においても、文明活動によって地域的な気候を大きく変えてしまい、不毛の地と化してしまったことが文明滅亡の大きな要因となった事例はいくつも示されてきた。
近年においても、豊かな地域環境を破壊してしまった一例として、自給率100パーセントの恵み豊かな国土を有していたアフガニスタンが、戦争の末に短期間で不毛の砂漠が拡大し、地域的な気候まで変貌したことがあげられる。
こうした事実は、自制なき文明活動の行使によって、人間含む生命の母体である自然環境の循環と安定が、今や短期間に壊されてしまうということを、現実的に明示している。
また同時に、人類の文明活動を支えてきた従来の思考の在り方や視点、黙認されてきた行動の理由の延長線上には、もはや持続的な文明の存続はないことをも示唆する。
機械力も技術力も大きく進歩を続けて歯止めのない現代、人間社会としての意思と行動そのものが、以前とは比較にならない規模と速度で環境の循環システムを不可逆的に破壊し続けている
それは、地域的な人類・社会存亡の危機にとどまらず、地球全体の「文明の存亡の危機」という科学者たちの指摘もまた、現実的なものとして広く支持されつつある。
こうした地球規模の危機的な状況の中、2016年12月のオーストラリアの地方都市であるデアビン市が「気候非常事態」を宣言して以降、その動きは世界中に拡大し続けている。
デビアン市の宣言から三年後の今(2019年12月現在)、世界中で1,100以上(2019年10月時点)の国や自治体、大学等が非常事態を宣言している。
今や、気候非常事態宣言下の住民総数は世界中で2億人を超え、この動きは今後数年間のうちに加速度的に広がると考えられる。
日本においても、2019年9月に長崎県壱岐市が気候非常事態宣言を決議したのち、3か月という短期間の間に、神奈川県鎌倉市、長野県白馬村、長野県、福岡県大木町、大阪府堺市、鳥取県北栄町と、7自治体が宣言を決議するに至った。(2019年12月20日時点)
また、民間組織では、千葉商科大学が、激化する気候変動に対する緊急メッセージを発出している(2019年11月)
日本において、こうした急速な動きは、2019年秋以降のことである。
それは、2019年9月以降、連続して東日本に上陸した台風15号、19号、21号に伴う、想定を超える大規模かつ広域な水害土砂崩壊等の自然災害によって加速されたと思われる。
高田造園設計事務所では、主に2008年以降、水害や土砂災害の発生した流域環境や、高木枯れに象徴される森林の崩壊地などの環境調査を独自に続けてきた。
また、2019年9月以降、度重なる台風・豪雨の度に、当社も周辺地域も多く被災している。
その中で、県内地域の復旧対応にも会社を挙げて取り組んできたと同時に、風倒木の激甚被害地、水害発生地、氾濫河川の流域環境、土砂崩壊地等において、主に周辺環境・土中環境の健全性という面から調査を続け、環境の現状や、災害発生を多発させる真因についての周知のために尽力してきた。
自然環境の健全化なくして、地域や国土の安全も安定も豊かな生産性の持続もなく、そしてさらには人類文明の持続もありえない。
今の危機的な地球環境問題に、世界中で頻発する大規模災害に際して、その原因として、温暖化に伴う気候変動ばかりが注目され、残存する森林や河川などが持つ環境機能の著しい劣化については、あまり議論されていない。
環境保全機能の発揮が期待される森林については、伐採や開発による森林面積の減少ばかりが問題なのではなく、森林の分断や、小面積の点状あるいは線上の無秩序な開発が今や、周辺広範囲において潜在的な環境機能を、水面下で著しく損じていることに視点を向け、対策する必要性を提起する。
山林が残されても、その貯水機能、地形安定機能、生態系育成機能、水源涵養機能といった、山林・大地の質(ポテンシャル)は今、世界的に劣化し、日本においてもそれはここ数年、目に見えて加速している。
