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雑木の庭つくり日記

つくば市春風台の環境改善工事     平成27年2月26日


  つくば市の大型新興住宅地、春風台の緑地環境改善工事の開始です。

 この住宅地は、自然環境共生型の暮らしを理念に掲げ、住宅一区画につき、接道部分に約60坪の景観緑地、そして家の背面に約40坪の農園スペースを兼ね備えた、合計109区画の未来志向の住宅地です。

 この日の作業は、緑地の通気浸透水脈改善と、健全な雑木林再生型植栽モデルのデモンストレーションです。
 春風台の住民方々や地元造園業者方々が入れ替わり立ち代わり訪れ、興味深く見つめる中での作業となりました。



 6年前に新興住宅地として開発造成され、そして植栽された木々は数年経過した今も状態が非常に悪く、次々と衰退・枯死が進んでいます。せっかく景観緑地の理念を持って、広大な緑地スペースを確保されたのに、植えられた木々が元気でなければなんにもなりません。
 どうしてこうなってしまったのか、その原因は、開発造成に伴う土壌環境の悪化にあります。
これを改善して、健康ないのちを育む大地環境へと再生してゆくためには、単に従来のような根鉢周辺の土壌改良や客土だけでは対応できなくなってきました。
 
 長く造園の仕事の中で木々に向き合い、土に向き合いながら、悪化し続ける大地の環境に気づきます。
 普段は目に見えない土の中で今、何が起こっているのか、それを人に伝え、仕事の中で改善の手立てを施してゆくこと、これからの開発、これからの造成においてますます大切な考え方となってゆくことでしょう。



 地元協力業者によって、衰弱した高木の掘り取りと工事個所の芝剥がしが前日になされ、いよいよこの状態から、確実に木々が健康に育ち、土壌環境が健全化してゆくための工事実演です。
 高木植栽箇所は60坪の緑地区域に3か所設けます。



 植栽部分の掘り下げの後、その四隅に縦穴を掘り、節を抜いた竹筒と、木炭を中心とした通気改善資材で縦穴を埋め戻します。
 土壌の通気浸透性が悪い条件下で、土壌環境を持続的に育み、そして木々を健康に育てるためには、この縦穴による土中深部までの通気浸透改善が決定的に大切なこととなります。
 悪化した土壌環境の下では、単に植栽のための植穴だけ土を入れ替えても、その土は一向に良くなっていかないどころか、植穴の底に新たな不透水層を作ってしまい、それが滞水を促し、徐々に根を腐らせてしまうことに繋がる結果を招くこともよくあるのです。
 
 「客土・土壌改良」までは、従来の造園作業の中で普通に行われてきたことですが、それが効果的な結果につながるのは、元の土壌の通気浸透能力が健全であるか、あるいは健全に再生されてゆく状態である場合に限られることなのです。
 ここまで自然環境を悪化させてしまった今、根本的な大地の呼吸から再生してゆくのための手立てを打っていかねばなりません。



 縦穴通気口設置後、植穴の下地土壌を重機でほぐし、乾燥枝などの有機物や木炭をサンドイッチしながら土を埋め戻していきます。
 土中の水脈が再生されると、この植栽マウンドから表層水が吸い込まれて動き出し、同時に空気がストローのように土中深くへと吸い込まれていきます。
 それによって、土中深い位置にまで、様々な生物が生育できる環境が広がっていきます。そしてそれが土壌の団粒化を促し、樹木の根が深部にまで入り込んでゆきます。乾燥枝はいずれ腐って土に還ると同時に、その頃には絡みついた木々の根が太くなって、敷き枝に代わって土圧を支え、通気環境が持続的に維持されるのです。



 表土の埋戻しには、既存の土にバーク堆肥等を混ぜて改良して埋め戻します。



 土中環境再生のためには、地形落差が必要で、ここでも植栽地を盛り上げて、土中水が動きやすい環境を作っていきます。
 また、雑木植栽はこうして根鉢が接するほどに密植することで、木々の共存効果と競争効果が植栽直後から始まり、早く健全な状態へと生育していきます。




