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雑木の庭つくり日記

カフェどんぐりの木お話会、キャンセル待ち受付のご案内  平成27年3月6日

 先日お知らせいたしました、カフェどんぐりの木でのお話会「木と人、生き物と大地、共に生きる未来」(3月21日開催)について、お申し込みが定員を超えましたため、これからの受付についてはキャンセル待ち受付にさせていただきます。お申し込みくださいましたすべての方に参加していただきたいと思いますが、会場に限りがございますため、ご理解くださいますようお願い申し上げます。

 なお、キャンセル待ち受付された方で、今回やむなく参加できなかった方には、次回の講座などの際、優先的にご案内させていただきます。

 今回の講座の内容は、身近な樹木や自然環境の診断のポイントを切り口に、いのちの源と言える土壌について、そして大地の血管ともいえる土の下の水と空気の流れについて、なるべく分かりやすく、そして詳しくお話ししたいと思います。
 攪乱された大地が、見えない土の中でどのようなプロセスで健康を回復してゆくか、そしていのちを育む源である豊かな大地の環境をどう育み、そして未来へと繋いでゆくか、そんなお話ができればと思います。

講座のご案内、キャンセル待ち受付は、こちらまで。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
つくば市春風台の環境改善工事     平成27年2月26日


  つくば市の大型新興住宅地、春風台の緑地環境改善工事の開始です。

 この住宅地は、自然環境共生型の暮らしを理念に掲げ、住宅一区画につき、接道部分に約60坪の景観緑地、そして家の背面に約40坪の農園スペースを兼ね備えた、合計109区画の未来志向の住宅地です。

 この日の作業は、緑地の通気浸透水脈改善と、健全な雑木林再生型植栽モデルのデモンストレーションです。
 春風台の住民方々や地元造園業者方々が入れ替わり立ち代わり訪れ、興味深く見つめる中での作業となりました。



 6年前に新興住宅地として開発造成され、そして植栽された木々は数年経過した今も状態が非常に悪く、次々と衰退・枯死が進んでいます。せっかく景観緑地の理念を持って、広大な緑地スペースを確保されたのに、植えられた木々が元気でなければなんにもなりません。
 どうしてこうなってしまったのか、その原因は、開発造成に伴う土壌環境の悪化にあります。
これを改善して、健康ないのちを育む大地環境へと再生してゆくためには、単に従来のような根鉢周辺の土壌改良や客土だけでは対応できなくなってきました。
 
 長く造園の仕事の中で木々に向き合い、土に向き合いながら、悪化し続ける大地の環境に気づきます。
 普段は目に見えない土の中で今、何が起こっているのか、それを人に伝え、仕事の中で改善の手立てを施してゆくこと、これからの開発、これからの造成においてますます大切な考え方となってゆくことでしょう。



 地元協力業者によって、衰弱した高木の掘り取りと工事個所の芝剥がしが前日になされ、いよいよこの状態から、確実に木々が健康に育ち、土壌環境が健全化してゆくための工事実演です。
 高木植栽箇所は60坪の緑地区域に3か所設けます。



 植栽部分の掘り下げの後、その四隅に縦穴を掘り、節を抜いた竹筒と、木炭を中心とした通気改善資材で縦穴を埋め戻します。
 土壌の通気浸透性が悪い条件下で、土壌環境を持続的に育み、そして木々を健康に育てるためには、この縦穴による土中深部までの通気浸透改善が決定的に大切なこととなります。
 悪化した土壌環境の下では、単に植栽のための植穴だけ土を入れ替えても、その土は一向に良くなっていかないどころか、植穴の底に新たな不透水層を作ってしまい、それが滞水を促し、徐々に根を腐らせてしまうことに繋がる結果を招くこともよくあるのです。
 
 「客土・土壌改良」までは、従来の造園作業の中で普通に行われてきたことですが、それが効果的な結果につながるのは、元の土壌の通気浸透能力が健全であるか、あるいは健全に再生されてゆく状態である場合に限られることなのです。
 ここまで自然環境を悪化させてしまった今、根本的な大地の呼吸から再生してゆくのための手立てを打っていかねばなりません。



