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雑木の庭つくり日記

雪積もる自宅 朝の景色     平成24年1月24日


 一夜明けると、庭の木立は樹氷と化して、青空に美しく輝いていました。
 「仕事どうしよう・・・」と思うと同時に、美しさに感動です。
 


 樹氷越しに見る我が家の景色は一変しました。



 我が家の駐車場からの景色です。田んぼは一面の雪原となり、奥の丘に朝日が差し込みピンク色に染まります。
 そして、雪原から舞い上がる雪煙が、日常離れした景色を見せてくれます。

 先週後半から降り続いた雨に、そしてとどめの豪雪です。遅れがちの仕事のことを考えると頭が痛くなりますが、それでもこの美しい雪景色には感動です。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
延焼を防いだ木々   平成24年1月21日
今週の初め、事務所の隣、廃品回収リサイクル業者の倉庫が火事で全焼しました。



 回収保管されていた家電廃品に次々と引火し、大きな爆発音と共に黒い煙、猛烈な悪臭が立ち上りました。

 写真左の白い建物は、当社のゲストハウスです。4m道路を挟んで、大きな火災現場に隣接しています。



  火事の後。大きな鉄骨の倉庫がぐしゃりと曲がり、そして中の廃品家電などは全て燃えました。
 冷蔵庫やテレビなど、黒煙を上げて爆発し、そして猛烈な火力を発して燃えていったようです。
そして、こうした廃物火災によって様々な有害物質もまき散らされたことでしょう。
 悪臭によって頭が痛くなります。



 敷地に隣接するケヤキの大木群も、枝の一部が燃え、幹も痛々しく焦げてしまいましたが、あれほどの熱風にも関わらず、ケヤキの命は無事でした。



 火事の風下側に位置する左奥の家屋は、竹林によって火の勢いが食い止められ、間一髪で延焼を免れました。



 そして、この大規模火災現場から僅か数mの場所に位置する私の事務所。建屋際の木々の葉は熱風で焼け、茶色く焦げています。



焼け焦げながらも命を繋いだ庭の木々たち。

火事の後日、地元消防署の方が私の会社に来て、こんな話をされました。

「これほどの大きな火災なのに、人的被害がなく、周りの建物への延焼もなかったということは、本当に幸いなことですよ。家の周りの庭の木が意外と延焼を防いでくれるんです。
 普通、木が燃えると考える人が多いようですがそうでもなく、逆に金属製品や人工素材の家具などが一番よく燃えるんですよ。
 今回も竹林や庭の木々が、延焼を防いでくれた部分もあると思います。」



 火災現場に面した事務所際の木々たちは、みんなこうして葉を焦がしながらも、火災から事務所を守ってくれたのです。
 


 赤々とした炎を見せる事務所の薪ストーブ。静かに揺らぐストーブの炎は心地よく、とても暖かく、心まで温まります。
 冬の事務所になくてはならないのが、この薪ストーブです。
 しかし、コントロールできなくなって暴走した炎は、全てを一瞬にして奪い去ってしまう、恐ろしい側面もあります。

 オール電化の暮らしなど、人の暮らしの中から火を遠ざけてしまいます。火のぬくもりも怖さも知らない子供や大人たちが増えてゆく、その先にどんな世の中が待っていることでしょう。

 そして、火事にも負けずに命を繋ぐ木々の愛おしさ、いろいろな体感が与えてくれる感動を大切にしていきたいものです。





投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県佐倉市 茅葺き屋根 終了 平成24年1月14日
 昨年末にかかり始めたAさんの庭の井戸小屋の茅葺き屋根工事、今日ようやくほぼ終了しました。



 今日は棟の仕上げです。



稲藁を束ねて棟を形づくり、そしてその両端を刈りそろえていきます。



そしてその上に、防水のために杉皮をかぶせます。



破風側の棟の収まりの様子。



棟の収め方は地域それぞれ人それぞれで、様々なやり方がありますが、ここは竹がいくらでも手に入る千葉ですので、地元の山から切り出した竹をすのこ状にして、棟を巻いていきました。



 そして、これで大方完成です。
 初めての試み、本物の茅葺き職人の仕事には遠く及ばぬお恥ずかしい出来栄えですが、下手なりにも茅葺きの風景はいいものです。
 
 今後、茅葺き技術を完全に習得し、次世代に繋げるための担い手となるべく努めようと、決意を新たにした仕事となりました。

 初めての茅葺き、快く試させていただきましたAさんご夫妻に心より感謝申し上げます。どうもありがとうございました。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
鹿児島県 雑木の街つくり計画 第1棟竣工  平成24年1月10日  


