今後の高田造園業務について 2020年10月4日
こんにちは。
先日に、高田造園業務縮小のお知らせをいたしましたところ、たくさんの質問、お問い合わせがありました。
いろいろ説明不足だったようですので、補足説明いたします。
まず、造園業務を終了するのではなく、縮小といたします。
その理由は、執筆や環境活動、環境調査活動にもっと時間を割いていくためでございます。
造園工事については、今後は、環境の再生について、想いを共有し、施工内容や目的を共有し、社会や環境・未来に鑑みて意義のある造園環境工事については、今後もできる限り、尽力していきたいと思います。
私の造園の趣旨と想いに賛同してくださり、なおかつ未来の環境のために何かしたいとお考えの方は、どうぞご連絡お待ちしてます。
手入れについては、件数を減らす必要がありますが、これもクライアントと環境に対する想いを共有して、なおかつ私でなければできないであろうお庭について、20件程度までは今後も継続したいと思います。
「うちはどうしても、、、」と言う方はどうぞ直接ご連絡ください。
いざ、件数を減らすとなると、それもなかなかできることではありません。どの庭にも思い入れがあり、わが子のようで、なかなか減らすことができずにおります。
また、これまでお付き合いくださったお客様、皆様とてもよい方ばかりで、本当に心苦しく思います。
これまで作った庭は、ほぼすべて、私自身が思いを込めてずっと手入れしてきましたが、私が手が回らなくなる庭については、少しずつ心ある若い人へと、想いが繋がっていけばと思います。
わがままをどうかお許しください。
なお、今後について、来年度以降をめどに造園関連の仕事は週の半分程度の日程で回していきたいと思います。
それ以外の時間は、環境改善指導、環境調査、NPO法人地球守活動、講演・現地指導・教育活動、書籍等の執筆活動などに費やしていきたいと思います。
土地、いのち、環境と私たち人間は本来一体であり、それに対する正しい向き合い方が人をも環境をも、そして生きとし生けるあらゆる命を育み、それが未来に続きます。
社会や現代の暮らしが自然からかけ離れてしまった今、私たちは自然という絶対的真理の基準を見失ってしまったように思います。
そこは迷いの世界であり、今は人間活動のインパクトがとめどもなく大きく、自然環境全体は待ったなしの危機の淵にあります。そこから新たな温かな世界を取り戻してゆくために、私自身をも育てながらも、できることすべてを費やしていきたいと思います。
なお、遅ればせながら、ここで書籍・出版物のお知らせさせていただきます。
今年6月発売の新刊著書「土中環境 忘れられた共生のまなざし、蘇る古の技」(建築資料研究社発行)、おかげさまで増刷6刷となりました。
自然環境の中で起こる事象に向き合ってゆくうえで、現代科学の中で見落とされてしまった大切な視点を掘り下げております。
今、土中環境 続編の執筆にかかり始めており、来春発刊を目標に進めております。
災害もますます大型化し、そして自然環境のポテンシャルが失われつつある今、本質的な視点を世界が取り戻していけるよう、実践実証と並行して、世に様々伝えてゆくことも私の大切な仕事と思っております。
なお、私が主催するNPO法人地球守では、今年から、地球守自然読本シリーズを刊行しております。
只今、VOL1,VOL2を頒布中です。
詳細は地球守サイトより、お問い合わせください。
またVOL3については11月発刊予定です。
日々、現場に出て、土や木々との対話を続けながらの様々な活動を並行して行っております。
今後もどうか、ご理解ご協力くださいますことを、何卒よろしくお願い申し上げます。
造園設計施工業務縮小のお知らせ 2020年9月15日
業務の内容を段階的に絞り込んでまいりますので、ご確認くださいますようお願いいたします
お客様各位
造園設計施工業務の受注および、一般個人庭園のメンテナンス業務 段階的縮小のお知らせ
平素は大変お世話になっております。
この度、環境活動に注力するため、㈱高田造園設計事務所における一般個人庭園設計施工の受注をと、個人庭園のメンテナンス業務を段階的に縮小することになりました。
環境再生を伴う造園環境設計施工については、引き続き継続してまいりますので、お問い合わせください。