 縦穴通気口設置後、植穴の下地土壌を重機でほぐし、乾燥枝などの有機物や木炭をサンドイッチしながら土を埋め戻していきます。
 土中の水脈が再生されると、この植栽マウンドから表層水が吸い込まれて動き出し、同時に空気がストローのように土中深くへと吸い込まれていきます。
 それによって、土中深い位置にまで、様々な生物が生育できる環境が広がっていきます。そしてそれが土壌の団粒化を促し、樹木の根が深部にまで入り込んでゆきます。乾燥枝はいずれ腐って土に還ると同時に、その頃には絡みついた木々の根が太くなって、敷き枝に代わって土圧を支え、通気環境が持続的に維持されるのです。



 表土の埋戻しには、既存の土にバーク堆肥等を混ぜて改良して埋め戻します。



 土中環境再生のためには、地形落差が必要で、ここでも植栽地を盛り上げて、土中水が動きやすい環境を作っていきます。
 また、雑木植栽はこうして根鉢が接するほどに密植することで、木々の共存効果と競争効果が植栽直後から始まり、早く健全な状態へと生育していきます。




 同じ作業を繰り返して、2つ目のマウンド植栽が完了し、木立越しに家屋風景に奥行きが感じられ始めます。




 3か所の植栽マウンド完了。1区画の景観緑地にこうして3か所ずつ、互い違いに植栽していきます。
 これは平坦な大地を吹き荒れる強風を緩和する上でも効果的な配植となります。



 さらに、この住宅地全体の大地の血管ともいえる通気浸透水脈の再生のため、敷地の接道側に空堀を掘り、その要所にまた、縦穴通気浸透孔を設けていきます。
 これを、この水脈が停滞した住宅地全体で行うことで、造成前の健全な土中環境を再生してゆくのです。



横溝の水脈も、地形や植栽配置に応じて緩やかにカーブさせていきます。地形に逆らわず、その土地の特性に応じた曲線で配してゆくこと、このことが実は非常に大切なことなのです。
 
 自然界の表層環境は、水と風とが動かして、落ち着かせていきます。そこに直線は決して存在せず、水の動きや空気の動き、それに土質、地形、生物環境とが、なだらかな流線型の地形環境を作って大地を落ち着かせていきます。
 だからこそ、地形に逆らわずにつくられた昔ながらの田舎道には直線はなく、それが自然の力を妨げないがゆえに、大掛かりなメンテナンスを要せずに何百年と保たれるということは、各地の山中の古道を見れば明らかに理解されます。
 そんな自然の働きを顧みずにつくられた直線的な構造物に対しては、自然界はそれを壊して安定させようという作用が働きます。そして人間はまた、壊されまいと、自然環境に対して強力な機械力で対抗し、そこに尽きることのない、自然と人との対立が生じます。そんな、これまでの開発の在り方を、大地の呼吸が完全に止まってしまう前に見直さればなりません。



 固い土を穿って溝彫りすると、表層土の断面が見えてきます。芝生地面の下に10センチの位置に固く、通気不全の環境下で青く変色しつつある、土層が形成されていることが分かります。
 この環境では通気も水も滞り、生物環境は極めて単純で不健全なものとなっていきます。

 この住宅地が農地転用を経て開発されたのは6年前のことですから、この硬板土層が形成されたのは、その後のわずか5年程度のことなのです。たった数年間で、広大な大地がこうして不健全な状態へと変貌し、生き物が健康に生育できない環境を次々に広げてしまったのです。

 日本の大地は、私たちの今の暮らし方によって知らず知らずのうちにこうして、その命の源である豊かな土壌環境から失ってしまいつつあるのです。
 その先には、人間が健康に生きてゆくための未来の環境はないのです。
 
 よい暮らしの環境を提供するのが造園の仕事であるのなら、見た目ばかりでなく、こうして足元の自然環境から健康に再生させてゆくことが、今後ますます必要とされることでしょう。



 大地の環境を改善しながらの植栽工事は大変な重労働で、一日の工事が終了する頃にはぐったりと疲れ果て、日が陰ります。
 でも、やりがいのある仕事です。この街全体がこうした作業によって素晴らしい環境へと再生される日が目に浮かびます。

