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雑木の庭つくり日記

千葉県佐倉市の庭 駐車場の土間工事   平成23年12月29日
 今年の仕事納めは、千葉県佐倉市のAさんの庭です。



 Aさんの庭に新築した車庫は、昨年解体した入母屋家屋の古材を用いて建てました。
 今日はその土間を仕上げて、今年の仕事納めとなりました。
 進入路を含めると総面積100平方メートルにも及ぶ、広い車庫の土間です。



 土間の仕上げは、マサ土(花崗岩風化土)の叩きです。柔らかな土の表情と足触りは、セメントを混入しない叩きの土間ならではの温かで素朴な味わいがあります。
 土に石灰とにがりとの3種類の素材を混ぜて土間を叩き締めることから、「叩き」のことを別名、「三和土」とも書きます。
 土本来の特性として圧力を加えると硬化する性質のあるマサ土の場合は、石灰を混入しなくても土を叩き締めるだけで硬化して、足触りの優しい土間となります。
 
 今回、ちょっと訳あって、、マサ土叩きの施工手順をこのブログでご紹介いたします。



 土の硬化反応を促進するために必要な塩化カルシウム(本来の叩きの場合は、塩化マグネシウムを用いることが多いようです)を水に溶かします。



 塩化カルシウムが水と反応して水温が上がり、お湯になります。これをよくかき混ぜて、塩カル溶液を作ります。



これは、左官用に精錬された純度の高い石灰です。



そして、左官用の石灰とマサ土を混ぜます。これに、先程の塩カル溶液をじょうろで注ぎ、さらに撹拌します。



 配合した土を敷きつめて、レーキで敷き均していきます。



 敷き均した土を、転圧機で締め固めていきます。



 差し石の周りなど、機械で締め固めることのできない隅の狭い個所は、地コテという道具などを使い、人力で地道に叩き締めていきます。



 駐車場の奥から順に、敷き均しては叩き締めていきます。これを繰り返します。



 良く締め固められた土間は、美しい光沢を放ちます。



 仕上げ後の土間の色合い。土の風合いはなんとも言えない温かみがあります。
コンクリートと違って、夏の蓄熱も照り返しによる猛烈な暑さもありません。水分を含んだ土間は、夏の日中にゆっくりと蒸発して気化熱を奪うことによって住環境の暑さを和らげてくれます。
 また、叩きは普通の土と同様に高い透水性があるため、雨水を土中に帰します。
 コンクリートは使用後には廃棄物となりますが、叩きの場合は全てを土に還すことができます。
 また、コンクリートの耐久寿命は50年前後と言われますが、土本来の自然な性質に由来する硬化プロセスを活かす叩きの場合、半永久的な耐用を期すことができます。
 その上、土の感触温かく、人にやさしい素材です。

 「コンクリートから人へ」とは、聞き古した美辞麗句のようですが、実際には、後世に手渡すべき生存基盤とも言える土地を荒らし続ける今の文明を本気で見直していかねばなりません。
 
 来年は、もう少しマシな国にしていきたいものです。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
千葉県佐倉市の庭 茅葺き屋根工事開始   平成23年12月25日

 昨日、2か月も前に注文していた茅が届いたので、今日から茅葺き屋根工事を始めることとなりました。



 茨城県の霞ケ浦のほとり、稲敷市の島茅です。稲敷市で栽培される細くしなやかで均質な茅は島茅と呼ばれます。
 島茅の刈り取りの時期は、地上部分がすっかりと枯れる12月にはじまります。かつては11月後半には刈り始めることができたそうですが、温暖化の進む今は、刈り取りの時期が3週間も遅くなったと言います。



 ここは造園工事中のAさんの庭の中、井戸小屋の屋根です。破風と呼ばれる側面から茅を重ね上げていきます。



先月に社員総出で参加した五箇山集落での茅葺き研修の成果を今こそ発揮すべく、真剣な表情の社員K君。



 茅葺き屋根の工程は多く、こんな小さな小屋の屋根葺きにも膨大な手間を要するとても地道な作業の連続です。1日で手がぼろぼろにあかぎれます。
 それでも、こうして初めて造る茅葺き屋根が少しづつ形が見えてくると何とも言えない高揚感を覚えます。

 これからの時代こそ、茅葺き屋根のような、農山村の暮らしと共に育まれてきた永続的な技術が、とても大切なものとなることでしょう。
 植物素材の扱いに慣れている私たち造園職人こそ、こうした技術の担い手となるべきと考えて、私たちも技術研鑽に励みます。



 屋根工事は始めたら最後、屋根が葺き終わるまで一気に進めるしかありません。年内に必ず完成させるべく、明日もひたすら茅を葺くことになります。
 さて、どんな井戸小屋が完成するか、楽しみです。