 同じ作業を繰り返して、2つ目のマウンド植栽が完了し、木立越しに家屋風景に奥行きが感じられ始めます。




 3か所の植栽マウンド完了。1区画の景観緑地にこうして3か所ずつ、互い違いに植栽していきます。
 これは平坦な大地を吹き荒れる強風を緩和する上でも効果的な配植となります。



 さらに、この住宅地全体の大地の血管ともいえる通気浸透水脈の再生のため、敷地の接道側に空堀を掘り、その要所にまた、縦穴通気浸透孔を設けていきます。
 これを、この水脈が停滞した住宅地全体で行うことで、造成前の健全な土中環境を再生してゆくのです。



横溝の水脈も、地形や植栽配置に応じて緩やかにカーブさせていきます。地形に逆らわず、その土地の特性に応じた曲線で配してゆくこと、このことが実は非常に大切なことなのです。
 
 自然界の表層環境は、水と風とが動かして、落ち着かせていきます。そこに直線は決して存在せず、水の動きや空気の動き、それに土質、地形、生物環境とが、なだらかな流線型の地形環境を作って大地を落ち着かせていきます。
 だからこそ、地形に逆らわずにつくられた昔ながらの田舎道には直線はなく、それが自然の力を妨げないがゆえに、大掛かりなメンテナンスを要せずに何百年と保たれるということは、各地の山中の古道を見れば明らかに理解されます。
 そんな自然の働きを顧みずにつくられた直線的な構造物に対しては、自然界はそれを壊して安定させようという作用が働きます。そして人間はまた、壊されまいと、自然環境に対して強力な機械力で対抗し、そこに尽きることのない、自然と人との対立が生じます。そんな、これまでの開発の在り方を、大地の呼吸が完全に止まってしまう前に見直さればなりません。



 固い土を穿って溝彫りすると、表層土の断面が見えてきます。芝生地面の下に10センチの位置に固く、通気不全の環境下で青く変色しつつある、土層が形成されていることが分かります。
 この環境では通気も水も滞り、生物環境は極めて単純で不健全なものとなっていきます。

 この住宅地が農地転用を経て開発されたのは6年前のことですから、この硬板土層が形成されたのは、その後のわずか5年程度のことなのです。たった数年間で、広大な大地がこうして不健全な状態へと変貌し、生き物が健康に生育できない環境を次々に広げてしまったのです。

 日本の大地は、私たちの今の暮らし方によって知らず知らずのうちにこうして、その命の源である豊かな土壌環境から失ってしまいつつあるのです。
 その先には、人間が健康に生きてゆくための未来の環境はないのです。
 
 よい暮らしの環境を提供するのが造園の仕事であるのなら、見た目ばかりでなく、こうして足元の自然環境から健康に再生させてゆくことが、今後ますます必要とされることでしょう。



 大地の環境を改善しながらの植栽工事は大変な重労働で、一日の工事が終了する頃にはぐったりと疲れ果て、日が陰ります。
 でも、やりがいのある仕事です。この街全体がこうした作業によって素晴らしい環境へと再生される日が目に浮かびます。

 私自身、土中の水脈環境にまで目を向けて、その改善に本気で取り組み始めたのはほんの半年前からのことです。
 それまで、私は健康な自然環境を庭に作ると言いながら、実際には目に見える地上部の環境にばかり配慮してきたのかもしれない、そう反省しています。

 実際、これまで作ってきた庭の中でも、健康な環境へと育つ場所もあれば、そうではなく、木々に精気がなく活力ある環境へとなかなか育っていかない場所も確かにあります。
 根本の原因は大地の通気環境にあることが、今ははっきり分かります。

 どんな環境においても木々を元気に育てたい、生き物のにぎやかな気配溢れる環境を庭に作りたい、そんな想いで健康な庭つくりを追及してきたその果てに、大地の呼吸の問題に行きつきました。
 健康な未来は健康な大地の環境を再生することなくしてあり得ません。

 3月21日、カフェどんぐりの木でのお話会では、この大地の環境について、優しくご説明いたしたいと思いますので、多くの方の申し込みをお待ちしております。

 お話会のご案内はこちらより。

 

 