また、これまでうちで提供した造園メンテナンスについて、可能であれば他へ引き継ぎながらも、強い要望がございましたらなるべく対応いたしますが、時期や回数については変更をお願いする場合がございます。
大変恐縮ながら、予めご了承くださいますようお願いいたします。
長年お世話になってきましたお客様方々には、ご迷惑をおかけすることになるかもしれません。また、長らくお付き合いくださったお客様にも心惜しく、こうした変化は寂しいものがございます。
また新たな形でお付き合いが継続すればと思いますので、どうかご理解いただきますよう、心よりお願い申し上げます。
メンテナンスについては、今後、当社を卒業した弟子たちあるいは雑木の庭を理解する同業者への移行をお勧めいたします。また、その際の相談については、いつでもご連絡くださって構いません。
なお、子供たちのためや未来につながる環境の再生業務、あるいはその啓蒙、環境危機に際して本質的な面を共有できてなおかつ、時代的意義のある業務については、個人、法人、市民団体、行政団体の区別なく今後も継続して承ります。
私は東日本大震災を契機に、非常事態においてのセーフティネットとしてのダーチャ活動や、いのちを支える根本である環境再生活動及びその啓蒙に軸足を移してまいりました。
2016年からはNPO法人地球守を設立し、造園の仕事と並行して環境活動、啓蒙活動を行ってまいりました。
そして、2019年秋、再三の台風被災、会社をあげての被災地支援活動を経て、昨年12月、民間企業初となる環境・気候非常事態宣言をいたしました。
本来「非常事態」と言うのは、「通常の状態」に戻ったときに終了しますが、今迎えている環境非常事態は、残念ながらこのままでは終了することはないでしょう。
終わりのない非常事態に際して、これまでの仕事をきちんと整理して、やるべきことに注力してゆくことを決意した次第でございます。
私はこれまで各地の山林、被災地等に足を運び、環境荒廃の進行具合を調査観察し続けてまいりました。
また、その本質的な原因と再生方法について、できる限り周知に努めてまいりました。
環境の問題は今、手遅れ寸前と言われながらも、現代社会はその問題の本質から軌道修正することはなく、自然災害、感染症等、環境悪化に起因する生命や文明社会の問題は日ごと年ごと深刻化することが確実な情勢と認識するに至りました。
今後ますます、想定外の危機的な事態は増してゆくことでしょう。その際、われわれは、できる限りの被災者支援活動や環境再生活動および本質的な気付きを促す活動に注力していかねばなりません。
こうした事態を招いてしまったのは、私たち現代に生きるすべての大人の責任でございます。
私たちが環境の恵みを享受しつつ豊かに生きてこられたのは、ひとえに代々の先祖が守り伝えてくださったお蔭でありながら、私たち現代人は、果たして子孫に感謝される存在と言えるでしょうか。
一時の利便とお金のために環境を壊し、安全で豊かな未来を奪い、そしてその危機を認識しながらもなお、生き方や行動を変えることなく、次世代の希望を奪い続けているのが我々の姿です。
加速的に悪化してゆく社会、環境を目の前にして、微力ですが、少しでもよい未来のため、少しでもよい環境を子供たちに手渡してゆくため、力を尽くしていきたいと思います。
また、そうした、軌道修正の道筋を示すことも、私たちの次なる使命の一つと考えます。
ご迷惑を心よりお詫び申し上げます。
同時に皆様もまた、今の時代、そして未来のために何をすべきか、本気で考えていただくきっかけとなればなお、幸いです。
長くなりましたが、今後もまた、仕事と言う形ではなく、未来のために生きる者同士として、ご縁が繋がればとてもうれしく思います。これまでどうもありがとうございました。
令和2年9月15日 ㈱高田造園設計事務所代表取締役 高田宏臣
2019年12月24日、環境・気候非常事態宣言のお知らせ。
今年の秋、当社本拠地である千葉県では、度重なる台風、豪雨による大きな被害がございました。
当社も家族も被災しておりますが、この秋は、当社として災害地救援や、被災地の復旧、そして災害地環境調査に尽力してまいりました。
水害土砂災害被災地とその真因を環境面から調査する中、もはや一刻の猶予もない、環境の問題の予想以上の深刻さを知り、緊急講演会や様々な書籍雑誌への寄稿、インタビューを通して、災害広域化の大きな要因となる環境劣化の問題と対策について、様々発信してまいりました。
