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雑木の庭つくり日記

新たな一歩 わが道をゆく         平成24年7月6日


 昨日、私が20代の頃からお世話になっている地元の庭の管理にうかがいました。
 現場に手伝いに来てくれて草刈り機を回しているのは、5年前に私の下から独立開業した文造園事務所代表の佐野文一郎君です。
 独立して5年、今や彼の事務所も日々休みもなく、たくさんの地元のお客様からのご指名依頼が尽きることのない、立派な造園職人となりました。
 彼は、どんなに自分の仕事が忙しくても、私の会社が人手不足で困った折には必ず助っ人に来てくれます。そんな彼の信義の深さと誠意とが、絶大な顧客の信頼を集めてやまない理由の一つなのでしょう。
 
 数日前に32歳となった彼が、私の下に造園修行に来たのは22歳のことですから、あれから早くも10年の月日が流れたということに気づかされます。光陰矢のごとく過ぎ去っていき、そして茶髪の若造だった彼が、今や誰もが認める一人前の造園職人となり、今彼は、「造園が楽しくて仕方がない。」と言います。
 そして彼は、私とはまた一味違った庭を作ります。気合いのこもった彼が作る庭から、造園一筋20年の私も学ぶことがたくさんあります。

 ますます成長し続ける彼は将来、どんな仕事をすることか、とにかくこのまま彼らしく、社会や人に喜ばれる仕事を積み重ねて欲しいと願います。
 結果など後からついてくるものでしょう。なによりも、人の喜びは仕事の最高の報酬となり、そしてそれこそが自分を大きく成長させてくれます。
 私の下から独立して5年、彼がここまで見事に育ってきた背景には、たくさんの顧客をはじめ、多くに人の温かな応援と支えがあったからのことでしょう。そしてまた、真摯に顧客と向き合い、誠実に造園の仕事を追求してきた彼の努力が、今を作り上げてきたと感じます。

 私はと言えばこの10年、日々造園に明け暮れ、木々を活かした住環境つくりをひたすら追求してきたように思います。そして今、私も少し転機に来ていることを感じます。
 これまで積み重ねてきた自分を活かし、よりよい社会貢献の道を目指すことは、長い人生の中でのごく自然な流れなのではないかと感じます。



 つい最近、地元の山林を入手しました。1800坪の荒れた森を再生しつつ、ここで自然樹木の生産と森つくりの実験を進めます。
 今思い返せば、山を育てるということは、造園を志す前からの夢でした。



 コナラやクヌギ、ケヤキに杉やヒノキの植林地、そして自然と生育したカシやシイノキ等、この山を今後どのように管理してゆくか、夢はとめどもなく湧きあがります。



 道路付きから杉林の奥までが我々の実験林となります。建てたばかりの育苗用の大きなビニルハウスと駐車場。ビニルハウスはもう一つ建てて、ここで、当面の目標年間1万ポットの自然植生樹種の樹木苗を生産し、苗木による森つくりや緑化に活かしていきたいと思っております。

 山林は今、その多くが管理されずに荒れ果てて、そして安価に転売されているのが首都圏千葉の現状です。転売された山林の多くは開発の対象になったり、あるいは山が崩されて土砂が採取され、そしてその後は産廃や残土が埋め立てられることが千葉では非常に多く、豊かで美しい山里の風景が次々と切り崩されてしまっています。

 森を再生しよう、そして、本物の森つくり、その土地本来のふるさとの自然、あるいは生活と関わる恵み豊かな里山が身近に存在する街つくり、それがこれからの街づくりや緑化のスタンダードとして普通に活かされる世の中、今の私が目指しているのはそんなところなのかもしれません。



 ビニルハウスの前に、どんぐりから育てられたコナラのポット苗を植え付けます。これは雑木の庭の植栽用に育てていきます。



 育苗用のビニルハウスを建てたものの、この土地に倉庫が完成するまでの間は、ここが資材置き場になってしまいます。。。
 雨天の今日は、できたばかりのビニルハウスの荷入れ作業となりました。
早く整理して、ここに一面の樹木ポット苗が並ぶ日を夢見ます。



 ビニルハウスに仮置きしたこの木材は、地元の旧家の蔵の解体現場からいただいてきた古材です。50年前の材料です。太い松の梁など、今ではなかなか入手できない素晴らしい材料が、こうした旧家の解体現場からはたくさん出るのです。
 そして、この古材は、山林管理のための作業小屋や倉庫の材料として使います。 こうした古材は捨ててしまえばゴミですが、再利用すればまたとない素晴らしい建築資材となるのです。
 こんな素晴らしい資源が簡単に捨てられてしまう今の時代、一方で日本の山林は荒廃し、そして世界の森が地球から消え続けてゆく、やはり、何かを変えていかねばなりません。



 山中に植林されていたケヤキの木。植え方がまずく、木々に精気がありません。この地も今後生態系豊かで健康な森つくりの実験場としていきます。



 かつての弟子、佐野文一郎32歳。
 本当に、出会ったころは小僧だった彼が立派に育ってゆく様を目の当たりにし、さて、私も努力を怠らず、私なりの人生を大胆に生き抜こうと、心新たな想いに満たされています。

 人生は面白い。その醍醐味を味わえる幸せ、新たな希望を胸に秘めて、まだまだ先に進みます。



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 (2012年7月 7日 20:42) | PermaLink