世界的に議論の中心となる、文明活動によるCO²排出量のオフセットは重要な課題であるが、「再生可能エネルギー推進」という名目によって行われ、それによって引き起こされる地域環境の著しい劣化を伴う現状について、早急に周知し、万物生存と持続の母体である自然環境を壊さぬ形での再生可能エネルギー推進の在り方を模索する必要がある。
山地でのメガソーラー発電所建設のように、森林を伐採し、山を削り谷を埋めて大規模に造成されてしまえばもはや、その土地の環境のポテンシャルは1000年たっても再生されない。未来の環境を永遠に奪うこうしたやり方は、早急に見直される必要があると考える。
環境の要というべき尾根筋も岩場も谷筋も問わず、一律で広範囲の皆伐を伴うバイオマス発電の燃料供給の在り方など、地球規模の気候変動の時代において、なお一層の問題となる。
現代文明を支えるインフラ整備における工法もまた、根本的に自然環境に相反して永続せず、より破壊的に周辺環境を傷めているという現実について、市民、専門家双方への周知と、工法の改善を促す必要がある。
2019年秋、当社拠点の在する千葉県における台風及び豪雨による水害土砂災害、風倒木被害地の環境調査を通して、土壌を含む自然環境の劣化は予想を超えて進んでいる現実を目の当たりにするにおよび、ここに環境・気候非常事態宣言するとともに、以下に今後の会社としての活動方針を公表します。
(*ここに、「気候」非常事態ではなく、あえて「環境・気候」非常事態という)
1.環境再生や造園における業務で発生するすべての有機物は大地の循環へと還元する。また、解体廃材などのすべての無機物も、環境再生のための資材として再生利用する。そして、こうした造園建設土木の在り方を啓蒙普及に努める。
2.当社の役割は、大地・環境の健全な機能の再生を主とし、クライアントや関係者への環境非常事態の啓蒙に努める。また、環境の再生・健全化を伴わない造園土木建築の工法は行わない。
3.当社で行う土木造作建築造園造作において必ず、環境のポテンシャルが自律的に改善、再生される工法にて行い、こうした工法の啓蒙普及に努める。
4.造園業務においては、生態系として育ってゆく環境ベースの再生や改善に徹し、植樹と土中環境健全化を主とし、そしてその後、木々が自律的に健全に育つ環境育成に努める。また、その手法と視点の啓蒙普及に努める。
5.一般的な標準仕様として行われる現代土木建設等、インフラ整備の工法について問題と改善点を研究、指摘し、周辺環境再生に導く工法の開発をサポートする。また、その工法指導、啓蒙、普及に努め、標準的な工法へと確立されるよう尽力する。
6.環境調査、災害地調査、環境改善指導業務を継続し、身近な環境において急速な劣化の現実を伝え、改善のための道筋を示すことに努める。
7.文明の持続と安心して生きられる地域環境と共生してきた先人の智慧に学び、その視点を深め、伝えてゆく。そして未来へと持続する良好な自然環境を育み、再生し、その手法と視点を広め伝えてゆく。
8.気候危機への適応という観点で、今後の大規模災害に備え、迅速な被災地救援活動体制を整備する。
9.特定非営利活動法人地球守等の活動と連携し、広域災害等によって文明の機能が停止した際、当社所有の施設を開放し周辺住民の避難所とする体制を整備し、周知に努める。また、非常時の生存の源である清冽な湧水を保ち、その大切さの周知に努める。
10. 今後の危機に際し、その緩和のために環境再生活動に尽力し、持続可能な文明の在り方の見直しと再構築のために、各行政機関、関係諸団体との連携を模索し、多くの国民市民とともに広げてゆく。
以上、宣言する。
令和元年(2019年)12月23日
株式会社 高田造園設計事務所
代表取締役 高田宏臣
40代の終わりに 2019年8月29日
大変久しぶりの高田造園ブログ更新です。更新を楽しみにされていた皆様お待たせいたしました。
私事でございますが、本日が、高田造園設計事務所代表高田の40代最後の日となります。
