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雑木の庭つくり日記

一年の終わりに     平成26年12月26日


 師走に入り、今年最後の庭づくり一期工事が終了しました。つくば市Mさんの庭です。小学校の通学路となる角地の広い敷地、通る子供達にも楽しんでもらえるよう、木塀をセットバックして塀の前面にもゆとりのある植栽を歩道に張り出します。
 春になれば新緑の淡い緑が家を包み込むことでしょう。



 南側主庭。春を待ってから、芝や地被を植栽し、そして完成となります。

 Mさんも問い合わせいただいてから2年以上もお待たせしての造園工事となりました。いつからか、1年以上お待ちいただける方の依頼しか、承ることができないようになりました。
 お待ちくださるお客様には、実際に作らせていただく頃にはもう、感謝の念しかありません。
 同時に、こうして作らせていただくことは本当に縁なんだなと、思います。
 何かの縁があって、そこに庭が生まれます。そして、その後5年10年と、庭の管理を通してご縁は続き、庭やお施主家族との時の流れの中に発見があり、思い出があり、喜びもあります。
 ふと、これまでいくつ庭を作ってきたことか、そしてこれからまた、どれだけ新たな庭を作ることだろうか、そんな想いがよぎります。出会いと縁は自分の糧となります。これからもずっと、与えられたご縁を大切に、来年も歩んでいきたいと思います。



 造園工事の際の視点で今年、新たに増えたことがあります。それは、土地の改変等によって壊された土中の気脈水脈を再生するという視点です。
 それは植栽した木々の健康のためだけでなく、その土地が自律的に大地の健全性を取り戻し、豊かな土中生態系を再生してゆくという視点で、造園工事の際に水脈改善のための作業を必ず行うようになりました。
 大地の健全性は、その土地の空気の流れをも変え、人にとっても快適で健康な本来の生活環境をおのずと作ってくれるのです。

 写真の竹筒の頭が土中から飛び出している光景、高田造園の完成直後の庭ではこの光景が標準となることでしょう。
 竹筒は数年で腐り、なくなりますが、その頃には木々の根がその縦穴にびっしりと張りめぐらされ、滞ることのない大地の呼吸孔としていつまでも機能し続けるのです。



 ここは工場跡地の臨海埋立地、ジェフ市原のホームグランド、フクダ電子アリーナ正面広場です。埋立地の劣悪な土壌環境と海から常に吹き付ける潮風にさらされ、植栽された木々が健全に育たない中、写真奥の密集した木立はこんな環境でもひときわ健全に生育しています。

 この木立は一昨年の秋、、コナラやシイノキ、カシノキなど、千葉のふるさとの木々を組み合わせて植栽し、そして2年が経過しました。



 潮風にさらされる、植栽樹木がなかなか健康に育っていかない土地条件のもと、、この木立だけは健全に力強く、競争しながら伸びていました。
 2年前、固く締め固まった土地を人の背丈ほども掘り下げて、そして下地の硬板層に穴をあけて水脈を取り、水と空気が円滑に流れる土壌環境を作りながら植栽したのです。

 結果は明らかで、この公園のどの木々よりも健康に、元気に生育していました。その間、ほとんどメンテナンスはせずとも、こうして木々自身の力で健全に生育してゆく様子に、感慨無量な想いに包まれます。
 人の暮らしの環境に木々を植えるということは本来、人の幾世代もの先のスパンで考えていかなければなりません。
 人間よりもずっと寿命の長い木々は、健康に大きくなってこそ、そこに豊かな環境を作ってくれるからです。つまり、植栽して、それが健全に育って自分の次世代、その次の代を見据えて植栽してゆくこと、つまりは、自然環境再生につながる形でしかあり得ないということに、はっきりと気づきます。

 再開発などと言う名の、壊しては作る、その繰り返しの果てにどんな未来があるというのでしょう。人は健全な自然環境あってこそ、継続的に生きていけるという本質も、今のマネーの論理の中で見失なわれつつある中、造園という仕事から、今の時代に発信していかねばならないことがたくさんあるのです。