そのため、様々な通常業務に支障をきたしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
しかしながら、今はまさに非常事態であり、今後ますます大災害や想定外の気象自体が深刻化することでしょう。我々文明社会の存続の危機は増すばかりという現実に、あと数年もすればもはやだれもが気づくことではないでしょうか。
今、世界各国合わせて11000人を超える科学者が、気候非常事態を宣言しております。そして世界各国の自治体や国もまた、気候非常事態宣言を発しており、その住民総数はすでに2億人を超えております。
これまでの災害規模を更新する被害に見舞われた被災地において環境の再生を専門としてきた当社として、この度、環境・気候非常事態を宣言し、行動計画を発表するに至りました。
宣言文は、代表取締役の高田宏臣が提起し、昨日(2019年12月23日)取締役会にて全員一致で可決、本日(2019年12月24日)、社員総会にて、全員一致で承認されました。
以下に、宣言文を公表させていただきます。3500字の長い宣言文となってしまいましたが、お目通しいただき、こうした動きが正しい方向で広がってゆくことを願います。
環境・気候非常事態宣言
株式会社 高田造園設計事務所
現代文明の活動が主な要因となって地球環境は劣化し、生態系の健全な循環はもはや不可逆的に失われつつある。
地球環境は無限というべき複雑な秩序(一般的にシステムという)によって成り立っている。人間を含む地球生態系のシステムが「臨界点」を超えると、もはや地球全体が後戻りできなくなり、地球上のほとんどが居住不可能となる可能性が指摘されている。
「臨界点」という概念は、気候変動に関する政府間パネルによって20年前に導入されたが、今まさに地球環境は臨界点が迫っているか、あるいはすでに超えた可能性があることを、世界中の気候科学者たちが警鐘を鳴らしている。
国連の最新の報告においても、600人の専門家による3年間の検証の末、「気候変動と環境破壊は予想以上に加速しており、臨界点に近づいている」と警告している。
これまでの人類文明の歴史においても、文明活動によって地域的な気候を大きく変えてしまい、不毛の地と化してしまったことが文明滅亡の大きな要因となった事例はいくつも示されてきた。
近年においても、豊かな地域環境を破壊してしまった一例として、自給率100パーセントの恵み豊かな国土を有していたアフガニスタンが、戦争の末に短期間で不毛の砂漠が拡大し、地域的な気候まで変貌したことがあげられる。
こうした事実は、自制なき文明活動の行使によって、人間含む生命の母体である自然環境の循環と安定が、今や短期間に壊されてしまうということを、現実的に明示している。
また同時に、人類の文明活動を支えてきた従来の思考の在り方や視点、黙認されてきた行動の理由の延長線上には、もはや持続的な文明の存続はないことをも示唆する。
機械力も技術力も大きく進歩を続けて歯止めのない現代、人間社会としての意思と行動そのものが、以前とは比較にならない規模と速度で環境の循環システムを不可逆的に破壊し続けている
それは、地域的な人類・社会存亡の危機にとどまらず、地球全体の「文明の存亡の危機」という科学者たちの指摘もまた、現実的なものとして広く支持されつつある。
こうした地球規模の危機的な状況の中、2016年12月のオーストラリアの地方都市であるデアビン市が「気候非常事態」を宣言して以降、その動きは世界中に拡大し続けている。
デビアン市の宣言から三年後の今(2019年12月現在)、世界中で1,100以上(2019年10月時点)の国や自治体、大学等が非常事態を宣言している。
今や、気候非常事態宣言下の住民総数は世界中で2億人を超え、この動きは今後数年間のうちに加速度的に広がると考えられる。
日本においても、2019年9月に長崎県壱岐市が気候非常事態宣言を決議したのち、3か月という短期間の間に、神奈川県鎌倉市、長野県白馬村、長野県、福岡県大木町、大阪府堺市、鳥取県北栄町と、7自治体が宣言を決議するに至った。(2019年12月20日時点)
また、民間組織では、千葉商科大学が、激化する気候変動に対する緊急メッセージを発出している(2019年11月)