ここのところ、私たちが始めた環境活動のためのNPO法人、地球守サイトのブログ投稿に力量の比重を移すあまり、雑木の庭つくり日記の更新が大変滞ってしまいました。
もともと、「雑木の庭つくり日記」は、私の庭つくりの想いをここに綴り始めたのですが、時代も変わり、その中で自分の果たすべき役割も変わっていきます。
これまで、素晴らしいお客様はじめ縁のある方々に支えられて、素晴らしい人生を楽しむことができました。年を経るにつれて、自分を活かしてくれた天、地、社会、人の限りなく温かなご恩にどう応えてゆくか、生き方において、自分の身の回りのこと以上にその比重が増してゆくのが、本来の人の歩みなのでしょう。
これからも依頼してくださる方々のご要望にできる限りお答えしていきたいと思いつつ、限りある時間です。
これからは、未来の環境、国土、人、子供たち、いのち、にとって、価値ある仕事にさらに絞って集中していきたい、そう思っております。そのために、培ってきました私の稚拙な造園技術や感覚を活かしていければ、それはそれで幸せなことだと思いますが、未来へのまなざし温かく、生き続けたいと思います。
今年の盆休み、夏の定例山行は10年ぶりの月山でした。美しく、優しく、そして限りなく温かな霊山です。
月山山麓、庄内平野に続く梵字川出合の風景です。
最上川、赤川と、庄内平野を潤す河川は月山に発します。
月山の霊地であってかつての山岳修験の地、湯殿山への旧道沿いに、森敦の小説「月山」で知られる注連寺があります。
ここに、江戸期、庄内地域はじめ東北関東一体に赴き、衆生救済に心身をささげて尽くし、神とまで呼ばれた木食行者(もくじきぎょうしゃ)、即身仏となられた鉄門海上人が祀られております。
かつて、大規模な土木造作は仏門行者が行いました。河川、道路、田畑、水路、井戸大規模建築に至るまで、土地を安定させて未来永劫に豊かで安全な暮らしの土木造作は本来菩薩行だったのです。
なぜ、土木がお坊さんの役目だったか、と言えば、それは彼らが自然の摂理をわきまえていたからでした。
道路を通すのにも、自然に対して畏敬を抱かず、人に対して慈愛を持たず、ただ自己の都合に目が眩む世の常人が、大地を自己の都合で大きく造作しようとしたら必ず、いつか自然のしっぺ返しを食らいます。
その点、日本古来の神仏習合の営みの中で培われた仏門行者は、人の都合を自然環境の営みの中に溶け込ませる頃合いをよくわきまえていたので、彼らには常に、道筋が見えていたのでしょう。無我の境地で、ただ天地人への無限の慈愛の中で、神仏と一体になって、衆生のため、生きとし生けるすべてのいのちの営みと調和する人の営みのため、土木事業に打ち込んだのです。
鉄門海もそうでした。あちこちに赴き、道をつくり、河川を治め、疫病を治め、豊かな暮らしの環境の調和のために、庄内平野にとどまらず、東日本一帯の村々を訪れ、持てる力を尽くして回ったのです。
注連寺の裏山墓地に続く参道の一角に、鉄門海上人の石碑がひっそりとたたずみます。石碑に、「木食」(もくじき)の、字が刻まれます。木食とは、五穀を断って山草や木の実、木の皮だけを食らう、そんな生活を何年もつづけた末に、いよいよ死期が近づくと自ら土中へと入るのです。
即身仏となり、未来に自らの入定のままの肉体のカタチを保つことで、人々を救済する、このことに対して理解できない人もいることでしょう。
しかし、苦しみ悲しみを乗り越えて導かれる多くの人が、即身仏を目の当たりにして手を合わせ、あるいは涙を流し、心を洗うのです。
このありがたさは筆舌に尽くせず、確かに未来永劫の衆生を救い続ける存在へと昇華した、そういうことにわずかな違和感すら、私は感じないのです。、
ここは本明寺、本明海上人が土中入定して即身仏になられた場所が、入定塚として今も祀られています。
鉄門海上人はこの、本明海上人の生死に打たれ、それが彼の生死のあり様に結びついていきました。
僕から見ると、土木技術者鉄門海上人の生き方死に方、泣けるほど理解でき、惹かれます。
