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雑木の庭つくり日記

埼玉県越谷市Aさんの庭 二期工事途中経過  平成28年4月20日


 昨年秋、造園改修、環境改善一期工事を終了した、埼玉県越谷市Aさんの庭、一週間ほど前に2期工事にかかり始めました。
 昨秋、家屋前のアスファルトを剥がして土壌環境を改善し、植えた木々は今、日ごと元気に新芽を開き、新緑の清らかさと精気を楽しませてくれます。



 芝生の車道も根付き、今やきれいな緑に覆われました。
自動車スペースもこうして緑化すれば、それは庭の中の美しく心地よい広場の空間として活かせるものです。
 こうした、宅内車道や駐車スペースの緑化、その下地の技術が今後広まれば、街も画期的に潤ってゆくように感じます。



 昨秋の改修後、Aさん家の黒シバ、五右衛門は、この環境が心地よいのか、リラックスして吠えなくなったと、Aさんは言います。
 犬だって、心地よい環境に包まれて安心して優しくなる。人間にも、大人にも子供にも、緑に包まれた穏やかな環境が心を潤してくれるはずです。



 そして今回、家屋と車庫の間のアスファルトを一部壊して、植栽スペースを広げます。
長年、アスファルトの下に埋もれた土は硬く水が溜まり、腐敗臭が湧いて上がります。
 これも、穏やかで適切な処理を施すことで、改善していきます。
 こうした場所に健康な環境を再生するためには、まずは土中に空気を送り込み、そして有機物分解に伴う健全な微生物・菌類を要所のライン上、あるいは点状に増殖させて、土壌を構造化してゆくこと、それによって土中環境好転の連鎖が始まるのです。



 もともと田圃だった土地を埋めてできた川沿いの街ですので、どこも深く掘ると、滞水した土は腐敗し、還元作用を起こしてヘドロと化しています。
 このヘドロ層は、地下1.2mほどの深さで町中を覆い尽くすのです。
 我々の文明は、知らず知らずのうちにこうして大地を汚染して生き物の住めない環境を広大に作ってしまっているということ、この仕事を通していつも感じます。
 壊したのも人間なら、それを再生・蘇生するのも人が責任を持ってやらねばなりません。

 今回施工箇所に2か所ほど、ヘドロ層下1mにいたる、地盤から2m以上の深い穴を設けます。
水が湧き、その水位は天候によって上下します。その度、ヘドロ層に側面から空気が入り込み、この深い穴が対地の通気孔として機能してゆくのです。

 土中の通気浸透性の重要性がここ最近急速に造園世界でも広まりつつありますが、大切なことは、単に滞水を抜いて水はけを良くするのではいけない、ということを知る必要があります。
 水を抜くためにやるのではなく、その土地の土壌環境を改善しながらゆっくりと、大地の源環境を改善し、それに応じた通気浸透性を再生してゆくのです。
 急いで水を抜けば、穴を通して泥水や浄化されないままの表層水が深層水脈へと流れ込み、さらに深い位置で水脈を目詰まりさせてしまいます。そんなやり方は永続するものでもなく、これまでの人工的な排水と全く変わらないのです。

 あくまで、有機物、木々、土中の健康な微生物菌類の総合作用の中で浄化された水を水脈と連動させることが大切なのです。
 「水を抜く」それを第一義にするのであれば、人工的で無機的なこれまでの排水システムと何ら変わりはないのです。

 ゆっくりと、大地の環境改善と歩調を合わせるように改善させてゆく、それが大切なのです。




改善後、ようやく植栽です。



 南側の車道の庭と、今回植栽した東側のスペースが繋がり、住まいは一気に木々に包まれていきます。
 わずかなスペースでも、家際の植栽は住まいを潤す絶大な効果があります。



 東側から主庭を望む、木々越しの景。


 そして今回、西側玄関アプローチも改修します。洗い出しのアプローチで、コンクリートを用います。
 今回、大地の呼吸と通気浸透性を傷めない下地施工をご紹介します。

 下地に用いるのは、解体したアスファルト片。これを、かみ合わせながらも隙間ができるよう、昔の石積みのように敷き詰めていきます。



その合間に、炭と土をふっくらとまぶし、軽く隙間に詰めていきます。



下地完了後。



 そしてその上にワイヤーメッシュをしき、ベースコンクリートを打設します。ちょうど、メッシュコンクリートがブリッジ状に乗っかり、下地の隙間には負荷をかけず、従って圧密による土壌通気不良は起こりません。
 
 石をめくると、その下に様々な生き物が住む隙間がある、そんな環境つくりの要領です。



 仕上げ塗込終了。硬化を待って洗い出して完成です。その後、周辺水脈造作を少し行うことで、この舗装の下も根が無理なく入り込むことのできる、呼吸する環境となるのです。

 なんでもコンクリートやアスファルトが悪いのではなく、扱い方に問題があり、それを扱う際に、いのちの環境に対する配慮があれば、大地の環境を傷めずに共存させてゆくことができるのです。
 これから必要なのは、そんな共生のための技術と配慮、我々を活かしてくれる大地を傷めずに、そこに快適に住ませていただくための在り方とノウハウなのではないかと感じます。



 痛めつけられた土地を改善して、人も動物も、そして土中の小さな生き物たちも心地よく、ともに伸び伸び生き生きと暮らせる環境を取り戻す。
 それは決して難しいことではないのです。

 Aさんの庭、来週には完成です。

 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 (2016年4月20日 18:21) | PermaLink