日本において、こうした急速な動きは、2019年秋以降のことである。
それは、2019年9月以降、連続して東日本に上陸した台風15号、19号、21号に伴う、想定を超える大規模かつ広域な水害土砂崩壊等の自然災害によって加速されたと思われる。
高田造園設計事務所では、主に2008年以降、水害や土砂災害の発生した流域環境や、高木枯れに象徴される森林の崩壊地などの環境調査を独自に続けてきた。
また、2019年9月以降、度重なる台風・豪雨の度に、当社も周辺地域も多く被災している。
その中で、県内地域の復旧対応にも会社を挙げて取り組んできたと同時に、風倒木の激甚被害地、水害発生地、氾濫河川の流域環境、土砂崩壊地等において、主に周辺環境・土中環境の健全性という面から調査を続け、環境の現状や、災害発生を多発させる真因についての周知のために尽力してきた。
自然環境の健全化なくして、地域や国土の安全も安定も豊かな生産性の持続もなく、そしてさらには人類文明の持続もありえない。
今の危機的な地球環境問題に、世界中で頻発する大規模災害に際して、その原因として、温暖化に伴う気候変動ばかりが注目され、残存する森林や河川などが持つ環境機能の著しい劣化については、あまり議論されていない。
環境保全機能の発揮が期待される森林については、伐採や開発による森林面積の減少ばかりが問題なのではなく、森林の分断や、小面積の点状あるいは線上の無秩序な開発が今や、周辺広範囲において潜在的な環境機能を、水面下で著しく損じていることに視点を向け、対策する必要性を提起する。
山林が残されても、その貯水機能、地形安定機能、生態系育成機能、水源涵養機能といった、山林・大地の質(ポテンシャル)は今、世界的に劣化し、日本においてもそれはここ数年、目に見えて加速している。
世界的に議論の中心となる、文明活動によるCO²排出量のオフセットは重要な課題であるが、「再生可能エネルギー推進」という名目によって行われ、それによって引き起こされる地域環境の著しい劣化を伴う現状について、早急に周知し、万物生存と持続の母体である自然環境を壊さぬ形での再生可能エネルギー推進の在り方を模索する必要がある。
山地でのメガソーラー発電所建設のように、森林を伐採し、山を削り谷を埋めて大規模に造成されてしまえばもはや、その土地の環境のポテンシャルは1000年たっても再生されない。未来の環境を永遠に奪うこうしたやり方は、早急に見直される必要があると考える。
環境の要というべき尾根筋も岩場も谷筋も問わず、一律で広範囲の皆伐を伴うバイオマス発電の燃料供給の在り方など、地球規模の気候変動の時代において、なお一層の問題となる。
現代文明を支えるインフラ整備における工法もまた、根本的に自然環境に相反して永続せず、より破壊的に周辺環境を傷めているという現実について、市民、専門家双方への周知と、工法の改善を促す必要がある。
2019年秋、当社拠点の在する千葉県における台風及び豪雨による水害土砂災害、風倒木被害地の環境調査を通して、土壌を含む自然環境の劣化は予想を超えて進んでいる現実を目の当たりにするにおよび、ここに環境・気候非常事態宣言するとともに、以下に今後の会社としての活動方針を公表します。
(*ここに、「気候」非常事態ではなく、あえて「環境・気候」非常事態という)
1.環境再生や造園における業務で発生するすべての有機物は大地の循環へと還元する。また、解体廃材などのすべての無機物も、環境再生のための資材として再生利用する。そして、こうした造園建設土木の在り方を啓蒙普及に努める。
2.当社の役割は、大地・環境の健全な機能の再生を主とし、クライアントや関係者への環境非常事態の啓蒙に努める。また、環境の再生・健全化を伴わない造園土木建築の工法は行わない。
3.当社で行う土木造作建築造園造作において必ず、環境のポテンシャルが自律的に改善、再生される工法にて行い、こうした工法の啓蒙普及に努める。
4.造園業務においては、生態系として育ってゆく環境ベースの再生や改善に徹し、植樹と土中環境健全化を主とし、そしてその後、木々が自律的に健全に育つ環境育成に努める。また、その手法と視点の啓蒙普及に努める。
5.一般的な標準仕様として行われる現代土木建設等、インフラ整備の工法について問題と改善点を研究、指摘し、周辺環境再生に導く工法の開発をサポートする。また、その工法指導、啓蒙、普及に努め、標準的な工法へと確立されるよう尽力する。