本来土木は菩薩行であり、いのちの世界の喜ぶ仕事、それゆえに、この行に携わる人は限りない天の祝福を受けて喜びの中で育ってゆく、そして無私の心境の中で周囲を幸せにし、自然界の調和の中に溶け込ませてゆく、それが菩薩行ゆえんなのでしょう。
僕は、こういう生き方を通していきたい、50代を目前にして今、そう思います。
今日からまた、新たな工事に着手しました。鎌倉の水脈の要、扇ヶ谷の新規住宅開発地の造園および環境再生工事です。
今、僕の仕事にいわゆる造園工事はありません。環境がこれほど痛んでいる時代、そのことを知りながら、打つ手があるのにやらない、という選択肢はないのです。
本来、山際から湧き出す清冽な水を使いながら守り保つ、それが、こうした場所に住むものの役割であったはずです。
今、こうした箇所の住宅開発の場合、宅地造成関係法令などの制約によって山際にこうしたコンクリート擁壁と落石防備柵が設置されてしまいます。
それがこの、山のキワという、水脈上大変重要な場所にそうした重量構造物が設置されることで、裏山の環境は一気に変わり、一年で見る影もないほど荒れてしまうのです。
湧水は留まり、木々は傾き、山は保水力を失い、危険を増す。これが自然の摂理を無視した現代の土木建築なのです。
庭の造作よりもまずは、擁壁によって呼吸の止まってしまった山の呼吸を回復する、そのための山際の掘削からかかるほかありません。
山際の掘削が進むにつれて、本来の山からの冷気が復活してくるのを皆が感じるのです。
庭の整備はその後です。
まずは、現代の過ちによって傷めてしまった周辺環境の根本から、その呼吸を取り戻すことから始めなければなりません。
空気の流れが変わる、そのことはすぐに実感できます。そして、空気の動きが変われば水の流れも変わります。空気も水も、感じようとしない限り見えない世界のことです。
私たちは見えないもの、実証できないもの、それらをあまりに無視してすすんでしまった挙句、人間も環境も育っていかない、劣化する一方の破滅的な状況を招いてしまいました。
そんな時代だからこそ、気づく人のエネルギーがこれまでになく高まっている、そんなことを感じる人が今、ますます増えているのではないでしょうか。
日々、喜びの中でこの仕事に向き合い、この喜びはどこからくるのか、そう考えると、大いなるいのちの源泉、人間としての根源的なものからくるように思えたのはそれほど昔のことではないように思います。
もう、あと少しで50歳になります。
50歳と言うと、若いころは自分がそんな年を迎えるなんて想像もつきませんでしたし、年取ることへの抵抗感をつい最近まで感じていたように思います。
でも、今は違うのです。付き合う人たちも、見える世界も、今が一番と思えます。そう感じながら年を重ねることができれば、それは本当に幸せなことともいます。年を重ねることに喜びを感じる、これからもそう生きてゆくための姿勢を保っていきたいと思います。
天から課せられた役目とともに、生き続けたいと思います。
もっと書きたいのですが、、今は22時、明日も早朝から現場に行かねばならないので、このくらいにします。
さようなら、今生の40代、最高でした。まだ見ぬ50代も、全力で生きて奉仕したいと思います。
ありがとうございます。
平成から令和へ 川越の庭、竣工 令和元年5月1日
高田造園ブログを見てくださる皆様、大変お待たせしました。
今年も早くも新緑の時期となり、そして、令和の時代が始まります。新たな時代が日本にとって、そして世界にとって、すべてのいのちの営みにとってよき時代となりますように、願いを込めます。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
昨年からとびとびの日程でかかり始めました、川越の庭、一昨日に完成しました。
綾部工務店施工の石端建ての伝統家屋を大地息づく雑木の空間で包み込みます。
裏口側です。
隣接道路より、玄関アプローチ越しに、家屋と庭を垣間見ます。