 庭を作れば作るほど、毎年うかがわねばならない手入れの件数は増え続けます。ここは2年前に施工した、埼玉県草加市のKさんの庭です。2匹の大型犬と家族がともに自由に過ごせる場所がこの庭です。



 2年を経て、庭はどこから見ても落ち着いた表情を見せてくれます。



 密集した住宅地の真ん中に、この庭があります。それ故に、この庭は家族だけでなく、周辺の家の方にとっても癒される貴重な緑の環境となり、さらには様々な小鳥たちもここを訪れます。
「小鳥がたくさん来るので毛虫もほとんどいないです。」とKさんは言います。
 もちろん、農薬散布などは決して行わず、自然の循環の中で自律的にコントロールされて快適な環境を作ってくれる、それがこれからの庭の理想なのかもしれません。



 庭の中の落ち葉ストック。スペースがあればなるべくこの落葉ヤードを庭に取り込んできました。これ一つで、落ち葉とサンドイッチしながら1年分の台所の野菜くずが土に還るのです。しかも、水と風をコントロールすれば嫌な臭いもまったく湧きません。
 落ち葉や野菜くずをゴミに出さずに大地に還元してゆく、それを知ることは大きな喜びをもたらし、そして、未来につながる地球の環境を育てることなく食いつぶしながら生きる社会の罪深さに気づくのです。
 今再び、実感を持って自然と向き合い、感じ取ること、それが人や社会の健康、存続のために不可欠なものであることを、この仕事を通していつも感じるのです。



 今年から始めた高田造園の自然農園、霜に耐えながら五月菜が青々と寄り添い、、春の訪れをひっそりと待っているようです。
 この菜園も、もともとは締め固められて硬くなった土地を水脈改善し、そして剪定枝葉をリサイクルしてできた腐葉土を漉き込んで畑にしました。
 肥料も特に与えず、また、一度作った畝を耕すこともありません。この畝の土の中には、様々な土中生物が生態系を作り上げていきますから、それを再び壊すような耕起はせず、自然と寄り添いながら野菜を収穫してゆくのです。
 これまで、収穫の度に耕していたときに比べてはるかに作業は楽しく、感動や発見も多く、そして収穫も多く、大地の動植物との共存が実感されます。

 造園も農も、対話するように自然と向き合うことで、行きつくところは豊かな自然環境の中で共存してゆくあり方なのだと気づきます。



 そして、社有林に小さな小屋が建ちました。構造材や建具はすべて、古民家を解体した廃材を用いています。



 小屋の中には広い土間に薪ストーブ、そして6畳一間の小さな部屋。懐かしい空間と温かな木の香り、来年にはこの森の中にもう一棟山小屋を建て、そこがこれからの私たちの活動の拠点となります。
 
 今の都会の人たち、現代の子供たちに自然と共にあったかつての農山村の楽しみを体感してもらう、そんな場所にしていけたらと考えております。
 そしてここは、来年立ち上がるNPOダーチャサポートの一つの活動拠点になるのです。
 今の時代、豊かな未来は失われた過去の中にある、そんな言葉が脳裏によぎります。私たちは今、失ったものを取り戻さねばならない時期に来ているようです。

 日本社会に暗雲が色濃く立ち込めるここ数年、私たちはあきらめるのではなく自律し、そして本当の豊かで美しい日本を取り戻していくべく、確かに歩んでいきたいと思います。
 こんな時代だからこそ、エネルギーが高まり、そして人も集まります。



 そして、小屋の脇にはハンドメイドな茅葺きトイレが完成です。素掘りの穴に用を足したら落ち葉と木炭をぱらっとかぶせる。水分の調整を炭と落ち葉と素掘りの穴がその役目を果たすのです。素掘りの穴に空気を通せば臭いも湧きません。
 そしてそれをまた、大地の循環の中に還してゆくのです。