6.環境調査、災害地調査、環境改善指導業務を継続し、身近な環境において急速な劣化の現実を伝え、改善のための道筋を示すことに努める。
7.文明の持続と安心して生きられる地域環境と共生してきた先人の智慧に学び、その視点を深め、伝えてゆく。そして未来へと持続する良好な自然環境を育み、再生し、その手法と視点を広め伝えてゆく。
8.気候危機への適応という観点で、今後の大規模災害に備え、迅速な被災地救援活動体制を整備する。
9.特定非営利活動法人地球守等の活動と連携し、広域災害等によって文明の機能が停止した際、当社所有の施設を開放し周辺住民の避難所とする体制を整備し、周知に努める。また、非常時の生存の源である清冽な湧水を保ち、その大切さの周知に努める。
10. 今後の危機に際し、その緩和のために環境再生活動に尽力し、持続可能な文明の在り方の見直しと再構築のために、各行政機関、関係諸団体との連携を模索し、多くの国民市民とともに広げてゆく。
以上、宣言する。
令和元年(2019年)12月23日
株式会社 高田造園設計事務所
代表取締役 高田宏臣
NPO法人地球守 ウェブ開設のお知らせ 平成31年1月28日
高田造園設計事務所のブログを見てくださる皆様へ、高田よりお知らせです。
このたび、高田が代表理事を務めております、NPO法人地球守のホームページを新設いたしました。
サイトアドレスは下記のとおりです。
https://chikyumori.org/
本業の造園設計施工業と並行して行っております環境再生活動、環境調査については、地球守サイトのブログにて積極的に情報提供していきます。
高田造園設計事務所のサイトと同様に、地球守サイトをご覧くださいますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
ブログの他、地球守で行っておりますイベントのご案内も、サイトにて行ってまいります。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ちなみに写真は、昨日(1月27日)、筑波山ろくの六所皇大神宮にて、「筑波山の水脈を守る会」のご依頼で開催しました、神域の環境再生フィールドワークの様子です。
今回、筑波山をずっと守ってこられた地元の方々のご協力の元、大勢の人が集まるこうしたワークショップは、現代の結いの作業、と言えるでしょう。
今、中山間地の暮らしと環境を守ってこられた方々は多くは高齢化、人口減少の中、マンパワーの問題に直面しているのが現状です。
「山が荒れる、どうしたらよいか。なんどか土地の良さを守り、次世代に繋ぎたい、、、」
そんな地元の尊い方々の想いに対し、「何か手伝いたい、学びながら環境再生に何か役に立ちたい、」そういう想いを抱き、こうした活動にご参加くださる方もまた、大変増えていることを感じます。
地域で環境に向き合い、暮らしてこられた方々と手を合わせて、他地域の方々も街の方々も、こうした新たな形で、協力し、日本全体の環境をみんなで守り育ててゆく、そんな小さな動きが広まっていくことを願います。
寒い中、フィールドワークには大勢の方にご参加いただきました。
今回の開催のためにご尽力くださいました「筑波山の水脈を守る会」事務局の茅根さん、そして地元地区の皆様、山主の皆様、その他、ご協力くださいました全ての方々、ご参加くださいました皆様に、心より感謝申し上げます。
全国メガソーラー問題シンポジウム開催のお知らせ 平成30年8月16日
ここは、房総半島南部、千葉県鴨川市の山中です。
この地域は三浦層群と言われる、力のある岩盤層によってとても豊かな森が太古から保たれ、それが素晴らしく豊かな生態系を育み、力のある水が湧き出してふもとの暮らしを千年万年と支え続けてきました。
今やここは、千葉県内では最も生態系豊かな森の一角と言えるでしょう。
この山の頂部一体、300ヘクタールという見渡す限りの広大な範囲の木々を伐り、総延長3キロメートルという広大な範囲で尾根を削り取り、谷を埋めて、造成される、日本最大級のメガソーラー(大規模太陽光発電設備)建設の計画が進んでおり、今回、その計画地踏査にうかがいました。