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
心の中の雑木の庭      平成23年12月24日
 12月に入り、休みもなく庭の手入れに回ります。ブログを書く間もありませんでした。。。

手入れの件数は年々増えて、今年はとうとう年内に回りきれない庭もずいぶんと多くなってきました。
 みなさん、美しい状態の庭で正月を迎えたいものです。そのことは私も痛いほど分かっているので、できる限り手入れをこなすべく、12月は休日返上で庭の手入れに駆け回ります。

 そんな中、11月に手入れを終えた船橋市のMさんから、嬉しいメールをいただきました。

メールの内容は下記の通りです。

「高田さん

こんにちは。
船橋の松下です。

師走でますます忙しい日々を送られていることと思いますが、お元気でしょうか。
我が家の木々たちも植栽していただきもうすぐ2年が経とうとしています。

コナラの葉が西日を浴びて橙色に鮮やかに染まりました。
葉が落ちたら、今年もありがとうという気持ちで拾いたいと思います。

写真を何枚か添付します。

今年も大変御世話になりました。
2012年もどうぞよろしくお願いいたします。」

 船橋のMさんです。ほんのわずかなスペースに植栽させていただいた木々をいつもこよなく愛してくださいます。
 木々は人間と同様、共に暮らす人に愛されることで良くなっていきます。




 Mさんが送ってくれた写真その1。西日に輝く玄関アプローチの様子です。



 送付写真その2です。紅葉に輝く雑木の木立を下から見上げた様子です。まるで森の中から見あげた空のようです。
 住まれる人の豊かな感性こそが、木々の最も素敵な表情を見つけてくれるのだなと感じます。



 送付写真その3です。住まいの屋根裏部屋から見下ろした西側植栽の様子です。とても狭いスペースですが、人の頭上上空の空間に枝葉を占有させることで夏の西日を遮蔽し、駐車スペースを木々が豊かに潤してくれます。

 たくさんの落ち葉が道路に舞い散ることでしょう。庭を愛するMさんは、それをきれいに掃除することでしょう。

「葉が落ちたら、今年もありがとうという気持ちで拾いたいと思います。」

というMさんの美しい心が木々本来の美しさを活かしてくれます。木々もそんなMさんに感謝するせいか、こうして、狭く厳しい条件にもかかわらず、美しく元気に色づいてくれたように感じます。

 春は芽吹きや開花の感動を与え、夏は貴重な木陰を作ってくれる。そして秋にはこうして美しい紅葉や結実を見せてくれて、冬には葉を落とし、心地よい日差しに枝影が揺れて、とても穏やかな時間を感じさせてくれます。

 落ち葉を拾うその時、木々に対して「今年もありがとう。」という気持ちをもってくれるMさんのような人が増えてくれたら、日本の街はどれほど美しく潤しいものになることでしょう。
 
 私がこの仕事をしていて、こうした人の美しさに接することが本当に大きな喜びであって生きがいになります。暮らしの中の緑を育てる仕事、この仕事が与えてくれる最大のご褒美だと感じます。

 来る日も来る日も手入れに伺います。
 休みもなく、、「働けど 働けど我が暮らし、、(後略・・・)」、といったところですが、1年の締めくくりの充実感を味わえるのも師走なのです。



 ここは東京都小金井市、アパート兼Kさんの自宅です。2階がKさんのリビングで、1階は賃貸アパートです。
 アパートやマンションなどの密集する中、わずかなスペースに植栽した木々が暮らしを豊かに潤します。
 2階リビングからは、目の前に揺れる木々の枝葉が四季の変化を日ごと感じさせてくれます。そして1階には木漏れ日が窓の景色を揺らします。



 2階リビングの窓外に、ちょうど高木の枝葉が来るように植栽しています。これがかけがえのない暮らしの豊かさをもたらしてくれるのです。



 都会の中の狭い空間こそ、雑木の枝葉で私たちの上空を潤していきたいものです。



 ほとんど葉を落としたKさんの玄関前、屋外空間の表情です。夏とは一転して明るい日差しが差し込んでいます。
 植栽したのは今年の2月ですので、まだ竣工10カ月、ホヤホヤの赤ちゃん庭ですが、それでもKさんはこう言ってくれました。
「紅葉もすごくきれいで、1年間とても楽しませてもらいました。」
 
 都会の狭い空間に雑木の木立を共生させてゆくことが、暮らしの豊かさに直結します。
 一度きりの人生、そして一度きりの家族との暮らし、四季の変化に心模様を映しながら、豊かな原風景を共有していただけたら、作庭者冥利に尽きます。生きててよかった、と思える瞬間です。
 そんな瞬間をたくさん味わせてくれる木々にもお客様にも心から感謝感激です。