投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
山の補植作業        平成27年2月15日


 千葉市内の荒れた山林を取得し、整備を進めておりますダーチャ用地に、樹木畑で育成したクヌギなどの木々を補植しました。
 山林の補植は単なる景観つくりではなく、自然環境が自律的に再生されていき、それが風土の環境再生へと繋がる形で成されることが重要です。また、目に見える地上の部分だけでなく、根本的に大切な部分である、土中の環境再生をも視野に含めて施工していかねばなりません。
 
 新たに植栽した木々が、その土地の健全な森の構成要素として、大地の環境の一翼を担う形で溶け込んでゆくこと、そのための配慮や、その土地の自然が持つ働きや力を活かしながら手を施してゆくことこそが、問題となっている荒れた里山を、未来を支える命の財産として繋いでゆくための大きなカギとなる、そんな想いで補植作業に臨んでいます。



 山林の要所要所に効果的な補植場所を定めて、そこに枝葉の土留めを施していきます。
 比較的、急な傾斜地での補植のため、その後の健全な土中水脈の再生や、地滑りが起こらない環境つくりに配慮しながらの作業です。



土留め柵に用いる枝葉はもちろん、山林内から集めます。一つ一つの作業によって、山もきれいに片付いていきます。



 土留め枝柵の内側に、補植樹木を植え付けていきます。



 盛土した分、補充する土も他から搬入するのではなく、斜面山側を溝状に掘り下げて、その土を根鉢にかぶせて盛土していきます。
 この際にできる、斜面山側の深い横溝が、土地改変に伴う土中水脈の健全化に繋がるのです。



そして、斜面際を掘り下げたの横溝に、枝葉や木炭を漉き込んでいきます。これが大地の呼吸孔として機能し、樹木の根を誘導し、土中深い位置まで豊かな生物環境を作り上げてゆくことに繋がるのです。



 斜面補植完了後。盛土部分も、周辺から集めた枝葉をかぶせてマルチして仕上げます。構造上、すぐに土中水脈再生が始まり、決して地滑りや斜面崩壊など起こらないうえ、永続的かつ自律的に大地の環境が再生されてゆくのです。
 



 補植樹木はどんぐりから育てた木々たち、盛土の土は現地での発生土、そして水脈暗渠資材もマルチ材もすべて、この山林での採取によるもので、外から持ち込んだものなく、一銭たりとも材料費を投じることなく、大地が再生されてゆくのです。

 かつての人の営みが自然環境共生型、再生型の形であったがゆえに、今の我々の命が支えられてきたという事実をもう一度きちんと認識し、その上で、これからの未来へ続く社会の在り方、環境共生の在り方を、今こそ問い直すべき時期にある、そんな想いが日に日に強まります。




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
街の大木との共生を~東京都国立市さくら並木より 平成27年1月27日 


 ここは東京都国立市の桜通り、開花の時期の写真です。
 この桜並木は、中央線国立駅前の大学通りと共に
緑豊かな学園都市に住まれる国立市民の誇りであり、大切なふるさとの原風景となって、市民の心を豊かに育んできたように感じます。
 
 私もまた、学生時代、そして社会人になってからもしばらく、縁があって国立市へと通う機会が続きました。三角屋根のかわいい駅舎と、街路の上空に枝葉を広げる圧倒的な木々に包まれたこの街の素晴らしさに心癒されてきた、若かりし頃の思い出の街でもあります。

 その頃のことを振り返るにつれて、街の緑は、そこに住む人だけでなく、その街に縁があって訪ねる人の心をも癒して思い出とともに残り、心を豊かに育ててくれるものなのだと、そんな当たり前のことに改めて気づきます。
 そしてそれは現在の私たちだけのものではなく、木々が植えられたその時から連綿と、その街の人の心と共にあって、そして世代をまたいで未来へと、この街の美しく落ち着きのある街を時間を超えて繋いでゆく。
 そう思えば思うほど、街の環境を作ってくれる大きな木々は、なるべく長く大切に育み、そして次世代へと繋いでいきたいと、改めてそう感じます。



