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雑木の庭つくり日記

皆様ご無沙汰しております・・。   平成24年1月19日
 最近はなかなかブログを書く時間を作ることもできず、いつも当社のブログを見てくださる方々には大変申し訳なく思っております。

 書きたいことは山積みなのですが、なにぶんにも時間が作れずにおります。
 当方のブログは、多くの方に分かりやすく楽しく見ていただきたいとの願いから、きちんと書き上げるのに毎回2時間も3時間もかかってしまいます。
 年明けにすべきことや、ただでさえ大変お待たせしていますお客様への対応を差し置くわけにもいかず、ご無沙汰のお詫びを申し上げます。

 どうか今後とも、当方のブログを訪ねてくださいますよう、心よりお願い申し上げます。

 只今、埼玉県草加市での造園工事にあたっております。先日の雪の影響で予定が大幅に遅れてしまい、少し焦っております・・。
 いつもいつも、その場所その時そのお客様、一期一会の一客一亭。その時点での自分の全てを注いで、庭を作っていかねばなりません。

 またいずれ、ブログで庭つくりのご紹介を再開いたしますので、もう少々お待ちくださいませ。
寒い日が続きます。雪もよく降りました。来週もまた降るかもしれません。皆様どうぞお体を壊しませぬよう、お祈り申し上げます。

 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
元旦の炭焼き         平成25年1月2日
 あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 今年が多くの人にとって良い年となりますように。

 新たな1年、やりたいことは山ほどあります。仕事が始まればまた、ノンストップの時間との戦いが始まります。
 わずかな正月休みばかりは時間に追われることなく、やりたいことがやれるのです。



 元旦は、朝から小2の息子と二人きり、畑で竹炭を焼く準備にかかります。簡易組み立て式の炭化炉に竹を並べていきます。
 正月中にできる限りたくさん竹炭を作ります。できた竹炭はその後、植栽の際の土壌改良に用います。樹木の土壌改良に竹炭は最高です。
 昨年までは、土壌改良用の竹炭を購入して植栽の際に用いていたのですが、今年から自給体制に向けてチャレンジです。

 本来なら、土壌改良用の竹炭など、野焼きで作る方法がもっとも簡単なのですが、ちょっと、正月早々、バンバン野焼きしていたら、付近の住民が心配するだろうとの配慮から、こうしてコンパクトな炭化炉でコツコツやることにしたのです。



 竹炭の材料は、モウソウチクやマダケを乾燥させて用います。
 無限に入手できるうえ、荒れた竹林の整備にもつながります。竹は昨年、当社の資材置き場脇の竹林から伐りだしました。



 この竹を、炭化炉に入る長さにそろえてカットします。



 長さのそろえた竹を割っていき、そしてその割竹を炭化炉にくべて蓋をするのです。



 竹を詰めて蓋をしたところ。この組み立て式の炭化炉は軽量で、煙突内蔵の優れものです。



 そして、息子が杉林から運んできたのは焚き付け用の杉の枯葉です。
 着火には杉の枯葉が最高で、新聞紙で火を起こすのは邪道だと、うちの息子はそう思っているようです。



 焚き口に杉葉を入れて着火し、そしてうちわで扇いで炭化炉の中に熱を送り込みます。



 いい感じで白い湯気のような煙が出てきました。



 内蔵式の煙突から勢いよく白い煙が出てきたら、炉の中で炭化が始まった証です。
ここから数時間、煙の様子を見ながら、他の作業にかかります。
 炉の上は数百度に熱せられるので、お湯を沸かしたり、リンゴを焼いておやつにしたりします。



 周囲の自社所有林の探検に行きます。
 荒れたこの山を入手したのは昨年の夏、忙しさのあまり、昨年はほとんど山の整備ができませんでした。
 今年こそは、この山に作業道を通して、活きた森へと整備にかかります。



 この山を抜けて下まで降りると、小さな小川が流れています。この川が、自社の土地の境界です。
 山の傾斜が蓄えた水がしみ出して、1年を通して水が涸れることはありません。数十年前まで、この付近は田んぼだったので、かつてこの小川は貴重な用水路として利用されてきたことでしょう。
 山間の谷地のお米のおいしさは、ミネラル豊富な水や豊かな生態系の賜物なのでしょう。
 しかし、こんな山奥の小さな谷津田は、近代の機械化の中で、生産性の名のもとに次々に放棄されていき、そしてその多くが荒れ果ててしまいました。