計画地とその周辺一帯の山域に無数の谷が刻まれ、そしてそこには川底からも山襞からも湧水が染み出し、それが今もなお、渓流の魚やカジカなど、今や貴重な川の生きものを育みます。
ひとたび山が削られると、山が本来保ってきた貯水機能、洪水調整機能、浄化機能も失われます。
森が水を貯えなくなった分、こうした大規模開発においては造成の際、表面を流れる水をいったん蓄えて調整する、巨大な調整池がいくつも建設されます。
集落の水源になっているこの沢の上流部に調整池が建設され、そしてその排水はこの沢に放たれます。
千年万年にわたってこの地の豊かな暮らしを支えてきた要の地形を根こそぎ削ぎ取って、未来にわたって不毛の地にしてしまう、このとんでもない計画が見直されることを願い、こうした現実を多くの人に知っていただきたいと願います。
同時に、仮に計画が始まってしまったその後も、こうした、周辺河川の環境変化を観測し、そしてそれをきちんと伝えていき、全国の、そんな思いで今回、周辺環境調査地点の視察に入ったのです。
時折強く降り注ぐ雨の中、この杜の母のような大木たちの霊気に打たれながら歩きます。
小さな尾根や露岩の上に、モミの巨木が点々と見られ、その周辺は林床に至るまで、ひと際豊かな森の様相を呈します。杜の主木として巨木となったモミの木が、マザーツリーとなって森を育んでいるのでしょう。
それにしても、房総半島の極相林(その土地の風土環境が到達する森の最終形態)において、林冠の最高木として、細かな起伏の高みにはかつてはモミの木がこうして点在していましたが、今、そんな豊かな森はもう、房総ではこの山域から続く三浦層群一帯のほかにはないことでしょう。
高木、中木、低木、そして林床の幼木、下草、土の中の菌類微生物たち、その豊かな営みがこれまでそれこそ数千年以上もの暮らしの環境を支え続けてきたのです。
世界有数の人口密度を支え続けてきた、限りなく豊かだった日本の国土、その75%は山地であって、人間の大半は今、平野部に暮らし、そして社会インフラの多くもまた、平野に集中します。
その平野の暮らしの安全と豊かさ、生産力も資源も、いのちの水も、空気も、そして快適で暮らしやすい微気候をも、永遠に生み出し続けてきたのが、一見経済価値がないように見られてしまう、この山地における豊かないのちの営みにあるのです。
かつてはこの山の営みを守るため、要の樹木をご神木とし、環境の要を鎮守の杜として守り、そして水の湧き出しに龍神を祀り、そうして先人の懸命な努力によって、世界有数の人口密度を抱えながらもなお、この国は豊かな環境を今に繋いできたのでした。
尾根筋に達すると、とても心地よい風が吹き上げて涼しく、大木が点在する森はまた、この土地の長年の営みを物語ってくれるようです。
さっきまで地下足袋にたくさん吸い付いてきたヒルも、心地よい尾根の環境には全くいなくなります。
不快な環境を招いてしまったのは基本的に人間に寄る環境の錯乱による部分があまりに大きく、ヒルも、荒れてしまった環境の叫びのように湧き出してくるもののように思えます。全てを壊してしまう人間を寄せ付けないための、大地の反応として、現れ、そして良い環境を保つ、例えばふかふかの苔むしたマザーツリーの根元や安定した尾根筋頂部などには、ヒルは全くいなくなります。
そう思うと、人の営みと言うもの、そして自然の意志、そんなことをもっときちんと感じて、その法則の中に生きるすべを次世代に向けて知恵を絞って見出していかねばならないように思います。
今歩いているこの尾根も、最大で標高40mにわたって削り取って平坦化し、そしてその土で深い谷を埋め、そして跡形もなく地形を変えたその上に、50万枚もの巨大なソーラーパネルが並ぶ、そんな計画が今にも動き出そうとしているのです。
そして、奥に見渡す尾根筋もすべて削り取って平らにし、地域の水源となってこれまで集落の暮らしを支えてきた尾根の手前の深い谷も、高さ80mもの高さで埋め尽くされようとしているのです。
大切な山林の開発はこれまでも様々ありましたが、メガソーラーはそれらとは全く違う規模で、しかも壊して話いけない山地頂部もかまわずに行われるという点で、これまでの開発とはそのインパクトは比較にならず、それによって生じるであろう国土環境の劣化がどれほどの規模で広がってゆくか、想像もできないことでしょう。
いや、もうすでに全国で様々な問題が早速起こり始めておりますが、まだそれは、ほんの始まりに過ぎません。