 今年の初仕事は鹿児島県姶良市での壮大なプロジェクトです。

 一昨年に計画を始めた「雑木林と八つの家」街づくりプロジェクト、日本の街を変えてゆく可能性を秘めた記念すべき第一歩です。
 1棟目が竣工し、本日、その雑木の外環境が完成しました。

 駅前の8区画の住宅用地と小さな公園、道の広場、この小さな街全体を雑木林が包み込み、そして、そこに心豊かなコミュニティの実現、心豊かな子育て環境の提供を目指す夢の街つくりに臨み、地元の土地開発会社の堅い意志と、建築、造園の夢の結集、そして鹿児島県姶良市の協力の下、いよいよこの街つくりが実際にスタートいたしました。

 この第一歩の感動冷めやらぬまま、1棟の外空間施工過程をご紹介いたします。



 南に桜島、北に高千穂連峰や霧島連峰を望む鹿児島県姶良市、「まちなか森暮らし」の舞台となる分譲地の第一棟が完成しました。



 そして、木一本もないこの新規住宅地に、阿蘇の自然樹木130本が搬入されました。これで1棟分です。
 樹木は筋金入りの雑木の庭師、グリーンライフコガ、古閑勝則さんの見立てです。




 右が阿蘇に根ざす雑木の庭師、古閑勝則さん、そして左がこの街づくり実現のために意志を貫き通した姶良土地開発有限会社社長の町田周二さんです。



 植栽は庭の骨格となる雑木の主木から始まります。



 街のメインストリートに面した1本目のコナラ、木の向きや角度を慎重に決めていきます。



 主木が配置されると、その他の木々の配置は必然的に決まっていきます。
 そして、殺風景だった家屋が木立の向こうに溶け込んでいきます。



 大方の木々を植え終えて、玄関アプローチの叩きの仕上げにかかります。
 住まいの景色が見る見るうちに完成していきます。



 阿蘇のマサ土を叩いて仕上げた玄関アプローチも完成です。



 そして、縦列2台分の駐車スペースも、マサ土の叩きで仕上げていきます。セメントは全く使わずに、マサ土本来の硬化の力に委ねます。

 今回の作業中、叩きの工法について、同業者から質問の電話がありました。

「駐車場の叩きでセメントを使わずに石灰を入れると割れるでしょう。私たちはマサ土にセメントを混ぜてやっています。」
 とのお話でした。

 いろいろなやり方が試みられることは良いことだと思います。

 その中で、決してセメントを使うことのない叩きの仕上げ方に、私は誇りを持っております。
 セメントを混入するのであれば、土を叩いて仕上げるという意味はなくなってしまうように思います。
 駐車スペースにおける私の工法の叩き仕上げは、定期的な簡単なメンテナンスは必要ですが、割れるということはありません。
 仮に割れたとしても、それがなぜいけないというのでしょう。土の割れ目、それもまた二つとない味わいある土間の表情になることでしょう。

 自然の素材を自然なままに扱うことがもたらす豊かな住環境、「ちょっとでも亀裂が入ったら瑕疵保証の対象」などとという、旧態依然のお役所的な考え方では、味わいのある愛される町など決して育まれようもありません。



 私たちの叩きの場合、駐車場を仕上げた次の日には車の乗り入れができます。

 「叩きの土間に石灰を混ぜると硬化に時間がかかる」と言う人もいますが、これも実際には、やり方次第なのです。
 セメントを混ぜたコンクリートのような土間であれば、仕上げた次の日に車を乗り入れることなど決してできないことでしょう。

 百聞は一見に如かずです。実際にやって見せることで説得力が生まれます。
 
 そして、こうして車を乗り入れることで、より頑丈な土間となっていきます。それが私たちの造る土間の駐車場です。

 そして、この駐車スペースを潤い豊かな住空間の一部として落ち着かせているのは、隣の敷地に植えた木立のおかげなのです。
 隣の家を建てる前に、隣接する部分に木立を植えて、隣の敷地と繋げていきます。

 この街の価値は、隣の敷地をお互いに借景として利用しあい、暮らしの景色を補い合うことにあります。このことによって、敷地面積以上の住環境の価値が生まれます。

 心豊かな住環境は、家だけでは決して完成しません。外空間がそれを補い、更には敷地を取り囲む町並み、隣地の木々を活かしあうことで、住環境の価値は幾倍にも増幅されます。
 