  47年前に植えられたその桜並木の景観が今、道路改修工事計画によって大きく変わろうとしており、国立市民と行政が大きく揺れております。

 桜通りの道路改修整備計画に伴い、一部伐採の計画が進んでおります。この計画がはたして適切なものか、あるいは大きな街路の木々と人や道との共生できるもっと良い方法はないものか、そんなことを想いつつ、昨秋に続いて先日、再びこの桜並木を訪れました。

 写真手前の桜、伐採される予定の数十本の中の1本です。
 枝先までしっかりと花芽を付けており、こんな環境でも木々は力強く、印象的なまでに旺盛な樹勢を感じさせてくれます。
 これらの大木にはまだまだ十分に生きる力があり、土壌環境を改善し、周辺環境を含めて木々が健康に生きていける条件を整えてあげれば、まだ何十年と問題なく生きていけることが、幹や樹皮、枝先の状態などから分かります。
 
 ではなぜこうした木々が伐採対象なのでしょうか。



 樹木医診断によってC判定(不健全木)とされた木々に取り付けられた診断書を一つ一つ見ていきます。
 全てのC判定木で、
樹勢(木の元気さ)については、そのほぼすべてが良好との診断にも関わらず、その判定を主に決定つけていたのは樹幹内の腐朽(空洞)割合であることが分かります。
 樹幹内の腐朽は大木老木となれば必ず進行するもので、枝折れや不適切な剪定などがきっかけとなって腐朽が起こり始まります。大抵の大木にはこうした腐朽を内部に抱えつつも、その後数十年、数百年と長く健康に生きてゆくのです。

 腐朽の進行はその木の寿命を左右しますが、その進行速度は土壌を含む環境条件とその木の持つ樹勢によって大きく異なります。
 その点、木の寿命というものは、あってないようなものであり、比較的短命なソメイヨシノといえども、根などの環境条件さえよければ、100年以上充分に健康に生きていけるもので、全国にはそんなソメイヨシノの見事な大木がまだまだたくさん見られます。

 植えられて50年弱という樹齢はソメイヨシノにとってもまだまだ若く、事実、車道沿いの決して良い条件とは言えないスペースに植えられたこの桜たちでさえも、まだまだ樹勢旺盛で、枝の先端、幹肌の更新具合を見ても、根の致命的なダメージは受けていないことが分かります。

 つまり、伐採対象のこれらの木々は、まだまだ生きようとする力にあふれていて、根を中心にその環境条件を改善することで、まだ数十年と、十分に健康に生きてゆく可能性を持っていることが明らかに感じ取れます。




 それにしても、この狭い空間で桜は必死に生きてきた様子が根元の盛り上がり方を見れば分かります。
 本来太い根を浅く広く張ってゆく桜の性質上、狭く囲まれた場所では特に、根は上へ上へと、「ヨッコラショ ヨッコラショ」といった具合にこうして上げてゆくのです。そして、地上部の太い枝に対応する根を太らせて張り出し、地上部と地下部のバランスを自ら取ろうとするのです。

 例えて言えばそれは、私たち人間が背を伸ばして、高いところにある重たいものを取ろうとする時、足を開いて踏ん張って、バランスを取りながら手を伸ばすのと同じことであって、木々は枝の張り出しと共にバランスを取るように根を張り出してゆくのです。

 そしてその根の成長のための栄養分は主に、その根に対応する太い枝から送られます。そのため太い枝を伐ることで、重たい樹体に対応してバランスを取っている太い根まで衰退し、それが倒木の大きな一因にもなるのです。また、剪定した枝の切り口からだけでなく、太い枝を伐ることによって痛んだ根からも、内部の腐朽が進むことが往々にして見られます。

 もちろん、樹勢旺盛な状態であれば、こうした変化にも十分に対応して修復する力をも木々は持ち合わせていて、台風などによる幹折れや枝折れ、あるいは様々な病虫害に対しても自ら力強く打ち勝って生きていこうとします。
 しかし一方で、樹勢が衰えてくればそれが致命的ダメージとなって衰退し、枯死してゆくことにもつながります。

 つまり、不適切な剪定が木々を痛め、その本来の寿命を大きく損なってしまう大きな要因になるのです。
 街の樹木の健康を保ち、なるべく長く安全に人の暮らしと共存させていこうと思えば、植えられた環境の良好な保全や、樹勢の回復速度を考慮して木々と対話するように行う適切な剪定とが、とても大切になるのです。