それほどまでに、この開発はこれまでにない、未曽有の破壊につながる危険をはらんでおります。
大規模造成事業の経済効果の高さも大きな後押しとなって、国策で強力に進められるメガソーラー事業、電力の需給に関係なく発電すれば、固定価格で必ず売却でき、そして大きな利益が見込めるメガソーラー造成の圧力は凄まじい勢いで、このまま放置すれば数年で国土はまるで別のものになり果ててしまう、そんな危険すら感じております。
今、この現実を多くの人に知っていただき、身近な問題として放置できないことを多くの人と共有していかねばならないと感じます。
西日本豪雨に広域被害もあり、今国土防災の在り方も問い直されております。
そんな中、メガソーラー造成含む太陽光発電設備造成のもたらす現実に、多くに人が気づき始め、全国各地で、計画地地元による反対運動が日増しに勢いを増してきました。
反対賛成の二項対立ではなく、ただ単に、土地を生産力を未来永劫に修復不可能なまでに奪ってしまう今のメガソーラーは絶対にまずいということ、一時の繁栄のためにいのちの営みの根幹をここまで奪ってはいけない、そのことを基軸に、未来の暮らし方、文明の在り方へと力を合わせて方向を共有できればと願います。
本質は、自然環境の健全化なくして、本当の安全も安心も、決して得られないということ。そのことを、声を大きくして伝え続けたいと思います。
共感の輪を広げていき、少しでも早く、メガソーラー増設の波を収めていきたい、そう思います。
今、全国で急速に広がるメガソーラーの問題を訴える各地地元の声を、大きな輪として伝えてゆくべく、来たる10月8日に急きょ、全国メガソーラー問題シンポジウムを開催することになりましたので、取り急ぎ、下記にご案内いたします。
~全国メガソーラー問題シンポジウムのご案内~
日時;2018年10月8日(体育の日)
場所; 長野県茅野市(中央本線特急停車駅)
第一部;茅野市市民館コンサートホール(定員300名)
第二部;茅野ユイワーク 情報交換会・質問・お話し会
参加費;無料
主催;全国メガソーラー問題シンポジウム準備委員会(事務局;小林峰一)
タイムスケジュール;
12;30 開場、受付開始
13;00 開演挨拶及びお話し
「そもそもソーラーがなぜここまで増えたのか」(仮称)
佐久裕二氏(10分)
13;10 基調講演① 「メガソーラーが環境を壊す10の理由」40分間
高田宏臣(環境活動家、造園家)
13;50 基調講演② 「メガソーラーを止める10の方法」30分間
梶山正三氏(弁護士)
14;20 休憩(10分)
14;30 各地メガソーラー計画地における住民活動事例報告と現地からのご意見
*4か所ほど、各20分程度、報告していただき、様々な地域の問題と取り組みを学びます。
15;50 総括、まとめ(各報告者のコメント)
16;00 第一部終了 第二部会場(茅野ゆいわーくに移動)
16;30 第二部 情報交換、意見交換、お話し交流会
*お茶お菓子は用意いたします。アルコールの持ち込みはできません。
お話ししたいことがある方、各地の報告、活動紹介、質問もざっくばらんに承りながら、この場で交流を兼ねて、それぞれが次への展望へとつながるような、有意義な交流会になればと思います。
18;00 第二部終了 解散
18;30 懇親会(会場未定。事前申し込み制となります)
シンポジウム参加は事前申し込みは必要ございませんが、懇親会は事前申し込み制となります。詳しい案内は追って公開いたします。
*なお、今回の開催地となる茅野市は、霧ヶ峰山麓に計画中の諏訪市四賀ソーラー事業地の下流域にあたります。
地元の住民団体「米沢地区Looop対策協議会」の方々の全面的なご協力、ご賛同の上、シンポジウムが開催されます。
この後、第2回シンポジウムは今のところ、千葉県鴨川市「鴨川の山と川と海を守る会」の方々が名乗りを上げてくださっております。
これをスタートに、この問題の本質を知っていただき、考えていただき、その関心の高まりのきっかけになればと思います。
また、こうした集いが各地域で活動される地元の方々の励みや力になる、そして、この問題に対する風向きを変えて、良い方向に向かう原動力になればと思います。
多くのご参加、多くの方の関心が、この問題を鎮めてゆく力になります。どうか、一人でも多くのご参加を、心からお願い申し上げます。