 私自身、土中の水脈環境にまで目を向けて、その改善に本気で取り組み始めたのはほんの半年前からのことです。
 それまで、私は健康な自然環境を庭に作ると言いながら、実際には目に見える地上部の環境にばかり配慮してきたのかもしれない、そう反省しています。

 実際、これまで作ってきた庭の中でも、健康な環境へと育つ場所もあれば、そうではなく、木々に精気がなく活力ある環境へとなかなか育っていかない場所も確かにあります。
 根本の原因は大地の通気環境にあることが、今ははっきり分かります。

 どんな環境においても木々を元気に育てたい、生き物のにぎやかな気配溢れる環境を庭に作りたい、そんな想いで健康な庭つくりを追及してきたその果てに、大地の呼吸の問題に行きつきました。
 健康な未来は健康な大地の環境を再生することなくしてあり得ません。

 3月21日、カフェどんぐりの木でのお話会では、この大地の環境について、優しくご説明いたしたいと思いますので、多くの方の申し込みをお待ちしております。

 お話会のご案内はこちらより。

 

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
「木と人、生き物と大地」 お話会のご案内  平成27年2月22日

 「木と人、生き物と大地 共に生きる未来」 市民講座&お話会のお知らせ

 3月21日(土・祝)、千葉市内のカフェ「どんぐりの木」にて、市民講座を開催いたしますので、下記の通り、ご案内申し上げます。

*日時 3月21日(土・祝)
    14:00~16:00(開場13:45)

*参加費 1000円(お茶つき)

*主催・会場 cafeどんぐりの木
         
(京葉線 稲毛海岸駅から徒歩8分)

*定員 25名程度
    
*お申込み・お問い合わせ
 cafeどんぐりの木
     電話 043-301-2439
     メール donguri35506@yahoo.co.jp

 なお、高田造園設計事務所でも、お申込みを受け付けております。電話でもメールでも、いずれも構いません。お気軽にお問い合わせください。

*講座内容


 多くの方々にとって身近な緑である、街路樹、公園樹木、庭の木々の健康問題といった視点から、今の自然環境、特にこれまであまり語られることの少なかった、様々ないのちの根本である大地の環境について、分かりやすくお話いたします。
 全ての生き物にとっての命の基盤である自然環境について考えるうえでの大切な視点を知っていただき、木々も人も健康に生きてゆける住環境、生き物の気配溢れるかつてのにぎやかな自然環境の再生、そこに暮らす人たちのふるさとの風景となる街の緑について、そして、人と生き物、大地との共生について、理解を深めていただきければと思います。

 講座のご案内はこちらをクリックくださいませ。
 
 自然環境に関心のある大勢の方のご参加を心よりお待ちしております。どうぞよろしくお願い申し上げます。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
山の補植作業        平成27年2月15日


 千葉市内の荒れた山林を取得し、整備を進めておりますダーチャ用地に、樹木畑で育成したクヌギなどの木々を補植しました。
 山林の補植は単なる景観つくりではなく、自然環境が自律的に再生されていき、それが風土の環境再生へと繋がる形で成されることが重要です。また、目に見える地上の部分だけでなく、根本的に大切な部分である、土中の環境再生をも視野に含めて施工していかねばなりません。
 
 新たに植栽した木々が、その土地の健全な森の構成要素として、大地の環境の一翼を担う形で溶け込んでゆくこと、そのための配慮や、その土地の自然が持つ働きや力を活かしながら手を施してゆくことこそが、問題となっている荒れた里山を、未来を支える命の財産として繋いでゆくための大きなカギとなる、そんな想いで補植作業に臨んでいます。



 山林の要所要所に効果的な補植場所を定めて、そこに枝葉の土留めを施していきます。
 比較的、急な傾斜地での補植のため、その後の健全な土中水脈の再生や、地滑りが起こらない環境つくりに配慮しながらの作業です。