 この、水路として使われなくなった小川も、落ち葉に埋もれて荒れた湿地に変貌しつつあります。これをこれからどう再生しようか、水辺のほとりで考えているといろんなアイデアが浮かんできます。



 川辺から自社林を見上げます。コナラやヤマザクラなどの雑木林から、徐々にシラカシ主体の常緑樹林に移り変わりつつあります。
 こうした光景に、日本の里山の縮図を感じます。かつては落ち葉掻きや薪炭材料として、コナラ主体の雑木林が維持されてきたことでしょう。
 雑木林は南関東の場合、放置された後、おそらく50年程度で常緑広葉樹林に移り変わることでしょう。

 この山をどんな森へと誘導しようか、急斜面のこの付近は、軽度な森林資源活用に留めて、多様で豊かな森へと戻していこうと考えています。



 さて、日も傾き、再び炭化炉の様子を見ます。煙に触れて、その色と湿り具合で炭化の進み具合をチェックします。
 湿り気が多い白い煙が出ている間はまだ炭化が終わっていないのです。これが青く乾いた煙に代わると、炭化終了の合図ですが、、夕方になってもまだまだ白い湿った煙・・。



 煙道の煙は相変わらず、炭化中。
 夕方5時、やむを得ず煙道に蓋をして隙間を塞ぎ、今日の炭化作業を中断します。タイムリミットです。

 かつては山に炭焼き小屋を作り、冬場はそこに1週間も泊まり込みで炭焼き作業したと言います。
 でも私たちは、寒いのでおうちに帰ります。

 人の暮らしに炭と薪が欠かせなかった昭和30年代まで、かつての山村では、炭焼きは貴重な現金収入源だったのです。
 こうして労力をかけて炭を焼いていると、今の社会は、大切なことをたくさん失ってしまったんだなと、そんな思いを新たにします。

 

 次の日、炭化炉を開けてみます。



 炭化の進み具合を確認する小2の息子。



 炭化途中だということが分かっていながら、夜、煙道を塞いで家に帰ったために、案の定、ほとんどの竹は芯までは炭化が進んでいませんでした。



 炉の中で、比較的よく炭化できた一部の竹炭は袋詰めして保存します。



 竹の端材でたき火した消し炭も、貴重な土壌改良材になります。



 たき火の最後にどっさりと竹をくべて一気に炭化し、そして燃え盛る炎が鎮まってきたころに、土をかぶせて火を消し、一晩置きます。
 そして次の日、掘り出して袋詰めするのです。原始的なやり方ですが、少しも無駄にはなりません。



さて、未熟な竹炭は再度熱して炭化を促進します。強風の中、執念のリベンジです。



 待つこと2時間。今度こそ炭化終了です。蓋の隙間から空気が漏れないように土をかぶせて、冷めるまで放置します。
 この炭化炉1つでドラム缶3個分の炭焼き容量があります。

 こんな悠長なことができるのも正月の良さです。正月の間に炭焼き名人を目指します。


投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
14年目の手入れに想う          平成24年12月28日
 暮れの手入れも残すところ、明日の1件となりました。「来年になってからでも構わないから」と、年明けに予定を回してくださったお客様にも、心から感謝申し上げます。

 今日は、13年以上前から毎年お世話になっている地元の老夫婦、Tさんの庭の手入れにうかがいました。
 当時はまだ、私が独立して間もない頃このこと、
 「長年一緒に暮らしてきたキャラノキが弱って枯れそう。何とか助かりませんか。」とのお話しをいただいたのが、Tさんとのご縁の始まりでした。
 その後、衰弱したキャラの処置のためにTさんに幾度も呼ばれ、そしてキャラの樹勢が回復し、新芽が出そろった時、Tさんご夫妻は、息子以上に年下の私に対して、絶大な信頼と感謝の気持ちを表してくださいました。