 今年は様々な新たな気付きがありました。それも、様々な人との出会いのおかげです。
 また、本年中に手入れに廻れなかったお客様、工事をお待たせしているお客様に、この場でお詫び申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
 







 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
落葉の下で・・・       平成26年12月7日


 片田舎の小さな我が事務所。木々の表情と差し込む日差しの美しさはいつも、ここで過ごすことの幸せを感じさせてくれます。
 師走に入り、
庭から庭へと片時の休みもなく動き続ける日々の中、今日は来客を迎えるために早朝から事務所の掃除です。
 水道管が凍るほどに冷え込む快晴の朝、木々越しに差し込む朝の日差しが穏やかで美しく、それを見ているだけで心穏やかに、木々と共に生きていることの幸福感に包まれます。
 せわしなく日々を送っていると、移り変わる季節を感じる心の余裕すら、いつの間にかなくしてしまうものです。
 そんな時は時折立ち止まって、庭を掃除し、窓を拭き、心に溜まった埃を掃き清めることが何よりです。



 紅葉も盛りを過ぎ、明るい日差しが差し込む初冬の庭に、イロハモミジが穏やかな日差しを浴びて一際美しく、1年の終わりをやさしく彩ります。
 師走に入り、毎日毎日早朝暗いうちに事務所を出立し、そして日が暮れてから現場から戻る日々が続き、のんびりと事務所の木々と対話する時間もなんだかとても久しぶりな気がします。
 この感動や豊かさを伝えたくて、自分はこれまで庭を作り続けてきたんだなと、改めて感じます。



 光と影、そしてそよ風に揺れる木漏れ日、ここにいて、空気を感じているだけで心も体もリセットされる、私にとってかけがえのないのがこの、ちっぽけな庭の木々たちなのです。



 大量の落ち葉に埋もれた庭を掃き集める。本当に毎年よく落としてくれます。これが私たちにとっては良質な腐葉土を作るための大切な資源になります。
 今年もまた1年間、感動をもらい、楽しませてくれて力をくれた木々たちに感謝しながら、プレゼントの落ち葉を集めます。



 小さな庭で、積もり積もった落ち葉をかき集めて地表が現れると、流れる空気が変わります。
それは、健康な地面に空気が引き込まれて抜けてゆく、地中と地上の空気の流れが変わるのです。
 狭く限られた庭においては特に、ずっと落ち葉を積もったままにせずに時に掃除して、一部分でも健康な地表を現わすことで、人にとっても心地よい空気の流れを保つことができる。それは同時に、土地の健康維持のためにもまた、効果的なことなのです。



 1か月以上も落ち葉が積もったままだった庭の地表から落ち葉を取り払うと、こうしてすでに根が浮いてきます。落ち葉の下では、このひと月の間ににぎやかな動きがあったことが分かります。



 細かな根が上を向いて伸びていき、そして積もった落ち葉に絡んで大地に引き戻そうとする、そんな活動が冬の地表で活発に繰り広げられているのです。
 落ち葉の中は根が活動するのに心地よく、こうして地表地表へと根が向かい、それが結果的に豊かな大地を守ることに繋がるのです。



 落ち葉に埋もれていた杉の幹の根元から新たな根が生じ、落ち葉によって供給されるあたらな環境の変化に対し、こうして積極的に動いてゆく、そんな生き生きとした木々の動きを感じることだできるのも、落ち葉掃除のおかげです。

 落ち葉を掃いて地表をむき出すと、露出した根は樹皮を発達させて木部と化し、地表に接する部分から新たな根をおろし、すぐに地表に潜り込んで大地を捕捉していきます。そこには水や空気の抜ける心地よい地表が生まれます。

 こんな木々の素晴らしさ、いのちの営みを、伝えたい想いに駆られます。



 事務所の落ち葉を積もりっぱなしにして大地に還す場所も残します。冬草のロゼットが、落ち葉の毛布をかぶって暖かそうにしています。

 木々の営みはいつも賑やかで、いつもたくさんのことを教えてくれます。



 小さな事務所の小さな庭、健康で元気な木々たちが共にいてくれるおかげで、どれほど心豊かに暮らせることでしょう。
 
 木々と共に生きる幸せ、いのちの営みは、人にとって本当に大切なものに気づかせてくれる、そして健康と力と生きる意味を感じさせてくれるのです。



 







