| 体感温度を下げる植栽について |
敷地南北の植栽について 敷地内の空気の流れを考える
敷地南北の植栽について 敷地内の空気の流れを考える
雑木を植栽することによって生じる冷気を、住まいの微気候改善のために活かすためには、植栽上のいくつかのポイントがあります。
一つに、北側の地表部で蓄えた冷気を活かす風の流れを考えることが必要です。
北側の冷えた地表面に温度差による下降気流を呼び、その風が家屋を冷やし、南側から上昇気流になって抜けてゆく流れが、雑木の住まいの対流モデルとなります。
ここで大切なことは、家の北面に夏の木陰を作ることによって、夏の住まいの畜冷装置となる北側の地表を温めないように配慮します。
日中の日差しは主に南側から差し込みますので、南側に木を植えると庭が木陰になって涼しくなるとお考えの方が多いようです。
しかしながら実際、家の中に涼風を取り込むためには、北側の木陰がとても大切な役割を果たすのです。
夏至の正午、日差しは約78度の角度で差し込みます。この時、2階家屋屋根の軒の高さが6mの場合、地表部でも、軒下からわずか1mあまりしか木陰は伸びません。(下右図)木陰がなければ折角の冷気も、外に逃げてしまいます。
ところが、軒下から1m程度離した位置に一本の雑木を植えます。(下左図)
下枝がない木を選べば、狭いスペースでも邪魔になることなく、高さのある木を植えることができます。
高さ5?6m、枝葉の幅3m程度の樹木一本で、北側に軒下から外側へと5m程度の連続した木陰を作ることができます。
ここに溜まった冷気が夏の住まいを快適にするための大切な蓄冷装置になるのです。
次に、南側の植栽についてです。
雑木に囲まれた住まいにおいては、涼風は家の北側から南側に通り抜けていきます。住まいを快適にするための南側植栽のポイントは、2つあります。
一つに、家の壁面や窓などへの直射日光を遮る、緑のカーテンとしての役割があります。
緑のカーテンの有無による、体感温度の差についての調査結果を紹介します。下右図は真夏の日中、藤棚などの緑のカーテンがあることで窓際の体感温度がどのくらい違うか、測定されました。実に10度以上の差があります。このことからも、日向の家際植栽の大切さが分かります。
二つ目に、北側から家を通って南側へと抜ける涼風の流れを妨げないことも大切です。
つまり、風の通り道となる低い位置の空間をすっきりとさせて、風が抜けやすいように配慮します。
家際など、必要な場所に木陰を設けていれば、菜園や芝生などを組み込み、広い空間を作ることもできます。(下左写真、雑木の南庭の広い空間)
いずれにしても、必要な場所への直射日光の遮蔽と涼風の流れ道の確保が大切であり、それは主に家屋に近い位置での落葉樹が大切になります。家際に植えずに外周だけに樹木を植えても、真夏の住まいを冷やすためにはあまり効果はないのです。
右図は住環境の微気候改善のための雑木の庭の設計例です。
下右写真は図面の庭、北側植栽の様子です。中央の写真はこの庭の南側、家に近いデッキ際の植栽の様子です。左の写真は南庭全体の様子です。