 昨年、桜通りの一部区間で、この改修工事が行われ、完了しました。これまで、この道路改修計画においても、桜の環境が健全な形で守られると信じて改修工事計画を受け入れた市民たちが、この工事後の変貌した風景を目の当たりにして驚き悲しみ、残った桜のトンネルを守るべく、立ち上がったのでした。

  昨年のうちに工事完了した区間では、十数本の桜大木が伐採され、残った樹木も枝を大きく切り詰められて無残な棒状となり、景観は一変しました。伐採された後には、新たな桜の苗木が植えられましたが、そこにはもう、長い間市民を守り育ててきた桜のトンネルの風景はなくなりました。

 街路樹を考える際、もちろん倒木や枝の落下、車両の接触を防ぐための安全上の配慮は必要不可欠なことです。しかしそれが木々の性質を把握したうえで的確に対処していかなければ、かえってその危険性を増すことにもつながるのです。
 この工事における桜の古木(実際のところ、50年弱では桜にとってもまだ若く、古木とは言えないのですが。)の扱い方は、その最たる、問題の多い事例と言えましょう。

 大木が自らの意思と力でバランスを取ってきた太い枝が、車の通行に支障のない高い位置にまでぶつ切りされ、強い日差しから自分たちの幹や根元を守ることもできなくなってしまっています。
 木々の衰弱は、幹や根の乾燥による要因がとても大きく、特に根が浅く太く盛り上がるこの街路の桜たちにとっては、そのことが致命的に根を傷める原因となりえるのです。そのため、現段階では健全と診断されて残された大木たちも、この環境の変化に対応できずに急速に樹勢を落とし、腐朽を食い止める力を失い衰退してゆく木々は増えることは確実と感じます。。
 また、伐採や強剪定によって、それまでお互いの枝葉によって弱められてきた風の勢いを遮るものがなくなり、それによる倒木の危険までもが相乗的に高まります。

 つまり、今回の伐採と不適切な剪定によって、かえって倒木の危険は増大し、そして残った桜も不健全化してますます寿命を縮めてゆくことに繋がるのが、この計画の問題の核心と考えます。

 この計画を進める行政や伐採推進業者は、「倒れたらだれが責任を持つのか。」と言います。
 しかし、今回の工事を推進することで、倒木の危険はさらに増すということが明らかで、道の安全確保の視点からも今回の計画自体を見直すほかになく、このまま計画を進めれば必ず、人にとっても樹にとっても悪い結果に繋がってしまうことでしょう。
 大きな環境変化は残存木に多大なストレスを与えてしまい、老化を進めてしまう。豊かな環境を作ってくれる大きな木々との共生のためには、危険の可能性を回避することが不可欠です。しかし、樹木の性質に対する本物の知識や想像力の不足が、まだまだ健康に生きる力のある大きな木々の伐採ありきの改修によって、かえって不健全で潤いのない街を増やしてしまっているのが今、日本全国の街の問題であるように思います。

 木々が健康に育つ環境を作ってゆくことが、潤いのある安全なで美しい街づくりのために大切なことであり、これからは新たな共存の在り方を作り出してゆく必要があります。

 国立さくら並木の問題は、それは私たちの住む街でも必ず起こる、あるいはすでに経験してきた問題でもあります。

街と木々とがどう共存して、素晴らしい環境を未来につないでゆくか、ここできちんと向き合うことがとても大切なことと思います。
 



 
 住民による工事見直し要求を顧みずに伐採が強行されようとした朝、住民たちの抗議によって工事はいったん中断となりました。
 共に生きてきた木々を守りたいと、これほど多くの市民が集まり、そして故郷の行政を動かそうとしていることに大きな感動を覚えます。
 緑豊かな国立市の環境がこうした素晴らしい市民の心を育み、そしてこの木々がここで暮らす市民によって守り育まれてきたことに、心の底から突き動かされます。

 そんな街だからこそ、日本に先駆けて木々と共存する街路の在り方を、市民と行政とが協力し、知恵を出し合うことで実現できることでしょう。そのために、私たちも微力を注いでいきたいと思います。