洗い出しと敷石の玄関アプローチも、土地に重量をかけずに大地の水と空気の流れを遮断しない、呼吸する下地状態を保ってます。
すべての土木造作において、私たちは今、土地のいのちの循環を妨げず、再生しながら、庭の空間を作っております。
たくさんの思考錯誤の中で、今のスタイルに至りました。そのヒントは常に、先人の営みと精神性の中に見出してきました。
温故知新、と言いますが、行き詰った時代を潜り抜けて時代の進化に到達する、そこには過去現代未来三世を通して大切なもの、過去の造作の意味をきちんと理解して活かしてゆくことが大きなカギであり、妥協なく徹底していくこと、その果てに、楽しみと喜びがあり、わたしたちの造園造作の日進月歩の歩みがあったように感じます。
玄関アプローチから、濡れ縁越しに主庭側を垣間見ます。
駐車場側から、木々越しに家屋の空間が繋がります。
駐車場の写真は間に合いませんでしたが、3台分の駐車場もまた、土地の通気浸透性を遮断せず、むしろ年月とともに高まってゆくように仕上げています。
主庭の一角に、大穴を掘削し、そのまま落ち葉溜めとして仕上げています。
ここが主庭の土中の水と空気の動きを促す、大切な装置となります。
枯れ池にも見えますが、いずれこの土地の土壌環境が育って木々の根が側面や底面に張り巡らされるにつれてしっとりとした苔が覆ってくることでしょう。そして水の浸み出しが再生されれば、土壌は自律的に恒常性を整えていくのです。
私たちの環境造作は、自然の作用が健全に向かうように、ちょこっとだけお手伝いする、きっかけを導くものであり、その先に、未来の土地の心地よさ豊かさがあります。
そんな営みが、過去連綿と続けられてきた果てに、今の私たちが生きる大地がある、そのことをいつも心にとめて、先人とともに歩んでいきたいと願います。
本来の枯山水造作は、大地の通気浸透性に配慮した環境造作が原点にあったようです。
昨年12月の京都新聞での記事だったと思いますが、京都の枯山水が街環境にける浸透性の確保、洪水緩和の面で大きな役割を果たしているという調査研究結果が報告されました。
当然のことですが、あまり知られておらず、そんな視点と意識をもって、記事の元となった調査研究をなさった方々に敬意と感謝を申し上げたいと思います。
かつての土地の造作は、必ず環境の安定と調和を促す本質的な視点があって、それを現代人が忘れてしまっているだけのこと、これからの私たちの文明が、永続して子供たち、孫たち、そしていずれは私たちが還ってゆくこの大地のすべてにとって、本当の意味で資する在り方、生き方へと歩んでいけるよう、自分のできることに注力していきたいと願います。
これは施工中の様子です。
以前は田んぼだったこの土地を埋め立て、長年駐車場だった土地です。ハンドピックという削岩機を用いての土地改善造作となりました。
植栽箇所の下地には、山中にて風化させた枝や瓦を敷きます。
土地を締め付けず、適度な空間を保ち、そして菌糸や土中生物が活動しやすい植栽環境を作るのです。
植栽箇所の下にも多数の穴を穿ち、そこに炭と瓦と藁などを重ねて、菌糸な根が深くまで誘導されて深い位置から土中環境が再生されてゆくよう、労力を費やします。
私たちの仕事では、植栽などの、目に見える部分の造作の何倍もの時間と労力を、見えない土の中の健康な環境つくりに費やします。
それこそが、穏やかで健康な庭環境の表情に繋がり、そして未来の土地の豊かさ、健康につながります。
全てのいのちが調和をもって共存できる環境に、人の安らぎも心地よさも生まれる、そこは単なる見た目のデザインではなく、その基には人の営みを自然の大きな営みの中に受け入れてもらうための、不可欠な視点があります。
こうしてまた、庭の完成と同時に、息詰まった土中の環境が再生へと向かい始めるのです。
庭という、街の中の小さな点の空間の土地の再生、それが点と点が繋がって、いつか傷めてしまった大地の環境再生の拠点なってゆく、そんな庭つくりをしていきたいと思います。