投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
つくば市、緑・住・農一体型住宅地の緑地改善  平成26年12月1日


 ここはつくば市の新興住宅地、春風台。緑・住・農一体型分譲区画の風景です。

 豊かな菜園の実りあるこの風景が、ここわずか2~3年程度で分譲、建築された住まいの風景と思えるでしょうか。
 これは紛れもなく、今年7月にここに家を建てて越してきたばかりの
方の住まいからの風景なのです。
 
 関東平野の名峰、筑波山をまじかに仰ぐ広々とした台地にこの土地の自然環境を調和した、豊かな住環境を創造する、新しい住宅地作りの取り組みがここで始まりました。



 緑・住・農を一体として提供する、一区画200坪の住宅地には、接道部分に道路から奥行き12m、面積60坪もの景観緑地を有し、そして家屋敷地の背面に、奥行き7m、面積40坪程度の菜園用地を有します。

 これらの緑地や農地を挟んでゆったりとした住環境、そして隣接家屋とも程よい距離感を保つ、そんな魅力的な街づくりがここで始まりました。

この街づくりを提唱し、主導してこられた地元の地権者で物理学者のS先生は、言います。

「今の日本の住宅環境はあまりに悪すぎる。特に最近の新興住宅地の環境ははますます狭く、潤いもない。そんな環境では人間関係もコミュニティもなかなか育たない。
 海外の研究者仲間たちは、日本には短期滞在はしてもいいが、長期にわたって家族を連れて住むことなど絶対にできない、と言う。それ程今の日本の住環境は悪すぎる。
 人が心地よく住み続けられる環境とはどういうものか、そこから考え直し、意識を変えていかないと、日本はますます世界から取り残されてしまうだろう。」

 S氏はまた、地元で里山育成活動にも関わられており、ここに新たな日本の美しい、自然と調和した現代の暮らしの環境を再生したいとの想いから、粘り強く市や地元住民に働きかけ、そしてこの新たな街つくりを主導されてきました。



 ところが、緑地部分の土地の移管を受けたつくば市によって3年前に植栽されたコナラとヤマボウシの状態が悪く、今回私はS氏から緑地診断の依頼を受けてこの地を訪れました。

 原因は一目瞭然で、ほとんどの木々が根腐れ、根詰まりを起こしていたのです。もともとこの土地は広大な畑に屋敷林が点在していました。それが住宅開発のための造成工事によって一斉に表土がはぎ取られ、重機で蹂躙されて締め固められました。そんな環境に木を植えても、健全な木々の状態が得られるものでは決してありません。不健全な環境は意識せずとも人の健康や快適性に大きく影響を及ぼします。
 
 本来の大地の循環を壊して不健全な住宅環境が量産される現状、それは現代の大規模住宅開発や土木工法に、根本的な問題の一つがあります。



この緑地の植樹は3年前、この土地本来の代表的な里山樹種であるコナラにヤマボウシが一本ずつ、列状に植えられ、そして今、ほとんどすべてが成長せずに傷んだり枯れたりしています。
 こうした、本来山の自然樹木を、蹂躙されて締め固められた土地に単木で植栽されれば、健康を維持できずに傷むのは当然のことなのです。
 木々と共にある健康な住環境、住宅地を作ろうと思えば、従来の開発の在り方ではなく、もっと自然に寄り添った形の、その土地との付き合い方、あるいは自然環境へのインパクトの少ない改変の仕方がなされねばなりません。
 自然破壊型の開発から、自然環境再生型の住環境つくりへ、発展させていかねばなりません。