 なお、2月7日、午前10時、国立市役所3階会議室にて、
「サクラ通り 街路樹に関する意見交換会」が開催されます。

 ご関心のある方、ご意見のございます方は是非、ご参加くださいますようお願いいたします。また、当日午後、国立市民による、街路樹の未来を考える集いが開催されます。興味にある方はお気軽にご参加くださいませ。

なお、国立さくら並木の問題は、TBSテレビ 2月8日午後1時「噂の東京マガジン」にて、放送予定です。

多くの方がこの問題に関心を持っていただくことで、次世代の街の風景が変わることと思います。ご協力いただければ幸いです。







投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
謹賀新年 元旦      平成27年1月1日
 
  ブログを呼んでくださる皆様、あけましておめでとうございます。どんより曇った空模様の元旦ですが、今年は一人一人の力で世界を明るくしていければと願いを込めて、決意新たにいたします。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。



 私事になりますが、今年、実家の母親が引越しするため、生まれ育った実家への正月の里帰りも今回で最後となります。
 千葉市内の実家は、今の住まいから車でわずか20分足らずの場所なのですが、自分が生まれ育った実家がそこからなくなるということ、何とも言えない寂寥の想いがあります。
 元旦の今日、子供の頃の遊び場だった実家周辺の林に分け入り、40年近く前の名残を探します。
 この栗の木、多分この木、、昔この木にツリーハウスをつくり、そして根元に洞穴を掘った思い出の木、多分この木か、、あるいは違うか、当時とはずいぶん違う、笹薮をこぎ、少年時代の記憶を頼りにこの木の畔にたどり着き、そして木肌をなでます。



 写真左側の住宅地が、実家のある40年前の分譲地。その当時、道路右の斜面は造成したばかりで土がむき出しの切土の崖面だったのです。
 この崖に、地下水がところどころ浸みだして、そして崖を駆け上がっては近所のおじさんに「くずれるからそこであそぶな!」と怒られたものです。それでも子供たちは負けず、大人の目を盗んではこの崖をよじ登っては滑り、崖を崩して遊んでいた悪ガキ時代の記憶がよみがえります。
 その斜面も40年の時を経て、雑木林となりました。



 そして、今は枯れあがったかつての沼の跡地です。山の畔に、かつては生活排水を集めてここで自然浄化されていたのです。40年近く前の当時はここに様々な大きな魚にウシガエル、それにシラサギが住み着き、独特の雰囲気の沼がありました。
 この枯れ沼を見ると、ウシガエルの声が子守唄のように思い出されます。
 周辺分譲地の住宅圧に沼の自然浄化能力が次第に押され、そして最近では下水道が整備され、この沼地の役目は終わったのです。
 思えば、僕が子供だった時分のこの地域はまだ、人と周辺環境とが共存して持続的に暮らしてきた名残があった、ちょうどその過渡期だったことに気づきます。



 人の暮らしが山から離れるに従い、里山は荒れて笹に覆われていきます。しかし、実家周辺では今もこの森の一部が周辺の昔からの住民たちに利用されている様子が、こうした山道の整備からうかがえます。



 山の中に、小さな自給的菜園が点在する光景は今もかろうじて残ります。少年時代の暮らしん名残が今も残っている様子に心癒されます。
 それにしても、時間が止まったようなこの地域には、今も里山の名残がよくも残っている、そのことに、自分の故郷の欠片を見たようです。



 子供の頃に遊んだ里山も今はずいぶんと減りながらもこうして残っている、そう思いながら歩きつつ目に留まったのがこの看板。
 ここは15年前から千葉市の緑地保全地区に指定されていたのです。昔はこの山で大人が作業し、そして子供が遊び、そして小鳥に虫たち、様々な生き物たちの活動が生き生きと繰り広げられていたあの頃。
 今はこうした形でしかなかなか街中の緑は残されないものですが、それでも次世代に繋ぐことが何より大切なことかもしれません。