 当時の私はまだ20代。
 「庭の木ってのは、住む人にとって家族と同じなんだ。こんなに愛されるものなんだ。庭の木を扱う以上、お客さんの木を本当に大切にしないといけないな・・・。」

 Tさんご夫妻の、木々に対する愛情を肌身で感じ、独立したての私にとって、とても大切なことを学ぶ貴重な機会となりました。

 その後、Tさんの庭の手入れは他の人に任せるのではなく、どんなに忙しくても毎年、欠かさずに私自身がうかがい続けてきました。
 いつもおいしい漬物やおいしいみそ汁を作ってくれます。

 そんなご夫妻も、ずいぶんとお年を召しました。ご夫妻ともに病院やリハビリ通いで、この10数年のうちに、ずいぶんと衰えていきました。
 でも、休憩時間のTさんご夫妻とのお茶飲み話は、私や若い社員たちにとって、とても貴重な体験です。
 年を取ってなお、心が磨かれる美しい人柄、Tさんご夫妻の心に接する時間、いつも心が洗われる思いに満たされて、感謝といたわりの念が自然と溢れ出してくるのです。

 体が痛く、歩行もままならないのに、私たち職人に対して、あふれるほどのお心遣いを欠かさない、そんなご夫妻を見ていると、これまでの10数年間のTさんとの時間が走馬灯のように懐かしく思い起こされるのです。そして、Tさん夫妻に対する感謝と尊敬の想いしか、そこにはありません。

 私たちの仕事は、こうしてお客様の人生に肌身で触れ合いながら、庭を介して一緒に年を重ねてゆきます。
 年内の仕事もあと1日となった今日、Tさんの庭に手入れにうかがい、この仕事をしていて本当に幸せだな、という思いがしみじみと沸き起こります。

 日々、病気や体の痛みと向き合うTさんですが、つつましく、美しく、1日1日を大切に、人生を積み重ね続けているようです。
 お茶飲み話の最中、Tさんの横顔を見るにつけて、仏様のように優しくて美しい表情にはっとしました。
 もともと警視庁警察官だったTさん。以前、私が出会った頃のTさんは、職業柄の厳しさが時折その表情に表れていたのですが、あれから十数年、人はこれほど、柔らかで美しくなるものなのかと。
 自分もこんな風に年を重ねていけたら素晴らしいなと、感動と共にTさんの美しく優しい横顔が心にいつまでも響きます。

 毎年、怒涛の手入れをこなさねば、私たちに正月は訪れません。そして、手入れの時期はお客様とのうれしい再会の機会でもあります。
 いつもこの時期、お客様との長年のお付き合いに感謝の気持ちと共に、お客様との絆が深まってゆき、そして同時に、私たちの心も温められてゆくように感じます。
 

 
投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
 公式サイトリニューアルのお知らせ     平成24年12月27日
 今年も残すところあとわずかとなりました。
 当社の年内の業務も、12月30日で終了予定でございます。怒涛の師走があと少しで終わります。
 そして正月の合間に、来年の抱負と志を、静かに心に温めたいと思います。

 今年も、いろいろとお世話くださいました方々に、心からの感謝の思いを持って、無事に1年間を締めくくることができることを、とてもありがたく感じております。
 本当にありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日をもって、これまで9年間変わらず保持してきました当社の公式サイトを完全リニューアルし、サイトアップいたしました。

アドレスは下記のとおりです。(変更はございません)

 高田造園設計事務所  http://www.takadazouen.com/

 これまで、造園の世界に身を置き、お客様方々はじめ、様々な方々に育てていただきました。
 これからは、庭つくりだけではなく、木々を扱うという範疇の中でさらに仕事の幅を広げてゆくことで、未来の社会に木を植えていきたいと思います。
 今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、どうかよろしくお願いいたします。
 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
照葉樹林の木々たち      平成24年12月19日


 ここは千葉県の南端付近、鴨川市大山不動尊の鎮守の森です。
 棚田の風景で有名な大山千枚田の最上部の丘に位置する不動尊の森には、スダジイの純林が見られます。
 今日は打ち合わせついでに、この森に足を踏み入れました。