 さて、都会ばかりでなく、今度は田舎の雑木の庭、千葉県木更津市Hさんの庭です。庭の竣工から5年近く経過し、周囲の山々の風景と庭の風景がいよいよ繋がってきました。
 田舎には田舎の雑木の庭の活かし方があり、庭の構成の仕方があります。



 周囲を畑と林に囲まれている恵まれた立地においても、家際の木々は効果的に住環境の快適性を大きく高めてくれます。

 Hさんは言います。
「都会は都会なりに便利でいいのでしょうけど、こうした田舎にはまた田舎にしかない良さがあります。そりゃ土地を荒らさないためにやらないといけないことはたくさんありますが、それでもここ以外には住みたいと思えない。」

 房総本来の豊かな風土に包まれたHさんの家ですが、それでもHさんは、5年前に雑木の庭作りを私に依頼されました。
 豊かな自然風景の中でも、家のそばに木々があればもっともっと落ち着くという事なのでしょう。
 私の仕事の役割を、お客さまとの交流によってこうしてはっきりと認識させられていきます。


 お客様一人ひとりにとって、庭の命というものは、なくてはならないかけがえのないもののようです。 
 お客様が庭の木々に感謝し、そして造らせていただいた私たちに対しても感謝してくれます。本来、感謝しなければならないのは私たちの方なのに、ありがたさで胸がいっぱいになります。
 12月の手入れの時期は、こうした感動をたくさん与えていただきます。そして、そのことが、来年も更によい暮らしの環境を提供していこうという、モチベーションを高めます。
 そして、、その結果がまた、、自分の首を絞めてしまい、、仕事を抱え込んでしまう事に繋がります・・・。
 しかし、この仕事を通して幸せに活かして頂いている恩返しをしなければなりません。



 上の写真は、昨年の春に作庭させていただいた埼玉県飯能市Sさんがメールで送ってくれた庭の紅葉の写真です。
 写真には、下記の文章が添えられていました。それをご紹介させていただき、久々の長文ブログを終わりにしたいと思います。
 
「こんばんは。今日は晴天で、庭の紅葉と空のコントラストが素晴らしかったです。写真はデッキからとりました。(中略)
 庭の木々が毎日違った表情をみせてくれ、また昨年とも
違っていて、これから毎年こうして楽しませてくれるんだな、と
すてきな環境をつくってくださった高田さんに感謝です。」

 師走もあとわずかです。29日まで、めいっぱい駆け回って、来年を全力で迎えたいと思います。
 今年お世話になりましたお客様、本当にありがとうございました。


 
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紅葉の雑木の庭      平成23年12月13日
 作庭後3年目、東京都大田区Hさんの庭に手入れにうかがいました。



 家屋東面の雑木の庭は今、紅葉真っ盛りでした。



 錦秋織りなす木々の葉を通過した光は明るく、その美しさに感動です。
「きれいだな、本当にきれいだな。」ため息が漏れるほど美しい木々を手入れしていきます。この美しさを損なうことのないように細心の注意を払いながらの手入れです。



 夏の間、青々とした葉が家屋の窓に木陰を作り、そして落葉前にこうして今年最後の輝きを演じてくれる、雑木の庭は最高です。


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冬の雑木の庭              平成23年12月12日
 師走も半ばとなり、日曜日もなく庭の手入れに駆け回る日々が続いております。
ブログの更新間隔もいつの間にか長くなってしまいます。
 今日は、昨年の暮れに完成したばかりの、神奈川県小田原市のTさんの庭の手入れにうかがいました。



 ここのところ、冬らしい朝の冷え込みが続き、Tさんの庭から見る真っ白な富士山が澄み渡る冬の青空に映えていました。



 庭の完成からちょうど1年です。冬の雑木の庭はゆっくりした時間流れる心地よい日だまりとなります。



 陽だまりのデッキ。デッキに反射した熱が、冬の家屋を温めてくれます。



 駐車スペースに面した家屋西面の家際の木々の様子です。夏の西日の暑さを和らげてくれる西側の雑木たちも、冬には葉を落として、日没までの間、家の中に温かな日差しを届けてくれるのです。
  夏は西日を遮り、そして冬は西日の熱を室内に届けてくれるのが、家屋西側の植栽の役割と言えます。

 葉を落とした雑木の庭は少し寂しげですが、それがまた早春の芽出しの感動を増幅してくれると思います。

 植栽して1年、敷地の土の状態が非常に悪かったこともあり、この庭の木々が健全で自立した生態系を作り出すまでにはまだ少し時間がかかりそうですが、毎年の手入れで少しずつ、庭の木々をよい状態へと誘導していくのです。
 
 数年後、この庭が住まいの森として自立した生態系を作り始める時を楽しみに、夢に見ながら木々を育ててゆくこと、それが庭の管理の仕事です。


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