自分は確かに、この里山で育った。そんな想いをかみしめながら、これからの自分の歩むべき道を確認します。

 よい未来、自然豊かで平和で心豊かな未来のため、今年はさらに、身を粉にして歩んでいきたいと思います。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 




投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
一年の終わりに     平成26年12月26日


 師走に入り、今年最後の庭づくり一期工事が終了しました。つくば市Mさんの庭です。小学校の通学路となる角地の広い敷地、通る子供達にも楽しんでもらえるよう、木塀をセットバックして塀の前面にもゆとりのある植栽を歩道に張り出します。
 春になれば新緑の淡い緑が家を包み込むことでしょう。



 南側主庭。春を待ってから、芝や地被を植栽し、そして完成となります。

 Mさんも問い合わせいただいてから2年以上もお待たせしての造園工事となりました。いつからか、1年以上お待ちいただける方の依頼しか、承ることができないようになりました。
 お待ちくださるお客様には、実際に作らせていただく頃にはもう、感謝の念しかありません。
 同時に、こうして作らせていただくことは本当に縁なんだなと、思います。
 何かの縁があって、そこに庭が生まれます。そして、その後5年10年と、庭の管理を通してご縁は続き、庭やお施主家族との時の流れの中に発見があり、思い出があり、喜びもあります。
 ふと、これまでいくつ庭を作ってきたことか、そしてこれからまた、どれだけ新たな庭を作ることだろうか、そんな想いがよぎります。出会いと縁は自分の糧となります。これからもずっと、与えられたご縁を大切に、来年も歩んでいきたいと思います。



 造園工事の際の視点で今年、新たに増えたことがあります。それは、土地の改変等によって壊された土中の気脈水脈を再生するという視点です。
 それは植栽した木々の健康のためだけでなく、その土地が自律的に大地の健全性を取り戻し、豊かな土中生態系を再生してゆくという視点で、造園工事の際に水脈改善のための作業を必ず行うようになりました。
 大地の健全性は、その土地の空気の流れをも変え、人にとっても快適で健康な本来の生活環境をおのずと作ってくれるのです。

 写真の竹筒の頭が土中から飛び出している光景、高田造園の完成直後の庭ではこの光景が標準となることでしょう。
 竹筒は数年で腐り、なくなりますが、その頃には木々の根がその縦穴にびっしりと張りめぐらされ、滞ることのない大地の呼吸孔としていつまでも機能し続けるのです。



 ここは工場跡地の臨海埋立地、ジェフ市原のホームグランド、フクダ電子アリーナ正面広場です。埋立地の劣悪な土壌環境と海から常に吹き付ける潮風にさらされ、植栽された木々が健全に育たない中、写真奥の密集した木立はこんな環境でもひときわ健全に生育しています。

 この木立は一昨年の秋、、コナラやシイノキ、カシノキなど、千葉のふるさとの木々を組み合わせて植栽し、そして2年が経過しました。



 潮風にさらされる、植栽樹木がなかなか健康に育っていかない土地条件のもと、、この木立だけは健全に力強く、競争しながら伸びていました。
 2年前、固く締め固まった土地を人の背丈ほども掘り下げて、そして下地の硬板層に穴をあけて水脈を取り、水と空気が円滑に流れる土壌環境を作りながら植栽したのです。

 結果は明らかで、この公園のどの木々よりも健康に、元気に生育していました。その間、ほとんどメンテナンスはせずとも、こうして木々自身の力で健全に生育してゆく様子に、感慨無量な想いに包まれます。
 人の暮らしの環境に木々を植えるということは本来、人の幾世代もの先のスパンで考えていかなければなりません。
 人間よりもずっと寿命の長い木々は、健康に大きくなってこそ、そこに豊かな環境を作ってくれるからです。つまり、植栽して、それが健全に育って自分の次世代、その次の代を見据えて植栽してゆくこと、つまりは、自然環境再生につながる形でしかあり得ないということに、はっきりと気づきます。

 再開発などと言う名の、壊しては作る、その繰り返しの果てにどんな未来があるというのでしょう。人は健全な自然環境あってこそ、継続的に生きていけるという本質も、今のマネーの論理の中で見失なわれつつある中、造園という仕事から、今の時代に発信していかねばならないことがたくさんあるのです。