つくば市内を流れる桜川の畔から、周囲を見ます。広大な水田の向こう、段丘状の山並の上に、この春風台住宅地が開発されました。森の畔には、旧来の集落が連なります。
 これが本来の中山間地域の住まいの在り方と言えるかもしれません。裏山の木々は大地を吹き荒れる季節風から住まいを守り、そして、森の木々に寄り添うように住まいが連なる。
 一方で、春風台住宅地が造営されたこの段丘の上の台地は、時期によって遮るもののない風が吹き荒れます。そこに家を建てて住む場合は、かつてであれば屋敷林の存在が不可欠だったのです。



春風台住宅地の下の旧集落。裏山の幸や湧水を利用して、昔からこうした土地には人が定住してきたのです。それが長年暮らし繋いでゆくうえで、人々にとって暮らしやすい環境だったのでしょう。

 ところが春風台開発地の下、旧集落の裏山であるこの斜面林でも、開発後に異変が生じてきたのです。



 斜面林内の300年生の杉の大木が、開発後に次々と枝枯れをはじめ、1本、また1本と、枯死していったのです。
 この原因は明らかに、上部の住宅地開発に伴う地下水脈の変化に起因します。
 乾燥に弱い杉の大木から順に、水脈の変化の影響を受けてしまったのです。
  開発に伴う水脈の変化の影響は、周辺環境の広範囲に及ぶのです。



 緑・住・農の一体型の住宅地という素晴らしい理念。それが新たな日本の、美しい住まいの原風景となりえるためには、単に緑地の木々だけでなく、この住宅地を取り巻く大地の環境から改善し、その後自然の作用によって自律的に環境改善されてゆく、そんな改修が必要です。



 傷んだ木々、枯れた木々、その理由など、住民の方々に集まっていただき、この木々たちが置かれている今の状況を説明し、問題意識を共有します。
 この町に住まれる方々は、豊かで健康的な緑と共にある環境を望んでおります。自然豊かで美しい環境を育ててゆくために、何が問題で何をすべきか、住民方々にきちんと説明し、合意を得て、改善のための道筋をつけていかねばなりません。



 そして、住民や地権者でつくられる街づくり協議会の要請を受けて、緑地改善のレクチャーを開催いたしました。
 私が提唱する改善のポイントは以下の3点にあります。

1.配植、植栽組み合わせの改善
2.植栽部分の土壌改善
3.緑地全体の地下水脈の改善

 この三点の改良が適切になされることで、どんな土地でも必ず木々は良くなり、本来の健全な成長を取り戻すのです。そればかりか、一度は途絶えた周囲の自然環境も良好に改善されてゆくのです。



 住まいの自然環境を健全に再生すること、それが暮らしの環境を愛着と温みりあるものに育て、そしてそれが本来の郷愁を取り戻すことに繋がります。
 そのためには、木々も大地も本来の健康を取り戻さねばなりません。

 そんな住環境つくりが真剣に考えられ、実践される、そんな胎動がこの街に感じられます。

 春風台 緑・住・農。一体型住宅地、その緑地の改善工事は来年冬から始まります。改善工事の様子は順次、ブログにて紹介していきたいと思います。


 
 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
山際の家屋 地下水脈の改善   平成26年11月17日


 ここは静岡県三ケ日町
、浜名湖畔の山間部、Kさんの家、新築住宅の造園工事です。遠方ゆえ、1か月ぶりの工事再開となりました。
 背面北側に山を背負い、南側に開けた家屋配置、こうした場所は昔から住まいの立地条件として、ある面理想的で、かつてはこうした山の畔に集落が点々と繋がる光景がよく見られました。
 こうした山畔が好まれて住まれた理由のうち、とても重要な一つに、水の得やすさがありました。
 こうした場所では裏山の際を掘れば、たやすく水脈が見つかります。そしてそれが生活用水や農業用水などに利用されてきたのです。
 かつての整備された里山では、斜面林の麓、山の際に素掘りの側溝や小川が誘導されている光景が見られます。
 同時に、こうした場所に住まいを構える際、地下水脈が住まいの快適性に悪影響を及ぼさないよう、水脈をコントロールする知恵も、かつての暮らしの中では当たり前に持ち合わせていたのです。