 鬱蒼とした深い森の林冠を見上げると、まるでパズルのように空間を分け合うスダジイの枝葉が上空で競争し、光と空間を占有し合っている様子に、力強い生命力が伝わります。
 老木が枯死して空間ができればすぐに周囲の高木がそこに枝葉を伸ばして林冠を塞いでしまうのでしょう。

 

 スダジイの巨木。この地に根ざす本物の樹種。



 同じスダジイでも、根元の形状は様々です。この参道際のスダジイは、まるで浅根性の樹種のように板根が発達して、大木の幹を支えています。
 本来深根性のスダジイは、直根が発達するため、かなりの巨木になっても板根によって幹を支える必要はないのですが、何らかの理由でこの木は直根が伸ばせず、代わりに板根を発達させて巨体を支えて生き延びているようです。



 そしてこのスダジイは、樹幹が大きく空洞になってもなお、樹皮の下にバイパスを発達させて元気に命を繋いでいます。
 このたくましさ、しぶとさ、これがこの地で勝ち抜き、数百年数千年にも渡って上空を占有する木々の強さというものでしょう。




 森のボスとしてスダジイが高木層をほぼ占有するこの森ですが、巨木の大きな樹冠の合間から漏れてこぼれる日差しを拾い、その下層には様々な木々が立体的に空間を分け合い、豊かな森を構成しています。



林床のネズミモチ



ヒサカキ



ヤブニッケイに



イヌマキもこの林床に生育しています。



 参道沿いの切株からタブノキが萌芽しています。親木を探すと、、



 ありました。暖温帯気候域の照葉樹林の代表的な木、タブノキの大木です。
 どっしりと枝葉を広げて、スダジイの森の中にあって力強く、一歩も引かない貫禄で存在感を醸しています。



 そして林床にくまなく目を向けると、実生から芽吹いた見慣れない葉が点在しています。
これはバクチノキです。



 親木もありました。バクチノキの幹肌です。千葉の森では非常に珍しく、おそらく県内での自生はここ以外にはほとんどないかもしれません。



 葉や実の雰囲気から、南国の雰囲気をぷんぷん感じさせます。本来、もう少し南の方に生育するこの木が、千葉県最南部の鎮守の森に取り残されるように、しかしたくましく自生しているのです。



 大木となったバクチノキ。歴史の中で、温暖と寒冷の時期の繰り返しの中、ある時期に太平洋沿いを北上してきたバクチノキが、この地に取り残され、そしてその種は、大山不動尊の鎮守の森の生態系の中で、北限の生育地を守り抜いてきたのでしょう。
 気候は変動するもの、その中で樹種は森を伝ってその生育範囲を移動させていきます。一方で、都会の中の森のように孤立した森では、種の移動手段が限定されてしまうため、徐々に種が欠落していき、その生態系の多様性も健全性も先細ってしまいます。 北限あるいは南限の樹種が豊富に生き残る地は、生き物にとって本当の意味で豊かな地だと言えるのでしょう。

 

 これは、2週間ほど前に訪ねた熊本県の霧島神宮の宮域林。バクチノキです。南九州にはこの木が森の中に普通に点在して見られます。



この森が、霧島神宮 宮域林の林内です。同じ照葉樹林でありながら、常緑広葉樹の樹種の豊富さに驚きます。



 アカガシ。北から南まで、生育範囲は広いのですが、私の地元千葉にはほとんど見られません。



ホソバタブに



イチイガシ。



 シリブカガシ。



鹿児島の林床に多く見られるハクサンボクも、千葉には見られません。



 これは、霧島神宮の杉の木です。杉の木が大木となって森の最高木層を構成する地域は、多湿で生物的に豊かな土地の証と言えます。
 
 本来は、雨量も多く安定し、霧も発生しやすい沖積平野の豊かな土地であった東京神奈川千葉などは、豊富な樹種にあふれていたことでしょう。都会化した今は、杉の適する土地ではなくなってしまいました。
 それはそのまま、私たち人間の本来の生育基盤を貧困化させていることと同義でしょう。

 私たちの生育基盤、すべての命の生育基盤である森の多様性と健全性を繋ぐために、なるべく豊富な自然植生樹種を造園や緑化の中でも扱っていかなければ、そんな思いを新たにしたところです。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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