 庭を作れば作るほど、毎年うかがわねばならない手入れの件数は増え続けます。ここは2年前に施工した、埼玉県草加市のKさんの庭です。2匹の大型犬と家族がともに自由に過ごせる場所がこの庭です。



 2年を経て、庭はどこから見ても落ち着いた表情を見せてくれます。



 密集した住宅地の真ん中に、この庭があります。それ故に、この庭は家族だけでなく、周辺の家の方にとっても癒される貴重な緑の環境となり、さらには様々な小鳥たちもここを訪れます。
「小鳥がたくさん来るので毛虫もほとんどいないです。」とKさんは言います。
 もちろん、農薬散布などは決して行わず、自然の循環の中で自律的にコントロールされて快適な環境を作ってくれる、それがこれからの庭の理想なのかもしれません。



 庭の中の落ち葉ストック。スペースがあればなるべくこの落葉ヤードを庭に取り込んできました。これ一つで、落ち葉とサンドイッチしながら1年分の台所の野菜くずが土に還るのです。しかも、水と風をコントロールすれば嫌な臭いもまったく湧きません。
 落ち葉や野菜くずをゴミに出さずに大地に還元してゆく、それを知ることは大きな喜びをもたらし、そして、未来につながる地球の環境を育てることなく食いつぶしながら生きる社会の罪深さに気づくのです。
 今再び、実感を持って自然と向き合い、感じ取ること、それが人や社会の健康、存続のために不可欠なものであることを、この仕事を通していつも感じるのです。



 今年から始めた高田造園の自然農園、霜に耐えながら五月菜が青々と寄り添い、、春の訪れをひっそりと待っているようです。
 この菜園も、もともとは締め固められて硬くなった土地を水脈改善し、そして剪定枝葉をリサイクルしてできた腐葉土を漉き込んで畑にしました。
 肥料も特に与えず、また、一度作った畝を耕すこともありません。この畝の土の中には、様々な土中生物が生態系を作り上げていきますから、それを再び壊すような耕起はせず、自然と寄り添いながら野菜を収穫してゆくのです。
 これまで、収穫の度に耕していたときに比べてはるかに作業は楽しく、感動や発見も多く、そして収穫も多く、大地の動植物との共存が実感されます。

 造園も農も、対話するように自然と向き合うことで、行きつくところは豊かな自然環境の中で共存してゆくあり方なのだと気づきます。



 そして、社有林に小さな小屋が建ちました。構造材や建具はすべて、古民家を解体した廃材を用いています。



 小屋の中には広い土間に薪ストーブ、そして6畳一間の小さな部屋。懐かしい空間と温かな木の香り、来年にはこの森の中にもう一棟山小屋を建て、そこがこれからの私たちの活動の拠点となります。
 
 今の都会の人たち、現代の子供たちに自然と共にあったかつての農山村の楽しみを体感してもらう、そんな場所にしていけたらと考えております。
 そしてここは、来年立ち上がるNPOダーチャサポートの一つの活動拠点になるのです。
 今の時代、豊かな未来は失われた過去の中にある、そんな言葉が脳裏によぎります。私たちは今、失ったものを取り戻さねばならない時期に来ているようです。

 日本社会に暗雲が色濃く立ち込めるここ数年、私たちはあきらめるのではなく自律し、そして本当の豊かで美しい日本を取り戻していくべく、確かに歩んでいきたいと思います。
 こんな時代だからこそ、エネルギーが高まり、そして人も集まります。



 そして、小屋の脇にはハンドメイドな茅葺きトイレが完成です。素掘りの穴に用を足したら落ち葉と木炭をぱらっとかぶせる。水分の調整を炭と落ち葉と素掘りの穴がその役目を果たすのです。素掘りの穴に空気を通せば臭いも湧きません。
 そしてそれをまた、大地の循環の中に還してゆくのです。

 今年は様々な新たな気付きがありました。それも、様々な人との出会いのおかげです。
 また、本年中に手入れに廻れなかったお客様、工事をお待たせしているお客様に、この場でお詫び申し上げます。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
 







 



投稿者 株式会社高田造園設計事務所 | PermaLink
         
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