 山の畔に家を建てれば当然、無数の地下水脈が、家の下や庭を縦断します。
 特に、家屋建築の際に造成されて締め固められ、コンクリートで覆われてしまったこうした宅地では、敷地内に地下水脈が停滞し、土中の滞水が起こります。そしてこうした水の停滞は様々な問題を引き起こすのです。
 こうした場所での造園工事では、停滞した水脈を健全な形に再生しつつ、進めてゆくことが大切です。
 地下水脈の停滞は、自然環境だけでなく、そこに住む人間の健康にも悪影響を及ぼします。地上だけでなく、地下にも健全な形で水と空気が流動する環境こそ、豊かで心地よい住環境を育てます。




 植栽しながら、地下の滞水箇所を見つけていきます。1か月前に植栽した木々の中の1本が枯れ始めたため、その根元を掘ったところ、案の定、滞水が見つかりました。
 



 家の下から滾々と水が湧き出し、そして、それがはけずに土中に停滞しています。



 たとえ地下水位が高くても、水が動いてさえいれば、その動きと共に土中の空気も動き、木々や土中生物にとって健全な環境が育ちます。それによって土質も自律的に改善されていきます。しかし、こうして滞水すれば、水は腐り、そした土は青くヘドロと化して有害な気を発し、土をますます目詰まりさせ、土中環境をさらに不健全化していきます。
 つまり、地下の水の流れが円滑でなければ木々は長く健全に育つこともなく、豊かな生き物を育む本来の生態系がなかなか醸成されていかないのです。また、土中への円滑な空気の流れは地上部のよどみをも解消します。
  住宅地の地下滞水の多くは、水脈を顧みない現代の土木建築工法の欠陥に問題があります。
 これから植栽する木々を、自然状態のようにたくましく健全に育てていこうと思えば、この土中水脈改善から手掛けることが必要です。

 滞水箇所の下流部に深い穴を掘り進み、滞水がつくったヘドロによる硬板土層を抜いてその下の本来の土層にまで縦穴を掘っていきます。ここでは深いところで1,5m程度掘り下げて、水の抜ける層に到達させます。



 そしてその縦穴に気抜きとなる竹筒を差し込み、その周囲に乾燥させた剪定枝を縦にに差し込みます。無機物だけでなく、有機物をバランスよく組み合わせることで、自然の力で自律的な土中環境改善につなげていきます。



 そしてその隙間に、木炭を中心とした改良資材を漉き込んでいきます。これが締め固められたこの土地の呼吸孔となり、水と空気の動きが土中に生じることによって周辺の土中環境も再生されてくるのです。
 縦穴の底に集まった水は徐々に浸み込み、それが毛細管現象で土中深い位置にしみわたると、寸断された水脈とぶつかってそこに水が供給されることによって、水脈再生の勢いが増します。そしてその深い位置からも、本来の造成前の水脈が再生されてゆくことでしょう。

 人が壊してしまった大地の血管、その再生のためにほんの少しばかり、お手伝いすること、自然の力による再生のきっかけを作ること、それがこの作業なのです。



 
 植え戻し前の暗渠縦穴。枝の隙間から土中へと、空気も水も流れ込みます。



 そして、暗渠となる横溝を掘って絞り水を受け、縦穴と繋げながら、敷地全体を改善していきます。



 暗渠パイプを併用しつつ、乾燥枝などの有機物、炭、腐葉土、ゼオライト、ウッドチップなどで埋戻し、あくまで土中環境の改善と再生のために、暗渠整備していきます。




 暗渠埋設の他、さらに地形から水脈を予測し、要所に空気孔となる竹筒を差し込み、くり抜きます。



くり抜いた竹筒の周りに炭を中心とした改良材を流し込みます。



 こうした小さな気抜き孔を10数箇所、点在させて、水脈の再生と土中生物環境の改善を促します。



 植栽、水脈改善さ作業を終えて整地します。精緻の際、起伏に応じて微妙な地形を造作して、表面水が表土を削ることなく、水jの勢いが分散されるように、山のライン、谷のラインを変化させていきます。
 そこに直線的な単調な連続はなく、期せずして自然なラインに近づいていきます。