土留め柵に用いる枝葉はもちろん、山林内から集めます。一つ一つの作業によって、山もきれいに片付いていきます。



 土留め枝柵の内側に、補植樹木を植え付けていきます。



 盛土した分、補充する土も他から搬入するのではなく、斜面山側を溝状に掘り下げて、その土を根鉢にかぶせて盛土していきます。
 この際にできる、斜面山側の深い横溝が、土地改変に伴う土中水脈の健全化に繋がるのです。



そして、斜面際を掘り下げたの横溝に、枝葉や木炭を漉き込んでいきます。これが大地の呼吸孔として機能し、樹木の根を誘導し、土中深い位置まで豊かな生物環境を作り上げてゆくことに繋がるのです。



 斜面補植完了後。盛土部分も、周辺から集めた枝葉をかぶせてマルチして仕上げます。構造上、すぐに土中水脈再生が始まり、決して地滑りや斜面崩壊など起こらないうえ、永続的かつ自律的に大地の環境が再生されてゆくのです。
 



 補植樹木はどんぐりから育てた木々たち、盛土の土は現地での発生土、そして水脈暗渠資材もマルチ材もすべて、この山林での採取によるもので、外から持ち込んだものなく、一銭たりとも材料費を投じることなく、大地が再生されてゆくのです。

 かつての人の営みが自然環境共生型、再生型の形であったがゆえに、今の我々の命が支えられてきたという事実をもう一度きちんと認識し、その上で、これからの未来へ続く社会の在り方、環境共生の在り方を、今こそ問い直すべき時期にある、そんな想いが日に日に強まります。




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鎌倉市梶原山の庭 竣工   平成27年2月12日


 先週かかり始めた鎌倉市Hさんの新築家屋の造園工事が本日、駐車場の仕上げを残してほぼ完成しました。
 建築設計施工は、おなじみの北村建築工房です。
 2台分の駐車スペースを除くと外空間面積はわずかですが、それでも植栽配置を工夫することで、狭いながらも圧倒的な緑に包まれた
住まいとなるのです。



 駐車場際に薪小屋を設け、木々の合間の景色のポイントとします。使い勝手の良さと景観の両立こそ、造園配置の醍醐味といえるかもしれません。



 薪小屋の背面の細い路地空間。わずかな面積の庭の中に、様々な表情を作り出します。



 東側の狭い空間は、窓配置に応じた植栽を常に心がけます。1階窓、2階窓、木々越しの景色を美しく潤い豊かに構成してゆくことで、住まいに居ながら自然を感じ、落ち着きのあるゆったりとした日常を作り出す、心地よい住まいの庭はその家屋に沿って作っていきます。決して庭だけでは完成せず、同時に家だけでは決して心地よい住まいは生まれません。
 植栽は建築作品を引き立てるための単なるデコレーションではありません。住まいの環境、快適な住まい、そのための植栽、住む人の長年の心地よさを作り出すのが造園や建築であるという責任を、我々住まいの作り手は常に真剣に意識しなければなりません。そのことが建築や造園世界の常識となれば、日本の住まいはもっとよくなってゆくように思います。



 同じく、狭い西側空間も、一階、2階双方の窓配置を中心に植栽します。西側の窓際植栽は、住まいの微気候環境に大きな効果をもたらします。



 玄関アプローチは、型枠を用いずにハンドメイドに柔らかく仕上げます。地表の水の動きを極力妨げないように、園路を接続せずにところどころ目地幅を空けることによって地表環境の健全化に配慮します。



 デッキに落ちる隣家生垣の木漏れ日。隣家の高生垣がここでは西日を緩和するとても大きな役割を果たしてくれます。造園はその場所の環境条件を取り込みながら、その場所に応じて最善の住まいを作り上げていきます。



 新築の家と庭、これからこの地でHさん家族の暮らしが始まります。
 私にとって庭の完成は、その地の環境つくりのほんのスタートでしかありません。これから木々が育ち、そこに住む家族や街の中でそれぞれの心を育みながら、景観が風景となり、そして風土へと育ってゆくことを願いつつ、日々庭を作り続けております。
 ここで始まるHさん家族の新たな暮らしと共に、庭の木々が寄り添い共に年月を重ねてゆきます。
 関係者の皆様、そして好きにつくらせていただきましたお施主のHさま、どうもありがとうございました。




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