雑木林と八つの家、この街つくりの試みはそこにあります。



 2日目の作業を終えた時、このプロジェクトの成功を誰もが確信し、晩の宴席も盛り上がります。
 志を一つにこのプロジェクトに人が結集し、そして同じ釜の飯をつつく。
 仕事を終えた至福の時間は、我々にとっての永遠の宝となります。



 完成の日、3日目の朝、庭の中から見た家屋の佇まい。



 街の一角が完成しました。芽吹きの頃、新緑の時期には素晴らしい住まいの景色となることでしょう。



 まちなか森暮らし。自然豊かな住まいの環境が駅前に実現します。
 この後の7棟の植栽は全て、阿蘇の庭師、グリーンライフコガの古閑さんに委ねます。

 趣旨を曲げずに果敢な行動力を持ってこの仕事を成し遂げることができるのは、全国を探してもきっと彼しかいないと私は思います。
 彼との出会いがなければこの計画は決して実現できなかったことでしょう。

 不思議なご縁、決して自分の力ではなく、大きな力に支えられて初めて前人未踏の仕事が創造されるということを、心の底から実感します。



 全国で初めての街づくりの試みが、薩摩の地で始まりました。今日、この日がスタートです。
関係者の皆が無私になり、情熱をこめてこのプロジェクトに命を燃やします。
 こうした素晴らしい方々の計画に際し、私も少しでもお役にたてるよう、心の炎を燃やします。

 温かく迎えて下さった地元の皆様、そして姶良土地開発の皆様、株式会社グリーンライフコガの皆様、本当にありがとうございました。

 今年の初仕事、素晴らしい仕事での幕開けとなりました。


 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
謹賀新年 京都より      平成23年1月5日

 

 祇園町、早朝の白川にゴイサギが1羽。
清らかな光景に心を洗います。 

 様々なことが重なった卯の年が明けて、また新たな1年が始まりました。
 1年間の心身の疲れと心に降り積もった垢を洗い流すべく、今年の正月も旅路でのスタートです。



 重要伝統的建築物群保存地区、町屋連なる祇園の町並み。何度訪れても、美しく完成された町屋の数々と、完璧なまでの街の美しさに見とれます。
 密集して軒を連ねる町屋の造りは、住まいのプライベートの保持と落ち着き、そして外観の美しさを見事なまでに兼ね備えています。



 密集した町屋の庭は、これぞ猫の額というべき、僅かな空間。
 そのわずか数坪の庭から、通りに大きく張り出して活かされる庭の大木がのびのびと、そしていきいきと、街の上空に枝を広げています。
 住まう人の心のゆとりと感性の賜物と言えるでしょう。狭い庭に共存する大木。そして街の風景との共存。
 祇園の町屋の美しさは、こうした住み人の感性が繋いでいくようです。



 比叡山の麓、広大な鎮守の森に囲まれて佇む日吉大社西本宮の本殿。



 日吉大社の鎮守の森。杉やモミなどの大木の下に豊かな森が形成されています。
 樹高30mから40mを越える大木を有する森は、生態的にも樹種的にも、そして森林空間の階層的にも、格段に豊かな様相を見せます。
 これほどの森が生み出されるまでには、最低限およそ150年から200年程度の時間を要すのではないかと思います。
 自立した森、豊かな命育む森は、ここまで深まらないと生まれません。



 そして凍てついた雪の中、比叡山根本中堂に向かいます。



 16年ぶりに訪れた比叡山根本中堂。
 織田信長による比叡山焼き討ちの後の再建ですが、日本仏教の中心的な最高道場であり続けたこの堂宇には、他では決して得られない重厚な何かを感じ、自己の中に大きくずっしりとかぶさってくるのを感じます。



 天台宗の祖、伝教大師最澄の言葉、山家学生式(さんげがくしょうしき)に再び出会います。

「国宝とは何ものぞ、宝とは道心なり、道心ある人を名付けて国宝と為す。 
一隅を照らす、これすなわち国宝なり。」

 20代半ばの時分、熱い決意と共に、石に刻まれたこの言葉を書き写し、清書して、一人暮らしの部屋に飾ったのも、ずいぶん昔のことのように感じます。
 そして今、最澄が開いた比叡山で再びこの言葉に向き合います。

 岐路の日本、今、どのような心構えで生きてゆくべきか。
 地道に、そして確かな歩みを今年も修めていきたいと思います。

 良き年になりますように。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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