 表面水に加速度がつけば、表土を削り、泥水となって表土の微細な空気孔を塞いでしまいます。山や谷など、自然の地形を見れば、流れる」水が加速度がつきすぎずに一定の速度に勢いが弱められるよう、自然とそんな地形となっていることが分かります。
 
「庭のお手本は自然。」とは、よく耳にする言葉ですが、見た目だけ都合よくお手本にするのではなく、見えない部分の素晴らしい力や役割、それを活かすことがこれからますます必要となることでしょう。



 家屋南側の水脈改善を終えて翌日、お施主のKさんが言いました。

「いつもじめじめしていた北側まで、水がはけて乾いてきた。いつもじめじめしていたのに、すごいね。」

 この一言で、丸2日間も水脈改善に費やした苦労が報われます。そして、木々もこの土地も、生き生きとこの土地の自然環境の一員として育ってゆくことを夢見ます。

 

 







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東京都世田谷区の造園外構工事    平成26年11月1日


 ここは東京都世田谷区、等々力渓谷にほど近い住宅地の一角、Mさんの造園外構工事がいろいろクライマックスを迎えています。
 裏庭側からかかり始めて、ようやく門と駐車場の外構工事にたどり着きました。
 門やアプローチなどの外構工事に先行して主要な高木は先に配してしまうのが、高田造園の工事方法です。あくまで、主要な木々の適切な配置をできる限り優先して、全体が心地よくまとまるように門や駐車スペースの配し方を調整してゆくのです。
 今回は昭和初期の洋館のような雰囲気を持つ建築に合わせて、モダンで丁寧な、当時の雰囲気や空気感をつくるべく、素材とデザインを吟味してまとめていきます。



 駐車スペースや接道との段差は版築で処理していきます。こうした敷地内の段差は、上部植栽地の土中環境をよりよい状態に育ちやすくするもので、庭はなるべくこうした高低を活かします。
 土留めに呼吸する版築塀とするのも、単にデザインではなく、土中環境の改善による、樹木の健康な生育を期してのことでもあります。
 コンクリートを用いて土中の呼吸や水を遮断してしまえば、土中に水脈気脈を生み出すせっかくの高低差も意味をなさなくなってしまいます。

 土中の呼吸や水の動きに配慮すれば、こうした段差の処理は本来、竹などのしがら柵や、あるいは石積みのような、空隙のある形のものが最適なのですが、そこはその場のデザイン性との兼ね合いで考えていく必要もあります。



真砂土・石灰・にがりを配合して付き固め、型枠を外すと版築独特の美しい地層文様が現れます。



 この、版築の上に、笠石をあてがっていきます。この笠石も、化粧柱も、この場に合わせた寸法で洗い出しでつくりました。
 素材はなんでも、その場に合わせて作り、あるいは見立てることが大切です。こうした外構素材は、安易な既製品を当てはめて構成しても、本当の意味で見ごたえのある品のよい空間は決して生まれません。
 土、石、木といった外構の3原則素材を基本になんでもその場に合わせて作ることが、大切です。



 真砂土洗い出し仕上げの笠石。呼吸する素材は年々その風合いを増していきます。



 笠石設置後の土留めの表情。



 1つずつ工程を進める度に門回りの景が美しく引き締まってきました。



煉瓦積みの門柱の笠石。微妙な水きり勾配と程よい厚さが門周辺を上品にまとめます。



 土、煉瓦、石を基本素材に、門扉もまた、木製造作していきます。なるべく安易な既製品、高価な素材など使わず、意匠に凝りすぎず、そして身近で手に入る土・石・木といった素材を基本に、素朴に一つ一つ丁寧に作ってゆくこと、それが飽きることのない生涯の美しい原風景を育てることに繋がる、そんな風景を提供していきたいと思います。







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